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勝負(稽古?)の行方
ラス [ 2002/02/19 1:36:05 ]
 昨夜、酒場でロビンが、夜稽古の相手を探していた。
暗闇でも相手を捉えるカンを鍛えたいとか、身軽な相手を希望だとか。
エルメスに声をかけてるのを見て、ふと思い出した。…1ヶ月前に怪我してから、荒事をやってないな、と。

何日か前に、トゥーリにまるめこまれて、ギルドの仕事を手伝ったが、思ったほどの荒事にはならなかった。
自分に、攻撃の力が向けられた時に、刺された時のことを思い出さずにいられるかどうか。
それを試したかった。遺跡に行く前に。

結局、ロビンとエルメスが「稽古」。俺とロビンは「勝負」ということに。ちなみに、魔法と手加減はナシ。
ところで、なんで勝負なんだ…? ま、いっか。やることに変わりはない。


陽が沈んでから、「勝負」とやらを始める。少し離れた場所にエルメス。真正面にはロビン。
辺りに、灯りはない。真っ暗闇、というほどでもないが、確かに暗い。

動き始めて……思わず舌打ちが漏れる。ロビンに、じゃない。自分の動きにだ。
踏み込みが甘い。腕の振りが遅い。視線と一緒に首まで動かしちまう。
かわす。かわしきれずに受け流す。流しきれずに受け止める。腕力の差だろう。肘先まで痺れた。
たかが1ヶ月、動かなかったからって、これほど鈍るか? …嘘だろ?(汗)

身を屈めて低くした頭のすぐ上で、ロビンが横に薙いだ木剣が通り過ぎる。
さすがにスカイアーの弟子だ。かわしたはずなのに、木剣で髪の毛が数本切れる気配がした。
背筋が冷える。自分の腹を貫いた剣の冷たさを思い出す。
『おまえ、実際はかなり参ってるんじゃないの?』
そんな、カレンの言葉まで思い出す。
………参ってる? 誰が? …俺が? それで、ロビンごときにこのザマだってか?

………………………………………。
(ぷち★)………ふざけるな。
戦乙女に愛想尽かされるような真似が出来るか。俺を誰だと思ってやがる。
足だって腕だって動く。傷はとっくに治ってる。多少、息が切れるのは、ロビンの動きが予想外に速いせいだ。
……こっからが本番だ。覚悟しろよ、クソ馬鹿野郎が。

──ふと、気づいた。
確かにロビンの動きは速い。スカイアーに習ったという剣筋も、悪くない。
なのに…なんで、さっきまでの俺に当たらない? かわすだけで精一杯だったのは認めるが…いつ食らってもおかしくなかった。
ロビンの動きを見ていて……気が付いた。こんなことに今まで気づかなかった俺もどうかしてた。

気を逸らせば足元さえも定かじゃなくなるような薄闇。ロビンに俺の動きはほとんど見えてない。
けど、俺は見えてる。
「魔法を使った」わけじゃない…よなぁ?(にやーり)
魔法は無し。そして………手加減も、無しだ。
自分の視覚に感謝しつつ、俺は木剣を握り直した。
 
血戦もどき
ロビン [ 2002/02/20 3:03:24 ]
 くそっ!ヤツの眼は梟の眼か!?急に勢いづきやがって、まるでこっちが見えてるような動きだぞ。
年の功ってのも馬鹿にできねえな。暗闇の使いかたが巧い。
このままじゃマズイか・・・・。仕方ねえ。まだ未完成だがアレをやる!

二人より少し離れた場所。
ロビンは斬撃において、またラスは刺突において、相手より優っているようだと、エルメスは見て取っていた。
そのとき、ロビンは突然、剣尖を下段に構え直して、反り身の姿勢でラスを待ち受けた。突きが得意な相手に下段で立ち向かうのは、生半な度胸ではできるものではない。
ロビンの喉から胸元にかけて、一見がら空きになったように見えるが、エルメスは不吉な予感を覚える。
ロビンが僅かに前に進み出た時、ラスは静かに飛び出しそのまま片手突きを見舞った。剣尖がロビンの喉元を貫くかと見えたとき、ラスの剣は弾かれていた。
ロビンが下段から撥ね上げた剣が、ラスの突きを外したのである。
ロビンの剣は止まらず、そのまま頭上で反転して、ラスの右肩めがけて振り下ろされる。
「『音無し』、とったぞ!」

「む・・・」
「つ・・・」

二人の顔が歪む。両人の剣は共に相手の身体に打ち下ろされていた。
ラスの剣の弾きが浅かったのと、ロビンが力み過ぎて自分の剣まで大きく振り上げ過ぎたため軌道が長くなってしまった、そしてラスの反応の良さがこの結果を導いた。

「ち。今のは避けの一手だったな。柄にもないことするもんじゃねえ」
「最後の最後で悪あがきしやがって・・・。まあ、でも俺の剣のほうが速かったよな。だから俺の勝ちだ」
「は?何言ってんだお前?今のは相打ちだろうが」
「お前こそ何言ってんだよ!絶対俺のほうが速かった!」
「ふざけんな。お前の眼はアテにならないんだよ」
「じゃあエルメスに聞いてみるか!?」
「いいぜ。恥をかくのはお前だけど」

二人の顔がエルメスのほうを向く。

「あ・・・いや、暗くてよく判らなかったんだけど・・・」

「・・・・」
「・・・・」

「だって離れてみてたしさ!」

「なんかシラけたな・・・」
「もういい。興がそがれた」

「あ、アタシのせいかよっ!?」