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ギャンブル
ラス [ 2002/07/10 0:52:29 ]
 何日か前の話。
たまたま顔を出した盗賊ギルドで、仕事に出くわした。
その仕事の締めくくりで、荒事になって、ちょっとばかり怪我をした。
さほど深い傷じゃないが、腕だったし、この季節だと化膿もしやすいよなと思いつつ、
部屋のドアを開けるなり、「おい、悪いけど癒しの魔法……」と、口から出た。
頼む相手はもういないってのに。妙な癖がついちまったもんだ。

そしてそれの前日だったと思うけど。
俺とシタール、ロビン、フォスターの面子でカードをしていた。結果はロビンのボロ負け。
勝ち負けの金額から言って、俺がロビンに貸し、ということに。
……けどまぁ、あとから考えれば妥当なところだとは思う。
シタールに借りれば、ライカが怖い。
フォスターに借りれば………………なんだか何よりも怖いような気もするから(謎)

そしてカレンが言うには。
「チャ・ザの夏祭り準備の一環で、広場の鴉の巣を撤去しなくちゃならない」と。
「ロビンが手伝ってくれるなら、神殿からは何も出ないが俺が報酬出してもいい」と。
そこで、(ロビン不在のまま)俺とカレンで(勝手に)取引。
「この怪我治してくれるんなら、ロビンの借金はチャラにしてやる。好きなだけこき使ってやれ」

……本当のところを言うとあまり期待はしていなかった。
別に治してもらわなくても、さほど不自由があるわけじゃない。
そんなに切羽詰まった怪我じゃないんだし、取引した日だって酒飲んでたくらいだし。
それより何より、切羽詰まった状況以外で、カレンが奇跡を行使するとは思えなかったから。
なのに、ヤツは頷いた。

確かに、最近は…と言っても、遺跡の中で1度か2度といった程度だけど、奇跡を使って1発で気絶するってことはなくなった。
でも、それは切羽詰まって、ほとんど無意識…っつーか、反射的に使う時なら、の話だ。
こんな…言ってみれば「ぬるい状況」で使えるのかどうか…。

──まぁ、結果を言えば。
その日の夜は、俺がカレンの体をベッドの上に放り投げることになった。
でも、完治までにあと10日はかかりそうかなと思っていた腕の傷は、今はうっすらと跡が残ってるだけ。
実験台だ、とカレンは言ってた。俺はギャンブルだと思ってた。ロビンのカードのような。
カレンがこのギャンブルに勝ったのかどうか…俺には今ひとつ判断つかねえけど。