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スラムの出来事
ラス [ 2002/07/16 0:56:58 ]
 後頭部をさすりながら古代亭に辿り着いたのが夜明け。
店のカウンターでは、ちょうど朝稽古に行くというエルメスと、早番だというカレンが並んで朝メシを食っていた。

ちょうどいい。っつーことで、エルメスに報告。

仕事でうろついていたスラム街の奥、そこでカーナに会ったこと。(#{137} -「哀願」参照)
何故かレドにも会ったこと。
んで、丸め込んで連れ戻そうとしたけど、カーナに抵抗されたこと。
そしたら、何故かレドから“眠りの雲”が飛んできて、カーナを拘束されたこと。

「なんで、レドがそんなことするんだよっ!?」

………俺に怒鳴るな、エルメス。っつーか、大声出すな。頭に響く。

「………その頭は? 血もついてる」

カレンに聞かれたことは、自分でも何となくわかってないことだったり。
えーと…魔法で眠ったすぐ後に、カーナの悲鳴で起きたんだけど、起きた時にはすでに頭が痛くて、なんだかこう…ぐらぐらしてた。
……レドに殴られるような距離じゃなかったんだけどな。
(↑PL注:同じように眠り込んだカーナからの無意識の頭突き)
血はこっち(右手のひら)。カーナのナイフを受け止めただけ。

まぁ、レドは実験がどうの…と、ちょっとヤバげなコトは口走ってたけど、
まさか、知り合いを本当に実験材料に使うほど、あの男も腐ってないだろ。
そうは思ったんだけど……脳震盪か何かかな、ちょっと…立つのがやっとだったから、方向だけ確認して追わずに戻ってきた。

……なんだよ、追ったってしょうがねえじゃん。
相手はレドだぜ? 万全の状態で追っても俺じゃかなわない。ましてや、ふらついてる状態なら…鼻で笑われて終わりだ。
そうじゃなくたって、あいつは魔法で飛べる。その場からはすぐに飛んでいなくなるほうが自然だ。
だから、方角は一応確認したけど…無意味だろうな。
ま、いいさ。明日にでも、レド本人をとっつかまえて、事情聞いてみるから。

大丈夫だって、エルメス。
そんな顔しなくたって、まさか本当に実験材料になんかしねえってば(笑)。 ……………………………多分。
 
ふと立ち寄った闇の中で。
レドウィック・アウグスト [ 2002/07/16 19:57:20 ]
  夜の闇を垣間見に、通り過ぎた小屋の中で何か話し声が聞こえた。
何を話しているかは問題ではない。そこはこのスラムの中にはいくつも在る小屋の一つだった・・・持ち主も居らず、専ら不法な輩が迷い込んだ善人を、被害者という名に変える変哲も無い小屋だ。
 生きるに値しないヒトノカタチをしたモノが、手に入るかも知れないと。
・・・そう、思った。
 どうやら中に居るのは男と女。女が嫌がっている様子を見ると、このスラム街でいうナンパかも知れない。若い馬鹿共が、そういっているのを酒場で耳にしたことがある_大抵被害にあった女はここを去る前に自分で死ぬか、殺されるかのどちらかだ・・・。
 小屋の戸口に戻ると、金髪の後ろ頭と女が一人。
男だけ始末して持って帰ろうと思ったが、どうやら女は麻薬に脳をやられているらしい・・・・しかも末期症状に近い禁断症状の様子で、『虫が見える』とかなんとか・・。
 どう始末をつけようか悩んでいた時。不意に振り向いた金髪は”ラス”だった・・・半年振りに見たとはいえ、迂闊だった。
必要ないなら女を引き取って末期症状の脳を覗いてみたかったが、ラスは相変わらずで、女を見捨てる気は無いらしい・・・。
 
 末期症状の人間などは、死んだ方が増しな位に苦しいはずなのだが・・。相変わらず残酷な奴だ。

 諦めて立ち去ることにしたのだが、後ろで風を切る音が聞こえた。
・・・僅かな血の匂いと共に。
 不意に生まれた殺意が、押さえ切れなかったのは最近回りに人が居ない生活をしていたからだろうか・・・。
 紡ぎだした言葉は『眠りの雲』だった。
 袖から鈍く光る短剣を取り出し小屋にはいると、女の右脹脛を切り分けるように刺し込んだ。髪を掴み小屋から引きずろうとすると、自分が傷つけたラスに助けを呼び出した。・・・・耳障りな声を遮る為に腹に爪先を叩き込む。
 ラスが何か言っていたが、声になっていない。
 女の頭を床に叩きつけると革紐を取り出し、足首を揃えて縛る。

 引きずり出した路上の片隅で、女に問い掛ける。
「生きているか?」と。そして呻く女の足を自由にすると懐から金袋をだす。
・・・500位はあったはずだ。
「お人よしの好意を無にする奴に生きる価値は無い・・・この金で二度とこの町に戻るな。・・・明日の朝までに消えろ」

目の端に涙を浮かべ、苦痛に歪んだ表情で挑むような目をする娘。
「嫌だ・・・といったら?」

「構わんが。・・・・次に会った時、虫が見えているようなら殺す」
そう、心に決めながら宣告し、踵を返した。 _ただこの町で金を持ち負傷した女が朝まで生きていられれば・・・だが。

 ラスには悪いことをしたかな・・・と思いつつ。今度酒を奢る約束をしたことを思い出した。今夜か、明日か・・・あの酒場に顔を出すとしよう。久方ぶりに_。
 
相棒を抱いて・・・
エルメス [ 2002/07/17 0:16:03 ]
 カーナは、今アタシの隣で気持ちよさそうに寝息を立てている。

ラスから、スラムの出来事・・・レドのこと、カーナの状態を聞いて、予定していた朝稽古をほっぽってスラムに行き、カーナを探してた。
とはいえ、当然簡単に見つかるわけがない。今もスラムにいるという保証もなかったし・・・。
だが、アテがない今はカーナはまだスラムにいるという少ない可能性にかけるしかなかった。

結果、見つけることは出来たんだ。真夜中になっちまったが。・・・予想外の人物(マリア)と一緒にスラムの外れにいた。
予想以上にぼろぼろで、怪我はひどかったが意識ははっきりしていたし、安堵が漏れる。

相変わらず中毒症状が出ているようで、幻覚が見えていたようだった。
とりあえずマリアと二人でどうにか落ち着けることに成功。疲れが溜まったのか、カーナはアタシの腕の中で眠りに落ちる。そのカーナを抱き、アタシたちは逃げるようにスラムを出た。

アタシはカーナを落ち着けながらレドのことを考えていたんだ。
ラスは「実験台」にすると言っていた。なんの実験かは想像もつかないが、当然嫌な予感しかしない。
ラスは言っていた。「知り合いを本当に実験材料に使うほど、あの男も腐ってないだろ。」と。
アタシもそう思いたい。そう思いたかったが・・・

どうしても、どうしても・・・カーナを思う感情の方が強かった。

レドウィックくらい凄腕の魔術師なら、魔法で簡単に治療院の中に進入できるだろう。
そうなると治療院は危ない・・・とっさにそんな考えが出たんだ。
だけど、アタシがかくまったところで治療もしてやれない。何もすることができない。
だから、まずはとりあえず古代亭に置いて、トレルに相談しようと思った。そこで一緒にいたマリアに、「スラムを出たらロックフィールド治療院にいるトレル先生を古代亭連れてきてくれ」と。


アタシたちが古代亭について、カーナをベッドに寝かせてからしばらく立って、マリアがトレルを連れてきてくれた。


「・・・とんでもないことをしてくれたようだな、”白鷺”。」


あ、アタシじゃないって!!(汗)