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風のあしあと
ミニア・ランナ [ 2002/12/17 0:10:58 ]
  今日はマスターの頼みで、雑貨屋巡りをしてきたの。
 そう、あの「奇跡の店」もそのうちの一つ。
 冬場って、仕事が減るから手数料とかも取れなくて困るのよね〜。

 そんで仕事が出てきそうなところをこっちから巡って取ってくるの。
 ほんの100ガメル程度の仕事でも、駆け出し連中や、暇を持てあましている連中にはちょうどよくってね。

 にしてもオランの街って広くてやーね。
 とても一日では回りきれないわ。
 ここらで切り上げよ。初日にしては悪くない収穫だったし。

 店に戻ってみると、お客さんが一人カウンターに。穏和な雰囲気とは裏腹に、肩がしっかりしている。戦士っぽい。見ればそれらしき装備。

 同い歳かな? って気もしたけどお姉さんって気がしたから、そう呼ぶことに。よし、反応なく受け入れた。“ユーニス”って言ってたけど、年上間違いなしね。

 あれこれ話したんだけどいい人なの〜。鎧の装飾気がついてくれたし、お姉さんも鞘に花唐草模様が入っていて意気投合! やっぱ女同士よね〜。

 どうして男っておしゃれに理解ないのかしら。
 実用性を損ねちゃそりゃいけないけど、飾るくらい問題ないじゃない。

 また、お話ししたいわねー。どこに住んでいるのかしら。>ユーニス
 
祈り届かず
ミニア [ 2002/12/30 10:01:52 ]
  あたしの住んでいた村はマーファ神を信仰していた。元々農家ということもあったし、小さな社がマーファのそれであったということからかもしれない。

 親に言われるまま、お祈りを捧げ、収穫祭を祝い、大地に感謝していた。あの日が来るまでは。

 気がつけば、家族は一番目の兄(トリィート)一人だけになっていた。
 流行病で父と二番目の兄を亡くした。洪水で三番目の兄を亡くし、兵隊が突然現れて、母を奪った。

 父が病気で倒れたときも、兄が流されたときも、一生懸命祈った。でも助からなかった。兄に抱えられて駆け出した後ろで、母の悲鳴を聞いたときも祈った。

 でも一度も聞き届けてもらえなかった。

 兄に聞いたことがある。「神様はなんで助けてくれないのか?」って。兄はとても困った顔をして、あたしを強く抱きしめたのを覚えている。

 既に成人を迎えていたからなのか、兄は母の死後も信仰を捨てることはなかった。店(きままに亭)で働かせてもらいながらも、神殿に通い、祈りを捧げていた。兄の信仰が本物だと思ったのは、六年前のあの出来事以来だ。あたしが寂しそうにしているのを知ってか、故郷に置いたままになっていた母の手作りの人形を、冒険者に取ってくるよう頼んだときだ。

 埃まみれの汚れた人形が届いたのは、三ヶ月後。汚れていたが、四年ぶりに見たそれはまさしく掛け替えのない宝物であった。歓喜で駆け回るあたしを店の裏庭まで兄は連れてきた。

 兄はもう一つ取ってくるように頼んでいたものがあった。

 それは故郷の土。

 袋から取り出した故郷の土をおもむろに撒きはじめた。
 あたしには何をしようとしているのか判らなかった。
 
「今、故郷の匂いがしたよ!」
「これからここが、うちらの故郷だよ」

 懐かしい故郷の匂いと、兄の言葉に思わず涙がこぼれた。もう帰ることのできない村。戻ることのできない過去。会えぬ母。
 このとき、あたしは故郷の呪縛を解かれた気がした。もう陰で泣いたりしない。泣かなくても大丈夫。兄がいる。優しくしてくれるみんながいる。

 反抗期で、兄にも寄りつかないでいたあたしが素直になれたときだった。あれ以来、神様に対しての毛嫌いが随分治まったと思う。

 兄のように、事実を受け止め、大地を愛し、力強く生きていければどんなに素敵なんだろう。でもダメなの。体が否定しちゃうの。祈っても“救われない”と感じてしまうから。物理的な救いが信仰の本質ではないとは思うけれど、喪失したものがあたしの中では大きすぎたの。

 だから、つい中途半端な神官(シルフィー)を見るとからかってしまいたくなるの。
 やっぱり兄みたいに深い懐を見せてくれないとね♪
 
精霊
ミニア [ 2003/01/15 22:05:28 ]
  ユーニスとリグベイルの話を聞いて、“あたしも”と思った。
 精霊使いとして力を高めていくのか、鍵としての技術を磨いていくのか。
 答えは前者って随分前から出てはいるんだけれど、なかなか上達しない。素質はあるって言われてはいるけれど、初歩の精霊との交信に二年近くかかったし、未だに交信できない精霊がいる。
 そのくせ、鍵として技に磨きがかかりつつあるから、気持ちは複雑なの。

 確かに、遮二無二ってほど頑張っている訳でもないけどねー。とかいって疎かにしているつもりもないけど。

 でも、誰も彼もが精霊使いとして開花するってわけでもないみたいだしねー。こういう後ろ向きな発想事態がダメなのかも。

 あーあー、チロ(注:ピクシー)どうしているかなぁ。
 お母さんと一緒に死んじゃったのかな。
 兄ちゃんが言うには、チロが魔法で助けてくれたって言ってたけど。

 そっか、会いに行ってみればいいんだ。あたし冒険者じゃん。六年前とは違うのよね。
 でも、家って何処? まだ戦時下とか聞いていたけど、ロドーリル領って広大よね。兄ちゃん、教えてくれんだろうしなー。やっぱ無理かー。

 戦時下に向かうなんて言ったら、みんな反対だろうしなぁ。ついてきてくれる人もおらへんかも。報酬もなにもないし。やっぱダメだな。

 大人しくユーニスと買い物でも出かけてこよう。