| 荒海の如く |
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| ギグス [ 2003/01/23 17:09:23 ] |
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| | 初めての仕事、か。 まに亭で初めての冒険を成功させている奴らを見て思い出しちまったな。 リグベイルと冒険者として初めて仕事をした時に先輩に一杯奢ってもらったってぇ話しはしたが、流石に人生の初仕事の話は出来なかったな。
まあ実際の初仕事の時は船の漕ぎ手として胃の中のモンをぶち撒けまくった思い出しかねぇが。 それよりも海賊として初めて戦闘に参加した時の方が記憶に残ってるな。ガタガタ震えるだけで他の連中が斬り合いをしている事を見ている事しか出来なかった。甲板が赤く染まってくのを見て奥歯のがガチガチ鳴りっ放しだったしな。 今考えると情けなくてしょうがねぇな。 そんで船長・・・爺さんを斬り付けようとしていた奴を背中から斬り殺したんだ。 爺さんが殺されるって思って震えて見てる時に爺さんから「ギグス!しっかりせんか!!」って怒鳴り声を聞いて体が勝手に動いてやがった。 その後、飲めもしないのに無理矢理酒を飲まされたんだっけな。祝杯だとか言って。
あん時ゃあもう絶対に戦闘なんかしねぇって思ったのにな。それが何でか今じゃぁバケモンなんかと戦ったりしてる。不思議なモンだな人生は。
あの駆け出しの戦士に戦闘の時に怖くなかったのか聞いたら最初は怖かったが自分が前に出なきゃ仲間がやられるって思ったら覚悟ができたって言っていたな。 こればっかりは素質なのかもな。素質があるよお前って言ったら喜んでやがった。 俺の言葉なんかで喜ぶなんてまだまだ駆け出しだな。
それにしても最近は故郷のことを思い出させられるぜ。アルファーンズやマゼンドリスと話をしたときもそうだったな。
爺さん元気にしてるかな。 |
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| 相棒 |
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| ギグス [ 2003/03/12 20:40:56 ] |
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| | 「今更相方を変えて上手くやって行けるとは思わねー」
アルファーンズに相棒を変えた方が良いんじゃねぇかって行った時のアイツの言葉・・・ 俺は、本気で変えた方が良いって思っていた。やっぱ、コンビってのは互いに足りない所を補うってのが一番だと思ったからだ。 その点じゃアルファーンズ達は二人とも似たようなタイプの戦士だ。互いに足りない所ってのは無い気がした。 でもそれは違ってた。互いに補うってのは技術だけじゃねぇって事を教わった気がする。 それにやっぱ相性ってのは大事だし、な。 よくよく考えりゃあ、ライニッツから見りゃ俺を相棒にする理由はねぇ。技術の面では。アイツは魔法剣士だからな。 ってぇこたぁ、俺は少しでも精神面でアイツの支えになってるっテェ事かね? アルファーンズは俺たちがバランスの取れた良いコンビって言ってたな。 今度アイツに会ったら言っとくか。
「お前等もいいコンビだぜ」ってな。 |
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| 震え |
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| ギグス [ 2003/05/11 2:12:48 ] |
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| | 「というわけで、どうよ。おまえも?」
ラスの奴、俺の肩を軽く叩きながら、まるでちょっと買い物にでも出かけるかのように誘って来やがった。 未盗掘、完全形、精霊絡みの遺跡に、だ。 ったく、どれだけの修羅場を潜って来たんだアイツは。嫌になるぜ。
手足のひょろ長い旦那(モート)・・・確か通称“腹芸の魔術師”とか言ってたな・・・と仕事のでかいヤマの話をしてる時だった。 でかいヤマになんかそう簡単にはあり付けねェ。そう話してた。
何てェタイミングだ。海の女神さんに感謝してもしたりねェぜ。
遺跡の話と今揃ってる面子を聞いて震えがこみ上げて来やがった。酒場の中じゃ震えを押えるので精一杯だったな。遺跡の事何も聞いてねェ・・・泳げる奴とか何とか言っていたが・・・ まあ、今度詳しく聞きゃぁ良い。
俺以外の面子、経験、実力からして俺は恐らく足元にも及ばねェ・・・ 夏って言ってたな・・・それまでにゃ少しは追いつけるようにしねぇとな。
(左手首を右手で押えながら) それにしても、怖さと楽しさで震えが止まらねェ。今夜は眠れそうにねぇな。 |
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| 深紅の船上刀 |
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| ギグス [ 2004/10/31 23:35:35 ] |
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| | 知り合いの船長が面白ェ話をしてくれた。昔の航海の話だ。 船が嵐にあってとある島に流れ着いたと言う。そしてその島で見つけたと言う幾ばくかのお宝。簡単に言うとそんな話だった。 島の詳しい場所は大分前の話らしく憶えてないらしい。 「お前さん冒険者だろ。興味がわいたか?暇があれば探して見ても良いかもな」 そう言って去り際に渡してくれた一枚の羊皮紙。その羊皮紙によるとどうやら海賊がアジトの一つとして使っていたらしい。書き残したのはその海賊の一員。
もしも船長の話とこの羊皮紙が本物ならデカイ山になるかも知れねェ。 だが一つだけ気になることがあった。海賊の頭だった男のようだが“片牙”ディヴィスという名前。聞いた記憶が全くねェ。
どうせ俺だけじゃ見つけることは出来ねェ。何時ものようにライニッツに話をして調べモンの頼みをすると夜に待ち合わせをして水夫どもに“片牙”の事を聞いて周った。
結局たいした収穫も無く待ち合わせ場所のきままに亭に向かう事になっちまった。 カウンターが込んでやがるからテーブル席で船長に貰った羊皮紙を見ながらライニッツを待つ。
「うっーす。ここ。良いか?」
そう声を掛けられ見るとシタールが機嫌よさげな顔で立っていた。 話を聞くとパダからこっちへ戻ってくるための手続きが今日終ったらしかった。俺はパダに行ってた事すっかり忘れてたが。 「ネタ探しに奔走するだけって訳よ」そう言うシタールに羊皮紙を見せる。コイツなら面子に加えてもライニッツも文句は言わねぇだろ。 一通り羊皮紙に目を通したシタールは目を輝かせながら一儲けできそうだと呟く。乗り気だ。 “片牙”を全く聞いたことがねェと言うとアイツなら知っているかもとカウンターで楽しそうに飲んでるラスを呼び寄せた。ラスに羊皮紙を見せる。帰ってきた一言は。
「東方語かよ!!」
ちっ。ラスのヤツまぁだ東方語の勉強してねェのか。会うたびに読めるようになれって言ってんのによ。 シタールが簡単にラスに説明してるとライニッツが息を切らせながら店に駆け込んできた。 「男くせぇテーブルになったな、おい」そう言って笑うラス。そのラスの口から“片牙”を聞いたことがあると言う台詞が出る。オランからベルダインて街を航路にして暴
れていたらしい。 「地図がテキトーな描かれ方なので苦戦しました」とライニッツ。 地図は羊皮紙をくれた船長の船の水夫で記憶力が一番優れていると言う男に描いて貰った島の大体の位置だった。苦笑しながら俺に一枚の羊皮紙をよこす。“片牙”につい
ての資料だ。どうやら詩人でもあったらしい。 その話をしているとシタールが急に思い出したことがあると言う。
“我、片牙。深紅の刃持ちて。竜の子に挑まん”
そんな詩と船乗りたちの間で伝説の品となっている深紅の船上刀(カトラス)を持っていたと言われる男。
俺も爺さんからその話なら聞いたことがあった。ほとんど御伽噺のようなモンだったが。シタールが思い出したと言う話と俺がガキの頃に聞いた話じゃ多少の食い違いはあ
ったが“片牙”が深紅のカトラスを持っていたのは間違いなさそうだった。
その後面子に加わるかどうか保留したラスに調べモンを頼み俺たちも各自面子集めや調べモンをするって事で解散した。
深紅のカトラスか。面白くなってきやがったな。手に入れることが出来たら爺さんに見せに一度バイカルへ帰るのも悪くねェ。 |
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| 小神殿巡り |
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| ギグス [ 2004/11/26 0:45:39 ] |
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| | 疲れた・・・・・・・・これで何日目だ?あのクソウゼェ司祭と一緒に神殿巡ってんのは・・・・ 神官戦士どもがコイツのお守りじゃなくて遺跡調査の方に皆行っちまったって理由が良く分かる・・・ チクショウ。やっぱりグレアムの旦那に騙された気がするぜ。交渉して護衛料上げてもらったがワリにあわねェ・・・
この村の神殿が一番遠い所のはずだったから後はオランに戻るだけだな。 村人にグレアムの旦那が言ってた珍しい石ってのも頼んでおいたし、司祭が戻るまで一眠りでもするか。
コンコン・・・コンコン・・・・・ドンドン!・・・・・・ドンドンドンドン!!
・・・・・・・・あ?誰だ?うるせェなあ。
「待ってろ!今開け・・・・・・・マス」
危ねェ。何時もの口調は駄目だって釘刺されてたんだ。 私に着いて来る神官戦士の役なのだからそれ位は当然だと?あー思い出しただけでも腹が立つ。
がちゃ。
お、さっき石の事を頼んでおいた猟師の旦那。案内してくれるか。
「早速連れて行って・・・・クダサイ」
・・・・・・・・・・・・・確かに珍しい形をしてやがる。それに数も多いみてェだ。でもよ・・・・コリャどう見ても石じゃなくて岩だろ・・・・・・・・・
「なあ・・・・この石ってか岩、俺・・・・ワタシが背負ってオランまで持って帰れると思・・・イマスカ?」 「これをズラか?確かにあんた力自慢みたいだけど、流石にこれは無理ズラよ。」
やっぱりそうだよな・・・グレアムの旦那。スマンが人力じゃ持っていけねェわ。 |
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| 背負い生きる事 |
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| ギグス [ 2005/05/20 23:12:58 ] |
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| | 行き付けの何時もの店に行くと、異常なくれェ騒いで飲んでいる連中が居た。 俺が耳にした事とカウンターに出ていたシタールの話だと、妖魔退治で死人が出たようだった。 ゴブリンの親玉と刺違えて逝っちまったらしい。 あいつ等はソイツの死を乗り越えようとしてたんだろう。少なくとも俺にはそう見えた。 そしてこれから、ソイツの死を背負って、ソイツの分まで生きていく事になる。 商売柄、誰かの死を背負って生きていくってのは当たり前の事なんだろう。 シタールは俺より多くの死を背負っているだろう。居合わせたクレフェも誤魔化す様にしていたが、誰かの死を背負っている見てェだった。後から来たレイシアも、少なくとも姉貴の死を背負っている。
俺は思い出していた。海賊の頃の仲間を。俺らの乗った船が沈められた時に最後まで抵抗して殆ど死んじまった仲間を。 ガキの頃からの付き合いだった。皆良い奴等だった。あいつ等以上の仲間はもう出来ねェかもしれねェ。
俺を含めて数人生き残ったとき、罪悪感に駆られた。テメェだけ生き残ってて良いのかと。 何度かアイツ等の下に逝こうと考えた事もあった。だが出来なかった。ルシーナが居るからと、ルシーナのせいにして。 本当は恐かっただけだ。死ぬ事と、アイツ等に「今頃何しに来た」って言われるのが。
だが、今は違う。アイツ等の死を背負う事。アイツ等の分まで生きる事。これが俺のするべき事だと分かった。 だから、未だ女神さんの下には行かねェ。女神さんの下で航海するのはもっとコッチで航海をしてからだ。 俺の死を誰かに背負ってもらうにゃあ早すぎる。
何時か女神さんの下に行ってアイツ等に逢った時ゃあ、笑顔で迎えてくれるだろう。 |
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