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奇妙な生活
ルケ [ 2003/02/01 4:17:35 ]
 もぐり。
ここでは、組織に属さないで盗み、物乞いなどをする輩を指す。

今日、そんなもぐりの娘ルーイと酒場でであった。
見た目はきたねぇ12,3のガキで、くだらねぇ話をして金をせびる物乞いだった。
はじめは、見逃そうかと思ったが、ある言葉で気が変わった。

「家の親方なんて・・・」

親方、だって?
親方が居ちゃぁ話は別だ。その親方さんとやらはもぐりの頭ってナ訳だ。
当然、ギルドにつきだしゃぁ報酬が貰えるんだからな。
それも、もぐり一味の頭、もしくは一味全体を捕らえた。

「そろそろ帰らないと」

そう、ルーイは言う。
にがさねぇぜ、お金ちゃん・・・

「俺が家まで護衛をさせてくれ」

そう言って、先に店を出て待っていると金・・じゃない、ルーイが店から出てきた。
おててを握って仲良く帰るが、流石に変に思ったらしく、なかなかアジトへと向かわない。
業を煮やした俺は、本心ではなかったが、店で言ったセリフをもう一度言う。

「楽しい宿屋に行きたいかい?」

それでも、アジトへは頑として行こうとしない。
チッ仕方ねぇ、とりあえず俺のねぐらで吐くまで待ってみるか。

こうして、俺のはじめての奇妙な同棲生活が始まった。
 
・・・・どう飼えばいいんだよ
ルケ [ 2003/02/02 0:15:37 ]
 ルーイをねぐらへと連れて帰る。

ドアにかかっているロックの呪文のワードを呟くと「カチリ」と鳴ってドアが開く。
娘の腕をやや強引に引っ張り中へと入れる。怯えているのが分かる。
・・・・誘拐犯だな、こりゃ(苦笑)
そう思いながら自分も中に入り、ドアにワードをまた呟く。
これで、逃げるところもあるまい。窓はとても人間が抜けれるデカさでは無いしな。
娘の腕を掴んでいた手を離してひとまず、ストーブに火をつけランタンも灯した。
パチパチという音と木の焼ける匂いが漂ってきた。

コートを脱ぎ散らかし、粗末なソファーに座りながら色々と考えをめぐらせる。
こいつが帰ってこなきゃ、引き払っちまうかも・・・それに、本当にもぐりの一味なのか。
ん、まてよ、もぐりじゃなかったら俺は本当に誘拐犯だ(汗)
そう思うと少し焦ったが、実際コイツは仕事をしたわけだ、ソレをとがめた俺は悪くない。

「おい、突っ立ってネェでベットにでも腰掛けてくつろげや」

言った後に、くつろげってのはおかしい事に気付き苦笑してしまった。
娘も少しは気がほぐれたのか、知らないがベットにゆっくりと腰掛ける。

「で、アジトはどこだ?言えばお前は助けるぜ」

「。。。。。。」

だんまりかい。
まぁ、ホイホイというわけねぇか。

「親方とやらは飯をちゃんと食わしてくれネェようだが、俺は食わせてやるぜ?」

「。。。。。。。。」

ケッ、強情な。
ガキの飼い方なんてしらねぇしな。困ったな。
何だかんだと考えていると、徐々に睡魔がやって来た。

「今日はとりあえず寝ろ。」

そう一言いって、ランタンの火を吹き消し、俺はソファーで横になった。
明日には、全てを語ってくれと思いながら。
 
(無題)
ルケ [ 2003/02/02 23:49:45 ]
 「へっくしょん」

寒い。何で俺はソファーで寝ているんだ。
・・・と、一瞬疑問に思ったが、ガキを連れてきたんだっけ。
そう思い、ベットに目をやるとルーイとか言う娘が寝ていた。
やれやれ、早く吐いてもらって追い出したいところだな。
火の消えかかったストーブの灰の中から火種を見つけ、ストーブに火を点し、鍋にミルクを入れてストーブの上に置く。
腹が減ってはなんとやら、飯でも買ってくるか。

近くの露店でパンと適当な物を買って、部屋に戻るとルーイは既に起きていた。

「おい、腹減ってるだろ?」

そう言って、パンを娘に放り、自分もパンをかじる。
娘は無言で受け取り、黙って食べ初めた。
嫌な沈黙が部屋を支配する。
不意に娘がその沈黙を破った。

「ごちそうさま。でも、何をしても喋らない。」

「やっと喋ったな。・・・ミルクはいるか?」

俺は軽くうなずきくのを見て、娘の分のミルクを杯に注いでやり手渡した。
今度は俺から娘に喋りかける。

「なぁ、喋れば直ぐにここから出してやるし、お前が捕まったとしても庇ってやろう。だから、早く喋ってくれ」

娘は軽く首を振り。

「普通、親兄弟を売る?そんな汚い事は出来ないし、そんな気もないの。」
「あなたみたいな、お金だけで動いている人間は違うでしょうけど」
「さぁ、これ以上私は何も言わない。売るなり、するなりなんなりすればいい。」

そう言われて、自分がしてる事が酷く醜く感じた。
俺が非情な奴ならこんな事へでもないんだろうが、違ったらしい。
言葉が出ない。ガキより俺のほうがよっぽど弱かった。

「・・・・・・・・・・。」

そしてやっと出た次の言葉は、自分でも何で言ったか分からなかった。

「ここの鍵を開けるワードは『カパカ』だ。いつでも出て行ってくれ」
「出て行ったらちゃんと鍵を掛けてくれよ。ワードは『パカパ』。」
「・・・もし、だが、お前の帰るとこがなくなってたら、戻ってきてもいい。」

なんだ、なんだ・・・そりゃ。まったく分からなくなった。

「じゃ、俺は出かける。火の用心と戸締りは頼んだ。それと・・・すまなかったな。」

コートを引っつかむと俺は部屋を出て行った。
 
(無題)
ルケ [ 2003/02/03 21:33:28 ]
 部屋を出てから一日中公園でぼうっとしてた。
夕刻になり、特に考えも浮かばなかったが、部屋へと戻る。
その戻る道すがら、心の中でまだ部屋に居て欲しいと思う気持ちがあるのに驚いた。

部屋の前に戻り、ノブを掴んだが、鍵は掛かっていた。
まだ居るかもしれない・・・そう思った。
ワードを唱え、鍵を開ける。
が、部屋の中は冷え切った空気が漂っているだけで、何も居ない。

「そりゃ、居る訳無いか。いや、何で居て欲しいなんて思ったんだかな」

苦笑しながら一人呟く。
と、部屋が片付けられているのに気が付く。
ベットはきちんとメイクされ、ゴミは一まとめになっている。

「余計な事をしやがって・・・」

その夜、戻ってくるかもしれないと思い、どこにも出かけずに居たが娘は戻ってこなかった。
仲間と出会えたんだろうか、なんて詮無き事を考えた。
今度、どこかで出会えるのなら、ちゃんと謝りたいと思った。
 
(無題)
ルケ [ 2003/02/14 0:53:25 ]
 あれから十数日、何もしないで居る時も何かしてる時も気になっていた。
そう、ルーイのことが。
今まで、一緒に冒険に出た仲間が命を落とした時はそいつのせい。
なんて思って居たのに・・・くだらねぇ、ガキ一人の事がここまで気になるとは、自分でもまったく思っちゃ居なかった。
最初は、二日もすりゃ忘れちまうなんて心の隅では思っていたのに。

「強がってたんだな、俺」

こう、思ってもどうなる訳でもなかった。

知り合いから、モグリの一味が捕まったと知らされる。
奴のお仲間かどうかは知らないけど、全員処分されたそうだ。

「で、だから?」

やっぱり強がってる・・・・