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廻る因果
ヴェルツォ [ 2003/04/17 4:47:32 ]
 “魔法”…それは、廻る因果を運命とする事で生まれる理。

目に見えぬ幾億万の運命の糸を絡め取り、紡ぎ上げる諸行に真理を求め、悦びを見出す。

そう、私は叡智と言う名の儚い夢に魅せられた愚かなる道化……
 
廻る星々に想いを乗せて
ヴェルツォ [ 2003/04/17 5:58:05 ]
 ※この宿帳は雑記帳0025「星屑の楽園」と関連しています。



夜更けて尚、私達の宴は終る気配はなく、ますます盛り上がりを見せていた。

私は、やや飲み過ぎた感のある身体の火照りを醒ます為、夜風を求めて酒場の外へ足を運んだ。

…ふぅ、柄にもなく、宴の雰囲気にのまれてしまったのかしら、情けないわね。

私は自嘲的な笑みを浮かべながら、満天の夜空へ視線を向けた。

夜空に浮かぶ星々の瞬きは、私に何とも言えない安堵感をもたらしてくれる。

夜空を見上げ悦に浸っている私に、ゆったりとした足取りで近づいて来る足音が聞こえて来た。

……どうなされたのかしら?宴はまだまだこれからでしょうに?

微笑を湛えながら私は、近づいて来たユーニスさんにそう声をかけて肩越しに振り向いた。

「…だって、突然あんな事を言い出すから…直ぐにいなくなっちゃうんじゃないかって思っちゃったじゃないですか…」

怒っているとも泣いているともつかない複雑な表情で彼女がそう抗議した。

…ごめんなさいね、でも、パダに残る事は、この冒険が始まった時に決めていた事だから…

「だからって、いきなりそんな事言われたら、驚いちゃうじゃないですか、もっと早くに言って欲しかったです、ヴェルツォさんと、もっともっと色んな事お話したかったのに…」

草むらに腰を下ろしていた私の隣へ、そう不満を言いながら彼女が腰を下ろした。

…でも、もう二度と会えない訳ではないのだし、そんなに怒る事ではないでしょう?

「それでもです、だって、やっぱりお別れってちょっと寂しいから…」

膝を抱え、ほんの少しではあるが拗ねた感のある彼女の頬に軽く触れながら私は、彼女に夜空を見上げる様に促した。

…出会いと別れは人生の常よ、生別、死別問わずね…でも、別れがあるから新たな出会いがあるのよ?あの夜空に浮かぶ星々と一緒でね…あの広大な星界にあってもお互いを強く引き合わせる力があれば、必ず星と星は廻り会うの、たとえどんなに遠く離れても、ね…

彼女は私と同じ様に夜空を見上げながら、こう私に聞き返して来た。

「……再び廻り会えると信じていても、どうしようもなく寂しくなっちゃった時、ヴェルツォさんはどうするんですか?」

…うふふっ、その時はね、夜空を見上げてこう信じるの…この広大な夜空の下で今この時、その人も同じ夜空を見上げているんだって、ね?そう信じる事でその人との絆がより強く感じられるはずよ。

私がそう言うと、彼女は真摯な表情をしながら私に再び聞き返して来た。

「…じゃあ、私がヴェルツォさんを思って夜空を見上げいる時は、ヴェルツォさんも夜空を見上げてくれますか?」

…貴女がそう望むなら、私は夜空を見上げても良くってよ、貴女の為にね。

私に向け嬉しそうに瞳を輝かせた彼女は、私の言葉に何度も頷きながら再び夜空を見上げた。

私も彼女に合わせ、宝石の様に瞬く満天の夜空に瞳を向けた。