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初めての遺跡、出発前
ディーナ [ 2003/05/21 3:05:15 ]
  いつもお邪魔しているきままに亭から定宿に帰ってきても、心臓の高鳴りを抑えられない。今まで必死に我慢してきた笑顔が、自室の扉を閉めた瞬間に浮かんできてしまう。抱えている杖をベッド脇の壁に立てかけ、ベッドに腰掛けながら、きままに亭でのことを思い出してみた。
 ついさっきまで、私はきままに亭のカウンターにいた。そして、グレアムさんというラーダ神官さんと、アルさんという戦士さんと話をしていた。その時、アルさんのお誘いで、二人がオランの地下に広がる遺跡に入ると話をしていたパーティに”杖”役として参加させてもらえることになった。
 ………ついに。
 ついに、初めて遺跡に行くんだ。冒険者としての仕事は、オラン近隣の村に現れたゴブリンの退治というものしかしたことがない私が……。写本の手伝いのような細々とした仕事ならしたこともあるけれど、もちろん、それは冒険者でなくてもできる仕事、数のうちには入らない。その私がついに冒険者として、遺跡に行くんだ。
 向かう遺跡は、さすがに冒険者のひしめきあうオランの真下にあるだけあって、ほとんど盗掘されいて、古代王国時代に由来するような宝物も魔物も出会うことはないらしい。もしかしたら、人によっては、遺跡と言えないと言うかもしれない。それでも……私にとっては、遺跡は遺跡。巨大動物のような魔物はいるというし、遊び気分で向かうわけにはいかない。
 ただ、私にとって運が良かったのは、一緒に行ってくれるグレアムさんとアルさんが、私よりもこういうことに慣れておられるようだったということ。お二人の力添えがあれば大丈夫だろう。冒険者にとって何よりも重要だと言われる「引き際」を見定める目も、お二人ならちゃんと備えておられるようだったし、無茶なことをせず、きちんと指示を聞き、メモはこまめに取って、後は……そうだなぁ……。

 ……初めての冒険では、緊張して魔法を失敗しちゃったりしたから、今度こそは私もパーティの一員として役に立ちたいな……。

 しばらく、地下の遺跡に思いを馳せていたけれど、さすがに眠くなってきたので、寝間着に着替えてベッドに潜り込んだ。しかし、緊張は収まらず、心臓の高鳴りは抑えられず、そして、笑顔もやっぱり浮かんだままだった。
 エールを一杯飲んだ夜は、ベッドにもぐればすぐに眠れるのだけども……今日ばかりはそうもいかないみたい……かな。
 
初めての遺跡、探索後
ディーナ [ 2003/05/27 1:20:03 ]
  はぁ〜、疲れた……。
 日帰りの遺跡探索。予想通り、大した怪物にも出会うことなく終わったので、肉体的な疲労はそこまででもないけど……精神的にとっても疲れた……。
 はぁ〜……。
 何度目かも忘れた溜息。今から思い起こしても辛い。初めての遺跡……いや、下水という環境、そして、何よりそれに対して尻込みしてしまった自分……まだまだ一人前の冒険者と言えるものではない。一緒に探索したみなさんにまた迷惑になっちゃったんじゃないかと思うと、また溜息が出そうになる。
 本当なら、このまま宿に帰ってベッドに倒れこみたいぐらいだけど……そういうわけにもいかない。一度、公衆浴場にいって体を綺麗にして、服を着替えて……それから……(顔が急に笑顔になる) 今日、いっぱい溜まったメモを整理しないといけない。
 これだけは終わらせないことには、今日は寝ることはできない。遺跡探索しながらだと、つい書きなぐりになってしまった部分もある。そこらへんをキチンと書いて、分野ごとに今までのメモと合わせて整理して……。

 はぁ〜……とっても忙しそうだなぁ……(満面の笑顔で足取り軽く歩いていく)