| ラテル・クロムウェルの手記 |
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| ラテル [ 2003/10/05 22:45:37 ] |
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| | オランでの生活が始まってから五ヶ月が過ぎた。 これはすなわち、僕が冒険者として歩み始めた期間だ。 そして、クロムウェルの名前から遠ざかった時間の長さでもある。
今日から少しずつ、これまでのことを振り返り、それを書き留めて行こう。 それが終わったら、今度は日々のことを記していこう。 このような形で記録を作ることは、今の僕の立場からすれば好ましいことではないのだろう。 けれども、今の僕の内には抑え難い衝動が湧いている。
古文書の訳文を作るためだけにペンを走らせるのでは、人間としてあまりに味気ない。そう思う。 |
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| 回想その一 |
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| ラテル [ 2003/10/05 23:17:00 ] |
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| | オランには大勢の冒険者が暮らしているが、その中でも僕は幸運な部類に入るだろう。 この街へ着いて、たった数日で知己を得、冒険者として働く機会を得られたのだから。
その仕事で得た収入は決して十分な額とは言えなかったが、不満はなかった。 冒険に臨み、自身の技量を確かめられただけでも大きな収穫だったし、何よりそれは頭割りの金額だったからだ。 一緒に働いた仲間たちは、僕より経験も技術もはるかに優れていたと言うのに、分配については何も言わなかった。 それが僕には大きな衝撃だった。
カストゥールに関することならば、魔術師や賢者の働きが大きくなる、或いはそうあるべきなのは当然のことだ。 とはいえ、銀貨と宝石の詰まった皮袋を掴んだ時、僕はおそらくぎこちない表情をしていたのではないだろうか。 中身を検めることもせずに宿へ戻り、店主に押し付けるようにそれを渡してから部屋に上がった。 あまりに稚拙な振舞いだった。
次は同じことにはならないだろうけれど、あの時のことを思い出すと、やっぱり気恥ずかしい。 |
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