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日々の祈り
サルトン [ 2003/11/06 16:54:35 ]
 (羊皮紙を綴った日記帳。1ページ目に書かれているのは神聖語の言葉)
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<>我が主より賜った今日のこの日を、
<>この日の出会いを忘れることが無きように、
<>ペンを取り、文をしたためよう。
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<>我は、我等は我が主によって生かされている。
<>我が主は唯一人、人の子らの護り手にして法の司、
<>太陽の顕現にして善なる神々の王たる至高神ファリスのみ。
<>我は我が主のもの。
<>我は我が主の手であり口であり目であり耳であるように、
<>我が主よ、我を用い給え。
<>
<>我が主よ、今日まで我が犯した罪科の数々を許し給え
<>我が主よ、どうか我があなたの御意思に叶うように、明日もまた我を導き給え。
<>全てはあなたの御心の侭にあるように……。

<>
<>(次頁からは西方語とドワーフ語とで書き綴られる)
 
新王国暦515年 11の月 2の日
サルトン [ 2003/11/06 16:55:50 ]
 今日という日を我にお与えくださった我が主、至高神ファリスに感謝をせねばなるまい。
酒場にて良き出会いがあった。
我が主にして善なる神々の王たるファリスに、
我と彼等とをお引き合わせくださったことに対する感謝の祈りを捧げつつ、この日記を認めよう。
幸運の神や運命の神に感謝の祈りを捧げるのが常であろうが、
不遜ながら我は至高神の僕たる身。
敬うことはあれど、他に主があってはなるまい。
 今日出会った者は2人。
一人はラスと名乗る半妖精の青年、もう一人はアンジェラという名の人間の淑女であった。
人の子らが、森妖精らが――ラス殿は半妖精であったが、物の考え方は生粋の森妖精と近しいように感じた――
神について如何考えているのかを知る良い機会であった。

 しかし……嗚呼、腹が重い。まるで中に酒か何かを満載した樽にでもなってしまったかのような心地だ。
些か飲みすぎ、食いすぎたやも知れぬ。まぁ、偶にはこういったことがあっても良いだろう。

 それに財布の中身は随分と軽くなってしまった。
暫くは日々の生活を切り詰めねばなるまい。
得意の木彫り細工にて糊口を凌ぐこととしよう。

今日まで我が友が無事に生きてこれたことを感謝し、
そして彼等が明日より歩むであろう道程の上に至高神の護りと恵みとがあることを祈りつつ、
筆を置くこととする。
 
新王国暦515年 11の月 6の日 (雨)
サルトン [ 2003/11/06 19:03:45 ]
  先刻、葡萄酒を注いだ杯を傾けつつ、窓の外に降る雨が建物の屋根や地を打つ不規則な旋律に耳を傾けていた折であった。
 ふと、窓の外から意識を外した際、耳に入った会話が気にかかり、話を聞かせてもらうべく其方へと向かう。
 カウンターの一角にて言葉を交わしていたのは二人の男。
 一人はワーレンという人間の男で、詳しくは聞かなかったが少しばかり交わした会話より、衛視であることが判った。
 もう一人は我と同じ地妖精の男であった。名をビアモフというこの男は、豊かな髭をたくわえた鍛冶の神に仕える信徒であった。
 彼ら二人が話していたのは、先日盗まれた財宝に関することだった。
盗まれた財宝は紅玉の戦斧という柄に紅玉をあしらった戦斧とのこと。
 土妖精によって鍛えられ、装飾が施されたというこの戦斧は昔、鉱山にて坑道が崩落する事故が起きた折、救援を差し向けたエフェンベルク家の当時の当主――現当主の三代前にあたる――に、友愛の証としてして贈られたものだという。
 その戦斧が先日、何者かによって盗まれたらしい。
 聞き込み調査を続けていたワーレン殿の話によると、現当主は何も知らぬような素振りを見せてはいるものの、何かをを隠そうとする節があるとのことだった。
 至高神の僕としても、土妖精としてもこの件は捨て置けぬ。
 僭越ながら、我も彼らと共に事件を解決すべく協力する旨を申し出た。
 明日の九の刻を待ちつつ今日はペンを置くこととしよう。

 願わくば、ファリスの公明なる裁きが齎されんことを――。