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東方に向かいて
オン・フー [ 2003/11/27 1:39:41 ]
 十の月三十の日、オランを出てもう直ぐ一月。
オランよりミードへ向かう”蛇の街道”の途中。

野営にて焚火。
それに照らし出される影は五つ。

影は草原妖精のピッケ。
影は精霊使いで戦士、リグベイル。
影は剣士、スカイアー
影は商人で盗賊でチャ・ザの神官、俺ことオン・フー。
影は驢馬。

誰一人欠ける事無く東を目指して。

ムディール、ミラルゴと目指す場所は違えど。
各々の目的は違えど。

冬の月が照らす寒い夜であれど。
獣か怪物か、遠吠えあれど。

今日もまた無事に夜を迎えた。
明日の朝日を迎えよう。

街道は北へ北へ。
ミードからは東へ東へ。

「・・・さて、何が起きるか楽しみさね。」
 
故郷「東の果ての王国」ムディールにて新年を迎えて
オン・フー [ 2004/01/17 2:06:48 ]
  やれ、新たなる年を迎えて、また一歳・・・オッサンよばわりされるも無理らしからぬ年にまた近付いたさね。今、俺は故郷ムディールの海岸沿いにある村にいる。ムディールまで同行してきた一人の仲間、同時に村の賓客とした迎えた一人の戦士。

「ふむ・・・流石は東の茶。オランとはまた違う」

 俺の姉貴の淹れた茶を啜るはスカイアー。
 ミードで無事主のもとに戻れた驢馬と別れ、ミラルゴでリグベイルとピッケと別れた後、昨年の暮れに到着し、丁度新年の祝いの為、国内外、フー一族総勢三十四名が集まっていた頃合に俺とスカイアーはここに辿りついた。

「どうださねェ、客人。ムディールは良き処ださねェ?」

 俺と似て背の低い婆さん・・・フー一族の最年長にして長老、リュー・フー(俺は”婆様”と呼んでいる)がスカイアーに菓子に干し魚を持って来る。
 どうやら、久々に遠方からの客人のスカイアーをえらく気に入って、何かあればアレコレと茶を啜りつつ話しが絶えない。

「オン、何ぼやっとしてんださね、はよ、海に行って男衆の手伝いをせんかさね」

 だからといって、”オランの美男子画”をお土産に持って来なかったという理由で俺を新年早々からこき使うのはどうかと思うさね・・・

「んで、客人、いつまで滞在するださねェ?」

「ふむ・・・そうだな」

 さぁて、いつごろ、また西へ旅立とうか。あんまり遅いと、相棒のリディアスに文句の一つじゃすまされそうにもないからさねぇ・・・。

 おっと、婆様に怒られる前にとっとと行くかさね。今年成人を迎える甥に声をかけて浜に向かう。こうして海に向かえば、海の香りと故郷の匂いが実に心地よく混ざる。

「さぁて、久々に網でも引くかさね」

 交流神”チャ・ザ”に、今年も良き交流と巡りがあることを祈って。
 
山道を下りオラン領に入りて
オン・フー [ 2004/05/23 19:46:20 ]
  やれ、予定を大幅に遅れてのオランさね。
 とはいえ、まだまだオラン領に入ったばかり。
 東方ムディールからミラルゴを通り、やがてアノスへ。

 アノスでは色々とあって、困ったものだった。
 ファリス神が国教であるアノスは、チャ・ザ神官の俺には肩身が狭すぎる国さね。
 商売はできてるも、信用を得るまでになんと時間がかかるものか。

 また、ある村で起きた誘拐事件には参った。
 娘と子供が行方不明になっているというのだ。
 村唯一の宿屋で泊まっていた旅人に疑いの目が向けられ、当然其の中に俺とスカイアーも含まれていた。
 朝から散々取り調べ揚げられた挙句、事件に協力する形で開放してもらったときは真夜中。
 次の日から村人から疑いの眼差しの中、村の隅々を調べまわって、ようやく怪しい一つの洞窟を探り当てる。
 ・・・と、そこは村を救った英雄を祭る”聖者の洞窟”と呼ばれる場所だった。
 村人からは聖域として、年に一度、ファリスの司祭が訪れる祭礼以外には立ち入りを厳しく禁じられている。
 其れを知らずに踏み込もうとして、危うく村人に袋叩きにあいそうになりかけた。
 そこはスカイアーの説明、そして俺が必死に弁明する。
 同時にたまたま滞在していたファリスの神官に魔法で弱ではない事を証明してもらう。
 また、チャ・ザ神にかけて嘘はついていないと謝罪と宣言をして事なきを得る。
 村長と滞在中のファリス神官の相談のうえ、ファリスの神官の監視つきではあるが、特別に洞窟に入る。

 ところが、名前とは裏腹に、不気味な死者達の群れが襲い掛かる。
 とはいえ、神官である俺、歴戦の”剣”であるスカイアーには敵ではない。
 そのうえ、こっちにはファリスの神官がいることもあり、奥に進むのはそう時間はかからなかった。

 聖者が葬られていると言う奥にたどり着く。
 小さな岩の祭壇の前にいたのは誘拐された村の娘に子供が二人、どこからさらったのか旅姿の青年。
 気を失っているのか、皆ぐったりしていた。
 周囲に罠が無い事を確認し、怪我の有無を調べるも目立った外傷は無い。

 スカイアーが部屋の入り口で見張っていることもあり、安心しきっていた。
 気を失っているだけと思っていたのが油断した。
 ファリス神官が警告の声をあげる。
 スカイアーが駆けつけようとする。

 そこまでが見えたが、強い力が俺を吹き飛ばした。
 黒幕は”そこ”にいたのだ。

 ・・・

 ・・・

 いやはや、死ぬかと思った。
 辛うじて気を保ち、俺は手斧を振るい、そして神聖魔法を紡ぐ。
 スカイアーの剣が黒幕に打撃を与え、打ち倒す。

 其の首を持って帰る。

 戦闘で気力を使い果たした俺ではあるが、ファリス神官の癒しの魔法で傷も癒えた。
 こうして、事件は解決したのさね。

 ・・・

 まぁ、色々とあったものの、こうして無事にここまで来れた。
 おっと、遠くに見えるは街の灯火!
 今夜の宿はブラードに決まりそうだ。

 さぁさぁ、オランの街ももうすぐさね。
 
カゾフの潮香り吸い込みて
オン・フー [ 2004/05/31 16:45:47 ]
  ようやく、オランで港湾都市と名高きカゾフに到着さね。

 南海の潮の香りを改めて吸い込み、オランがもう直ぐ近い事を実感。
 五本の指に入る美味い店で久方ぶりのカゾフ料理に舌鼓。

「ふむ。美味であるかな」

 スカイアーも満足のようだ。

 夕暮れ、商売仲間に逢う。
 無事に故郷に帰れたことを告げ、そして今年もやって来たと。
 軽く酒を交わし、話が弾んだ。

 ほぉほぉ、今年の商売は西方からの品物が高騰しそうか・・・

 さぁさぁ、オランはあともう少しさね。