逃亡記 |
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アルファーンズ [ 2004/08/19 0:58:43 ] |
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| 初めて逃げる側に回った一夏。
きっと忘れることは出来ない、激闘の数日間。
・・・・・・いや、やっぱできることなら忘れたい。 |
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プロロゴス |
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アルファーンズ [ 2004/08/19 1:00:29 ] |
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| とんでもない誤解だ。なぜそんな誤解のために、俺は殺されかけにゃならん? 事の発端は、レズ娘に追われているアイシャに頼まれて行った説得の失敗。レズ娘ことフィミーは、ああいえばこういう状態で決して説得に応じなかった。 そこでアイシャがついた嘘が、俺と交際しててさらにガキまで作ってるというもの。 まぁその場しのぎの嘘だからそれはいいだろう。しかしそこにいた人物が激しくよくなかった。
暴走勘違い娘ディーナ&ユーニス。 暴力聞く耳もたん娘ミトゥ。 その取り巻きセシルちゃん。 ついでに、噂大好き草原妖精×2。
今まで怪談で盛り上がって、こっちの話なんかぜんぜん聞いてなかったのに、この話だけはしっかり耳にしてやがる。 ひそひそ話を繰り広げるディーナとユーニスとセシルちゃん。目が白い。 姿が見えなかったが、いつのまにかフライパンを両手に持って仁王立ちしていたミトゥ。厨房にいっていたらしい。 にやにや笑いが抑えきれない様子のグララン共。
そして。まずは容赦ない鉄拳制裁。 俺の弁明すら聞き入れず、個室へ拉致。 あれは嘘だと言っても、言い訳は見苦しいと切り捨てられ、ミトゥとユーニスによる拳とフライパンでの暴行。ディーナとセシルちゃんによる言葉の暴力。 一夜で地獄を経験した。それが始まりの日だった。 |
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脱出〜裏切り |
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アルファーンズ [ 2004/08/19 1:02:49 ] |
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| ●逃亡生活 1日目 ボコボコにされて痛む顔を抑えて、部屋に引き下がる。腕やら足に異常はない。これが奴らのいう手加減という奴なのだろうか? 確かに身体中痛むが、歩けないことはない。しかしこんなとこにいたら命がいくつあってもたりない。 部屋に戻り、ロマールからここまで旅する間につかっていたでかい背負い袋を取り出す。まさか帰ってきてすぐにこれの世話になるとは思わなかった。 袋に仕事で使う本と羊皮紙と筆記用具、着替え用のローブ一着、残りわずかな小銭の詰まった財布を叩き込み、背負い上げる。 使い慣れた槍をつかみ、腰に小剣とダガーを差し、楯とお守りだって貰ったマン=ゴーシュに手を伸ばしたところで――
ゴトン。がらんがらーん。
落とした。隣の部屋がバタバタと音がする。ヤバイ、気付かれた。 瞬間、脱兎の勢いで部屋を飛び出す。 「あ、こら! アルファ! 逃げる気か! 話はまだ全部聞いてないぞ!」 「うるせーっ! 全部嘘だっつってんだろ! それ以上言うことはねーっ!」
そのまま階段を駆け下り、扉を体当たりするような勢いで押し開けて電撃的な逃走に成功。 行く先を求めてオランの街を疾走する。とりあえず真っ先に思い立ったのは、学院に所属する友人。 三角塔に駆け込み、見知った門番の爺さんに適当に話をして通過、学生の宿舎のほうへダッシュ。そのまま迷惑がる友人を丸め込んで部屋に押し入ることに成功した。 が、そう思ったのも束の間だった。 翌朝。最悪の気分での目覚め。顔がまだ痛い。とりあえず飯をと思って友人の部屋を出て図書館の前を通り過ぎようとしたところで。 「!?」 ディーナと友人が話していた。どうやら俺のことをチクってるようだ。ヤバイ、逃げなければ。
話が終わらないうちに部屋に引き返し、荷物を回収して反対側の廊下を通って外へ。 あの野郎、もうお前を友人とは思うもんか! それから、これからはこういう事態に備えて、荷物は常に携帯しておくとしよう。 そしてまた、俺は当てもなく安住の地を求めて逃走を再開した。 |
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神はここに |
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アルファーンズ [ 2004/08/19 1:04:30 ] |
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| ●逃亡生活 2日目 マイリー神殿に行ってみた。どうやら、まだここには俺の噂を聞いている奴はいないようだ。だが、流星亭周辺はもう汚染地区だ、理由でもない限り近づくのは厳禁だ。 にしても、思い返してもムカつく。そりゃ、上手く説明できなかった俺も悪い。俺だってイキナリ言われて、パニクってた。本当の嘘を弁明することほど難しいことはないと思ったくらいだ。 だからといってやりすぎだろ。少しは人の言うこと信じやがれっつーの!
ドゴドゴドゴドゴ。ガスガスガスガス。ゲシゲシゲシゲシ。
とりあえず怒りの捌け口として、巻き藁を殴っていると。そこに神が現れた。 まに亭の店員、ハリートだ。こいつは俺の話を信用してくれたうえ、匿ってくれるとか言ってくれた。 まさに神! ユーアーゴッド! ここはマイリー神殿だけど、あえてこう祈ってやろう。チャ・ザよ、この導きに感謝しますっ! ということで、俺は今のところ安全に過ごせるところを見つけることが出来たのだ。 |
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強襲〜和解 |
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アルファーンズ [ 2004/08/19 1:05:41 ] |
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| ●逃亡生活 3日目 今日は逃亡資金の調達に踏み切らなくてはならなくなった。ぶっちゃけ、手持ちでは心許なすぎる。 ということで、完成した一冊分の写本。これを手にクレフェの元へと行くことにした。事前にハリートに頼んで、正午に西の高台に来てもらうように伝言を頼んでおいた。 朝、ハリートに起こしてもらい家を出る。この時間帯なら、見知った顔が歩いている可能性はぐんと低い。こそこそと道の端っこを通って高台へ向かう。 ただ、高台へ行くにはどうしても宿の近くを通る。幸い、ミトゥは起きてなかったが、ご近所の主婦とかガキんちょに出会ってしまった。こそこそ隠れながら通り過ぎたが無駄だったようで、ひそひそ話されるわガキに石ぶつけられるわで酷いもんだ。 一体俺が何をした!
「聞いたわよ、アル。大変みたいね」 「・・・・・・まさか信じてるってこたぁないよな?(じりじり)」 「さぁ、どうかしら?」 「笑うなっ! だいたい俺にそんな度胸あると思ってんのか!?」 「・・・・・・あら。ご馳走様(くす)」 「・・・・・・・・・・あー、もう! そういう意味じゃねー! 大体まだ何にもないし・・・・・ってそうじゃない!」 こいつ、人が困ってんのに楽しみやがって。 とりあえず報酬はちゃんともらえたから、それ以上何もいえないんだけど。 「あ。そうだ、友人としてこの顔、《癒し》てくれない?」 「うふふ。それも男の勲章よ」
そのまま普段は行かないようなスラム近くのボロい雑貨屋で、いかにも怪しげなフードつきマントを二束三文で購入。顔を隠して河原をひた走り、結構下流のほうまで逃げてきた。 ここまでくれば、そうそう人はこないだろう。釣りにくる奴か、ランニングでもしてない限り・・・・・・。
どどどどどどどどどどどどどっ!
「みーつーけーたーぞー!」 いやがった。猛牛みたいに突進してくるコアン。またここに一人、暴走娘が増えた。しかも殺気だってる。話聞かないし、人誅とかいって薙刀突きつけてくる始末だ。 こっちも黙って殺されるのはイヤだから抗戦してやったが・・・・・・助かった。怒りのあまり、太刀筋が踊ってる。仕舞いにはコケて川に突っ込んで、しかも泣き出す始末だ。 マズイ。人はいないけど、誰かきたらこれじゃ完全に俺が悪人じゃねーか。 しかもバッドタイミングでハリートくるし。まぁ、誤解はされなかったようでよかったけど。ここで唯一の味方を失うのは痛すぎるからな。 それどころか、ハリートの登場で若干落ち着いたコアン。おお、なんかマジでハリートは神か!? 説明しながらびしょ濡れになったコアンにローブを貸して、コアンの着替えが終わったそのとき。元凶が現れた。 「うわっ!?」 「頼りにならない人っ!」 フィミー襲来っ!? あのアマが無駄に噂ばらまいてる原因かっ! くそ、逃がすかっ! 「爺っ、爺っ!」 「はは、お嬢様」
どどどどどどどどどどどどどどどどっ!
「・・・・・・・・・・・・・・・」 馬車ずるっ! 足で歩けよ、ここから街ん中くらい! さすがは下流ながら貴族だとか言ってただけあるな。 とりあえず、元凶を捕まえることは出来なかったが、暴走娘一人の誤解を解くことはできたようでまぁよかったんだろー。
しっかし・・・・・・人に信用されないってのがこれほどむなしいものなのか・・・・・・。いろんな意味で犯罪者の気持ちがよくわかったかもしれない。 |
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安寧 |
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アルファーンズ [ 2004/08/21 0:37:16 ] |
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| ●逃亡生活 4日目 ハリートの家に引きこもる。 来訪者も追跡者の気配もまったくなく実に平和である。 数日ぶりの平安を堪能する。写本を書くペースも上がって万々歳だ。 俺様調子に乗って、ハリートにロマール料理のフルコース(安物ばっか)を振舞っちゃったぞ。 |
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脱出、再び |
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アルファーンズ [ 2004/08/21 2:32:44 ] |
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| ●逃亡生活 5日目 ハリートの家に引きこもる。この調子でいけば案外早く写本も完成するかもな。だが、平和な日々ってのはそうそう長続きしないものだったんだ。
ドンドンドンドン!
激しく戸口がノックされる。しまった、もう気付かれたのか!? 手早く荷物をまとめる。その間もノックはやまない。そして、 「ちょっとハリートさん!? いるのはわかってんのよ!」 女の怒鳴り声だった。・・・・・・なんだ、ハリートの女か? それにしては声が年食ってるよな。 聞き覚えのある声でもないし、とりあえず追っ手じゃないな。 「早く出てきなさい! ハリートさん!? 居留守しても無駄よ、ちゃんとカーテン開けたの見てたんですからね!?」 ・・・・・・・・・無駄な観察力だな、おい。一体誰だ。このまま無視してもウザいだけだ、ハリートは仕事だっていって追っ払おう。 「あのー、ハリートは・・・・・・」 「あらっ!? あんた誰?」 そこにいたのはおばちゃんだった。 「・・・・・・・・・それはこっちのセリフだけど。俺はハリートんとこに居候させてもらってるもんだ。で、ハリートは留守だ」 「ああ、そう。それならあんたでもいいわ。これ!」 どん、と押し付けてきたのは、ゴミの詰まった袋。確かさっき、部屋にたまりにたまった羊皮紙の屑やインクの空瓶を詰め込んでゴミ置き場に捨ててきた奴だ。 「あのね、ゴミの日は明後日なの! 二日も前から出されたら困るのよ! だいたいねぇ・・・・・・・・・くどくどくどくどくど」
・・・・・・・・・おばちゃんの話は小一時間続いた。やれ燃えるものと燃えないのを分けろだとか、最近の若者はルールを守らないやら、書き違えたからって紙がもったいないだとか云々と。 だいたい、何で俺が出したって知ってて、しかも中身まで知ってるんだよ。もしかして捨てる瞬間からゴミ袋の中身までチェックしてやがったのか? 趣味悪ぃ・・・・・・。
「いい!? わかった!?」 「・・・・・・へいへい」 「じゃっ、ちゃんとなさいよっ!」 ゴミ袋を俺に押し付け、さっさと家に帰っていくおばちゃん。 はー、疲れた・・・・・・。ずるずるとゴミ袋を引きずり、家の中に戻ろうとしたとき。誰かがこっちを見ていた。 「・・・・・・あ?」 「み・・・・・・見つけたわよっ、アルファーンズさんっ!」 いつぞや会った女神官。キャナルだ。怒りに燃える目。見つけたわよ、というセリフ。 「ヤバイ! 追っ手かっ!」 すぐさま部屋に引っ込み、がちゃりと鍵をかける。 「こらっ! 開けなさいっ、逃げても無駄よ!」 ドンドンと扉を叩くが、無視して荷物と槍を引っつかむ。こういうときのために用意しておいた「追っ手が来たので逃げます」という書置きを机の上において、裏口へ走る。裏口から飛び出て、鍵をかけて、その鍵はハリートが隠し場所にしているという植木鉢の下に突っ込む。 そのまま何日かぶりに電撃的な逃走。しかしキャナルもいつまでも表玄関で足止めできるわけではなかった。 「逃がさないわっ! ミニデーモンにもめげずに探し続けてたのよ!」 すぐさま裏から逃げたことに気付き、意味不明なことをほざきながら追ってくる。 「まちなさぁぁい! 待たないとファリス様の天誅が下るわよっ!」 いや、待ったところで一緒だろ?
それからしばらく街の中を突っ切って逃げるが、まぁしつこいのなんの。どこまで追っかけてくるつもりだ。 「だーっ! ラーダでもチャ・ザでもマイリーでもファラリスでも母さんでも親父でも兄貴でも師匠でもマリィでも、犬でも猫でも猿でもランタンでもダガーでもナメクジでも、いっそ大っキライなアスパラでも、俺を助けてくれるんなら何でもいい! へるぷみーっ!!」
わん! 「・・・・・・ヒィィィィ!? 犬ぅ!?」
ずさーっと立ち止まり恐怖に慄くキャナル。 ・・・・・・しめた! 何か知らんが敵は犬が苦手のようだ。助かった、近所のノラ犬! いや、ワイルドドッグ様! 犬の神様、いるんならご加護を感謝しますっ!
「ああっ、やっぱりアレはアルファーンズさんの仕掛けた罠だったのねぇぇぇ!
謎の悲鳴も無視して逃げる。 ということで、キャナルからは逃げることはできたのだが、俺の安住の地は消え去ってしまった。 |
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廃屋での出会い |
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アルファーンズ [ 2004/08/22 21:03:26 ] |
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| キャナルから逃げられたものの、さてどこへ行くか。宿に泊まる金もないし、いよいよ野宿か。衛視の取り締まり強化月間だとかいうし、最悪街の外へ出るしか・・・・・・。 とか思って街の外へ向かっていく。が、それを迎えたのは突然の雨。最悪だ。これじゃあまるで捨て犬じゃねーか。 建物がまばらになってきている。雨宿りする場所もない・・・・・・と、思って走っていたらそれは現れた。 「・・・・・・廃屋か」 人の気配はまったくない、荒れ果てた家屋。これ幸いと中に飛び込む。 「あー・・・・・・ひでー目にあった」 マントで荷物を死守したせいで、全身ずぶ濡れだ。水気を払って、屋根に穴の空いていないところに逃げ込む。 「ふむ、まぁ野宿より悪くない。住めば都ってゆーしな」 そういうことで、そこにしばらく潜伏することにした。何か犯罪者の軌跡をたどってるよーだな、おい。
●逃亡生活 6日目
朝起きると、子供に囲まれていた。男女のがきんちょが、総勢5人。 「な、なんだお前ら!」 「ここを住処にしてるもんさ。あんたこそ誰だよ、俺たちが帰ってきたらここで寝てたし」 「ストリートキッズか・・・・・・スラムじゃねーとこにもいるんだな・・・・・・」 「んなことどーでもいいだろ。で、あんた誰」 適当に自己紹介して、逃げているとだけ教えてやった。 「ふーん。まぁそっちの都合なんてどーでもいいんだ。はい」 手を突き出してくる。 「なんだ?」 「宿泊料払え」 「何でこんなボロ屋で寝ただけでお前らに金はらわないかんねん!」 「俺たちの住処だからに決まってんだろ。感謝しろよ、にーちゃんが寝てる間に殺して金品奪うことだって出来たんだぜ?」 ・・・・・・このガキ、言いやがる。まぁ爆睡してて気付かなかったのは事実だからなんともいえんが。 「チッ・・・・・・今回だけだぞ!」 銀貨を数枚渡してやる。 「それはこっちのセリフだ・・・・・・って、おおっ、こんなにあるぜ」 「わっ、ほんとだ」 銀貨を手にしてぱっと表情を明るくするガキんちょども。場末の宿でも一泊すら出来ない金額でも、ストリートのガキどもにすれば大金か。ちょっといろいろ考えちまうぞ。 「一宿の恩だからな。いつでも施してやれると思うなよ」 「それくらいわかってらぁ。第一、こっちから施しをくれなんてゆーほど俺たちゃ弱くない! 今まで自分たちの力で生きてきてんだぞ!」 その生きる手段はたぶん褒められた手段じゃねーんだろーけど、こういうガキどもには自分らなりのプライドがあるってか。
「ほれ。これもやる」 荷物の中の干し肉と堅パンとリンゴ1つをボロいテーブルの上においてやる。 「施しはうけねーって言ったはずだぞ」 今にも飛びつきそうな女の子を抑えて、リーダーのガキが言う。 「アホ。俺も施さんって言っただろ。これをやるから、もうしばらく匿えってんだよ。ショバ代取るんだろ」 「・・・・・・・・・」
ということで、手持ちの食料の大半を失うことと引き換えに、しばらく雨風をなんとかしのげそうな場所を見つけたのであった。 ・・・・・・ここまでして逃げるくらいなら、甘んじて地獄に落ちたほうがいいんじゃないかと一瞬思ったのはきっと気のせいだろう。うん。 |
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親交 |
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アルファーンズ [ 2004/08/23 23:00:38 ] |
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| ●逃亡生活 7日目
ついに一週間目。その朝を廃屋で迎える。 たった一日しか経っていないが、最年少のがきんちょリリベルに懐かれた。いきなり飛びついてきたり、写本作業の邪魔をしたり。字を書かせてみたら一生懸命取り組んでた。一番勉強熱心な子なのかもしれない。 リーダーのイルダーナは相変わらず態度悪いし手癖も悪いが、冒険者にでもなって真っ当に生きてみろって吹き込んでみたら、たまにマジに考えるし。小剣を渡したら、さっそく素振りも始めている。ひょっとして更正させれるかもしれない。 半妖のステイシアはステイシアで、世間からの風当たりが原因なのか、俺と距離取り捲ってるし。別に差別しねーのに。ただ、まれに虚空を見つめたり川を見つめて動かなくなったりするあたり、もしかしたら精霊が見えてるのかも。鍛えればこいつも冒険者でやっていけると思うのに。 双子だというジーニーとガロードの兄弟は若干だが、この生活に罪悪感というかを持ってるのかも。出かけるときもあまり積極的じゃないし、逆に俺が手間賃をやるから使いに行ってきてくれと頼んだら、元気良く行ってきてくれた。そういう意味で一番期待が持てるのはこの強大かも。
とまぁたった一日だが、いろいろとがきんちょ共について分かってきた気がする。ま、当分は厄介になるつもりだし、ストリートのガキと親交を深めるってのもいい機会かもしれない。 とりあえず今日はさっさと寝よう。兄弟の使いのおかげで、明日はクレフェに写本を渡しにいって報酬もらえるようになったことだしな。場所はいつもの高台、時刻は早朝。寝坊しないようにしよう。 |
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和解〜新誤解発生警報発令 |
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アルファーンズ [ 2004/08/24 0:35:16 ] |
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| ●逃亡生活 8日目
トラブルなくクレフェから報酬をゲット。もとい、ゲットしたあとにトラブル発生。 誰かが俺のあとをつけて来る。最初は気付かなかった。ズブの素人ではないようだが、それでも街を離れてきたらいい加減気付く。 捕まえるつもりならすぐにそうしているだろう。目的は何だ? もう少し街から離れたら捕まえて締め上げてみるか。幸い、こっちには武器がある。とか思ってたら・・・・・・。 「アルさーーーん!」 ディーナ襲来! 思わずつんのめって、しかも男の踵を返して早足に去っていってしまった。あー、このクソアマが! 「ちびっこいあるさーーーーん!」 しまいにはそんなことを叫びだす始末。 「誰がちびっこいアルやねん!」 かくして、逃げるチャンスを失ってしまった俺だった。
だが、どうやらディーナは俺を捕まえに来たわけではないようだ。話がしたいと。 しかしまぁ、こいつの話のワケワカランことこの上なし。 「フィミーさんが女装したアルさんを好きになって」 初っ端からもう違うし。 「男性だとわかっても愛があれば性別なんてって言って」 いや、女同士だから愛があれば性別なんてって、さっき言っただろ。 「でもアルさんにはもうアイシャさんとの子供がいるからフィミーさんが泣いて」 だからそれが嘘なんだって、今、さっき、説明しただろーが!? 懇切丁寧な説明をしてやる(二度目) それでようやく理解してくれたようだ。ついでにより状況を理解しやすくと、親切心でレズとホモと両刀のなんたるかを説明してやったのに・・・・・・そこ、いらん知識を埋め込んだとかいうな。
「じゃ、じゅあアルさんって、りょ、両刀なんですか?」 「なんでやねん!」 ・・・・・・こいつは馬鹿か? いや、女同士で愛し合ったら、子供はどっちをお父さんと呼べばいいんですか!?とかゆー疑問を抱いた辺り、やっぱり天才なのかもしれない。常人には遠く及ばない発想を持ってる奴が天才とかゆーしな。まぁどーやったら、俺を両刀だと思うような天才的な発想を抱くのかは子一時間ほど問い詰めてやりたいが。
とにもかくに、ディーナの誤解を解くことに成功したようだ。 「あの・・・・・・アルさん、わたしのこと嫌いになりましたか?」 それくらいでキライになるよーじゃ、三人娘とは付き合っていけない。だけど、ここはひとつ突き落としてみたくなるのがお茶目心って奴だ。 「ああ。なった」 「・・・・・・・・・・・・そうですよね」 あ。信じちゃった。ディーナだからな、あんまりいぢめるのも可哀想だ。 「じょーだんだって。本気にするなよ」 「いいんですっ、そんな気を使っていただかなくても、わたしは対上部ですからっ(ダッシュ)」
・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・。 ・・・・・・。 「まてこら!? じょーだんってもんを理解しろよ!?」 なんか、二股妊娠疑惑は解けても、話にきた仲間を捨てた疑惑が新たに持ち上がらないか、激しく不安になった。 |
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昼下がりの来訪者 |
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アルファーンズ [ 2004/08/25 3:22:02 ] |
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| ●逃亡生活 9日目
短いがやたらと濃い時間をすごしている気がする。まぁこんなところだからそう感じるのかもしれない。 すでにガキンチョたちともかなーり打ち解けてきた。このままショバ代もいらないって言ってくれればいいんだけど、さすがにそこまで都合よくは行かないようだ。とりあえず仕事ばっかだと身体がなまるので、筋トレをしていたイルダーナに混じって俺も身体を動かすことに。 リリベルを上に乗っけて腕立てしていると、かすかな物音。誰か襲撃してきたか? 武器と荷物を取り寄せ、石を握る。
ギィ。 しゅばっ!
「・・・・・・あら!?」 扉が開いた瞬間に投げた石は・・・・・・見事に虚空を切り裂いた。見事に引っ掛けられた。襲撃者に備えて、逃げるか迎え撃つかを悩んでいると、 「アル? 話があるんだけど、素直に出てきてくれる? もし逃げずにきちんと話してくれるなら一切攻撃しないから」 ユーニスの声だけがした。《風の声》か? とりあえず隠れたままで出て来いなんていう要求を飲むわけにはいかない。そっちから顔を出せというと、意外とあっさり顔を出すユーニス。 「ってなんだそれは! 捕まえる来バリバリだろ!?」 ごっついロープを肩にかけたユーニス。 だが、事件初日に俺を羽交い絞めにしたり二、三発ボコったときの態度とは随分違っておとなしい。ロープも、もし俺が逃げたとき用だそうだ。 話を聞く態度なら、それ相応に応じてやろうじゃないか。ということで、俺は彼女に椅子を勧めたのだった。
ディーナから話を聞いているらしく、昨日みたいなトンチンカンな問答にはならなかった。ついでにレズのことも理解してるらしく、余計な脱線もない。 と思っていたのだが、やっぱこいつも勘違い暴走娘であることには変わらなかった。 「アルはミトゥの事、ご両親に紹介してきたんでしょうっ!?」 んなわけあるか、アホッ! 「そっか! お母さんとはもう旧知の仲だもんね、今更だよね」 なんでそーなる、この大歩危娘どもがっ! 二日続きで同じタワゴトほざいてんじゃねーぞ! それはともかく、話の流れを理解しているだけあって、無駄な説明なしに理解を求めることができた。 そして、最後にしっかりと確認をとるようにじっと見据えて一言。
「じゃあ、一度しか聞かないよ信じていいんだね?」 「仲間として、なにより親友として。俺を信じろ」
・・・・・・くっはー! 俺、今ちょっとカッコいいこと言った!? 言った!?
「……うん、信じる」 かくしてユーニスの誤解は完全に解けた・・・・・・はず。
「とにかく、この生活で冤罪で逃げ回ってる犯罪者の気持ちがわかった気がするぜ」 「そ、それは・・・・・・冤罪で逃げ回ってるってことは、余罪があるってこと!?」 「違うわボケ!」 やっぱりこいつらは救いようがない勘違いドモだ! |
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解決・・・・・・したかもしれない |
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アルファーンズ [ 2004/08/26 1:53:19 ] |
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| ●逃亡生活 10日目
ついに10日目を迎えたこの生活。安眠を貪っている最中に奴は襲来した。恐るべき暴力娘、ミトゥだ。 俺が隠れていると察するや否や、脅迫してきやがった。 「ユーニスとディーナには、もう逃げたあとだってっていおう」 俺を殺す気かよ!
俺を燻し出したあくどい方法はさておき、意外なことに一番スムーズに謝ってくれたのがこいつだった。そりゃあおととい、昨日と連続して二人の誤解を解いて、連続して二人から事情を聞かされたとなればそれも頷ける。 むしろ二人から話を聞かされてなお、誤解したまんまだったほうが異常といえば異常か。
「せめて恋人ができた時には話してよね 」 ミトゥはミトゥで言い分があるらしく、何でもそういう話があったときに、真剣に話してくれなかったことに今回は特に腹を立てたそうな。 「・・・・・・・・・・・あー、はいはい。たぶん話してやるよ。万が一にでも心変わりしたときにはな」 「・・・・・・心変わりって、あんたもしかして」 やべ。思わず口を滑らせた一言。だが、 「恋人が出来たらこっそり愛を深めてさ、結婚する事になったらボクに教えて驚かそうとかおもってんだね!」 なんでそうなる!? やっぱりこいつもバカだ、勘違いの仕方までバカだ! 「命名トンチキーズ! もしくは、バカバカバッカーズ!」 「そっちのがバカだろ。やーい、ばーか」 「上等! 表へ出やがれ!」
ということではじまった久々の手合わせ。 ミトゥのブロソ相手に、俺は小剣。ついでにイルに実際に見せてやれるいい機会だ。他の4人も応援してくれるみたいだ。フッ、ここは間借り人としてなんとしてでも勝ってカッコつけなければ。
斬撃を小剣で受け止め、受け流し、時に半歩横にずれていなし、隙を狙う。さすがにミトゥもサボっているわけじゃないし、なかなかにチャンスがない。 そうして切り結び、巡ってきたチャンス。足場の悪さを忘れてか思いいきり地面を蹴ったとき、ミトゥの足が石に取られた。 「ほい、もらいっと!」 足払い。 「うきゃ!?」 勢いよく振り下ろした握り拳を心臓にあたる左胸の直前で寸止め。 ドスッ! 「ぴぎゃ!」
「お、悪ぃ、勢いつきすぎた! わははははは!」 無論わざと。よっしゃ、リベンジ完了!(セコい) 「乙女の胸になにをするーっ!!」 「ぐはああああ!」
勝ち誇った横顔を思い切り蹴り飛ばされた。 超痛かったけど、久々に爽快だった。嫌な感じはしない。 喧嘩してもいざこざが起きても、やっぱり俺はこいつらと一緒にいることが一番楽しい。ディーナも、ユーニスも、ミトゥも。俺の冒険者生活、むしろ日常になくてはならない存在だ。 そんなことを改めて思った日だった。 |
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余談 |
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アルファーンズ [ 2004/08/26 2:15:15 ] |
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| ●逃亡生活 ロスタイム
「アルファーンズさんっ、やっとみつけたわよっ!」 リリベルとジーニー&がロード兄弟を連れてハザードに行ったとき。性懲りも無くキャナルが現れた。まだ誤解してるらしい。 しかも、何かプレートメイル着こんで、弓を持っている。 「これさえあれば、機動力が落ちたって!」 ・・・・・・ああ。重たい鎧をカバーするための遠距離攻撃武器ってことか。じゃあ鎧は? 「この鎧があれば・・・・・・犬なんて!」 ああ、犬対策。どうでもいいけど、ラスボスを説得しおわったあとにっていうのも・・・・・・めんどくせーなー。 そう思いながら、ずんずん進んでいく。ちなみに、リリベルを肩車したまま。 「ちょ、ちょっとズルいわよ! 子供を盾にするなんてそれでも貴方人間なの!?」 「わりーなー。ぶっちゃけ説明するのめんどいんだわ。ミトゥたちから聞いてくれ」 そういって、キャナルに近づき―― 「ほりゃ!」 グリーヴに強烈な足払い。てゆーか容赦なしのキック。 「っきゃああ!」 「じゃ、ご達者で〜。そのうち誰か通るから心配するなって。今度奢ってやるからうらむなよ〜」 手を振って向こうへ行く。 「ちょっとぉぉぉ! おこしなさぁぁぁぁぁい!」 「・・・・・・大丈夫ですか?」 「あ、たすけてくだ・・・・・・」 「わん!」 「犬ぅぅぅぅ!?」 主婦が気付いてくれたものの、その主婦が散歩させていた犬に顔を舐められたキャナルを背中に、俺たちはその場を後にした。
他にも―― 「おまえがアルファーンズだな?」 「・・・・・・・・・・・・そーだけど」 同じ河原で、なんかやたらとでかい人に声をかけられた。 「そうか。お前を探している奴がいるんだ。お前を捕まえてでもつれて来いってな」 笑顔で、いきなり拳を叩き付けて来る。 「うおおおお!?」 間一髪で避ける。 「そのちびっこい成りで、どうやって槍を振り回すのか楽しみだったんだ。その槍を使ってもいいぞ!」 「って、誰がちびっこいねん!!」 もちろん俺はキレて、槍を使っていいって言われたから容赦なく突っ込んでやった。 しかし巨体のわりにいいフットワークで俺の突きを全て交わしてみせる大男。身体全体を使って勢いを付けて槍を横薙ぎにたたきつけてやる。それすらも見切り、神業的なスゥエーバックで避けてみせる。 くっはー・・・・・・超つえーっ! 誰だ、こんな偉丈夫けしかけてきやがったのは!? 元凶娘か!? 「話どおり、スタミナに難アリのようだなぁ、ちっさいの」 「んがー! 誰がちっさいのだ!」 がっし! 「うお!?」 「それに、冷静を失うのもよくないな」
ぺいっ! 「だっしゃあああ!!??」 思い切り放り投げられた。河原をすべる。 「よーし、あとは連行するだけだ」 「あ。アハトさーん」 ユーニスの声。 「ユーニス君か。捕まえたぞ、なかなかに面白い戦法を取る少年だ。あとは仲間同士の話だからな、君たちに任せる」 「あ、ごめんなさい。アルを捕まえる話はもうよかったんですよ」 けしかけたのお前らかよ!
とまぁ、三人娘の誤解を解いても世に蔓延する噂はまだ残ったまま。 まぁそれでもだいぶ収まってきたらしいし、もうしばらくすれば完全に忘れられるだろう。人の噂もなんとやら、ってゆーしな。
それまでは、がきんちょドモの城に厄介になるのも悪くない。せっかく仲良くなったんだしな。 |
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恥 |
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アルファーンズ [ 2004/08/31 23:42:30 ] |
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| ● 逃亡生活 ロスタイム2
「ディーナ! だからせめて話を聞け!」 「いいです、私はちゃんとわかってますからっ」 とまぁ、ディーナは未だにあのお茶目を信じている。 ミトゥとユーニスからのダブルアタック土下座してきなさい宣言を受けて、こうしてディーナのところに来たわけだが。 いかん、意固地になってやがる。 「わかってねー! いいから、待てってば!」 最初は酒場だったのに、大通り、広場、公園。延々逃げ続けて、ようやく河原でディーナの捕縛に成功。 「離して下さいよー」 じたばた暴れるディーナをとりあえずそこに立ってるように言い聞かせる。 で、覚悟を決めて・・・・・・。
「あー、ごほん。正直・・・・・・」 「あら。アルはんやないの」 ・・・・・・・・・。 「だーっ、ラクティエ!? お前、ちょっと先の宿場町で働いてるんじゃねーのかよ!?」 膝を突いたところに、ラクティエが襲来してきやがった。 「ええ、今日はちょっとオランに用事で。あー、うちのことは気にせんといておくれやすー」 俺とディーナを交互に見て、そう言う。 気にするっちゅーねん! 「大丈夫やて、誰にも言いませんさかいに」(にんまり) すすすっと木の陰に移動する。笑いながら見てるんじゃねー! だがこれ以上渋っていたら、ディーナも帰ってしまいそうだ。 人生最大クラスの覚悟を決めなおす。
で、結局。 「わたくしがわるーございました。謝りますから、どーか機嫌を直してくださいませ、ディーナ様」 「あははははは」 けらけら笑うラクティエを背中に、ディーナに土下座した俺だった。 |
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