| 全ては愛のために! |
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| フィミー [ 2004/08/23 23:15:58 ] |
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| | ここ数日、あのアルファーンズという小さい男の所業がいかに非道であるか、その話を広めるため、頑張ってまいりました。 すると、あの男の非道を見過ごせぬ勇敢なお方(コアン)がおられましたが…結局天誅を下すには至らず、そればかりか懐柔されてしまう始末。 思わず私が一言言ってしまいたくなったのに何の罪がありましょうか? そして数日たった今、非道を責めておられた方々も何時の間にやらあの男のたわごとを信じようとする始末!世の方々の神経というものが理解できませんわ!!どうすればあの男を放逐することができるのかしら……… いいわ、そろそろアイシャ様の下へ駆けつけねばいけないもの。下町の男に見張らせておりましたが、アイシャ様との接触はない様でそれだけが救いですわ。
ああ、愛しのアイシャ様。私は明日にも貴方の下へと参りますわ。場所はオラン北西部の酒場町。 待っていて下さいませ。今、フィミーが参ります!あの男のせいで傷付いた御心は必ずやお慰めいたします!! |
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| (無題) |
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| フィミー [ 2004/08/27 23:26:35 ] |
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| | アイシャ様がいらっしゃるという宿場町には着きましたが…何たること、アイシャ様はもうこの町を発ったとのこと。
「ああ、神よ。これは私の愛を確かめる試練なのですね。私、負けませんわ………」
ただ、ここまで来るのに雇った護衛は帰してしまったのが、少々問題ですわね。けれど、今の私はその護衛と同じ冒険者(自称)となったのですもの。アイシャ様と共に暮らすために!!この程度を問題としていては笑われてしまいますわね。村の者によればここから北へ向かったとの話。とりあえず使いの者を先行はさせましたが……… ああ、待っていて下さいアイシャ様。フィミーは貴女様にふさわしい者として今、参りますわ!! |
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| 聖戦 |
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| マドゥア [ 2004/08/28 4:26:40 ] |
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| | 我輩は下戸である。 名前はマドゥア・ナイン。
戦神マイリーに仕える戦士であり、此度の使命をアイシャ殿とともに受けた男である。といっても我輩には神の御声は聞こえないのだからして、神官戦士とは言えぬ半端者なのだ。だが、それでも戦神の掲げる気高き戦いを旨とし、日々の生活の絶え間ない闘争に身を置く以上、アイシャ殿同様、戦神の使徒を名乗る資格は十分にあるだろう。 少なくともポッと出の世間知らずな小娘なんかよりは、ずっと。
「それは、災難で御座るなぁ」
使命を果たし終え、逗留している宿の酒場での話題である。 自身の苦悩を明け透けに他人に漏らす事に抵抗を感じているのか、アイシャ殿の顔色は優れない。一緒に酒が飲めるのならば、その心の鬱屈を晴らす手助けともなるのだが、我輩にはその甲斐性がないのだ。我ながら情けないことである。
「つまり、アイシャ殿を慕うオナゴが問題というわけですな?」
確認の為に口にするが、その厭わしさに我輩の背中は、びっしりと汗をかいてた。オナゴがオナゴを好きになる……そんな事は別段どうだって良い。我輩は別に大地母神の信徒ではないのだからして、不自然だなどと埒もない事を言う気は毛頭ないのだ。それどころか、世間の好奇の目や肉親の反対と「戦い続ける」恋だと言うのならば、むしろ奨励したいほどである。
「人生は不断の闘争であり恋もまた戦いである」
それは我輩が最も共感する教義であり、常に思い抱いている教訓でもあるのだ。問題は「オナゴが“アイシャ殿を”好きになる」事である。我輩が、今回の同行者の座を勝ち取るために何人の人間と戦ってきたか、その敗者たちの顔を思い出せば出すほど、神殿外のポッと出の小娘なんぞにアイシャ殿を取られるわけにはいかんのだ。
一見、堅苦しく無愛想なアイシャ殿。 厳かなその口調と冗談を解さないその人柄は、近寄り難いとの印象を人に抱かせる事も多い。だが、神殿内の幾人かは、生真面目で率直な、熱い想いを内包する方だという事を知っている。そして、普段の表情の奥に優しく温かな微笑みを隠し持っていることも。
なればこそ、我輩と我輩に敗れた同朋は「アイシャ殿を慕う戦友の会」を結成し、抜け駆けなどの卑怯な戦いを厳しく禁じてきたのである。戦神マイリーの指し示す気高き闘争の果てにのみアイシャ殿の隣に立つことが許されるのだと。
それを……それをポッと出の小娘如きが……。
戦神マイリーよ。これが我輩への試練だと言うのならば、甘んじて受けようぞ! 不肖、このマドゥア・ナイン! 我が想いの全てをかけて正々堂々とアイシャ殿を不埒者の手から守るため戦ってみせよう!
アイシャ殿との“喜びの野”を現出させるための、言わば“聖戦”が始まった。
我輩はそう覚悟を決めたのである。 |
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| 雨 |
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| アイシャ [ 2004/08/28 12:28:32 ] |
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| | 神殿の用事でオランを離れて約半月、大祭より先、連日付きまとわれていたフィミーと離れることができたが、私の心はそれでも暗雲立ち込めるものだった。 あれこれ手を尽くして、私のことを諦めさせようとしてきたが、それも万策つき、ついには、初対面だったアルファーンズさえを巻き込んで一芝居打ち、そのときは、それでようやく諦めてくれたかと思ったのに……次の日にはしっかり復活していた。 アレ以上に、フィミーの心に訴えかける説得方法を仕事が終わってオランに帰るまでに考え出さねばならない。それを思うと夜もよく眠れない。……というか、最近、寝ても覚めてもフィミーに監視されているような気がして、自分で言うのもなんだが、少々やつれ気味だ。 道中、いつもこんな様子で、同行のマドゥア殿には、色々、気遣いもされたし、何より仕事の上で迷惑もかけてしまった。改めてどうにかせねばならないと思う。 しかし……あのフィミーを説得する方法がすぐに浮かぶわけもなく、時間だけが過ぎていた。そして、神殿より仰せつかった仕事は、マドゥア殿が私を気遣っていつも以上に気合を入れて頑張ってくれたおかげでつい先日に予定より早く解決した。
さて、後は神殿に帰って報告を……というところで。
「貴方たち、戦神様の神官様でしょうか?」
私たちに声をかけるものがいた。見れば、農村より出てきたばかりと言う感じの青年が一人。 詳しく話を聞いてみれば、彼は、そのとき私たちが滞在していた宿場町よりもさらに北に1日ほど進んだところにある農村の者で、最近、畑がゴブリンに荒らされて困っているので、町のほうまで助けを求めに行こうとしていたところらしいが、たまたまここで神官たる我々を見かけ、町まで向かえば、もっと時間がかかり被害が広がるだろうし、藁にもすがる思いで声をかけてみた、ということだそうだ。 マドゥア殿は、私の顔色を見て、少し答えに躊躇ったようだが、私は迷わず彼の頼みを受けることにした。こうして困っている人が目の前にいるなら、その願いを聞かないわけにはいかないし、また、私自身、まだオランに帰るのは少し先にしたいというのもあったからだ。
早速、我々は朝の日もまだ暗いうちから彼の案内で宿場町を出、北に向かった。これぐらいに出て、村につくのは夕方ごろになるだろう、と彼は言った。 しかし、その道のりは、思うように進まなかった。途中から雨が降り出したのだ。整備されていない道は、すぐにぬかるみができ、慎重に歩かないと足元をすくわれそうになった。
「この先に猟師が使う山小屋があります。今日はそこで泊まりましょう」
青年が言った。そして、部屋は二つあるので着替えなども安心してくださっても大丈夫ですよ、と私に向けて付け加えた。 マドゥア殿と私はその言葉に従い、その山小屋を目指すことにした。
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| 愛のお仕事 |
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| フィミー [ 2004/08/30 0:11:38 ] |
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| | アイシャ様を追い、馬車で半日。何やら町に辿り着いたのですが、少々騒然としておりました。何事かと思い村人の一人に尋ねてみれば、ゴブリンが畑を荒らしているので難儀しているとのこと。そしてその村人は私にそのゴブリンを何とかして欲しいと言ってきたのです。 成る程、冒険者という人種はこの様な仕事をして日々の糧を得ているとのことですし、今や冒険者となった私がこの話を受けない理由は一つもありませんわ。そう思った私は、村人に向かってこのお仕事を受けるよう、答えてあげました。 そして、村の代表者のところに案内された私はゴブリンのいると思われる場所の方角を聞き、そちらの方へと馬車を走らせました。するとにわかに暗雲立ちこめ雨も降って参りましたので、すぐ近くにあった山小屋へと入っていったのです……… |
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| はぐれ者 |
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| ロンボ [ 2004/08/30 4:17:55 ] |
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| | 「ロンボ、主の山小屋に客人・・・妖魔退治に神官戦士様が二人も来ておられる。無粋な真似はせんようにな」
「神官戦士・・・フン」
「こ、これ、頼むから怒らせぬように・・・」
「フン・・・はぐれ者の所にわざわざ泊まらせる癖に」
「いや、それは偶然で・・・」
「客人とは言っても、所詮余所者だと・・・変わらんな」
「い、いや、あれとこれとは・・・」
「フン!まぁ、いいだろう」
妖魔どものせいで畑どころか、山も荒されて気分の悪い俺は、客など迎える気分ではなかった。雨も降り出し、獲物が老いた猪一匹だけでは気分は最悪だ。長がどうこう言おうと、知った事か。そう思っていたが・・・昔から愛用している、無骨な戦斧を片手に、猪を担いで雨の中を小屋に向けて歩く。
「いえ、どの神も力を貸すことはないですわ」
「我輩とアイシャ殿の信ずる戦神の仕事では無いぞ!」
「お前、まさか、彼に何かをしたんではないだろうな?」
煩い。俺一人で狭い小屋が・・・戦士としての程度の風格はあるが、些か何か頼りない思える男、新調したばかりと思える革鎧を着た小娘、そして俺ほどではないが愛想が良いとは言えん女・・・どうも、調子が悪そうだ。あれこれ文句を言うが・・・なんだかんだで、口論が続く。勘弁してくれ・・・
小娘は貴族の令嬢なのか、生意気だ。しかし、そのわりに、俺が狩ってきた猪をさばくこと、その細腕からは想像もつかんほど上手い。
「この猪、年を経ているせいか肉が固くなっておりますので。少しワインに漬ける時間が必要ですわ」
そこまで知っていたのかと思うと、ただ生意気なだけの小娘ではないと言う事か・・・
しかし。
アイシャと言う女は身篭っていると言う話。疲れているのに、二人は言い争いを止めない。全く・・・長も長だ、知らなかったとは言え身篭っている事を咎めもせずに働かせようとは。
だのに・・・二人は二人、一番困っているアイシャと言う女を更に困らせおって・・・。
”きぃ・・・きぃ・・・”
二人の言争いで、確信がもてずにいたが・・・手斧を手に取り、真上、天井、つまりは屋根に向けて、力の限りに放り投げる。
”きがっしゃ!?”
コボルト一匹が屋根から落ちた。
「我輩はマドゥア。マドゥア・ナインと申す」
俺が名乗ったら男はそう言った。其の姿に、昔のある思い出が蘇る。神官戦士の姿の、危なっかしいが騎士道精神溢れるある男に。
『我輩はガルパート・ナインと申す』
聞けばマドゥアは奴の甥。頼りない印象以外は・・・成る程、似ている。
・・・
コボルトが現れたことで俺と二人で交代しながら見張る事にした。
しかし、身篭った女、生意気だがしっかりとした小娘、ガルパードの甥・・・昔、あの頃を思い出した。
『とーちゃん!これ、根っこきれてないー!ぶきよー!』
『こら、お父さんをからかわないのニニィ。貴方、お疲れ様』
『あー、かーちゃん、動いちゃ駄目だー。赤ちゃんいるんだー』
『分かったわ。ちゃんと休むから・・・ガルパードさんは、明日帰られるのでしょう?』
「ん、ああ、オランの神殿に司祭として・・・」
現実に引き戻される。いや、もう昔の事だ。昔の。俺は、今は・・・
はぐれ者だ。 |
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| 失策 |
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| マドゥア [ 2004/08/30 9:33:09 ] |
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| | 我輩とした事が。
日の暮れた山小屋で一人見張りをしながらそう述懐する。 そもそも最初がいかんかった。
上半身に服を纏わない我輩と今まさに着替えを終えられたばかりのアイシャ殿。 そこに見ず知らずの婦人が乱入してきた事で、すっかり我を失っておったので御座ろう。まさか、そのご婦人が、先頃伺った“困った娘”だったとは。我輩は狼狽の極みにあったのだからして、その様な事情を察する事もなく愚にも付かない弁明をグダグダと繰り返しておった。その時点で、あの娘に主導権を握られたも同然で御座る。先手必勝それが、戦神の教えの一つであると言うのに。我輩は、己が疚しさを隠すために娘の語調につられるままに声を大きゅうしておった。
予想外の事態というのは、予想の外にある事態なのだからして、我輩のような愚直者にとっては、なかなかに難しい物で御座る。
一貴族の令嬢と伺っておった娘が冒険者としての技量を備えていたことそれは、まあ良いので御座る。一般人であろうと冒険者であろうと王侯貴族であろうとアイシャ殿を独り占めしようと企てる事が問題なのだからして、その者がどういった出自・職にあろうとも些かも頓着するものでは無いのだ。 なれど、あの娘は予想外に手強かったので御座る。 アイシャ殿に伺ってはおったが、我輩はそれでも何とかなると高を括っておったので御座ろう。高々小娘が一人戦神の使徒たる我輩とアイシャ殿が共に立ち向かったならば、如何様にも対処できようと。何故なら我輩とアイシャ殿は、神殿より賜った使命をたちどころに完遂するが如き名コンビなのだからして、向かうところ敵なしなので御座る。だが、その思いは我輩の慢心であったので御座ろう。あの娘の想いは我輩という壁など意に介することなくアイシャ殿だけを求めておった。
その想いは我輩とて負けるものではない。この使命を賜る為に「アイシャ殿を慕う戦友の会」の同朋を蹴散らし、見事栄誉を勝ち取ったほどなのだからして、我輩こそアイシャ殿を想うNo.1なので御座る。例え、その身に愚にも付かないロクデナシの子を宿していたとしても。
だが、我輩のそんな推察をアイシャ殿はあっさりと否定された。愛しておるのだと。我輩はそこで混乱したので御座る。娘を嗾けてその男を亡き者にしようなどと恥ずべき事を考えてしまったのだ。まあ、これもアイシャ殿を一心に想うが故であるからして、戦神もご容赦下さるであろうが。それに我輩は己が過ちに即座に気が付き、初志貫徹の心を取り戻したのだからして、考え方によっては、心の迷いという試練を見事克服したので御座ろう。ならば、問題はない。
しかし困った。 このまま言い合いをしておったのでは埒があかぬ。埒はあかぬが夜は明けるので御座る。小屋主殿の言い分では御座らんが、身重のアイシャ殿を妖魔退治に同行させるのは、いくらなんでも無茶というもので御座ろう。 いやしかし、この話がもたらされた時に承諾の意を示されたのは、アイシャ殿では無かったであろうか? 真実、身重であるのならば、こんな話をそもそも引き受けるで御座ろうか? アイシャ殿の目配せを思い返す。さらに「先走るな」との小屋主殿のご助言。これは確認をした方が良いのでは無かろうか? その上で、再度、あの娘に対する法を談合仕った方が良いのでは?
我輩は、小屋主殿を起こさぬよう、あの娘に気取られぬよう、アイシャ殿の下がられた隣室へと足を向けたので御座る。すでに寝ておられたのなら是非もないが、あの娘の居ない場所で打ち合わせを行わない事には、明日も今夜の繰り返しで御座ろう。小屋主殿とは、朝までの事で御座ろうからともかく、すっかり存在を忘れておった案内の青年に同じ罵り合いを聞かせるわけにもいかんし。 というわけで、これは必要に迫られてやむなく談合の為に寝室に近寄るのであるからして、断じて夜這いなどという卑怯な行為ではないので御座る。
「アイシャ殿、お休みで御座るか?」
我輩は皆の寝静まった山小屋で微かに呼びかけたので御座る。 |
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| 愛の罠 |
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| フィミー [ 2004/09/04 22:31:59 ] |
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| | ゴブリン退治の依頼を受けて、その住処を探して山の中を歩き回ること数日程経ったころです。 あの山小屋でアイシャ様に出会ってからも幾日かが経ちました。 ゴブリンの移動した痕跡を探す手はそのままに、これまでの事を少々思い出しておりました。
山小屋でアイシャ様と再会したあの日(マドゥア、ロンボなどその他に出会った日でもありましたが、その様な者との出会いは瑣末なことでしたわ)あの日の夜が明けたとき、下賎なるマドゥアの目が更に私を蔑むようなものになっていたのは気のせいでしょうか。 それにしても、あの男はこともあろうに私を侮辱するような言動ばかりとって………なんと許しがたいことでしょう!!
それにしても、あの山小屋の主。ロンボという男は何を考えているのかよくわかりませんわ。夜が明けると突然私たちの仕事を手伝うと言い始めたり。腕は確かなようですからいいのですが………私とアイシャ様の二人の時間を減らした、という意味ではマドゥアと同様に許しがたいですわね。
ああ、またマドゥアめが「呆けるな!」などと何も理解せぬまま、アイシャ様の私の評価を下げるようなことを………まったく、デリカシーのないこの男と、アイシャ様はよく旅が続けられると思いますわ。 そんなことを思っているとロンボがやってきて一言「見つけた」と言い放ったのです……… |
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| 勇者 |
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| マドゥア [ 2004/09/21 22:01:37 ] |
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| | 我輩は誤解していたので御座ろう。 正確に言うのならば理解が不十分だったので御座る。アイシャ殿を想うフィミーの……いや、フィミー殿の気持ちが、ああまで純真で高潔なものだという点に理解が及ばなかったのだからして、まったくもって我が身の不明を恥じ入るばかりで御座る。
「危ないですわ!」 「アイシャ殿!」
我輩とフィミー殿の声が交錯する。 ホブゴブリンと対峙するアイシャ殿の背後から粗末な弓を持ったゴブリンがひっそりと近寄っていたのだ。一騎打ちをする者の背後から奇襲を加えるなど、戦神も忌避する卑劣な蛮行で御座る。
「キャァァァ!」 「ちっ!」
フィミー殿は己が身をもって卑劣な魔弾からアイシャ殿を守ったので御座る。 ロンボ殿が短く舌打ちしながらゴブリンを屠る間も彼女の気高き血潮は見る見る大地を濡らしていく。
「ア…アイシャ様……ご無事ですか?」 「!!!」
荒れる息の合間からもアイシャ殿を気遣う言葉が漏れる。その声は消え入りそうなほど弱弱しく、なれど、だからこそ我輩に真の想いの深さを感じさせたので御座る。アイシャ殿はホブゴブリンと対峙しているのだからして、背後を振り向き治癒の奇跡を願うわけにはいかない。
恋の戦いに真摯に生きる彼女をこのまま死なせて良いもので御座ろうか?
答えは否で御座る。 断じて否で御座る。 彼女ほど純真で高邁なる戦いに赴く女性を見捨てては何が戦神の信徒で御座ろうか。我輩はアイシャ殿への想いも忘れ、フィミー殿を失いたくないと想ったので御座る。彼女の生き様……それこそ我輩の求める戦いの実践なのだからして、彼女は何としても救わねばならぬ。彼女こそ我輩が仕えるべき恋の勇者なので御座る!
「マイリーよ!」
我輩は初めて奇跡を現出させ得たので御座る。 |
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| 愛への疑問 |
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| フィミー [ 2004/09/21 22:38:53 ] |
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| | アイシャ様を襲った不埒なるゴブリンの矢、それを体で受け止めたものの……… 私の体から、真赤な血が流れ出ていく。まるで命そのものが流れていく感触に私はすがる様にアイシャ様のほうを見たのです。 アイシャ様はご無事なようでした。私はそれを見て安堵したのですが、同時にこのような状況になっても私のほうへ一瞥もくれないアイシャ様に………
そして私の傷は癒されたのです。マドゥアの奇跡によって。
私は先程頭をよぎった考えを、戦っていたためであり、決してそのようなことは無いと思い、振り払うように立ち上がろうとしましたが、血を流しすぎたのか四肢にうまく力が入りません。 そして、立ち上がることができなかったように、あのおぞましい考えもまた私の中に消えずに残ったのです……… |
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