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メドルバードの地図
ラミア・リーマス [ 2002/12/08 4:16:34 ]
  マーファの東小神殿に仕える司祭、ラミア・リーマスは信者宅を訪れていた。
 信者の一人が亡くなったからである。齢70を越す老人であった。天寿を全うしたからか、その顔は穏やかであった。
 葬儀を済ませ、遺留品を妻であるサイシャ婦人と片づけていたおり、“それ”は出てきた。

 地図であった。

 それは、大切に保管されていたため、脆くはなっていたが、文字などもはっきり残っており十分理解できる代物であった。
 もちろん古代王国期のものである。

 婦人は地図を司祭に差し出した。熱心な信者である彼女は、「いままでの足りなかった寄進の足しになるかもしれない」と深々と頭を下げた。老夫婦はこの数年、司祭のお陰で随分と助けられていた。

 寄進を前提にという約束事を破っても、司祭は奇跡や手助けを行った。もっとも無料ではなく、労働や後払いで構わないということでである。
 そのため東小神殿の運営は厳しく、他の神殿と比べても見劣りする外観であったり、設備だったりする。しかし、食料は欠くことはなく、炊き出しなどが行えなかったことはなかった。そう、寄進の代わりに野菜や魚が集まるからである。

 夫の葬儀も司祭の気持ちで行ったものであり、それに見合う寄進はできてはいない。婦人はいつもそれが心苦しく、なんとかお礼がしたかったのである。夫がこのような地図を持っていたことは知らなかったが、何か役に立てばと差し出したのだった。


 司祭は婦人の気持ちを汲み取り、地図を受け取った。このまま、冒険者などに売ればそこそこの金にはなる。それでシーツや薬を買い足せば、この冬を乗り越えるのも苦しくはないのではないかと思えた。

 冒険者の店に赴き、その場に居合わせた者と話しても、売ることを薦められた。しかし、司祭はできれば自分の手で地図の価値を調べたかったのである。

 五大神の中でも著しく寄進額が少ない故、神殿の運営は大変なものであった。地方に回れば、マーファ神殿はむしろ余裕のある運営ができるものの、大都市オランでは、その都市人口に見合う寄進額は集まらないのである。
 それを補うため 彼女は、マーファ信者でありながら武器を手に持ち、鎧に身を包め遺跡に乗り出すのであった。今回もそのつもりであった。

 地図を売れば、安全と金銭が得られる。ただその額が未発掘の遺跡を掘り起こすのと比べると旨味があるのか微妙なところであった。

 現段階では、未発掘のものである確証もない。既に荒らされた枯れたものになっているかもしれない。もしくは未発掘だとしても到底手に負えない頑強な守りになっているかもしれない。なにもかもが判らなかった。だから売るという選択肢よりも、調べ見極めるところまではしておきたかったのである。

 こうしてマーファ信者の遺跡に向けての冒険がはじまった。
 
下位古代語を訳して
ラミア・リーマス [ 2002/12/08 23:20:48 ]
  ラミアはまず地図に書かれてあった下位古代語を読み解くことからはじめた。ゲイルノートという地図屋のアドバイスもあり、地図そのものを見せるのではなく、文字部分だけを写し取り、解読してもらおうと試みた。

 三角塔での解読はそれなりの額を提示された。神殿にしろ学院のしろ金がなければ利用できない。もっともそれを糧にして生きている者もいるため非難することなどできない。

 誰か頼りになる者はいないかと、思案した結果、一人の青年を思い出した。

 あちこちと尋ね歩いて、彼のいそうな場所を聞き回る。

 ハザード川の河原で一人、水鳥を眺めていたのを彼女は見つけた。

「こんにちわ〜」

 笑顔とともに声をかける。それに鬱陶しいとまでな態度で振り返る青年。彼女の姿を見て、怪訝そうな表情を僅かに緩めた。

 彼の名はウォレス。右手首を失った元魔術師である。
 彼は、手首を失い魔術が使えない身になったことで精神のバランスを崩し幼児退行に陥っていたことがある。それを見かねた彼女は、少しでも役に立てばと義手を贈ったことがある。しかし、それは姉アンジェラによって送り返されることになった。

 その後、アンジェラはリグニア石を冒険によって入手し、ウォレスの精神状態を元に戻すことができた。その知らせを受け、ラミアは祝いに訪れたことがある。義手のことは記憶になかったが、ウォレスは不思議とこの女性に安らぎを感じていた。

 ラミアは簡単な挨拶を済ませると、本題に入った。地図の入手経路や神殿の困窮の状況。地図を読み解き、財宝が得られるならば取りに行きたいことを。

 ウォレスは眉間にしわが寄ったまま、それを聞いていた。彼女は一切彼のことを疑っていなかったのだ。片腕の元魔術師、ウォレスについてちょっと調べでもすれば、評判がどうであるかは判ることである。その世間の評判を知ってか知らずか彼女は頼り切った話し方で説明し終えた。そして協力してもらえるとばかりに、写し取った下位古代語を見せた。

 そこには地図に書かれてある必要な情報が記されてあった。
 
地図が示したもの
ラミア・リーマス [ 2002/12/17 23:32:30 ]
  ウォレスは手渡された下位古代語の羊皮紙をざっと読みとった。
 眉間に寄ったしわはそのままだ。

「“魔力封じ”・・・魔術は絶対ではなき。己が魔力自信持ちし者こそ挑め。抜けい出し者、我が財宝を分け与えん・・・メドルバード。とあるな。メドルバードといえば確か基本魔術師の名門。選帝会にも選ばれたことのある一族だ。詳しくは調べなければ判らないが、1000ガメルといったところか」

 なんの躊躇いもなく、ウォレスは冷ややかに答えた。
 代金を聞いて、ラミアの表情が曇る。

「そうですよね。やっぱりお仕事ですものね。ちょっとお金がないので、また今度代金が用意できましたら伺いますわ」

 彼女にはそう答えることしかできなかった。足早にその場から去り、来た道を戻る。

 よく判らない単語があったが、どうやら地図は難度の高そうなものだと思えた。もう少し調べてみたいが、魔術師ギルド同様に金がかかりすぎては調べようがない。

 ラミアは地図の示す場所の遺跡が、手着かずかどうかの確認を先にすべきかと考えた。それには現地に赴かなければならない。

 自分で行ければ安上がりだが、一人では危険すぎる。人を雇うほど金があるわけでもない。やはり、損失の可能性を飲み込んでくれる同行者を募るしかないのかと思ってしまう。

「まだ、焦ることはないわよね。遺跡は逃げないのだから」

 ラミアは自分に言い聞かせ、手の空いている時間を見計らっては、メドルバードや現地の情報を集めるように努めた。
 
(無題)
管理代行 [ 2004/11/27 4:25:09 ]
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