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真珠の煌き
あらすじ [ 2003/07/01 18:32:05 ]
  また一組、古代王国の遺産に挑む冒険者がレックスに現れた。
挑む遺跡は、遥か昔の幻覚魔術師が残したと言われる「真珠の塔」。
挑む冒険者たちは、総勢5名。

 この遺跡の情報を買った、カタール使いの草原妖精のルクス。
真っ先に食いついたのは、気のいい戦士のアスリーフ。
古代王国の知識に果て無き興味を抱く、魔術師の少女ディーナ。
野外の知識にも長けた、弓を扱うファリス神官のキャナル。
そして、盗賊でありながら剣の腕も達者なソラリス。

 幻影の塔は彼らにどんな夢を見せるのか。
それはまだ、誰にも分からない。
 
6人目の男
ルクス [ 2003/07/01 18:53:44 ]
 《パダ 冒険者の店“銀の閃き亭”》

「よし、これで準備万端だナ」
「そうですねっ、早く出かけましょう」
「ははは。そんなにあせらなくても、遺跡は逃げないよ」
「最も、耳のいい連中が嗅ぎ付けて、先回りしないともいえないけれどね」
 うきうきとしていたディーナが、ソラリスのその言葉に焦燥感も露わにしだす。せっかくのアスリーのフォローも台無しじゃないか。
 もっとも、ソラリスの言うことも正しい。この店なら、盗み聞きして横取りしようなんて連中は居ないだろうが、遺跡に人を近づけさせなかったミノタウロスが“音無し”たちに葬られたのなら、ぼやぼやしてられない。

「では、ディーナさんも待ち焦がれていることですし、そろそろ出発しましょうか?」
「そうだナ、とっとと行くとするか」

 全員で準備万全かチェックしあい、席を立ち上がったところで。

「・・・・・・すまんが。君たちが、《真珠の塔》に挑むという冒険者たちは?」

 ローブに身をまとった、妙な男が声をかけてきた。杖を持ち、細剣を佩いている――おそらく、というか魔術師だろう。
「そうだけど、あんたは何もんだい? ここで聞き耳立てるとは、いい根性してるナ」
 油断なく観察するが、どーも魔術師って連中は何を考えているかわからん――ここに一人例外もいるけど(←ディーナをちらり)
「ああ、違うんだ。彼は・・・・・・」
 オレの言葉を遮ったのは、店主だった。

 なんでも、彼は幻覚魔術を得意とする穴熊で、過去の因縁だかしがらみだかで、捜し求めるものがその《真珠の塔》にあるのだという。だから、自分も同行を頼みたいと。

「オヤジ、確かかい?」
「ああ。彼はウチの常連でもあるし、間違いはないよ。口数は少ないが、いい人だよ」

「・・・・・・だとさ。みんな、どーする?」
 ひとまず、魔術師の男は置いといて、4人の意見を聞いてみよう。

「あ、その前に。あんた、名前は?」
 アスリーの問い掛けに、男は短く答えた。
「・・・・・・デュオだ。デュオ=フォルティッシモ」
(→冒険ガイド、NPC情報追加。一読ください)
 
まぁ、いいんじゃないかな?
アスリーフ [ 2003/07/03 0:16:08 ]
 《パダ 冒険者の店“銀の閃き亭”》

 とりあえず、デュオと名乗った男を見ながら考えてみよう。
ルクスとディーナが一生懸命に調べてくれたにもかかわらず、目指す真珠の塔についての情報は結構乏しい。派手な外見の割りに、いやだからこそ中身の情報は少ないのだそうな。
う〜ん、おれとしてはこういった事に詳しい奴が居てくれると心強いし、どうせだったら彼の因縁の決着も見てみたいな。
おれの他はまだ少々考え中のようだったので、とりあえず思ったことを口にしてみる。
「仲間に入れてもいいんじゃないか?店主の保障まで付いてるんだしさ」

 で、話し合うこと数分。彼を仲間に入れることが決まった。
皆の顔を見ると、それぞれ少しづつ違う表情をしている。何か何か考えることがあるんだろ・・・多分。

「決まった、一緒に来ていい・・・が、こっちの指示には従ってもらうゼ?」
「あ、私達もう出発なんですけど、準備は出来てらっしゃいますか?」

「感謝する。私も今すぐにでも出発できる」

 ルクスとディーナに声をかけられ、デュオと名乗った男は短く答える。
別に根拠は無いんだけど、この人感情をあまり見せたくないから無口なのかなぁ。短い返答の声が、ほんの少しだけだけど揺れた気がする。

「じゃ、さっさと出発しましょ。お互いの情報交換は道々するってことで」
ソラリスが提案する。
「そうですっ。もう待ちきれないくらい」
「うふふ、私もです。出発しましょう」
勢い込むディーナと、微笑しているキャナル。

じゃ、急ごうか。ミノタウロスが倒されたことはもうかなり広まっているので、先を越されないためも有るけど・・・何よりおれも楽しみだし。

よし、出発だ!
(席を立ち、店を後にする)
 
真珠の塔を目前にして
ディーナ [ 2003/07/04 3:50:24 ]
  パダにある冒険者の店を出発してから、デュオさんを加えて6人になった私たちは、一直線にレックスに向かって歩きました。
 初めてのレックス、その辺りに転がっている石一つを見ても古代王国時代には、空を舞っていたものなのではないかと思うと、どうしても興奮してきてしまいます。
「少しは落ち着きナ、お嬢ちゃん」
 は、はい。すいません……でも、初めてのレックスで、もう本当に楽しみなんですよ。
「それは判ったから、おねーさん、色々調べてたんでしょ、今のうち情報交換しておかないと、向こうについてからじゃそうノンビリできないわよ」
 あ、そうでした。すいません。
 それじゃあ、デュオさん、少しよろしいですか?
「ああ」
 そして、ルクスさんとデュオさんと私の三人で持ちうる情報を交換しながら歩いていきました。

 それから一度、野宿を経て。
 いやぁ、流石はレックスですね、思っていたよりも随分と広いです。一日で着けるものだと思っていましたけど、考えが甘かったですね(口調は嬉しそう)。
「……元気ね、おねーさん」
 え? あ、はい……ソラリスさん、やっぱり夜番でお疲れですか?
「それもあるけど……この環境で元気なアンタがちょっと信じられないわ(苦笑)」
 あ……すいません、また私、緊張感が緩んでしまってましたね。(←微妙に勘違い)
 私も落ち着こうと思ってるんですけど、やっぱり、塔の姿が大きくなるほどにどんどんドキドキしてきちゃって。
「でも、気をつけなきゃいけないのは、確かだよ。そろそろ噂ではミノタウロスのいた辺りだからね」
「そうだな。まぁ、”音無し”たちのことだから、ヘマするとは思えねぇが……」
 そうでしたね、ミノタウロスはラスさんが何とかしてくれるとしても、他に何かがいるかもしれませんしね……(杖を握り直す)。

 そして、しばらく周囲に緊張感を巡らせながら歩みを進めていくと、懸念されたミノタウロスを始めとする怪物の類に遭うこともなく、塔の目の前までやってきました。
「遠目に見てもそうだったけど、こうして目の前にくると、本当に真珠みたいに見えるわねぇ」
「そうだナ。間違いなくここだ。外観も、二本の塔が並んでるってのも文献の通りだ……一度、塔の周りを一周しておこうか」
 ルクスさんの提案に従って、皆で二本建っている塔の周りを見回りました。塔は、どの角度から見ても綺麗に真珠のような輝きを放っていて、とてもこれが幻覚の魔法の類によるものとは思えません。……それはすなわち、塔の中にある幻術の仕掛けも相当なレベルのものと考えて良い、ということでしょう。
 見て回って判ったことは、二本の塔には、それぞれ扉が一つずつ、窓のような類は一切なし、そして、何より気になるのは、二本の塔の頂上近くに渡り廊下のようなものが架けられていてその廊下の中央に部屋があるという構造。
 この二本の塔の中には、何があるのだろうか。そして、あの部屋には何があるんだろうか。それを思うと、何度も押さえつけてきた心臓の鼓動がまた高鳴るのを禁じえないです……。

「さて、と。まずは、どっちの扉から開けようか?」
 ルクスさんが、鍵開けなどに使うための道具をどこからともなくさっと取り出して、私たちに聞いてきました。その顔は、私の思い込みじゃなければ……私と同じように期待に少し笑顔が浮かんでいるおうに見えました。
 
とりあえず右の扉に
キャナル [ 2003/07/05 23:49:12 ]
  「とりあえず右側の方に入りませんか?」

 鍵開けの道具を構えるルクスさんの問いに、私は間を置かずにそう答えたわ。皆の視線が私の方に集中する。

 「別に良いが・・・・・何でダ?」
 「うふふ、別に深い意味は無いの。ただ、こうやってここで待っていても、時間ばっかりが過ぎて行くと思うの。それだったら、ちゃっちゃと決めた方が良いんじゃないかしら?」

 ルクスさんの言葉に私は答えを平然と返す。まあ、ちょっとは冷静に考える事も必要かもしれないけど・・・・・

 「開ける扉決まったんですね!? だったら早く入りましょう! 早くっ!」

 ディーナさんが待ちきれないみたいだし・・・・。

 ルクスさんが調べた結果、扉には罠も無く、すんなりと中に入る事が出来たわ・・・・・・ちょっとあっさりし過ぎてる気がするけど。

 「・・・・見た感じ、ここは居住区みたいだね」
 「ああ」

 ソラリスさんの考察にデュオさんが短く肯定する。それにしても無口ねぇ。引っ込み思案なのかしら?

 「・・・・あら? 階段が・・・・・」
 「いや、塔なんだし階段位あるだろ?」
 「いいえ、そうじゃなくて・・・・・・・」

 アスリーフさんの疑惑じみた声に私はそれを指差して言う。地下へ続く階段と、上に向かう階段・・・・・また、分かれ道?

 「・・・・・流石に二回連続で適当っていうのは、止めた方が良いわよねぇ(微笑)?」
 
 皆の顔を覗き込む様にして、私は悪戯っぽく呟く。
 
まずは
ルクス [ 2003/07/09 22:25:40 ]
 《居住区 1階 玄関》

 地下と上、か。ふーむ、悩みどころであるが・・・・・・。
しばし思案したいところだが、思わぬ来客者にそれは邪魔された。
「うにゃんっ!」
「・・・・・・何ッ」
 開け放たれたままの玄関から、白い影が走ってきたかと思うと、それは黙ったままのデュオ飛び掛っていた。
 ・・・・・・白猫? こんなところにか。
「わたしのアップルじゃないわよ」
 キャナルが言うが、そんなことは承知だ。
「くそっ、このっ」
 爪を立てる白猫をどうにかつかまえたデュオは、暴れるそれを扉から外へ放り出し、扉をばたんと締める。
「何やってんだい、じゃれてる場合じゃないぞ」
 アスリーが笑いながら言うが、それを遮ったのはソラリス。
「笑い事でもないわよ」
「何で?」
「あれって、多分使い魔じゃありませんか?」
 うむ、その可能性は高いナ。さすがはディーナ、と言いたい所だが、こんな遺跡のど真ん中にいる猫なんか使い魔以外の何者でもないけどナ。
「あ、そ、そうか・・・・・・じゃあこの遺跡を狙ってるのが俺たちのほかにいるってことじゃないか」
 ちょっとひっかかるところはあるが、そういうこった。急いだ方がいいナ。
「じゃあ上か下か、どっちへ行く?」
 オレは下がいいと思う。目指すは最上階なんだし、下から順に行くのが妥当だろう。それに、隠されてない地下室ってのは大概、大したものはないはずだ。ちゃっちゃと調べて次に行ったほうが良いと思う。
「一理ありますね。じゃあ、地下から行ってみましょう」

《居住区 地下1〜2階》

 思ったとおり、地下は書庫と倉庫だった。書庫にいたっては大したものだろうが、ゆっくり蔵書を拝見している暇なんてない。指をくわえるディーナを促し、ここは漁るとしても後回しだ。
 倉庫にあたっては、居住区のものにふさわしく生活の必需品などが所狭しと並べてあった。が、魔法的なものはひとつも無かったが。実験塔の倉庫にでもなれば、何かあるとは思うが・・・・・・そんなことをここで思ってても仕方ない。

「地下は収穫なしだな。じゃあ、次は上に行くとしますか?」
 
2階にて
アスリーフ [ 2003/07/10 22:09:06 ]
 《居住区 2階〜上り階段》

 ルクスが、少し先に進んで調べながら進んでいる。2階はおれが見たところ、はっきり言って何も無さそう。
ここは居住用の塔だと言うためか、今のところ罠も怪物もいないようだ。こうなると、おれも少し考える余裕が出てくる。
あの白猫が使い魔かもしれないって思いつかなかったのは確かにうっかりしてたよ。おれだってもう四年くらい冒険者をしてるんだ。少しくらいの知識はあるつもりだし。

 でも、そうなると不思議なんだよねぇ。あの猫、どう見ても魔術師の格好のデュオに突っ込んできたじゃないか。
使い魔って見破られると持ち主の弱点になりかねないんだろ、確か。いや、詳しいことは知らないんだけどね。相手も魔術師なら、もっと頭を使うはずだよなぁ。もしかして、デュオのしがらみとやらに関係してるのかな・・・。

 後ろを振り向くとデュオがいる。静かで真面目そうな顔に・・・猫に引っかかれた痕をつけて。
軽症ですらなく、ただ痕がついているだけの様だけど、いやにくっきりと浮き出ていて・・・どうしても見ると笑っちゃうんだよなぁ(ぽりぽり)。
そんな訳で、疑問も何となくそのままにしちゃってるんだけどね。だって質問する途中で吹き出したらさすがに失礼だろ?

「どうやらこの2階には何も無いみたいだナ」
「そうみたいですね。どの資料にもはっきりとは書かれてはいませんでしたけど、居住塔の2階はただの通路みたいですしね」
ルクスが足を止めて、ディーナに話しかけたので残りのおれ達も足を止めた。
「ああ、ここには特に何も無いだろう。さっきの事もある。先を急ぐぞ」
デュオも口をはさむ。
確かに三階への階段はもうすぐだね。行こう行こう。

「それにしてもキレイね、ここって。昔からあるにしては埃もほとんど見えないし。これも魔法?」
「まあ。外だけじゃなくて、中にも魔法がかかっているのかも知れませんねぇ。お掃除の魔法かしら?」
「照明以外にも何らかの魔法がかかっているのは確かだ。だが正確な種類はわからんし、実害はないだろう」
「ええっ、そうなんですか?だったらその魔法の種類も突き止めなくては!(メモに何か書き足す)」
ソラリス達後列の四人がそんな事を言ってるのを聞き流しながら、階段を上がる。階段は上がるにつれ狭くなってるから、内側に広くはないにせよ何かがあるみたいだねぇ。
「いや、ここは幻覚魔術師の塔だゼ?下から見た吹き抜けさえ本物かわからん。用心は怠るなよ」
あ、そうか。了解。
「うふふ、油断してはダメですよ?」
「そうです、ここはあのレックスの遺跡なんですから!(ぐっ)」
あー、わかってるって、キャナル、ディーナ。油断してたわけじゃ無いんだって。

(話題をそらすために辺りを見回す)

お、階段が終わった。2階に比べるとかなり狭い通路だ。
それに、少し向こうの壁に何かあるみたいだなぁ。あれは・・・ここからじゃ見難いけど、全身用の鏡か?
デュオ、ちょうど良いし、あんたが今どんな顔か見てきたら?(にやり)・・・え?鏡が何か危ないのか?
 
ディーナ [ 2003/07/12 5:26:29 ]
 <居住区三階、階段登ってすぐ〜>

 塔の三階に続く階段の先、真っ直ぐ伸びた通路の突き当たりにある鏡、ここからはまだはっきりと細かいところまでは見えてはいないのですが……。
「鏡が危ないって……何か魔法がかかってるかもしれないってことか?」
 アスリーフさんが、問うてきます。
「ああ、こんなところにいきなり鏡なんてちょっと不自然だからナ。何かあるかもしれん」
「何かって……ねぇ、おねーさん、心当たりないの?」
 えーっと、確か……”真実の鏡”と呼ばれるものが、古代王国の品にはあると聞いたことがあります。効果は二種類ぐらいあって……えーっと……すいません、ちょっと出てきません(ぺこり)。
 うう……せっかく私が力になれるところだと思ったのに……幻覚の魔法の類は色々調べたのですが、まさか鏡が出てくるとは予想もしませんでした。
「一つは、鏡の精が知りうる知識をもって、質問に答えてくれるというもの。もう一つは、鏡に映りだしたものの本当の姿を浮かびだすというもの。前者ならばやはりここに置いてあるのは不自然だから、後者ではないかな。この塔に招待したものが魔法によって変身した侵入者ではないかなど、調べるものなのかもしれない」
 私が頭を悩ませて困っていると、スラスラとデュオさんが答えてしまいました。
 なるほど、確かに現在でこそ、変身の魔法を使える人間は少ないでしょうけど、古代王国時代なら誰でも使うことができたでしょうから、そういう配慮も必要ですよね。
「ま、それなら、別に問題はないナ。俺たちは元々の姿で堂々と侵入してるんだからナ(軽く笑う)。
 さぁ、そうと判ればノンビリしてられん。先に進もうか」
 ルクスさんは、安心されたようですが、それでもやはり慎重に先頭を歩いていきます。私たちもそれにゆっくり付いていきました。
 そして、その突き当たりの鏡のところまで来て……鏡に映し出されているのは、普通に見るのと同じ私たちの姿でした。鏡を良く見てみると、確かに鏡の枠には上位古代語がびっしりと書かれています。
 どうやら、真実の鏡と考えて間違いなさそうですね。
「それなら、気にすることはないさ。さて……と」
 通路は、突き当たって右に折れています。そちらのほうを調べようと、ゆっくり角から顔を出したルクスさん……
「な、なんだ、これは?」
 いきなりの驚きの声。
「どうしたんだ?」
「いや……一先ずここには罠はないみたいだから、見てくれ、この先を」
 ルクスさんの言葉に、私たちは言われるままに角から奥を見てみました。すると、その奥に続く通路には、今、まさに調べた鏡と同じような鏡がずらーっと並んでいました。それも通路の両側に。
 延々と続く鏡の道はどれにも私たちの姿が映って、そして反対の鏡には鏡に映った私たちが映って、さらにその反対には鏡に映った私たちの映った鏡の……あれ?
 と、とにかく(汗)。なんだか……気持ちが悪いぐらいに鏡だらけです。
「ここの塔の主っていうのは、随分とナルシストなのかしら?」
「ただそれだけっていうのなら良いんだけど……これだけあると方向感覚が怪しくなるし、何より、さっき言った真実の鏡っていうのとは違う魔法がかかってそうだわ」
 うーん、確かにそうですね……。でも、他に鏡で、魔法の品というのは聞いたことがありませんし……(ちらりとデュオを見るが、黙って首を横に振る)。
「どうする? 虎穴に入らずんば、とは言うが、流石にここまであからさまだと、ナ(溜息)」
「この鏡を割ってしまったら、魔力もなくなるんじゃない?」
 えっ!? そ、そそ、そんな勿体無い!
「勿体無いっていっても……鏡はキッチリ固定されてるみたいだから、持って帰ってお金にすることもできそうにないよ?」
 そういうことではないんです(首を振る)。古代王国時代の技術の結晶かもしれないものなんですよ? ここにこうして存在するだけでも、もうその価値は……。
「でも、そうは言っても、これが何かの罠だったとしたら、私たちの命も危ないかもしれないのよ?」
 う……そうですけど……。
「まぁ、二人とも落ち着けよ。無理してここを進む必要もない。一度下に戻ってもう一つの塔に入るっていう手もあるしナ」
「じゃあ、この先は、調べずにそのままにしておくの?」
「もしかしたら、向こう側にこの鏡だらけについて書いてある資料があるかもしれないだろ? それを探してみてからでも遅くはない」
「確かにそうかもしれないわね。それに、塔は一番上で繋がっていたみたいだし、そこから渡ることもできそうだったし」
 では、一度、戻りましょうか。
 そして、私たちは、今まで来た道を戻るべく振り返ろうとしました。と、その時……
 あれ?
「どうしたんだい、ディーナ?」
 いえ、あの……さっき、鏡の中の私が……”私自身は笑っていないのに、笑っていた”みたいなんですけど……。
 私の言葉に全員が驚いて、鏡をもう一度振り返りました。
 鏡に映った私たちは、しかし、私たちと同じく、驚いた顔で私たちを見ていました。
 
気の迷い
ソラリス [ 2003/07/16 0:53:30 ]
 <居住区三階、階段登ってすぐ(続き)>
まさか、とルクスがじーっと鏡面のぞき込み、手を振ってみたり、色々と表情を作ってみる。 鏡の中の虚像は、やっぱりルクスの動きにあわせて手を振り、色々な表情を返す。 そしておもむろに、ばんばんっ、と鏡面を叩いてみせる。
「なーんともないゼ?」
「…気のせい、ですかねえ?」
 ルクスは肩を竦め、そうそう、気のせい気のせい、とサッサと階段を下りていく。 ディーナはまだ納得がいかないかのか、写り込む偽りの世界を隅々までのぞき込んでいる。 鏡が何ともないことにアスリーフとデュオも興味を失ったのか、くるっと踵を返してルクスの後を追うように階段を下りていった。
「ちょっと疲れてるんですよ、きっと。ここまで強行軍でしたから。早く行きましょう、ほら、下で催促してるし」
キャナルはにっこり微笑み、と、名残惜しそうに鏡を見ているディーナを連れて急いで階段を下りる。
 しんがりのアタシは階段を下りる途中でちらりと後ろを振り返り、鏡を見やる───ここからは写り込んでいるモノが何なのかは、ナゼか判別できなかった。

 どこから入ってきたのか、白猫が鏡の前でにゃーぉ、と小さく鳴くと…虚構の世界の奥で、さっき去っていったはずの冒険者たちの姿がいくつも浮かび上がり、ゆらり、ゆらり、と蠢きだし…きり、きり、きゅい、きゅい、と軋るような小さな音を立てながら、虚構の奥へ奥へと去っていく。
 満足そうにその様子を眺めてから、白猫は思い出したかのように階下の冒険者たちを追って階段を駆け下りた。

<左の塔1F実験区/入口>
 入り口の豪奢な大扉には特に罠もなく、やはり難なく入ることができた。
 入ってみると、塔が落ちたときの衝撃なのか、何かの実験の後なのかは定かではないが、壁には大小様々な亀裂や穴が空いており、床には割れたタイルの色鮮やかな破片が散らばっている。 壁に立てかけられていたと思われる棚はほとんど倒れ、中身がフロア中に投げ出されている。
「うってかわって、こっちはなんだか立派な作りだね…こんなに荒れてなけりゃ。 右の塔は掃除が行き届いていたのに、こっちは全然だな。 魔法が切れちゃったか?」
 散乱した破片を踏みしめ、投げ出されたモノをよけながら、アスリーフがぼそりとつぶやく。
「ありそうですよね、これだけ荒れてると。 でも、かなり埃かぶってるところを見ると、誰もここには来たことがなさそうですね…いたっ!?」
 ディーナが突然立ち止まり、何もない空間をぴたぴたと叩くような仕草をし出した。 端から見ると、何となく奇妙だ…。
「ここ、向こう側は見えるけど壁があるみたいですよ?」
「こっちもだ」
 先頭を行くルクスとアスリーフもどうやら見えない壁に当たったらしく、正面の空間をしきりに叩いてる。
「これじゃあどこが通路で、どこが壁なのかさっぱり解りませんね…。」
キャナルが途方に暮れて壁に手を掛けようとした瞬間、転がるように壁の中へ消える。 そして、すぐにキャナルが壁の中からぬうっと出てきた。
「あいたた…。ここ、壁みたいな幻!?」
 
秘密道具
ルクス [ 2003/07/16 15:59:01 ]
 〈実験区1階〉

 こいつぁ参ったな・・・・・・。
「どうしたんですか?」
いや、壁が幻だと、床も幻で作られてもおかしくないだろ。今のトコは大丈夫みたいだけどナ。
「確かに困るわね。ディーナとデュオがいちいち《魔力感知》しながらってのも効率悪いし」
「じゃあどうするんだ、ルクス任せかい?」
オレもこういった魔法の罠はあまり経験が無いからな・・・・・・お。いいモンがあるな。
「いいものって、これですか?」
うん、そーだ。丁度いいキャナル・・・・・・は無理か。アスリー、その突き出した角材抜いてくれ。塔を壊さないよーにな。
「そんな馬鹿力じゃないっての!」(ぐいぐいと角材を引っ張り抜くと、瓦礫の山が崩れる)
(慌てて瓦礫から逃れるキャナル)「十分じゃないの」
「それより、それをどうするんですか?」
ハハハ、こいつのささくれてるとこに布でも巻いて持ちやすくすれば・・・・・・。
即席の6フィートの棒だっ!(ばばん)
「なるほど。それで床やら壁をつついて進むわけね」
さすがだ、ソラリス。話が早い。じゃ、さっさと進むぞ。

(つんつん。つんつん)
ディーナ止まれ、そこ床じゃないゼ、穴ぽこだ。
「あ、え、ホントですか!?」
「危ないな・・・・・・あれ。でもおかしくないか? 落とし穴なら幻で隠してあったとしても、穴がそのままぽっかりなんてさ」
「確かにそうね」
「もっと調べてみたらどうかしら、今回メインの“鍵”なんだから」
・・・・・・なんか根に持ってないか、ソラリス?
しかし魔法的なしかけだからちーと難しいかも・・・・・・って、この段差みたいな形・・・・・・階段じゃないか。近くの床にも壁にも罠は無いみたいだし、降りてみるか?
「・・・・・・そうだな。せっかく見つけたんだし」

〈実験区 地下1階〉

ふーむ。さっきの塔の地下と造りは一緒だが・・・・・・匂いが違う。
「いるわよ」
やっと遺跡らしくなってきたじゃねーかっ、後衛、誰でも良いからリュート預かっててくれよっ(瞬く間に両腰のカタールを手に装着)
 
木人形?
アスリーフ [ 2003/07/18 8:13:48 ]
 《実験区 地下一階》

 背負い袋を落とすと同時に、剣と小楯を構えて少し前に出る。ここも荒れてはいるが、明かりの魔法はまだ有効みたいだ。薄暗いが、戦えないほどじゃない。
・・・で、薄暗がりから出てきたのは人間大の木人形が数体。何だありゃ・・・?
武器屋にたまにある、鎧を着せてあるディスプレイ用の人形に似てるかな?
「オーク、でしょうか?それにしては大きいし・・・」
「ゴーレムの一種のようだな。外見から察するに戦闘用には見えんが」
「でも、こっちに向かってきますわよ?」
後衛三人が会話を交わす間にも、”それら”はカクカクと近づいてきて・・・襲ってきた!

 結局、総計4体の木の人形は、数分後には木片になった。
動きもめちゃくちゃで、決して強くなかったんだけどねぇ・・・うっかりと人形の蹴りを受けた左腕に、キャナルに”癒し”をかけてもらいながら思い起こす。うう、修行が足りないなぁ。

「で、結局なんだったワケ?こいつら」
木片を軽く蹴りながら、ソラリスが切り出した。
「分からんナ。俺も見たこと無いゼ」
「おそらく、戦闘以外の目的で作られたのだろう。だが、それが何かの理由で・・・」
「暴走した、という事ね。確かに、戦いのための装備はしていませんものね」
頭の部分を調べているデュオの言葉を、キャナルが引き取る。
作り自体は割と精巧なのに、動きがおかしかったものね。納得は出来るよ。
「でも、ちょっともったいなかったですね」
「おねーさん、またそんな事を・・・向こうにもまだあるわよ」
「え、本当ですか?」

 少し休んでからこのフロアを探索してみる。
向こうの塔では地下一階は書庫だったが、こっちではどうやら研究に使っていたみたいだ。
朽ちた机と椅子(おれの目には安物に映ったし、実際その通りらしい)、浴槽のような何かと薬品の棚、動かない木人形(これを持って帰るんだったら本を沢山の方がマシだなぁ、と思いながらディーナを見る。彼女は人形の方を見ていたので、表情は分からなかったが)、その他ガラクタにしか見えないいろいろ。

そうそう、部屋の四方にまた鏡が有る。やはり全身サイズの鏡。
「何か、怪しいわね」
「ああ、そうだナ」
え、何で?
「ここは研究の場だ。”真実の鏡”は必要ないと思わないか?・・・ディーナ、デュオ、何か分かったか?」
「う〜ん、何も分かりませんね・・・少なくとも保存の魔法はかかっているみたいですけど、それ以上は」
デュオと一緒に鏡を調べていたディーナが答え、デュオも首を振る。

 結局、先に進むことにした。
階の作り自体はルクスが言った様に向こうと同じだったが、何故か階段の位置は少し違っていた。
罠が無いことを確認し、降り始める・・・・・・。
 
魔法装置
ディーナ [ 2003/07/19 4:29:04 ]
 <実験区、地下2階>

 ゆっくりと階段を降りていくと、その先には、先程とあまり変わりのない雰囲気の部屋がありました。ただ、違いは、ここにあるのは薬品の棚らしいものばかりということですけど……しかし、棚の薬品の瓶は落下の衝撃で全て割れてしまっていて……調べることもできそうにないです(がっかり)。
「さっきの実験部屋の準備室ってトコか?」
「そうみたいね……ま、収穫は無さそうだけど」
 部屋を見て回って、ルクスさんとソラリスさんが同じ結論に至ったようです。この二人がそう言うのでしたら、間違いはないのでしょう。
「じゃあ、次は上よね?」
「そうだね」
 では、参りましょう。


<実験区、地上1階>

 と、しかし、1階に戻って気付いたのですが……。
「地下への階段が魔法で隠れてたワケなんだから当然よねぇ」
 つまり、2階に登る階段も見つからない、ということです。
「今度は壁にでも隠されてるのかしら」
 キャナルさんが壁を調べようとして、さっきのことを思い出して手を引きました。
「そういうことだろうな……まぁ、1階は、すでに一通り回って、壁の位置もそうじゃない場所も、穴のあいてるとこも判ってることだし、すぐに見つかるだろうさ」


<実験区、地上2階>

 それから、階段は程なくして見つかり、相変わらず先頭にルクスさんに立ってもらい、ゆっくりと2階へと登っていきました。
 2階は、今までとは雰囲気はいきなり変わり、ガランとした広い空間になっていました。見回してみると、部屋の四方にはやはり鏡、そして、床には大きく描かれた魔法陣、3階に続いているのだろう階段……そして、何かの魔法装置らしき物体。
「下から見たときは、吹き抜けに見えたけど……それも幻影の魔法だったんだね」
 アスリーフさんの言うとおり、下から見た景色の通りなら、2階のここは、こんな風に開けた場所になるはずはないでしょう。
 魔法陣が描かれていることですし、こちらから見た目のほうが実は幻影だったということは無いでしょうけど……。
「そうだな。だが、用心に越したことは無い。さっきまでと同じやり方で行くとしよう」
「とりあえず、あの魔法装置みたいなのが、何なのか気になるわね」
 そうですね。一先ず、あそこに行ってみましょう!
「落ち着きなさいって……」
 そして、棒で床をつつきながら魔法装置(?)のところまで行ってみました。
 それは、一段高くなったところに人が一人上がれるようになっていて、そこから操作盤のようなものを操作する仕組みになっているみたいです。操作盤、とは言ってもボタンがたった一つあるだけなのですが……。
 押してみましょうか、このボタン?(うずうず)
「んー……幻影魔術師の実験だからナ、いきなり爆発したり魔神が呼び出されたりなんてことは無いだろうが……」
 では、押してみませんか、このボタン?(うずうず)
「だから、落ち着きなさいってば……」
「まぁ、押してみないことには、これの価値も判らんしな。だが、もしものことを考えたら、ディーナよりはオレが押したほうが良いだろう……ちょっと位置は高いがなんとでもなるさ(小声でぼそり)」
 ルクスさんがさっと魔法装置の前に立ち、操作盤に付いているボタンをゆっくりと押しました。
 すると、部屋の四方にある鏡が俄かに光を帯び始めたのです。
 
夢幻の鏡
ルクス [ 2003/07/24 1:06:44 ]
 〈実験区 2階〉

 激しい光に包まれる鏡。
 いかんっ、やっぱ先走りすぎたかっ。
 慌ててボタンから離れて、周囲をせわしなく観察する。今のところ、鏡が光り輝いていること以外、特に変わったことは無い。いつなんどき、襲撃があるかもしれん。カタールに手を添えて、鏡をチェックしてみる。
「特に・・・・・・なにもないですね」
 ああ、だが油断するな。何が起こるかわからんのが魔法だ。
「あっ!」
「これは・・・・・・」
 どーした、アスリー、キャナル!
 そっちを向くと、アスリーとキャナルが鏡を見つめてぼーっとしている。何があったんだ・・・・・・!?
 そう思っていたのも束の間、きょろきょろと動かしていた視線が再び鏡に映った自分と目が合ったと思うと、虚脱感が襲い掛かってきた。
「ど、どうしたのルクス?」
 い、いかん・・・・・・ソラリス、ディーナ、デュオ・・・・・・鏡を見るんじゃない!
 
 その言葉が声に出たとも分からないうちに、視界がぼやけた。
 が、すぐに復活する。オレの目に最初に飛び込んだのは、愛しのハニーの姿だった。
 ・・・・・・あれ。オレはいつの間に帰ってきたんだっけ。
「だーりん、ごはんの用意、出来てるでー」
 間違いなく、ハニーの声。ふと横を見れば、愛娘の姿もある。
「ぱぱんー、はいコレ。冒険のお土産だよ」
 にっこりと笑い、差し出したのは一組のカタール。
 こ、こいつはオレが捜し求めてる、魔法のカタールじゃねぇか。
「えへへ、見つけてきたんだよ。ぱぱんのお土産にしようと思って」
「よかったやん、だーりん」
 笑いながら腕を取る愛娘の姿、オレに抱きついて食卓へせかすハニー。しばらく忘れていた、一家団欒の暖かい風景。

 ふと、疑問が浮かぶ。都合が良すぎないか?
 そしてオレは遺跡にいたんじゃなかったか?
 ハニーは今、オランでオレの帰りを待っているはずじゃ?
 愛娘は、大陸のどこかできままな旅を続けているはずじゃ?
 そして、捜し求めるカタールを自力で見つけるのがオレの夢だと、二人とも知っているはずだ。

 視界が再びぼやけ、気付いたときには、もとの遺跡の部屋に居た。
 幻覚を見せる鏡だったってわけか。何人か魔法に抵抗できたみたいだが、視界がまだぼやけてて誰が無事かはわからない。気のせいか、少し気だるい。
 しかし、ただひとつ分かることがあった。
 蠢く、多数の気配。
 カタールを両手に握り締めて、声を張り上げる。

 みんな、とっとと目を覚ませ! 部屋に守護者の怪物が入り込んできているぞ!
 
趣味の悪い・・・
アスリーフ [ 2003/07/25 22:32:03 ]
 《実験区 2階》
「乾杯〜♪」
おれ達は酒場のテーブル席で、祝杯を上げていた。
冒険は成功し、みんな笑顔だった・・・デュオさえも。
彼の因縁も無事に解決して・・・あれ、彼の因縁って結局なんだったかなぁ?思い出せない。
まぁ、いいかとエールの容器を持ち上げたとき、目の前とは違う場所からルクスの声が聞こえたような気がして・・・側頭部に強烈な痛みが走って、おれは膝をついた。膝?おれは椅子に座ってたはず。金属・・・剣が床に落ちて跳ね返る音が聞こえる・・・剣!

いくつかの原因でぼやける視界に、紫と黒の色。鎖帷子の鳴る音。
くぅぅぅ、ソラリス、手加減が無さ過ぎだよ・・・。
「怪物に本気の一撃食らうよりはいいでしょ!ぼやっとしてないで、急いで!」
ははは、全くだね。だからって、手甲で殴ったんじゃ、今度は気絶しちまうよ。
ひとつ頭を振って、出来るだけ素早く立ち上がりながら、剣を拾う。

まだ少々頭が痛む・・・が、動きに支障が出るほどじゃない。
視界がはっきりしてきた。ルクスが左前に、キャナルは右前に、左側にデュオとディーナ。ソラリスはおれを殴ってからそのまま走ってキャナルを援護に行っているようだ。探索の時のそのままだから仲間が分散しすぎている。

「ひどい音がしましたけど、大丈夫ですかっ?」
・・・ああ大丈夫だよ、ディーナ。それより、ある程度まとまった方がいい。キャナルの方に向かって走って!

ディーナが頷くのと少しだけ遅れて、デュオも頷いて走り出した。
・・・さっきのが幻覚を見せる鏡だとしたら、あの二人は何を見たのだろうか。それとも何も見なかったのだろうか?
ディーナはともかく、デュオの方は目を見ることも出来なかったけど・・・。
そんな事をふと考えながら剣を持ち直し、盾を構えながら走り出す。まだぼうっとしているキャナルを守って立つソラリス、草原妖精ならではの、ものすごい速さで走ってくるルクスと合流して、どうにか隊列を組むことが出来そうだ!

目の前の奴の剣を、盾で受け止める。
・・・戦闘中特有の、熱狂と冷静さがいり混じっている気分の中で、思わずため息がでる。
目の前に立っているのは、にやけ笑いをしている俺。幻覚を見せたあげくに、自分そっくりの怪物と戦わせるとは・・・良い趣味してるよ、全く。
さらに不気味なことに、目の前の自分は一言も喋らない。唇をゆがめた表情のまま切りかかってくる・・・腕前はおれと同じ位かな・・・。
でも、こっちには魔法の援護がある。体を取り巻く<魔法の守り>とわずかに白く光る<魔力付与>はとても頼もしい。

六体いた”ニセモノ”どもも既に二体となっている。どいつも魔法も使わずにただ黙って殴りかかってくるばかり。
デュオが、自身の”ニセモノ”に<魔法の矢>を過剰なくらいに打ち込んで倒したのを最初として、また一体、もう一体と倒すことが出来た。気分のいいものではなかったけど。
そしてさっきルクスの姿をしたものが倒れ、残るはおれと、ソラリスの姿のやつ。

おれも結構怪我をしている。だけど、狙ったとおりの瞬間がやってきた。
予想した位置に相手の突きが来て、余裕を持って受け流す。思い描いたとおりに相手の鎧の継ぎ目に剣が決まり、目の前の自分は崩れるように倒れこむ。後ろからわずかに聞こえた声は、誰のものだったのだろう?まぁいいや、あと一体だ。
仲間におれが勝ったと知らせるために、声を上げる・・・。
 
ディーナ [ 2003/07/27 6:07:54 ]
 <実験区2階>

「これで……終わりよっ」
 言って振り下ろされるソラリスさんの剣に、”偽物のソラリスさん”が悲鳴もなく崩れ落ちていきました。
「ふぅ、なんとかなったみたいだナ」
「ああ。……そういえば、さっき、誰か何か言わなかった?」
 アスリーフさんが、武器をしまいながら振り返ってきます。すると、キャナルさんが、一歩、歩み出て答えました。
「ええ、最初に塔に入ったときにいた白猫……あれが、下から来て、あっちの上に上っていったの」
 キャナルさんの指差す通りに見ると、私たちが上ってきた階段から、部屋に唯一の上りの階段に白猫が移動した、ということです。
 その話を聞いて、一同に訝しがる空気が流れました。
「外に放り出したわよね、あの猫? 猫が自分で扉開けるわけないし……やっぱり、何かありそうね」
「ああ、いけすかねぇ猫だとは思ってたが、下手すれば使い魔とも違う”何か”かもしれんナ」
「”何か”って……何?」
「判らん……だが、注意しなきゃならん”何か”ってことだけは確かだ」
 そうですね。猫が使い魔にしろ、そうでないにしろ、何だか嫌な予感はします。これからはより一層気をつけていったほうが良さそうです。


<実験区3階>

 そして、ルクスさんを先頭に、階段をまた上り3階にやってきました。今度は、先程と違い、真っ直ぐの通路が続いていて、その奥には次の上り階段があります。そして、通路には、左右にそれぞれ二つずつの扉がありました。
 そして、ぱっと見た目には……
「さっきの猫はいないみたいね」
 キャナルさんの呟きのとおり、通路には、猫どころか、何の生き物もいる気配はありませんでした。
「とりあえず、一つずつ開けて行くか」
 ルクスさんが、鍵開けのための道具をさっと取り出しました。
 扉には、これといった罠もなかったらしく、問題なく開けて行くことはできたのですが、部屋の中は、墜落のときの衝撃のせいか、大体がボロボロで何に使われていたのかもよく判らない状態でした。本が数冊落ちていたので、それだけは回収しておいたのですけど。
 しかし、どの部屋にも共通して言えるのは、やはり、全身用の鏡が一枚ずつあったということです。ボロボロの室内に、それだけ保護の魔法がかかっているのか、傷一つなく、私たちの姿を写していました。
「本当に、塔の主ってナルシストなんじゃないかしら?」
「流石に、怪しくなってくるわね」
 キャナルさんの一言にソラリスさんが苦笑混じりに答えます。
 ……そういえば、さっきから気になっていたんですけど、ナルシストって何なんでしょうか……?
「特に収穫はなかったナ。文献のとおりだとすると、次はいよいよ最後の実験室に宝物庫だ。気合入れていくぜ」
「ええ、”猫”も見つかってないし、何があっても対処できるようにしないとね」
 ルクスさんの言葉にソラリスさんが応え、そして、皆で改めて強く頷きあったのでした。
 
宝には障害あり
キャナル [ 2003/07/29 18:04:37 ]
 《実験区 4階》

「宝には障害あり」
 実験区 4階への階段を上っている途中、私が口にした言葉に、
皆が怪訝そうな表情で振り返る。

「ある人物の受け売りよ。宝のある部屋にはそれなりの障害が
付き物だっ、て」

「そんな付き物はご勘弁願いたいんだけどな」

「だが用心するに越した事は無い」

 アスリーフさんの言葉にデュオさんがぼそっと呟く。まあ、
そんな付き物は私だって遠慮したいけど、無数の鏡に謎の猫。
これで最上階に何も無いっていうのは・・・・どうも、ね。

 「ルクスさん、お願いします」

 目で扉を指す私にルクスさんが無言で答え、扉の鍵を慎重に
開け・・・・・・・・え?

 「・・・・・どういう事でしょうか?」

 ディーナさんの口走った言葉は、全員が思っている事だと思うわ。
何故、扉に鍵が掛かっていないのか・・・・・。

 「鍵が壊れているとか、そういうのじゃないな」

 「誰かが出入りしてる・・・って事か?」

 ソラリスさんの問いにルクスさんは肩をすくめる。
 まあ、どのみちその答えはすぐに分かるんじゃないかしら?
扉を半分程開いて私達を催促している、この部屋に入れば。

 「・・・・・それじゃアスリーフさん。お先にどうぞ」

 「ん? レディーファーストじゃなくて良いのか?」

 「私、男女差別は好みませんから」

 アスリーフさんが苦笑しながら先頭に立ち、扉を開ける。
部屋の中にはボロボロになった実験道具と、そこから避ける様
に位置する鉄製と思われる箱が幾つかあった。

 「あれが、そうですかね?」

 「うふふ。 宝物にしてはあまり綺麗じゃないけど、
どうかしら? ・・・・・・でもディーナさん?」

 呼び掛けに対しディーナさんは私の方を向いた。そして私の
人差し指が前方に向けられてるのに気付き、その方向に向く。
そこには・・・・・何とも説明し難い、ドロの塊の様なものが
固まっていた。

 「ブロブか・・・・・厄介な!」

 ルクスさんの叫びを合図に、私は詠唱に入った。
 宝の障害・・・・・この程度で済めば良いのだけど。
 
一難去ってまた一難
ソラリス [ 2003/07/31 23:27:29 ]
 【実験区 4階】
 黒い泥の塊が、ずるり、ずるりと這い寄ってくる。 頭(?)を擡げ、まるでアスリーフが呼び寄せてるかのように、迷わず真っ直ぐに。 ヤツの通った後は赤黒く焼け爛れ、薄黄色の煙とイヤな臭いとが近寄ってくる。 酸だ。 酸の臭い。
 アレには普通の金属の武器はほとんど効かないし、すぐにダメになる。
 
「アスリーフさんっ、あぶないっ!」
 キャナルが叫ぶ。 その刹那、突きだした腕から衝撃が走り、今にも飛びかかろうとしていたブロブを壁まではじき飛ばした。 ぐちゃり、とそれは壁にへばり付き、壁の一部を溶かすと白い煙を上げて崩れていった。
「大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫。ありがとう、助かったよ」
 多少照れながら笑っているアスリーフとキャナルの脇から、ルクスが部屋の中をのぞき込む。
「…もう居ないだろうナ?」
 右、左、上と順番に見渡し、動く影が一切ないことを確認すると、割り込むようにしてそそくさと中に入っていく。


「さー、ここには何があるのかなっ? 確認、確認っ♪(どきどき) まだ? まだ?」
 部屋の中で唯一まともな鉄の箱を開けようと頑張ってるルクスの脇を、ディーナが鼻歌交じりでぐるぐる回ってる。 ディーナの有形無形のプレッシャーに焦ってるのか、くそっ、とかコノヤロとか、いつになく口数が増えてもたついてる。
 …この場合、笑ったり手伝ったりしたら失礼かしら(笑) 頑張ってね。
「あいたゾ、コノヤロウ」
 脇から箱の中をのぞき込もうとしたディーナの頭をぺしっと叩く。 痛そうに叩かれた頭をさするディーナをよそに、ルクスは箱の中から罠の残骸とがらくたを取り除き、中から光沢のある青い布をそっと取り出してゆっくりと開く。
 白地に緑色の大きな宝石(あれは翡翠かしら?)、派手な装飾の飾りナイフが2本、なにやら読めない文字の書かれた羊皮紙が3枚。 そのほかには何もないみたいだ。
 ここに来てようやく宝物らしいのが見つかったわねぇ。 これでとりあえずは報われるわね…って、分けるのは後にして、先に進むわよ。 ほらほら、読むのも後で良いから。

【実験区 4階(渡り廊下→入り口)】

 部屋の奥から渡り廊下に続く扉を開けると、突然強い明かりに包まれた。 何事かと思って見上げてみると、燦々と輝く夏の太陽が惜しげもなくアタシらに光を投げかけている。
 空中に張り出した手すりのないテラスみたいな空間に立ち、
 …ええと、なんだか床も壁も天井もなくて外が見えるんですけど、ホントにここは廊下? アッチには扉も見えるし…外から見たときは、ちゃんと床も壁もあったよね? でも、手が床下まで出るし、壁にもさわれないし…。
 と、みんなちょっと躊躇しているスキに、デュオが空中(のように見えるところを)に踏み込み、まるでどこに足場があるのか知っているかのごとく難なく扉の前まで歩いていく。
「皆さん、大丈夫のようですよ。 渡ってきてください。」
 …軽く言うけどねアンタ、ここ渡るのははっきり言ってコワイよ?

 
合わせ鏡
ルクス [ 2003/08/01 2:41:17 ]
 《最上階 中央の部屋の前》

 ・・・・・・・・・開かねぇ。っていうか、開けようがねぇ。
「・・・・・・鍵穴がないわね」
 《開錠》の魔法はどうだ?
「む、無理ですよ。わたしの腕では、古代王国の魔法使いがかけた鍵を破るなんて・・・・・・」
「・・・・・・俺にも出来んぞ」
「とりあえず、魔術師の部屋に行ってみない? なにか分かるかも知れないし」
 ・・・・・・ま、あける術が無いとなれば、それしかねぇか。

《居住区4階 魔術師カイエンの私室》

 そこは荒れ果てた部屋だった。壊れて埃を被ったベッドや机、本棚、諸々。
目立つものといえば、壊れた机の上にありながら輝きを湛えたままの小さな彫像と、壁に立てかけられた一本の短剣。それとどこの部屋にも必ずあった大きな鏡。
ただ、この私室には不思議なことに鏡が――
「2枚あるわね・・・・・・」
 ああ、何か意味があるのか・・・・・・? 普通、部屋に鏡は2枚も要らないだろうに。
「今までの鏡と同じようだし・・・・・・あれ」
「どうしたんだ、キャナル?」
 鏡の一点を見て不意に呟いたキャナルに、アスリーが怪訝そうに近づく。つられて、ディーナ、ソラリス、そしてオレとデュオも続く。
「ほら、ここ」
「・・・・・・何かの仕掛け、かしら?」
「押してみましょう!(どきどき)」
 ちょいと待ちナ、頼むから(ディーナの服の裾を掴んで)。
うーむ、またさっきの魔法装置みたいに幻影を見せられても困るしナ・・・・・・。
「でもさっきのは鏡じゃなくて、魔法装置で作動した罠だから違うんじゃないかしら?」
 うーむ。虎穴に入らずんば虎児を得ず、とも言うしナ。よし、デュオ、全員に《対抗魔法》を頼む。
「・・・・・・わかった。万物の根源たるマナよ・・・・・・」
 短く呪文を唱えると体が淡い光に包まれた。これで多少なりとも、幻影に抵抗しやすくなるだろう。じゃ、押すぞ?
「どうなるんでしょうね・・・・・・っ」
 みんなの期待を一身に受け・・・・・・ぽちっとな。

がこん。

 身構えたが予想した幻影魔法は襲ってこず、代わりに音と共に鏡が動いた。そして、2枚の鏡が向かい合わせになり目映い光を放つ。
「も、もしかしてこれって、合わせ鏡の魔力っていう奴ですか?」
 ディーナが興奮気味にその様子を見て呟く。無論、合わせ鏡がどうこう言われたところで、理解できるものは彼女以外にいない。
オレもいろんな魔法の仕掛けを見てきたが、こんなのは初めてだ。デュオも、ノーコメントということは知らないのだろう。
 で、どんな仕掛けなんだ?
「鏡をふたつ合わせると、鏡の奥にいくつも像が出来るじゃないですか。それを応用して、魔力を持った鏡同士を合わせることにより、強大な魔力を生み出そうという考えが・・・・・・」
「あ、いや、もういいよ。ともかく、魔法の鏡ふたつを合わせれば仕掛けが作動するかもってことね」
 アスリーが適度に略すと、ディーナが心なしかうなだれたようだった。
そういえば、今まであった鏡は向きを変えれば全部向かい合う配置だったような気がするぞ。もしかしたら、その説が正しいのかもしれん、みんな行くぞ!
 そしてふと視界の隅にディーナが入る。机の上の彫像と壁の短剣を回収する辺り、さすがだなと思ってしまった。

《最上階 中央の部屋再び》

 ちょいと時間はかかっちまったが、全部の鏡を向かい合わせてきた。するとどうだろう。
「・・・・・・扉も光ってるわね」
 やっぱ正解だったかナ。やったぞ、ディーナ、いい子だ(なでなで)。
「・・・・・・それよりもさっさと中に入らないか」
 おお、そうだったナ。デュオにせかされ、中に入る。思ったよりも広い部屋、そこは予想したとおり、この塔の魔法的な仕掛けを支える魔法装置の部屋のようだった。
 中央に安置された、手を胸の前で組んだ乙女の像。その表情は悲しげだ。そして、その首からは大粒の真珠を使った、首飾り。どういうものかはまったく想像は付かないが、この塔にかけられた幻影魔法の全てを大幅に拡大するようなものだろうとは漠然と思う。
「す・・・・・・すごいわ、こんな本格的な魔法装置、見たこと無いわ」
「本当に凄いな・・・・・・いったい、売ったらいくらになるんだ?」
「売るなんてとんでもないですっ、これは調べなければ!」
 みんなが興奮気味に部屋に踏み込む。オレもここまでの代物は見たことがないぞ・・・・・・こいつは・・・・・・。

 全員が部屋に踏み込んだところで、小さな、本当に小さな古代語が聞こえてきた。
何ッ!
「眠りを齎す安らかなる空気よ」
 部屋に雲が充満する。それは魔術師であれば誰でも使える《眠りの雲》だった。その魔法を唱えたもの、それは。
「う・・・・・・っ、デュオか」
「ふん。大人しく寝ていればいいものを。正直全員が耐えるとは思わんかったがね、これなら《火球》でも撃ち込めばよかったよ」
 ちーっと怪しいとは思ってたけど、まさかここまで露骨だったとはナ。
「もう少し、警戒するべきだったわね」
「仕掛けや罠が全部無くなった時点で貴様らは用なしだったんだがな。冥土の土産に、魔法装置を拝ませてやっただけありがたいと思ってくれ」
 薄ら笑う顔がぼやける。そしてあっという間にその顔が別のものとなった。
「あ、あれは《変身》の魔法です・・・・・・っ」
「この体では、どうも動きづらいのでな」
 そういって、剣を抜き杖を捨てる。気付かなかったが、あの指輪も発動体らしい。
 ・・・・・・しかし、この体? そういえば、あそこの店のマスターも顔見知りだと言っていたし、自分で作った顔じゃないのか。さしずめ、この遺跡に興味を持っていた奴をさらったってトコか。
「そんなことを気にすることはない。どうせここで死ぬのだからな」
 フッ・・・・・・三流だナ。そんな台詞を吐いた悪役は、最後に正義の冒険者にやられるってのが筋だぜ!
「ならその筋を覆してやろう!」
 紡がれる、邪悪な響きの魔法語。
「! 暗黒魔法も使うみたいよ!」
 キャナルの警告の言葉、それに抵抗すべくディーナの必死の詠唱を合図に戦闘の火蓋は切って落とされた。
 
苦戦
アスリーフ [ 2003/08/02 1:12:04 ]
 「こっちの方が数が多い、魔法を使わせるな!」
ルクスがそう言うのとほぼ同時に戦闘の準備を整え終え、デュオ・・・いや、そういう名前じゃないのかなぁ・・・に向かって走り出す。ルクスとソラリスもそうするのを視界の端で確認した。
だが、最初に発動したのは元デュオ・・・ええい、言いにくい!デュオでいいや・・・の暗黒魔法だ。衝撃波が襲い掛かってきて、おれ達の速度が鈍ってしまった。
「クッ・・・!《気弾》ね。でも、大したことは!」
ソラリスが言うのが聞こえた。

「大丈夫!?《癒し》が必要なら言って!」
「今、《守り》をかけ終わりました!頑張ってください」
キャナルへ向けてまだいいと素早く身振りを入れる。ディーナの声は少し疲れてるみたいだ。キャナルもそうだが、今日はもう何回か魔法を使ってるんだ、無理もないか。意識を、再び前方に集中させた・・・。

デュオは《気弾》で得られた少しの時間を全く無駄にしていなかった。いつの間にか彼の足元にはいくつかの石が転がっており、その中の二つがあいつの詠唱に応えるかのように膨らみ始め・・・人の形を取った。おれ達の前に立ちはだかる。
「ルクスとの会話の間に、さりげなく石を床に置いておいたのね」
セリフは三流だけど、なかなかやるなぁ!
「《石の従者》です!石から作られる一種のゴーレムで(説明が続く)」
OK、ディーナ。要するに堅くて、殴られると痛いんだね。・・・ごめん、落ち込ませる気はなかったんだよ。
「しかし、そうなると厄介だナ。《癒し》の準備はしておいてくれよ!」
ルクスがそう言うのと、おれが剣を後方に向かって投げ捨ててフレイルを構えたのと、石の怪物との距離が0になったのとはほぼ同じ瞬間だった。

舌打ちをする。これは厄介だ!
まだ石の従者とやらと戦いはじめてから大した時間は経っていない。おれとソラリスが一体ずつ受け持ち、ルクスは相手の気を引くことに専念。
後衛の様子は分からない。どうやらデュオから後衛に魔法が飛んだらしく、二人の悲鳴らしき声が聞こえた。
あいつはディーナ以上に今日は魔法を使っているはずなのに・・・。少し向こうに見えるデュオは、まだ余裕があるみたいだ。まだ何かやってくるつもりか?
「ほう、しぶといな。諦めればすぐに楽になるものを。」
「ふん、またそんな台詞を。とことん三流だナ!」
「貴方こそ諦めなさい!」
ルクスとキャナルがやり返すが、デュオはこたえた様子も無い。
「いくつ魔晶石を持っているんだ!・・・おっと、今だっ!」
「ルクス、ナイス!」
ルクスが引き付け、ソラリスがサーベルを叩き込む。素晴らしい!・・・が、相手にどの位の打撃を与えられたかは分からない。何しろ岩だもんなぁ。
こっちものんきに隣を見ている余裕は無い。相手の拳を何とか盾で受け流すと、端の金属補強が吹き飛んだ・・・とても正面から止められるものじゃあない。
左手が痛むが、お返しの一撃を喰らわせる。わずかにバックステップ、同時に相手の伸びきった腕に真上からフレイルを叩きつける。手応えは十分、岩の破片が飛び散る!だが、毎回こう上手くは行かない・・・何か他に手は無いの?
満足そうな薄笑いを浮かべたデュオは、また何か魔法の準備に入ったようだ。ええい、まずいぞ・・・。

「あの猫よ!」
突然、キャナルの叫び声。今度は何だって言うんだ!?
 
ディーナ [ 2003/08/04 1:10:22 ]
 <最上階 中央の部屋>

 声を上げるキャナルさんの指す先に、あの白い猫が倒れているのが見えました。外傷があるとも思えませんし、気を失っているだけなのかもしれません。
「どうやら……コイツの使い魔だったみたいだナ。そいつか気を失ってるってことは、顔に見えてるほど余裕はないはずだ」
 ルクスさんの言葉どおり、あの猫が使い魔だとすると、魔法を使う際に主は精神を借りて使うこともできます。しかし、その使い魔がああして倒れているのは、逆から言えばその使い魔の精神に頼らざるを得ない状況ということでしょう。
「なるほど、ならこいつら始末したら、もう終わったようなものか」
 アスリーフさんが応えながら、フレイルをまたストーンサーバントに打ち込みました。頭に一撃を食らったそれは、一瞬ガクッと振るえたかと思うと膝から崩れ落ちていきました。残るストーンサーバントは、後一体、それもルクスさんとソラリスさんにかなり傷つけられているようです。デュオさん(←さりげなくまだ「さん」付け)の疲弊も考えるとこちらに優勢に傾いてきたようです。

「よし、もう一体は任せた」
 崩れたストーンサーバントを避けながらアスリーフさんがデュオさんに迫ります。しかし、デュオさんが先程唱えていた魔法がそれより一足先に完成しました。
「くっ」
 武器を振り上げたアスリーフさんが小さくうめきました。それは、魔法の攻撃によるものではありませんでした。
「この程度で俺に勝ったつもりになるとは……愚かだな」
 対照的に、相変わらず余裕の笑みを浮かべて、デュオさんが言いました。自身の魔法により、炎を帯びた剣を構えながら。
 さっきの一瞬、アスリーフさんの攻撃をかわしたデュオさんが手にする燃える細剣でアスリーフさんを逆に攻撃してきたのです。しかも、その動きは、剣を知らない私にはハッキリとは言えませんが、アスリーフさんやソラリスさんに劣らぬほどの……いえ、もしかすればそれ以上の戦士としての訓練を受けているものと見えました。
「古代語魔法に、暗黒魔法に、しかも剣か。流石に言うだけのことはあるな」
 アスリーフさんが次のデュオさんの攻撃を盾で受けながら言います。しかし、その口調と内容に反して顔色は優れません。受けた傷は、小さなものではなかったようです。
「すぐに癒しをかけるわ」
「ソラリス、ここは任せた、オレはアスリーのサポートに回るぜ」
「わかったわ」
 隣では、キャナルさんが祈りを捧げ始めました。と、同時にルクスさんがアスリーフさんのところに駆けていきます。デュオさんの力を見ての判断なのでしょう。ソラリスさんもルクスさんがいなくなった分、ストーンサーバントと1対1で必死に戦ってらっしゃいます。

 この中で今、何もしていないのは私だけ……私にも何かできることはないのでしょうか……。とは言っても、すでに私自身、疲労が激しくて魔法はもう使えないし、ルクスさんの代わりにソラリスさんのためにストーンサーバントの気を引いてサポートするようなこともできません…………あっ、気を引くといえば、一つ、私にもできることがあります。
 私は思い立ったがすぐに走り始めました。
「ディーナさん、一体!?」
 考えがあるのです。みなさん、しばらくだけ我慢してください。
 キャナルさんに答えて、そして、私がたどり着いたのは、気絶している猫の元でした。この子がデュオさんの使い魔だとしたら……
 猫さん、ゴメンナサイッ!(←猫の髭を抜く(笑))
「つっ……」
 振り返ると、デュオさんが顔をしかめて、頬の辺りを抑えてました。やっぱり、使い魔だったようですね。主と使い魔は、精神も、そして肉体の感覚も共有しているもの、今、デュオさんは、髭を抜かれたような痛みを感じたはずです。
「よくやった、ディーナ!」
 デュオさんの反応は、たった一瞬のことでしたが、その隙をルクスさんは見逃しませんでした。
 
二つ目の
キャナル [ 2003/08/07 16:37:13 ]
 <最上階 中央の部屋>

ディーナさんの手によってスキを生じさせられたデュオさんは、
両眼を見開き、歯をぎりっ、と、怒りに任せて噛み締めたわ。
その首筋には、一本のカタール。

「終わりだ。デュオ・・・・いや、偽者と言った方が本物に
無礼が無くて良いナ」

「杖を手放した方が良いよ。ディーナの腕にアンタの使い魔が
居るのが見えるだろう?」

ソラリスさんの指摘にデュオさんの目が白猫の方に行く。ディーナさん
が何時でも猫をどうにか出来る事を悟ったんだと思う。彼は杖を
ぶっきらぼうに放り投げたわ。
ディーナさんが猫を傷付けるなんて事は無いでしょうけど。デュオさんは
彼女の性格を良く知らないしね。

「あんまり殺気剥き出しにすんな。殺そうって訳じゃないんだ」

「そ、そうです! 人殺しなんてそんな・・・・・」

アスリーフさんとディーナさんの言葉を聞いてか、デュオさんの
表情が落ち着いて来る。その表情は冷たいままだったけど。

「まさか私が、貴様等の様な輩に遅れを取るとはな・・・・」

「その自信は一体何処から来るのかね。いくらアンタが強いからって、
この人数に勝てると?」

「ふ、貴様等はぬるいんだよ。何人も馴れ合って仲良しごっこか?
足りない部分は補い合うか? 茶番だ。私は違う。これを手に入れる
為に、自分だけを信じ、自分だけで戦って来た!」

叫ぶデュオさんの目線の先には、悲しげな表情をした女性の像が、
まるでデュオさんを哀れむ様に見下ろしていた。

「何が自分だけだ。俺達の強力あってやっとじゃねえか」

「強力ではない。私は貴様等を利用したに過ぎん」

「口の減らねえ・・・・・・!」

力強く拳を握るアスリーフさんの腕を押さえ、私はデュオさんに
歩み寄って行った。

「それが貴方の言う正義なのかしら? 私には負け犬の遠吠えにしか
聞こえないわ。仲良しごっこ? 茶番? 大いに結構。私はそれが
好きだからこの仕事をやっているの。この言葉の意味が分からない?
だから貴方は負けたの」

デュオさんの表情は無だった。何を考えているのか分からない。私の
事を内心、馬鹿な娘だと嘲笑してるのかもしれない。だけど、私の
言いたい事は言った。私の大切な仲間を馬鹿にした事も怒った。後は、
役人が彼を罰するだけ・・・・・。

「くく・・・・・負け犬? 私がか?」

急にデュオさんがくぐもった笑い声を出す。そして恐らく私に問うて
来た。私はそれに応えず、目だけで肯定してやった。
その瞬間。

「きゃあっ!!」

ディーナさんの悲鳴と白い猫が窓から飛び降りる光景が脳裏に届いた。
そして、私の身体に走った奇妙な感覚。まるで、身体を引き裂かれる
かの様な・・・・・・激しい苦痛。

「キャナルッ!!」

誰の声か判断出来ない。私の目は天井を写す。私は床に身体を横たえた。
そこまでに至る時に見えた、デュオさんの右手。そこには、指輪が一つ
はめられていた。二つ目の、発動体が・・・・・・。
 
詐術
ソラリス [ 2003/08/09 17:14:28 ]
 <最上階 中央の部屋>

 アタシは一体何が起こったのか、すぐには判断が付かなかった。 デュオが正面にいるキャナルに向けて不敵な笑みを浮かべたその瞬間、紫色の細い光がカタールをのど元に突きつけていたルクスとキャナルを貫き、同時にくずおれた。 アレは…”電撃”かっ。
「くく、自分自身の身さえ守れぬ輩等が、私を負け犬呼ばわりするとはな。 いかがかね、電撃の味は?」
 足下に倒れ込んだルクスを蹴ってどかし、倒れ込んだキャナルを見下ろして高らかに笑う。
「貴様っ…!」
 アタシが動くよりも早く、アスリーフが剣を構えて斬りかかる。 渾身の力を込めて振り下ろされる鋭い剣の一撃が、とっさに構えたデュオの左腕を見事に捉えた。
 さすがは職業戦士と言ったところね。 まさに電光石火、ってトコロかしら。
「………………あ?」
 デュオは足下に落ちた腕を訝しげに見下ろし、次いですぐ目の前で再度剣を構えるアスリーフを、そして、そこにあると決して疑わない自分自身の左腕へと視線を移す。
「次は首が飛ぶぞ」
「……く、なかなかに、やる、ようだな…小僧」
 大量の血が流れ落ちる左腕を押さえ、ぎりり、と歯ぎしりをする。 アスリーフを睨み付けるデュオの顔は血の気を失って白くなり、じっとりと汗が浮かんでいるのが解る。
 だけど、どうやら戦意はまだまだあるみたいね。 どこからそんなに自信が湧いてくるかしら…?
「ディーナ、ソラリス、今のうちにルクスとキャナルを何とかしてやってくれ」
「う、うん。わかったわ。 キャナルさんは私がやるから、ソラリスさんはルクスさんをお願い」
「了解。 ほら、いつまで寝てる気? とっとと起きなさい」
 キャナルを抱きかかえて起こすディーナとは対照的に、アタシは剣を構えてデュオを警戒しながら近寄り、ルクスの頭を軽く蹴る。
「てっ、てめっ、ソラリス! オレに恨みでもあんのカ?」
 ルクスは何か言いたげにアタシを睨み付ける。 文句は後でゆっくり聞いたげるから、今はデュオのことに集中して。
「あいつ、まだやる気なのカ…?」
「どうもそうみたいね」
 アタシは起きあがったルクスに手振りで(このままデュオを囲い込んじゃいましょ。後ろに回り込んでくれる?)と送る。 ルクスの方は意図を悟ってくれたらしく、滑るような動作でデュオを完全に包囲してくれた。
 幾ら強いとは言っても、3人で囲ってしまえば流石に戦う気は起きないだろう。 そう踏んだからこそだ。
「今回はここまでか…残念だ」
「今更次があるなんて思わないことね、デュオ。 どんな目的でアタシらを騙してここに来たかったのかは知らないケド、それももうお終い。 このまま戦って死ぬか、アタシらに降参するか、今すぐ選んで貰うわ」
「くくく、いいだろう。 私の回答はこうだっ!」
 デュオの右手に填められた指輪が青い光を放った。 それと同時に、空間に黒いしみが広がり、真っ暗な闇に包まれた。
「ち、セコイ手で逃げようッて肚かヨ。 そうはいくか。 見えなくたって音は聞こえるんだゼ? デュオさんよ?」
 デュオが居ると思われる所へ向けて怒鳴りつける。 が、返事はない。
「こんな闇っ、私が直ぐに消して見せますわ!」
 闇の向こうでディーナがそう叫ぶと、明かり呪文を唱えて杖の先に触れる。 が、いっこうに闇は晴れなかったのだ。 そのとき、四方八方からデュオの声が響き渡り、闇の中に沢山のデュオが浮かび上がった。
「くははは、甘い、甘いな貴様等。 そのような稚拙な術など使うものか。 幻術を極めたこのオレ様ぐらいになると、そう簡単に死なないのさ。 さて、ここまで来て残念だが、さすがに辛いのでな。 一足先にパダへ帰らせて貰うよ」
 そう言い放つと、沢山のデュオはそれぞれ踵を返して足音とともにこの場を離れ始めた。 その行き先には、ご丁寧にドアまで描写されている。
「これじゃあ、どれが本物なのか…さっぱり解らない。 ちくしょう、あんな卑劣な奴をこのまま逃がしてしまっていいのか!?」
 アスリーフの痛烈な叫びに、沢山のデュオは嘲笑で応えた。
 
Pearl Shine
ルクス [ 2003/08/09 21:45:28 ]
 《追跡中)

 いくつものデュオがばらばらに逃げていく。
「くそっ、一体どのデュオを追ったらいいんだ!」
「簡単ですよ」
 思わぬ一言。それは、幻影のドアを魔法解除で破ったため、荒い息をついているディーナが発したものだった。
「ど、どうやるってんだ?」
「ほら。幻影は血なんて流さないんですよ」
 ディーナの指が、床に点々と滴った血の跡を示す。
「なるほど。そこまで頭が回ってなかったってわけね」
「当たり前っちゃ当たり前だナ。フツーは降伏するくらいの怪我だ、逃げるのだけで精一杯なんだろ」

《玄関》

「そこまでだ!」
「くそ・・・・・・もう追いてきたかっ」
「もうお終いよ。魔法は打ち止めでしょう?」
 じりっと後退するデュオ。それを追い詰める、四人。
「ふんっ、それはどうだかな!」
 さっ、と右手を突き出すデュオ。
「マジ!? 魔法を使わせちゃ駄目!」
「だりゃああ!!」
 一気に距離を詰める、アスリーフとキャナル。しかし、不意にその姿が揺らいだ。
「んな!?」
「しまっ・・・・・・ここには!」
 二人は失念していた。来るときに、このフロアに落とし穴があったことを。慌てて手を伸ばしたキャナルも巻き込んで、三人が落とし穴に落ちてしまった。
「くほほほ、馬鹿めっ、最後は頭のいいものが勝利するのだ!」
「み、みなさん!」
「魔法を使い切ったのは同じだが、ひ弱な小娘一人では何も出来まい! さらばだ!」
 狼狽するディーナにさげすみの視線を投げてから、くるりと背を向け、扉を開けて――
「遅かったナ、デュオさんよ?」
 ザシュッ。
「・・・・・・・・・ぐあっ!?」
 扉の外にいたオレが、デュオの足を自慢のカタールで切りつけた。
「な、何故だっ、何故お前がここに!?」
「ハハハ。オレにかかれば、ここの2階から飛び降りて回り込むなんて目を瞑っても出来ることだゼ?」
「気付くべきだったわね、私たちが四人しかいなかったことにね」
「油断大敵よ」
 穴から這い上がってきたキャナルとソラリスが言う。
「さーて。その足じゃもう逃げられないだろ? 大人しく本物のデュオがいる場所を吐いて」
「縛についてもらおうか?」

《パダ》

「・・・・・・すまない。俺が油断したばかりに、君たちに多大な迷惑をかけてしまったようだな」
 変身の魔法を解く前の、ニセデュオと(当たり前だが)まったく同じ顔をした本物のデュオが言った。
 ちなみにニセデュオは、本物を監禁していたその手下たちと一緒に、とっつかまえてすでに衛視に引き渡してある。
「いや、無事でなによりよ」
 衛視から支払われた、ささやかな報奨金は、宴会が開ける程度だった。ということで、無事に助け出せたってことで宴会をしていたのだが・・・・・・。
「あの・・・・・・デュオさん。これなんですけど」
 そこで不意に、ディーナが布に包まれた、大粒の真珠の首飾りを取り出した。あの、魔法装置の部屋にあったものだ。
「・・・・・・こ、これは・・・・・・《乙女の涙》!?」
「お、オマエあれを取ってきてたのか!?」
「え、ええ、一応。だ、駄目だったでしょうか」
 ・・・・・・抜け目ねぇ。オレでさえ失念してたのに。
「本物のデュオさんもこれを探してるんだろうと思って、持ってきちゃったんですけど」
「ああ、そうだ。《乙女の涙》と名付けられたこれは、身につけると幻覚魔法を容易に拡大できると言われている。《乙女の祈り》と呼ばれる彫像と組み合わせることにより、さらに魔力を強め大幅な拡大が可能になるらしいが・・・・・・」
 なるほど、その祈りって奴があの像だったわけか。
「もしかして、あの塔が綺麗な輝きを持っていたのはこれもせいかもな」
「もしかしなくても、そういうことになるんじゃない?」
「・・・・・・そ、それより俺が探しているんだろうと思って、とは?」
 心なしか動揺したデュオ。そして、わずかな沈黙。
「持っていけよ、オマエが」
「他にもお金になりそうな物もあるしね」
「ちょっと勿体ないけどな」
「最初からデュオさんが狙っていたものだしね」
「何か思い入れがあるんでしょう? 遠慮せずにどうぞ」
 オレたち五人に次々に言われ、やはり困惑しているのだろう。
「・・・・・・しかし、迷惑をかけた上にこれでは、君たちに悪すぎる」
「いいって言ってんだから大人しく貰っとけよ? 冒険者は心変わりが早いんだゼ?」
 しばしの逡巡。そして、不意に店のマスターに近づき、幾度か言葉を交わして皮袋を受け取り、戻ってきた。
「・・・・・・では、好意に甘えよう。これは、謝礼だ。受け取ってくれ」
 音から察するに、かなりの大金が入っているだろうと想像が付く。
「別に要求はしてないわよ?」
「・・・・・・いいんだ、受け取ってくれ。これで、あいつも浮かばれる」
「あいつって?」
 デュオの話を掻い摘むと、この首飾りは元は彼の婚約者が探していたものだったらしい。しかし、夢を達成する前に死んだらしい。
 それを知ったデュオは、長年情報を集め、ようやくこの遺跡を見つけたらしいのだ。
「じゃあ持ってきちゃって、悪かったのでしょうか・・・・・・」
「いや。気にしなくてもいい。夢見た遺跡がどのようなものだったのかは分からなかったのは、残念だがね」
「ちょっと予定とは違ったみたいだが、これからどうするんだ?」
「とりあえず、これをあいつに届けるために、墓のあるミード湖まで行くする」
「そう。じゃ、今日はゆっくり休みましょう。まだまだ、夜はこれからよ」
 再度、乾杯の音が響き渡った。

 数日後。真珠の塔と呼ばれた塔は、その名を失った。
しかし、その名を知るものの心の中にはずっと存在している。
 麗しき乙女の祈りに導かれ、真珠色に光り輝くその塔が。

[了]
 
(無題)
管理代行 [ 2004/11/27 4:50:52 ]
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