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光の届かぬこの場所で
プロローグ [ 2003/08/08 2:35:57 ]
  夏真っ盛り。照りつける太陽はまぶしく、打ち寄せる波は涼しげで、吹き付ける爽やかな風は心地よい。

 なのに。なのに。
見目麗しき五人の美女美少女達が立っているのは、陰気な地下遺跡。

 水も滴るいい女、とは言ったものの、それは海の底を《水中呼吸》の魔法を使って潜ってきたから。各々の手には、日傘の代わりに剣や斧。
そう、彼女達の目的はお仕事だったのです。遺跡の奥に潜む闇司祭討伐、そして捕らわれの少女の救出。それが此度の依頼です。

 女だらけの素敵なバカンスは何処に!?
今、闇司祭退治が始まる。結果はどうなるのだろうか。

 活目して待て!
 
念には念を
スピカ [ 2003/08/08 3:02:37 ]
 《海へ続く出入り口(祭壇)》

 《水中呼吸》は偉大ですわ。泳げないわたくしでも、こんなところを通ってこれるだなんて。
「それより、周りは大丈夫?」
 ええ、大丈夫ですわ。見張りの方も誰もいませんわ。きっと奥で、本儀式のための準備をしているのでしょう。
「見張りも置かないってことは、アレックスが言ってた闇司祭一人しか見てない、っていうのは本当かもね」
「でも、ゾンビとかは覚悟しといたほうがいいんじゃない?」
「とにかく、出来るだけ気付かれないように行くわよ」
 あらあら・・・・・・クレフェさん、大丈夫ですか? 《精神融通》しましょうか?
「まだ大丈夫よ。いざとなったら頼むから、今は癒しのために取っておいて頂戴」
「では灯りをつけますね」
 お願い致しますわ、ディーナ様。さすがに、壁にかかった松明を拝借するだけでは心許ないですもの。レイシアも、出来れば光の精霊をお願い致します。

「うわ・・・・・・悪趣味な祭壇」
 暗黒神の祭壇ですもの、少なくとも心地のよいものではありませんわ。
「それじゃあ、早いトコ進んじゃう? こんな祭壇に長居は禁物だし」
 そうですわね。では進みましょうか・・・・・・何が待ち構えているかわかりませんし、気を引き締めませんと。

《廊下》

 とりあえず、人質もいますから、扉は手当たり次第に開けていきましょうか?
「鍵のかかった扉があれば、わたしが魔法であけますね」
「大丈夫かな、罠とか無い?」
「たぶんその心配はないです。逃げ延びるための隠れ家とはいえ、完全に私生活を送るための遺跡のようですし。便利な仕掛けはあったとしても、罠は無い、あったとしても普通の遺跡よりも少ないはずです」
 さすがディーナ様ですわ、お詳しいですね。
「でも、一応、パペットでも作っておいたほうが良いんじゃないかしら?」
 なるほど、わたくしたちの代わりに扉を開けてもらうんですのね。
「あ、そうすれば罠があったとしても、離れてみていれば代わりに引っかかってくれるわけですね」
 念には念を、というわけですわね。

(樫の枝を出し、呪文)

「よし、これで準備は万端だね。じゃあさっそく、一つ目。開けようか」
 
日記帳
ミトゥ [ 2003/08/09 1:08:17 ]
  《寝室》

 一番近くの扉を、パペットくんにあけてもらう、罠無し、鍵無し飛び出してくるものもなし。
 と、言う訳で、中に入って見ると、本棚にベッドが…あ、ここ寝室だよ。
 「毛布などは新しいですわね、ベッドも治した後がありますわ、多分ここで暮らしているのでしょう」
 うへぇ、こんな陰湿な所で?つうか、村の近くにそんなやばげなのが暮らしてたなんて…嫌な感じ…。
 (本棚の中の一冊を手にする)これ古代語かな?もしかして昔ここに逃げてきた魔術士のものもあるのか?この本棚。…この洞窟の見取り図みたいなのないのかなぁ?(物色開始)
 「なんか随分マメな奴見たいね」
 ん?レイシア、なに見っけたの?
 「日記帳、ご丁寧に攫った日の事も書いてあるわ」
 ほう、どれどれ……攫ったのは4日前か…意識をしたとか、そう言う事書いてあった?
 「いえ、準備の話しはあったけれど、実際にやったと言うのはまだね、だからまだ攫った子を生贄にはしてない見たい」
 「まだ間に合うわね、急ぎましょうか」
 そうだね、ディーナ、本棚は後!

 《再度廊下》

 普通に考えれば、逃げられないように奥に閉じこめると思うんだけど…。
 「まず簡単に逃げ出せる場所ではないからね、開いてる部屋に普通に閉じ込めておいているかもしれないわね」
 「談議してても始まらない、次行きましょ」
 はいはい、パペットくんお願いね。

 鍵無し、またもあっさりと2つ目の扉が開けられる。
 さて、次の部屋はなにかな………
 
分かれ道
ディーナ [ 2003/08/09 20:23:50 ]
 <寝室2>

 寝室に続いて、隣の部屋をパペットゴーレムに開けさせ、中を覗くと、部屋の中は、先程と雰囲気は似ていますが、もっと雑然とした感じでした。
 ベッドや机、本棚などはなく、毛布が何枚か散らばっているだけ。
「こっちは……手下の部屋かしらねぇ」
「うぇ、ますます不健康な感じ。何にも無さそうだし、さっさと出ようよ」
 ぐるっと部屋を一周見回して、目ぼしいところはどこにもなかったのでみんなで外に出ました。
「今の毛布の数からして、闇司祭の下に少なくとも三人は信者がいるということですわね」
「そうね。いくらなんでもあの小さい毛布で二人以上が仲良しこよしで寝てるとは考えにくいし」
 部屋から出ながら、スピカさんとレイシアさんが推理を述べられました。それに頷くクレフェさんとミトゥさん。
 な、なるほど、あの部屋の状況からそういうことがわかるわけなんですね。
「遺跡の話だったら色々頭が回るのに、こういうのは苦手なんだね」
「本を噛り付いて読むばっかりじゃなくて、冒険者なら、こういう目も鍛えなきゃね」
 ミトゥさんの言葉を受け、クレフェさんがそう言って私にウインクしてきました。
 そうですね……これからは気をつけます。
 それにしても……はぁ、クレフェさんって、ステキな大人の女性って感じです。いいなぁ……。


<廊下>

 さて、再び廊下に戻って奥へと進んでいきます。それ以上には扉はなく、廊下は突き当たって左右に別れました。
 パペットゴーレムを先に歩かせた後、スピカさんがこっそりと顔を出して左右を確認します。
「右のほうが少し明るくなっているみたいですわ。もしかしたら、向こうで儀式の準備をしているのかもしれませんわね」
 そして、スピカさんが小声で報告してきました。
「じゃあ……左のほうは?」
「ネムがいるのかも……まだ儀式の準備が終わってなかったらだけど」
 うう、怖いことを言うのは止めましょうよ。
「そうね。じゃあ、ここは一つ儀式の準備ができてないって信じて、先にネムを助けにいくとしましょう」
 
朽ちた遺産
クレフェ [ 2003/08/09 23:50:34 ]
 <廊下(左折後)>

 儀式が始まる前に、そしてできれば暗黒神の信者達に見つかる前に迅速な活動を。
 レイシアと2人、念のため確認する。通路突き当たりの右側の奥には仄かな光。しかし人の体温は感じられない。恐らく部屋の光が漏れているだけだ。
 「行くわよ。ネムの身柄を早く確保しなきゃ。」
 言いかけて足を踏み出して……軽いめまい。倒れるほどではないけれど、額を押さえて立ち止まる。
 「クレフェさん、ご無理はいけませんわ。」
 私の様子にいち早く気付き、そっと触れてきたスピカに今度は素直に頷いた。このままでは闇司祭を見つけたときに相手の口をふさぐことすら出来ない。元々私は剣を持つことも覚束ない人間だ。ダガーは申し訳程度にしか使えない。
 そんな私のやり方は、とにかく魔法を使う相手の呪文詠唱を封じること。相手にもよるが、機先を制することができればその後の戦闘が格段に楽になる。逆に、相手にそれをやられてしまったら私にはもうなす術がない。ただの足手まとい同然なのだ。
 情けないけれど、それが事実。意地を張って足手まといになるなど冒険者の名に恥じる行為だ。
 ほんの僅かに《精神融通》をかけてもらい、再度歩き出す。スピカの手を通して伝わってくる温かな感覚に身をゆだねながら「魔晶石をもっと買って置けばよかった」と悔しく思った。
 
 パペットゴーレムを先頭に、私たちは足早に通路を進んだ。
 扉は奥に向かって左に一つ、突き当たりに重厚なものが一つ。光は見えない。
 
<左側の部屋(旧・実験室?)>
 
 部屋の真ん中に大きな姿見のようなものが据えられていた。かつては実験室の一つだったのだろう。部屋の端には古びた道具が無造作に置かれている。
 「”移送の扉”でしょうか? わぁ、私見るの初めてです!」
 ディーナが感激もあらわに近付いていく。他の面々も興味深げに眺めているが、明らかにそれは光を失っていた。大体、半分以上崩れた部屋で、瓦礫に押し割られるように欠けているそれが、まともに機能しているとは思えない。風化した部屋の惨状は、この部屋に鍵もかけずに放置された理由を物語っていた。扉自体も相当傷んでいたし。放射状に傷痕が広がっている所を見ると何がしかの爆発があったと見てよいのだろう。実験の失敗? 
 「これ以外になければいいけどね。最悪取り逃がしかねないし。……早いとこ彼女を探そっか。」
 レイシアが名残惜しげなディーナを急かす。廊下に戻り、突き当たりに向かって進む。
 「ねぇ」
 「ん?」
 「儀式……まだ始まってないよね?」
 ミトゥがぽつりと呟いた。みなの動きが一瞬止まる。誰も見張りが居ないことを考えると、それは否定できないのだ。
 儀式がもし始まっていたら。あの光がそれを意味していたとしたら。探索を早々に切り上げる方がいいんじゃないかとふと不安に駆られた。
 
奥の部屋で
レイシア [ 2003/08/12 0:41:52 ]
 <突き当たりの扉前>
ミトゥの言葉で最悪の事態が思い浮かぶ。もう既に、ネムの命が失われている可能性。
「ですが、アレキサンドル様は生きたまま穴に落とされましたわ。少なくとも、ネムさんも落とされる寸前までは無事なのでは」
その楽観的な意見に首を振る。
「分っからないわよ。儀式の詳細は知らないけど、生贄って血生臭いものだろうし」
スピカが唇を噛んだ。ディーナとミトゥも、手を握り締めて不安げにこちらを見ている。
悪い予想を煽るわけではなかったが、私達は未だネムを見つけていない。彼女を見つけるまで一安心は出来ない。
「とにかく、この扉の先を調べましょう。それで見つかれば万々歳よ」
クレフェの言葉に異論はなかった。
時間との勝負。ネムを確保する迄、見つかりませんように。


<突き当たりの部屋>
パペットが重そうな扉を開ける。中は灯り一つない暗い部屋。
所々積み上げられている荷物があるから、ここは倉庫なのかな。ぱっと見、それ以外は特に見当たらない。
「ネムさん、いませんね
「やはり、向こうの灯りが見えたところに居るのでしょうか」
「灯りの所って、多分闇司祭達もいるんでしょうね」
「見つける前には叩ければ、後は楽なんじゃないかな。それじゃ、向こう側も行ってみますか」

「しっ、ちょっと待って。何か聞こえる」
皆の声を遮り、ミトゥが人差し指を口に当てて、静かにするよう合図する。
ミトゥと同じように耳を澄ませてみると、微かに、微かにだけれど声が聞こえる。
これはなんだろう。……啜り泣き?
「荷物の向こう側から聞こえるわ」
そう言って、ミトゥと一緒に荷物の後ろを覗き込んだクレフェが、笑みを浮かべて手招いた。
「後ろ、扉があるわ。声はそこから聞こえるみたい」
 
・・・・・・ネムじゃない?
スピカ [ 2003/08/12 14:35:44 ]
 《奥の隠れた扉》

 (壁に耳)確かにすすり泣く声が確認できますわ。
・・・・・・さすがに、鍵がかかってますけれどね。
「では、私が」
 ディーナ様が杖を握って短く呪文を唱えると、程なくしてかちりと鍵の開く音。壁から少し離れて、パペットが扉を押し開くのを待って、中を覗き込むと――
「誰か居るね」
「何かも、いるわよ」
 すすり泣く声がはっきり聞こえ、同時に怪しげな気配。
 灯りに照らされたのは、一人の少女と蠢く骸骨が四匹。そのうちの二匹が、剣を構えて襲い掛かってきました。
「スケルトンですっ」

 鎧が無いので戦いづらかったですが、しょせんは低級の不死者。わたくしとレイシア、ミトゥ様の猛攻ですぐさま退治できました。
残りの二匹は、どうやら人質の監視だったらしく、ディーナ様曰く「ここから出ようとするものを攻撃しろ」との命令をされているとのことです。
「じゃ、攻撃してこないうちに壊そ」
 レイシアの一言で、残りも殲滅。次は隅で泣いている女の子の救助ですわ。

 もう大丈夫ですわ。あなたが、ネム様ですか?
「・・・・・・ぐすん。ち、違うけど・・・・・・助けに来てくれたんですか?」
 ええ、そうですわ、もう安心してくださいな。それにしても・・・・・・
「・・・・・・ネムじゃない?」
「もしかして、人質って何人かいる?」
 すみません、詳しくお話願えませんでしょうか?

 ここに閉じ込められていた女の子の話から、人質は何人かいるらしいということが判明しました。
「閉じ込められている場所はわかりませんけど・・・・・・」
 いいえ、何人かいるとわかっただけでも十分ですわ。ありがとうございます。
「それより、このコどうしよう? これから闇司祭との戦いもあるし、連れて行って危険じゃないかな?」
「いくら後から助けるって言っても、置いていって安全とも言えないわよ?」
 どうしましょう・・・・・・。
女の子は、助けが来たと分かって若干落ち着きを取り戻したようですけど、まだ精神的にはつらいでしょうし・・・・・・。
「では、わたしが魔法でここに鍵をかけます。そうしたら、外から誰も入ってこれませんから敵に関してはこれで安全かと。それで、外が騒がしくなって、何かあったと感じたら合言葉を言って自分で逃げる、ということでどうでしょう?」
 古代語の意味が分からなくても、合言葉を知っていれば鍵は開きますしね。
「うーん・・・・・・それが一番いいのかな?」
 女の子もやはり不安げみたいですね・・・・・・。
でも、着いて来たら余計に危険かもしれませんわ。後ろに下がっていれば安全ですけれど、魔法が飛んでこないとも限りません。きっと助けに来ますから、ここで待っていてくれませんか?
 長い沈黙のあと。
「・・・・・・わかりました。ここで待ってます」
 しっかりと頷いたのを確認して、微笑みかけてからわたくしの聖印を手渡します。
「ご理解いただけてありがとうございます。チャ・ザ様がお守りくださいますように、これを」

 少しでも不安を取り除くために、スケルトンの残骸を掃除し、誰にでも覚えられる簡単な合言葉を決めて、ディーナ様が魔法で鍵をかけて、
「じゃあ早いトコみんなを助けに行こう! 人質はまだいるみたいだし、急がなきゃ」
 
提案
ミトゥ [ 2003/08/13 13:58:27 ]
 《左折後の突き当たりの部屋をでて、再びT字廊下》

 人質がバラバラにいるとしたら、結局はしらみ潰しに探さなくっちだね。
 しかし、いっそのこと一つの場所に全員まとめて置いてくれたらいいのにさー。
 「まぁ、一人づつなら助け出されても、違う子を連れて逃げたりも出来る、一つに纏めて置いたら、逃げ出される時も全員だからね」
 「折角の準備が水の泡になりますわね…」
 生贄の儀式なんざ水の泡になってもいいってーの。
 「だから、今から水の泡にしに行くんでしょう?」
 あ、クレフェの言うとーりだったねぇ(笑)
 奥の明かりがついている部屋が気になるけれど…
 「次の扉、開きましたよ」
 りょーかい、ディーナ、まずは手前の扉から…

《明かりのもれている部屋の手前の部屋の一つ》

 荷物少々…ここも倉庫かな?
 「ちょっと、下に降りる階段があるわよ」
 あ、まじ?
 「では、ここの他の女の子がいるかもしれないですね」
 あ、ちょっとまった、見張りおいたほうがよくない?下に確実にいるとは限らないし、それに…
 「出入り口がここしかないのなら、見付かったとき袋にされちゃうわね」
 うん、レイシアの言うとーり、それがいいたかったの、それに、下に都合よく隠れる場所があるとも限らないし。

 でも、これは提案だから、どうしてもそうしなくっちゃいけないとは言わない、つー事で、その他の意見を求めまーす。
 
不利な戦い
ディーナ [ 2003/08/14 14:50:27 ]
 <倉庫らしき部屋>

 でも、この下が行き止まりだとしたら、見張りをつけてもここで追い詰められるのは一緒じゃないでしょうか? それだったら、みんなで一緒になっているほうが安全だと思うのですけど……。
「一理あるわね。相手は、生贄なんて考えるような連中だし、一人でいるところを捕まったりしたら、他の子たちと一緒に海の底へ……」
 こ、ここ、怖いことを言わないでくださいよ。
「でも、ありえない話ではありませんから。わたくしたちにしても……ネム様にしても」
 そう、ですね……急ぎましょう。
「でも、この階段、一人ずつぐらいしか降りれそうにないよ。どうする?」
「まず、パペット君に行ってもらうとして、次にボクで、スピカかな。ディーナとクレフェには、間に入ってもらって、後ろはレイシアに任せていい?」
「わかったわ、任せて」
 そして、私たちは、階段をゆっくりと降りていきました。


<倉庫地下への階段>

 階段を降りてしばし、行き止まりには少しの空間と、そこに立つ先程見たのと同じ怪物。
「また、スケルトンだっ」
 ミトゥさんが、反応して剣を抜きますが、先頭はパペットゴーレムのオークがいるので、戦いは任せるしかないです。でも、相手もスケルトンが一体だけですから、任せて大丈夫のはずですよ。
 私が古代語でオークにスケルトンと戦うように命じるのと同時に、スケルトンもこちらに向かってきます。丁度、階段の上り始めぐらいで両者がぶつかる形になりました。
「これって……こっちのほうが不利だよ。足場が悪い」
 ……確かに、そうですね。
 もともとの戦闘能力はオークのほうが上のようですが……しかし、階段では、その力もほとんど発揮できていないようです。こちらの攻撃は全く当たらないのに、向こうからは二度、三度切りつけられてあきらかに分が悪いみたいです。
 魔法で援護しましょうか……?
「もう少し、様子を見たほうがいいわ。魔法はまだ、節約したほうがいいし、それに、攻撃はもらってるけど、そんなに効いてないみたいだから」
 はい、判りました……あっ、また切られちゃった……。
 と、その攻撃を食らったせいで、オークが足元の悪さも加わって、バランスを崩したみたいです。がしゃーんと派手な音を立てながら、スケルトンに覆い被さるように倒れるオーク、当たり所が悪かったのか、スケルトンはぴくりとも動かなくなりました……。
 ………………。
「……まっ、結果おーらいってことで」
 そ、そうですよね……。
 スケルトンが動かなくなったのを確認して立ち上がるオークを見て、ミトゥさんがポツリと呟きました。
「……やっぱりディーナが作ると、パペット君もどこか抜けてるのかな……」
 そ、それは酷いですよ〜。
 
船着場
クレフェ [ 2003/08/14 23:06:54 ]
 <倉庫の地下>

 「あ、ありました! 壁に鎖がっ!」
 階段のすぐ脇の壁の隙間に、小さな鎖が隠されていた。降りて来た側からは見えず、また階段に向き直っても不注意な人間なら見落とすような場所に隠す辺り、元の遺跡の持ち主の性格が伺える。
 ディーナは遺跡慣れしてきたのだろうか、比較的すぐにその仕掛けを見つけた。末恐ろしい。
 ここまで隠し扉(といっても”鍵”でもない私たちが見つけられる程度のもの)くらいしか見当たらない所を見ると、もとは襲撃の際の逃走経路なのかとも思う。恐る恐る鎖を引いた先に扉が開いたから、そう思ったのだけれど。狭い階段は追跡者にとって面倒な代物だ。
 扉の向こうからは潮の香り。とりあえず、いってみましょうか。

<地下洞穴>

 緩やかな下り階段を更に下りて、暗い洞穴のような通路へ。声も足音も反響するので注意を促した。反響が上の部屋に聞こえては台無しだ。
 暗い室内であっても、濡れた多数の足跡は松明の灯りに光る。足跡をつけないために、服の水は祭壇の間で穴に向かって絞ったし、履物も持ってきた布(濡れていたが)で出来る限り水を吸わせてみた。
 行動を制約されない限度まで皮袋に二重に包んだ荷物やら武器やらを分担して身にくくりつけてやってきた私達の姿はかなり滑稽だったと思う。そうまでして来たのだ、簡単に見つかりたくない。
 暗い回廊を灯りを頼りに歩いていく。すると、松明がゆらゆらと揺らぎだした。同時に、肌に感じる僅かな風。風は、何かがきしむ音をかすかに伝えてくる。
 少し歩くと、風に乗って来た音の正体がわかった。開けた場所にあったものは水辺、そして。
 「これ、元は多分漁船だよ。この近くじゃよく使われる形かな。盗まれたか、奪われたのか……」
 ミトゥが悔しそうに言う。ここはどうやら地下の船着場のようだ。
 「確かアレキサンドルさんは”洞窟の中の牢に閉じ込められていた”って言ってましたよね。小さな船で連れ出されたとも。」
 「じゃ、これがその船ってことになるのかな? 確かにこれなら目立たないよね。」
 「そう考えるのが妥当でしょうね。ネムさんがまだ閉じ込められてるなら、近くに牢があるかもしれない。急いで探しましょう。」
 
 船着場の先に、さらに通路が広がっていた。そして突き当りには階段。
 天然の浸食洞を利用したその空間には、大小の洞穴が開いていた。幾つかにはご丁寧に鉄格子。錆が浮いている所を見ると、このあたりは古代王国期のものではないのだろう。
 「今何か聞こえませんでしたか?」
 前を行くスピカが足を止め、皆に注意を促した。言われるままに耳を澄ますと、船のきしみと潮の運ぶ音色に隠れるように、小さなすすり泣きが聞こえてきた。
 そっと近寄ると、狭い洞穴の端で身を縮めるようにして泣く少女の姿があった。私達に気付いて、小さく悲鳴をあげるが、女性ばかりと知ってひどく驚いたように、尋ねてくる。
 「お姉さんたち、捕まってた人?」
 「いいえ、逆ですわ。助けに参った者です。……あなたはネムさんでいらっしゃいますか?」
 この問いかけを彼女は否定し、ネムは隣の牢屋にいたが別の場所に移されたと答えた。彼女は昨夜の儀式でネムの兄が生贄にされたと今朝聞かされたそうだ。今宵は自分達の番だとも。
 他ならぬ「ネムの兄」に頼まれたと聞かされて彼女は目を丸くし、次いで安堵の涙をこぼした。
 いくらかやり取りして判ったのは、残った生贄は3人いること。既に司祭は昨夜から儀式を始めており、今夜の満潮の頃に自分達は生贄にされること。儀式に浮かれたか、信者が漏らしたという。信者達も儀式の間に控えて何かと忙しいため、今日はもう食事もなく、生贄になるのを待てと告げられたのだと。
 「じゃ、あとはネムを救出すれば全員助けられるってことね。」
 そう言ったとき、多少落ち着いたのか空腹を覚えた。具体的にはおなかが鳴った。
 「…………皮袋に木の実と水を入れてきてるでしょ? 少し食べておかない?」
 全員の肩が震えるのをあえて見ないようにしながら、多少懇願気味に呼びかけた。
 
人質
レイシア [ 2003/08/17 15:18:21 ]
 <地下洞穴>
言われて、こちらもお腹が空いてきた。
「そだね、少しお腹に入れておこっか。探索時にお腹鳴ったら大変だし」
笑いながら言うとクレフェが恨めしそうな視線でこちらを見る。
そのやり取りに、少女が小さな笑い声を漏らした。

持ってきた木の実を食していると、ミトゥが「そーいえば」と口を開いた。
「ねぇねぇ。ボク達がここに入って、どれくらい時間経ったんだろうね」
「そうですね……オークが枝に戻ってしまったので、1時間位でしょうか」
さっき灯り代わりにしてたウィスプも消えちゃったしね。再度呼び出しておかなくちゃ。
「あ、オークは此処出てから作り直しますね。また階段転げ落ちちゃったら、困りますし」
恐縮するようにディーナが言う。その側でスピカが頬に手を当て、溜息をついた。
「でも満潮の時間が分からないので困りますわ。確実に迫っていると言う事だけは分かるのですが」
「その前に、この子どうしよっか。またさっきと同じようにする?」
「あ、そうですね。そうしましょうか?」
「でもディーナも結構魔法つかってるし、節約したいって気持ちもあるわねぇ…」
不安げに私達を見上げ少女。置いてかれては堪らないと言うように、スピカの服の袖をしっかりと掴んでいる。スピカは安心させるように微笑んで、少女の肩に手を置いた。
「じゃあさ、さっきの女の子と合流させちゃうってのは? その方がこの子もボク達も安心できると思うけどな」
あ、それ良い考えかも。でも向こうの倉庫に戻っている時間は無いと思うから、この子は一人で行かせる?


<倉庫らしき部屋>
洞窟から出、狭い階段を上る。順番は降りた時の並び順と一緒。違うのはパペットが居ないのと、ディーナとクレフェの間には捕まってた女の子が居ることだけ。
「向こうの倉庫には魔法の鍵がかかっていますから、合い言葉さえ洩れなければ安心ですよ」
とディーナが少女を安心させるように声を掛けている。
全員が登り切って、部屋を出ようとミトゥがノブに手を掛けようとした時。
扉が開いて、姿を現したのはフードを被った一人の男。
「っ……!」
信者が声を上げるより先に、ミトゥとスピカが男の口を押さえて部屋に引きずり込む。
クレフェが少女を後ろ手に庇い、ディーナが慌てて扉を閉じた。
どうやら、居たのはこの男一人だけだったようだ。恐らく少女の様子を見に来たか、連れに来たか…。
「声を出さないで。抵抗もしちゃ駄目よ。もし逆らったりしたら……分かるわよね?」
にっこりと、微笑みながら短剣を突き付けた。
 
光の届かぬこの場所で
スピカ [ 2003/08/18 16:04:02 ]
  では、こちらの質問にキリキリ答えていただきましょうか。
「人質の数はわかってるし、全員保護したからいいよね。貴方たちのボスは、あの灯りの部屋にいるの?」
「・・・・・・」
 (口をふさぎながら)喋れなくても、頷けますわよね?(←斧ちらり)
「スピカ、ちょっと笑顔が怖いわよ」
 いいんですの。闇司祭やその信者に人権はありませんわ。
「・・・・・・さすがにそれもどうかと」

 聞き出せるだけの情報を聞き出したあと、その信者は簀巻きにして倉庫に放り込んでおきました。帰りに拾って、オランの衛視にでも突き出しましょう。
 聞き出した情報が本当ならば、闇司祭は例の灯りがもれている部屋で、儀式の下準備中みたいです。部下は、残り二人。
「準備が終わって出てこられても困るよね。もう踏み込んじゃおうか?」
 考えていても始まりませんしね。わたくしはミトゥ様の意見に賛成ですわ。
「そうですね・・・・・・で、では覚悟を決めて行きましょう」

《扉前〜室内》

 ばんっ。と勢いよく扉がパペットによって開かれます。
やはり足音が聞こえていたのか気配を感じ取られたのか、中から暗黒魔法の一撃がすかさず飛んできました。しかしそれもこちらの予想内、パペットには可哀想ですけど、楯になってもらいました。
「くっ・・・・・・やけに騒がしいと思ったら、こんな大所帯かっ。なぜここがわかったのだ」
「そんなこと気にしている暇はないわ。好き勝手できるのもここまでよ」
 例え闇司祭相手だとは言え、わたくしもあまり荒事は好きじゃありませんわ。おとなしく投降するならば、衛視送りだけで勘弁してさしあげます。
 ですけど、あくまで抵抗するというのなら・・・・・・。
「容赦はしないよ」
 さぁ、お選びなさい。

 生きて、悔い改めますか。それとも、五大神の加護、光の届かぬこの場所で倒れるかを。
「死が救われる手段、とかいうミルリーフ司祭に聞くのもなんだけどね(ぼそ)」
 あの、レイシア? 茶々はいれなくて結構ですわ。
 
決選!
ミトゥ [ 2003/08/20 0:37:37 ]
 《室内》

 こちらを睨みつけながら構えるミナサマ、ふふん、投降する気はないって訳ね、最初からわかってたけど。
 彼等が構えるのを見て、こちらも構える。
 「貴様らもミルリーフ様の生贄にしてくれる!」
 やなこった、そんなに生贄捧げたきゃ自分がなれってーの、だーい好きなミルリーフの元に行けるんだから、嬉しいでしょっ!
 「ミトゥ、怒り爆発してるわね」
 「いいたい事言ってますね……」
 「ミトゥ様、闇司祭と言えど殺さないようにしてくださいね」
 わーってるって!

 レイシアがシェイドを呼び出して闇司祭達にぶつける、その一瞬の隙を突いてディーナが魔法の矢を部下の一人に打ちこんだ。
 よしっ、スピカ、ボク等もいくよっ!(剣を構えて攻撃にかかる)
 
暗黒魔法
ディーナ [ 2003/09/06 1:44:39 ]
  ミトゥさん、スピカさん、レイシアさんが武器を構えるのと同時に、向こうの闇司祭と信者二人も武器を構えました。暗黒神官というのは、戦いの訓練も受けている場合も多い、しかも、決して侮ってはいけないレベルで……前にレックス探索したときに勉強したことです。
 司祭と信者二人が前に出て、こちらの三人を迎えています。先程、信者の一人は、油断しているところを捕まえることができましたが、こうして武器を構えて対峙するとそう簡単にはいかないでしょう。しかも、相手は、武器だけでなく暗黒魔法も使うことができますし、こちらの三人の実力を疑うわけではありませんが、もしかすれば厳しい戦いになるかもしれません。
 しかし、私は、ここに来るまでに幾度か魔法を使ってきたことですし、さっき”エネルギー・ボルト”も撃ってしまいましたので、しばらくは様子見です。もし、三人が苦戦されるようでしたら、苦しいですけど、”プロテクション”なりの援護をしなければなりませんから……。
 ですが、その私の心配も杞憂に終わりそうです。司祭と戦うスピカさんこそ実力が拮抗しているようですが、ミトゥさんとレイシアさんは、一方的でないにしろ相手を押しているようです。このまま信者二人を倒せば、司祭を倒すことも容易でしょう。

 そして、私がふっと息を緩めそうになったその時のことです。
 ミトゥさんと戦って、追い詰められていた信者が、苦し紛れをするように剣を持たない手でミトゥさんの腕を掴んだのです。
「気持ち悪いっ! 放せ!」
 ミトゥさんが、嫌悪を露にした声と共にその腕を振り払おうとしたのですが、その時、
「”偉大なるミルリーフ、この者の生きる力を闇に沈めたまえ”」
 信者の暗黒魔法の詠唱が響いたのです。

「あっ、あれっ? な、なにこれ!?」
 そして、ミトゥさんの悲鳴に近い声が上がりました。
「どうしたの、ミトゥ?」
「目の前が真っ暗だ。……ダークネスの魔法?」
 うろたえてその場を離れようとするミトゥさんですが……多分、その場を離れたとしてもその真っ暗な状態は変わらないでしょう。ダークネスの魔法なんて誰も使っていないのですから。
 しかし……ミトゥさんのその様子は一体……?
「”ブラインドネス”の魔法ですわ。目が見えなくなってしまいますの。わたくしの魔法ですぐに治して差し上げますから、お待ちください」
 ブラインドネス? 聞いたことがあります、暗黒神に使えるものだけが使える魔法で、人の視力を奪ってしまう力があるとか……剣をとって戦うミトゥさんにとって、これはとても危険な魔法です。
 スピカさんがミトゥさんに駆け寄ろうとしたとき、しかし、その目の前を司祭の剣が掠めました。
「どこへ行く……? 貴様の相手は、ワシだぞ」
「くっ……」
「無駄な努力などはせずに、死によって救いを受けるのだな」
 余裕の笑みを浮かべた司祭がもう一度スピカさん相手に武器を振り上げました。一方で、視力を失ってミトゥさんにも魔法をかけた信者が歩み寄ります。
 待っていてください、ミトゥさん、すぐに”プロテクション”をかけますから。
 そして、私は額を伝った汗を拭い、呪文の詠唱を始めました。
 
(無題)
クレフェ [ 2003/09/06 1:47:07 ]
  ディーナが詠唱する間にも、闇司祭はスピカに武器を振り上げ、信者はミトゥを狙って歩み寄っていく。負傷や疲労が動きを抑制してはいるけれど、この距離で当たれば無事ではすまないだろう。
 こちらはといえば、混戦状態が邪魔して敵に火弾や光霊をぶつけるのが難しい。となれば。
 「"困惑の精霊よ、彼の者らの内にて混乱の舞を踊れっ!"」
 《混乱》の魔法を闇司祭とミトゥの前の敵にかけた。一瞬でも隙を作れれば、彼女らのことだ、適切に対応してくれるだろう。
 そこまで見届けたとき、視界がゆらいだ。うわ、そろそろ限界。
 「くっ! ”偉大なる亡者の神よ……”」
 混乱の魔法はうまく二人にかかったらしく、呆然とした顔をしながら闇司祭と信者は必死に《静心》の呪文を唱えようとする。一方、ミトゥには《防御》の魔法がかかったらしい。ディーナが安堵の溜息を漏らしたのが伝わってきた。
 「スピカ今よ、ミトゥの目を!」
 私が叫ぶより前に、彼女は闇司祭の隙を見て取ると、5歩ほどの距離を一気に縮め、ミトゥの肩に触れ、交流神に訴えかける力ある言葉を紡いでいた。
 
 「よくもやってくれたね、あったま来たっ!」
 視力を取り戻したミトゥの斬撃が《混乱》を解こうと奮闘する信者に打ち込まれた。なおも立ち上がろうとする相手に剣を振りかざす。よろめく相手を倒すのはもはや時間の問題だろう。
 闇司祭はさすがにすぐ《混乱》を解けたらしく、悔しげな表情を浮かべながら離れた間合いを一息につめるべくスピカに武器を振りかざした。スピカは危なげなくその一撃をかわし、一歩踏み込んで横ざまに斧を凪ぐ。
 殆ど同時に、裂帛の気合とともに何かがくずおれる音がして、レイシアが対峙していた敵を地に沈めていた。良かった、レイシアの手が空けば、形勢は一気に逆転する。

 「あんたの相手、私も加わらせてもらうわよ!」
 剣を構えて司祭に対峙するレイシアの声を頼もしく聞きながら、思った。自分も剣を持てたら良かったのだけれど、と。
 しかし、疲労を顔ににじませながらも必死に援護の機会を狙うディーナの瞳にそんな自分の詮無き仮想を吹き飛ばす。そう、今はそんなことを思っている場合ではない。
 最後の一瞬まで気を抜かぬように、揺らぐ意識を必死で繋ぎとめた。
 
決着
レイシア [ 2003/09/06 1:51:16 ]
 敵が一人減ってからは早かった。
スピカと二人で、あっと言う間に闇司祭の手から獲物をはじき飛ばし、壁際まで追いつめる。ミトゥの方はもう少しで片付きそうね。

「さて。この状態だと、どちらが優位なのかは目に見えて明らかよね。無駄なあがきは、見苦しいわよ?」
「降伏なさい。大人しく、法の裁きを受けるのです」
私の後ろから、スピカが投降するように呼びかける。それでも、闇司祭の目には諦めの色は見えない。
――もしかして、まだ何か手段を隠し持ってる?
「くっ、…ワシは、ワシはこんなトコロで終わるわけにはいかぬのだっ!」
台詞と同時に、突如甲高い鳴き声がして、緑色の影が視界を塞いだ。私の名を叫ぶスピカの声が続く。
インプ!? そっか、村人が見た影ってのはこれかっ。
…ってそんな呑気に分析してる場合じゃないわ。邪魔よ、どいて!
そんなことを言っても、素直にインプが退くわけがない。気を散らすように甲高く鳴いて周囲を飛び回り、時に攻撃してくる。
インプの声に混じって、闇司祭が奇跡を請う声が耳に届いた。――ヤバイ!
「“偉大なる神ミルリーフよ! 敵の血潮によりて、我が傷癒し賜え!”」
身体に痛みが走った。皮膚の所々が裂け、血が出ているのが分かる。スピカも同様に魔法を受けたようだ。
その隙をついて、闇司祭が逃げ出す。追おうとするとインプが行く手を塞いだ。
「あーもうっ、鬱陶しいっ!」
怒声と渾身の力を込めた一撃が、離脱しようと飛びかけたインプを薙ぐ。
嫌な叫び声。闇司祭の身体がぐらりと揺れた。
「逃がしません!」
「お待ちなさい!」
ディーナとスピカの声が重なり、魔法の矢を打ち込まれた闇司祭に、斧が振り下ろされた。

「……終わったわ、ね」
地に横たわる闇司祭を見て、クレフェが疲労の色を滲ませつつ呟いた。
崩れ落ち掛けるその身体を慌ててミトゥが支えた。

「んーっ、やっぱり空の下って気っ持ちいい〜」
頬を撫でる風を心地よく感じながら、思いっきり背伸びをする。
空が白み始めたそんな頃。私達は人質だった少女達と、オマケの闇司祭を連れて村に戻った。
村ではちょっとした騒ぎになった。当たり前でしょうね、平穏だった暮らしのすぐ側に、こんな連中が居たんだから。
開放された喜びの為泣き出す少女達と、再開を喜んで抱き合う兄妹。
「えへへ、こういう感動的な場面ってさ、いいよね」
ミトゥが嬉しそうに同意を求めてくる。ディーナもまた同じ感情を込めた笑顔を返した。
「そうですね。闇司祭達は倒れたし、人質は無事全員助け出せましたしね」
「それに、衛視に突き出せば報奨金出るでしょうし。全くただ働きってのもね」
艶っぽく、茶化したような言い方でクレフェも笑った。

「さってと。仕事も終わったし、一眠りしたら、また泳ぎにいこっか」
そう言い出した私をスピカが呆れた顔で見やった。
「あらまぁ、まだ泳ぐ気なんですの?」
「あら、レイシアの言う通りよ。仕事を終えてのバカンスは最高よ? それに、私達はここに休息を求めてやって来たんだから、仕事を終えた今、心身共に癒しを求めるのがスジでしょ?」
「まったくもう、クレフェさんまで……」
頬に手を当て溜息をつくが、スピカも乗り気らしく、その口調に咎める様子は全く見受けられない。
「それでは、一眠りしたらもう一回泳ぎに行きましょうねっ」
「さんせーいっ」
にこやかに笑いながら、ディーナとミトゥがその場を纏める。賑やかな笑い声がその場に満ちた。


昼なお暗い洞穴の中。響く音は、寄せては返すさざ波のみ。
辺りを支配する静寂。久方振りに戻ってきたそれは、ここで行われようとしていた饗宴の、幕が引かれた事を示していた。

そう。光の届かぬこの場所で、蠢く者はもう居ない。
 
(無題)
管理代行 [ 2004/11/27 5:01:26 ]
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