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ゲフィッリンの塒
あらすじ [ 2003/10/22 22:48:01 ]
 ゲフィッリン・・・。
魔法王国中期の魔術師”暁を呼ぶ”セラフィタが使役とした言われる守護者。
そのゲフィッリンの塒に・・・6人の冒険者が今挑む。
 
千載一遇
シタール [ 2003/10/23 0:49:44 ]
 ゲフィッリンの塒。

以前から存在自体は知られていたが潜ろうした人間少ないことで有名だった。

理由は簡単。ここが「吠え猛る黒」と呼ばれる竜のなわばりでもあったからだ。
だが、その「吠え猛る黒」も“暴竜”スレヴィテリアとのなわばり争い破れ死んじまった。しかも、“暴竜”スレヴィテリアもその時に出来た怪我を癒す為に休眠期に入っちまった。

・・・潜るなら今しかねえ。そう感じた。
まあ、火事場泥棒って気がしなくもねえが・・・まあ、良いじゃねえか、目の前まで来てそんな事言っても埒があかねえよ。・・な、おっさん?

「ふん。若造が。一端の口を利くようになったねえじゃ。」

そう。今回はロビンとフォスターが違う仕事を受けてるので来れない。
そこで今回は二人の助っ人を呼んだ。

まずは引退していたリドリーのおっさん。
”巨梟”リドリーと言えば、パダでもちょいとしれた熟練の剣。昨年、愛娘釜ご出産とした同時に惜しまれながらも引退した身だ。でも、どうやら体も心もうずいてきちまっての復帰。ま、俺からすれば良く1年も我慢出来たと褒めてやりてえぐらいだ。

今回組むことで俺がオッさんとガキの頃にした約束は一応果たした形なる。

でも、今回の復帰に関して奥さんにこれでもかと言うぐらい土下座して・・・やっと許して貰えたとかどうとか・・・。

・・・既視感が感じて嫌な気分になった。

で、もう一人は・・・ラスが連れてきた霊のクレフェ。
学識の方もかなりあるらしくライカが史料編纂で凄く世話になったと聞いてる。生命の精霊に触れられるほどの実力の霊が同行してくれるのは非常に助かる。

けどよ・・・なんで初対面の時に俺のことを見てびっくりしたんだろうか・・・。それが妙に気になる。

ま、そんなことをここでうだうだ考えてもはじまらねえな。

さ。潜るべ。ゲフィッリンをあんまり待たせちゃ悪いからな。
 
瓦礫
A.カレン [ 2003/10/24 21:16:20 ]
 目の前には、建物が何棟か。いずれも全壊、半壊状態で蹲り、あと数年経てば、木や草、苔なんかに完全に飲み込まれてしまいそうな有り様だ。
建物群の中央には広場(或いは庭)。石畳を押しのけて、やはり背の低い草が一面に生えている。

「潜るベ」と言って、シタールが指し示したのは、建物群の背後に控えている円形の建造物。他の建物より堅固にできているのか、魔力が働いているのか、崩壊していない唯一のものだ。
しかし、緑に覆い尽くされている点は、他の建物と同じ。
入り口は、目の前にある。
蔦が這い、半分瓦礫に埋められた状態で、そこにある。

「撤去しなきゃ、入れないってことね」
「そのようね…」

冷静なライカとクレフェ。この二人の言葉が意味しているのは、ただひとつ。

「…じゃ、撤去ということで」
「お前も落ちついた受け止め方するじゃねーか、カレン」
「………困ったな」
「本気でそう思ってるか?」
「守護者がいるか、罠があってくれたほうが、まだ鬱にならないですむ」

まだまだ経験が浅いだの、レックスを甘く見るなだの、心得違いをするなだのと、リドリーに叱咤されながら撤去作業にとりかかる。
確かに、レックスを襲った出来事を考えれば、この場所はこんな場所、ということは明白だった。今まで、運良くこんな状態の場所に行き当たらなかっただけで。冒険者なんて、決して華々しいもんじゃない。痛感。

そんなこんなで…。
入り口が開けられる頃。
ここに来るために、奥さんに頭を下げただの謝り倒しただのという”巨梟”が、今回俺たちのボス兼指南役にすっかり収まっていた。
 
石の回廊
クレフェ [ 2003/10/25 4:08:58 ]
  軽い休憩ののち、私たちは円形の建物の中へと歩を進めた。
 内部に入ってすぐ正面は壁面で、外周と相似形をなす円筒形だった。この階の断面の俯瞰図は二重丸にでもなるのだろう。内壁と外壁の間は、3人並んで進んでも余裕のある程度の幅があった。
 壁に突き当たって左手には急な傾斜の昇り階段、右手は壁に沿って回廊が巡っている。
 シタールをはじめとして男性陣が、ほっと息をついたのが聞こえた。外観からは完全形を保っているように見えたが、内部が崩壊しているのでは厄介なことこの上ない。更に言えば、先ほどの撤去作業に多少辟易していたのかもしれない。
 何にせよ、手付かずの遺跡への第一歩だという感慨が、全員の足取りに力を与えていた。

 右側へと歩を進め、ランタンの灯りに照らされた石造りの回廊を観察すると、何かを引きずったような痕跡と汚れが散見された。調べていたカレンが、その痕跡が回廊の一点で途絶えていると指摘する。
 注意深く見てみるとその周辺の壁面が周囲より磨耗しているのに気づいたが、現時点ではそれ以上の収穫が無かった。
 「とりあえず右手の回廊を一回り調べてみるか?」
 ボス兼指南役の一声で、私たちは回廊を進むことにした。

 歩きながらふと思った。私の実力は、精霊使いとしてはラスに、知識人としてはライカに及びもつかない。遺跡の経験についても、今回の参加者中最も少ないはずだ。
 けれどそれを苦に思うくらいならここには居ないし、居るべきでもない。参加した以上、自分の役割を着実に果たす。それが最低限なすべきことなのだから。
 自分に相言い聞かせて軽く深呼吸すると、ラスがちらと振り返って笑った。私も視線だけで笑い返す。……気を引き締めていないと、初めての”堕ちた都市”に挑むがゆえの、背筋を駆け上がる高揚感に満たされていく自分を抑えきれないことに、どうやら気づかれたのかもしれない。

 回廊をさほど歩かぬうちに行き止まりにぶつかった。歩いた距離感からして、先ほどの階段の裏手までは到底行き着いていないように思う。しかし正面に立ちはだかる壁は、天井まで垂直に伸びており、私達の行く手を阻んでいた。
 仕方が無いのでひとしきり調べた後、磨耗した壁を横目に見つつも、一旦上階へ向かうことに決まった。

 傾斜の急さが気になったらしく、より丹念に階段を調べるカレンの無駄のない動きに、プロの仕事の確かさを見た。階下で彼を見上げながら、ラスが心から信頼する相棒だというのにそっと同意した。



 …………それにしても。
 まさかライカの旦那が、亡き夫を髣髴とさせるあの黒髪の詩人だったとは予想外だった。
 「いい男はいい女が育てる」という意味では非常に納得できたのだが。 
 
ゲフィッリンの僕
シタール [ 2003/10/26 1:21:58 ]
 注意深く罠を調べ、階段を登り切った先には、両開きの大きな扉。
確かにでかい扉ではある・・・だが。

「思ったよりは小さいわね。カレン・・・ほら。さっさっと調べて。」
「さっさと・・って。いや・・・調べるけど。」

扉をカレンが念入り調べている間。俺は思いきって疑問を口にしてみた。

「あのさ。俺思ったんだが・・・。」
カレン以外の顔がこっちを向いたのを確認してから俺は続きを言った。
「確かに、この扉はでかい。でも、それは俺等から見たらでかいってだけだ。城にでも行けばこれぐらいのは普通にあると思う。違うか?だから・・・」

「わかった。それ以上言うな。お前の言いたいことは分かる。」
リドリーのオッさんが俺の言葉を遮って話しを続けた。
「この扉じゃ、大型・・・そうだな竜などの類は出てこないのは確実だ。それに・・・」
オッさんはそう言って、扉の取っ手を指さし。
「こういうモもを器用に開けられるだけの指先を持ってるって事だろうな。」
「そうなると、人型。もしくは、手の辺りが人に酷似した物が生息してる生き物がここには存在するワケね。」
「うーん・・・思ったよりてきはメンどくせぇようだな。カレン。扉の方はどうだ?」
「ああ。罠はないみたいだ。それに油を差さなくても直ぐに開く状態だ。」
カレンが、そう言った矢先。扉がこちら側から開いた。中から誰かが・・・いや、何かが扉を開いたのだ。
そこにいたのは両腕のある直立した蛇・・・というしか表現方法のない生き物だった。
その生き物は、我々に向かって下位古代語でこう言った。

「ようこそ。我が主の塒へ。そして、警告しよう。今すぐここから去るが良い。さもなくば・・・ゲフィッリンの僕たる我が相手しよう。」
 
情報交換
ラス [ 2003/10/27 0:13:36 ]
 カレンが扉を調べ始める少し前まで、俺はリドリーのおっさんと幾つか話をしていた。
まぁ、ちょっとした情報交換というやつだ。

そこへ出てきた蛇人間。自分が相手をする、と不敵に笑ってる。
──相手……というのなら、この場合、ダンスの相手じゃないことは確かだろうな。

「当たり前よ。そもそもあの下半身じゃステップが踏めないわ」

冷静なツッコミありがとう、クレフェ。

その間に、ライカが相手の台詞を訳して他の連中に伝える。
で、どうすんの? っていうか……まぁ、相談するまでもないよな。
ここで、「ごめんなさい」って言って帰るくらいなら、最初からレックスになんか来てねぇし。

「是が非でもと言うか。ならば仕方がない。……我が主、ゲフィッリンの僕は1人ではないぞ」

蛇人間が、にやりと笑った。
存外に知性的な笑み……いや、もともとこういう場所にいる魔獣は賢い奴らが多い。ひょっとしたら、俺たちよりもずっと。
ただ……俺、あの『蛇人間』知らねぇんだけど。あれってナニ?

「気ぃつけろ、ちょいとヤバそうだ。……あぁ? 正体? ンなもん、知るか」
リドリーのおっさんは知らなかった。
「……俺が知るわけないだろ」
カレンも駄目。
「わかんねぇのか、ラス。あいつぁな、蛇人間だよ!」
おまえに期待した俺が馬鹿だったのか、シタール。
「とりあえず……見たことはないわね。文献でも」
クレフェも駄目か、期待してたのに。
「下が蛇。上が人間、に似たもの。足したらきっとああなるのよ」
……ライカ。それって。

結局。
戦った相手は蛇人間と、その助っ人に出てきた、人間の手足を持った蜥蜴。
けど、その蜥蜴もリザードマンとは明らかに違う。
幸い、6対2だったおかげで、無事に倒すことは出来た。が、相手の正体がわからない。
俺が知らないのはともかくとして……ライカやクレフェまでも知らないと言う。
職業柄、伝承には詳しいシタールも。レックスは長いはずのリドリーも。

一体、何なんだ、ここは。

「少し……ゲフィッリンについて考えてみましょうか」

ライカが口を開いた。
古代魔術師のペットというからには、どでかいケダモノを想像していた。
そうでなければ、闘技場で戦わせていたということから、ゴーレムか何かかもしれないと思った。
けれど、これは……。

蛇人間が出てきた部屋は、あまり大きい部屋ではなかった。もちろん、扉と比較して、ということであって、普通に考えれば十分に広い部屋ではあるが。
不思議な死体が2つ転がる部屋には幾つかの簡素な調度。あまり使われた形跡はない。
そして、部屋の壁、左右に大きな扉が1つずつ。

カレンを手伝って、部屋の周囲を調べながら、俺はふと思い出した。
「なぁ、リドリー。さっきの話の続き。……ウェシリンが何だって?(真顔)」
「いや、だからよ。あの女に金なんざ積むことねぇって話さ」
「え、だってあいつ、俺には……」
「いやいや、そこがおめぇの青いところよ。あのな……」
「あんたたち、何の話してんのよっっっ!!!(ごすっ★×2)」

ライカの声と共に、俺とリドリーの頭から響いた絶妙な音に、クレフェが肩をふるわせて笑っていた。
 
ようこそ
リドリー [ 2003/10/28 6:02:29 ]
 殴られた頭をさすりながらラスと顔を見合わせ、また後でな、という視線を送った。
で、殴った両手をさすりながらライカが改めて言った。
「ゲフィッリンについて考えるわよ」
少し声に怒りを感じる。ああ、シタール。真面目な嫁持ったなぁ(しみじみ)

馬鹿なことを考えてた俺を睨みながら、ライカが話をまとめていく。
所々を拾うようにクレフェが註釈を入れた。
カレンとラスはそれを聞きながら自分の知識と照らし合わせる。

で、俺はそれを横目に、シタールと2人でラインズの戦い方を確認しておく。
いや、見たことねぇ魔物に関して俺が言えることなんざねぇし。
それなら出てくるのがどういう相手かは分かったわけだし、その対応考えた方が賢いだろう。

で、二つの死体に目をやる。こいつらは武器をもって相手してきた。
二匹共得物は長大な斧槍。
その扱い方はやけに正統で古風で、そして訓練されたものだった。
魔法生物なんかとは違う、そういう臭いを感じた。
妙に人間臭い。異質ではあっても、住んでる世界が違うような相手じゃない。
以前魔神と呼ばれる奴らと戦った時に負った腹の傷をなぞりながらそう思う。

「あ?どうした、オッさん」
「あ、いや。古傷を思い出してな。話を続けよう……」

純粋の魔物相手の戦い方ではないことを確認し、細かい打ち合わせを済ませる。
振り向くとバックス4人の話し合いが終わっていた。
ゲフィッリンも、この蛇人間たちも正体は分からないものの、分かったことがある。

「ゲフィッリンは挑戦者を待っているわ」
そう言ってクレフェが、右側の扉の紋様に紛れるように刻まれている下位古代語を指さした。
「何て書いてあるんだ?」
その問いにバックス4人が答える。
『ゲフィッリンの塒へようこそ』

蛇人間の右腕を切り落として、つけていた腕輪を取り外す。
それを手にとって、カレンが左側の扉へ向かった。
一見鍵穴すらついていないその扉に張り付き、巧妙に隠された丸い鉄の枠を見つけだす。
カレンはそこに腕輪を填め込んだ。

音を立てて扉が開き、上りの階段が目の前に現れる。

6人は先へと進んだ。

(隣り合ってリドリーとラス)
「で、青いってのはどういうことだよ?」
「酔わせりゃ金払う必要ないんだよ……」
「何ぃ?OK、帰ったらすぐ実戦、いや実践…」
「まぁ、待て。それで終わるほどウェシリンは甘k」

今度は杖の一振りが2人を襲った。(ごつごん☆)
 
次の相手
ライカ [ 2003/10/28 23:44:40 ]
 「………またかよ」
 ラスのつぶやきがかすかに聞こえる。
 ようやく見つけだした階段をのぼり、三階に到達した私達を待っていた二つの影は、上半身がかろうじて人間、下半身が蜘蛛の女性だった。…胸のふくらみでかろうじて女性だと思う。上体は人の形だが、腕は蜘蛛のそれ、顔に至っては………蠅捕り蜘蛛みたいに、目が8つついている。

 シタールがわたしをちらりと見るけれど………わたしは首を横に振った。あんなの、見たことも聞いたこともない。クレフェに視線をよこしたけれど、彼女も知らないらしく肩をすくめて返してきた。

 と。
 わたし達が何かを問うよりも早く、二人の蜘蛛人間が、全く同じ声で全く同じ言葉を紡いだ。
「帰れとは言わない。下の階のもの達の忠告を聞き、それでも彼らを屠って上ってきた者達だから。だから、容赦はしない」
 次に紡がれた言葉は、前衛が武器を構えるよりも早かった。二人の上に、ふわりと白い光が浮かんだ。…あれは。

「光霊だ!」
 ラスの声と、光がはじけるのは同時。シタールとリドリーが、光の精霊の打撃を受けてわずかに後退した。……どうやら、二人の魔力は低くない。
「精霊使いか……道理で武器らしいものは何も持ってないと思ったわ」
 クレフェの声に頷いて、わたしは杖を大きく振った。
 
トーナメント
ラス [ 2003/10/29 23:46:51 ]
 そうだな。確かに魔力は低くはない。
だが、驚くほど高いわけでもない。
手ぶらで素っ裸、とくりゃあ、魔晶石を隠し持ってるわけでもなさそうだ。
ってことは、闇霊を幾つか飛ばせば、魔法を使う気力も尽きるってもんだろ。
ヤワいもんだよ、魔法使いなんざ(カレン「……おまえが言うなよ」)

「シタール、リドリー。気を付けて。毒を持ってる可能性があるわ」
「そうね。大きさから考えると、おそらくはジャイアント・タランチュラとの合成かしら。それなら牙に毒があるはず」

ライカとクレフェ。
先刻の、蛇人間と蜥蜴人間。そしてこの蜘蛛女ども。
セラフィタは召喚と付与を得意としていたと聞くが……どうやら、この遺跡に限っては違うようだ。
異界のものではなく、明らかに、物質界に現存するものとの合成。そうでなければ創生。
それが、階段を昇り始める前の『話し合い』の結論だ。

闇霊を呼び出す。とりあえず、目の前の敵を片づけようと。戦士達の助けになるように。
俺に続こうとしたクレフェを、止める。
おまえは癒し手だ。いざって時に気力が尽きないように、温存しておいてくれ。


──しばらくの後。
蜘蛛女の死体を脇にどけながら、シタールがぼそりと呟いた。
「なぁ。ここの作りってひょっとして……」
「……ああ、それは俺も気になってた」
カレンが答えて、羊皮紙を広げる。簡単な見取り図を書きつけ始めた。

2階の部屋も小さかった。そして、すぐに階段。
3階に辿り着いたここも、あまり広い部屋じゃない。
だが、外から見た遺跡は、巨大な円形の建物。

「ゲフィッリンは闘技場で戦わされてたって話だったろ。そして、ここはそいつの塒だと。ただ、どうやら、塒と闘技場が同じ場所にあるみてぇだな」
「……まだ調べ始めたばかりだ。ひょっとしたら、部屋がたくさんあるのかもしれない。だが、建物の内壁の丸み、そして廊下の曲線。……この内側の壁の更に奥……つまり建物の中心は、巨大な丸い部屋、という可能性は高いな」

シタールとカレンが話している横で、図を覗きこみながら、リドリーが口を開く。
「へっ。まるでゲームだな。傭兵ギルドの連中がやってるトーナメント戦だ。階段を昇るたびに敵と戦って。勝てば上に上がれる。そして最上階で決戦、てぇわけかよ」
「ただし、ちょっと変わったトーナメントね。こちらは昇るたびに消耗するけれど、向こうは最上級のシード権を持っていて、最後の一戦だけのために待っている」
クレフェがそう言って肩をすくめた。

「僕が何人いるのか。どこまで上がればいいのか。引き際を間違えれば危険ね」
あっさりと言ってシタールを見上げるライカ。
「とは言え、勝たなきゃ褒美はもらえねぇ。闘技場を自分の塒にしてる野郎は、勝つ度に御主人様から褒美をもらってたんだろうしな」
に、と笑ったシタールにカレンが頷いた。羊皮紙を畳みながら、呟く。
「……溜め込んでるなら、かっさらおうか」

勝ったら褒美。それはわかりやすくていいと思った。

…………あれ? でも、褒美をくれる御主人様はもういねぇんだろ?
なら、ゲフィッリンとかいう奴は、何でまだここにいるんだ?
 
隠し部屋と木乃伊と日記
シタール [ 2003/11/01 1:23:01 ]
 下の階層の時と同じく、片方の蜘蛛女が持っていた、ペンダントが次に扉の鍵だった。
そして、上へと上る階段。

「ねえ。僕との戦闘はあとどれくらいあるかしら?」
疲弊の色が出てきた、クレフェがカレンに尋ねてた。
今回、俺たちはクレフェに治癒をすべて任せている。
女の霊の治癒力は熟練の薬にも勝ると劣らずだってのは、今までの戦いでわかったが、その力を精霊から借りるには・・・かなり消耗すると言うことも知った。
ラスが持ってきた魔晶石を使ったとしても、使える回数はかなり限られてくる。
しかも、避けれる戦いはこの遺跡にはあり得ねえし。

「塔の高さから考えて、あと2回、多くても3回だろう。」
そう言いながら、階段を登りきったところにある扉を用心の為に調べ終え。
「罠はない・・と思う。」
オーケー。じゃあ行くぞ(がちゃr&ガン★&ゴン★)

「このダボ!万が一って事考えて慎重に開けろ!お前そう言うトコもあの馬鹿にそっくりだぞ!」
「ホントよ!!そのまま不意打ちでもされたらどうする気よ!学習能力が犬以下よ!」
二撃は・・・ちょっと堪えるな。うん。
いや・・・その意見は至極もっともなんだが、今回に限ってはそう言うことはねえと思うんだよ。うん。

「なあ・・・その根拠は何だよ?言っておくが、何となくとか。勘とか。そう言うのは無しだぞ。」
そうだな・・・ここまでの僕達は正々堂々と名乗りを上げて、通路にはどこにも罠が仕掛けられて無い。つもり、ゲフィッリンって奴はそう言う小細工が嫌いなんじゃねえか?
塔自体も、装飾など無い質実剛健な作りだし。

「それは言えてるが、根拠しては薄いな。いかんせん情報が足り無すぎる。」
じゃあ、思い切って次の奴に吐かせるってのはどうよ?
オッさんと俺が得意な「パダ流の誠意ある説得」って奴でよ。
よし、今回は敵捕縛する方向で行動しようぜ。よし、行くべ!

――― 数瞬後。

「・・・ミイラだな。」
「ああ・・・。見事なまでに乾いてる。」
とりあえず、何か大きな肉食動物と人間を合成させた乾いた何かの死体が目の前にある。
軽く10年以上は前に死んでしまった模様・・・いや、確かに戦う回数は減ったのは良いんだが・・・。
って、どうしたカレン?さっきから壁を念入りに調べてるけどよ。
「いや・・・なんかこの部屋が今までの部屋より狭いから。」
ああ。隠し部屋の類があるかもってか。そう言ってる間にラスも探し始めた。
・・・隠し部屋・・・ではないが、隠し戸棚が見つかった。
中には書物が数冊。だが、風化激しくまともに読める物は一冊だけだった。

「・・・日記ね。」
そう言って、ライカは丁寧に且つ手早く日記を読み始めた。
もしかすれば、こいつ等の正体等が分かるかもしれない。まあ、そんな都合のいい事がそうそう・・・

「起きたわよ。」
・・・マジで!?
全員の視線がライカ・・・と言うより持てに持っている日記へと注がれる。

「まず、今まであってきた古代王国期の蛮族ね。ただし、彼らは巨人を長として暮らす一族だったようね。」
ああ・・・それ効いた事があるな。巨人の王国はカストゥールに最後まで抵抗したんだろ。
「そう。とは言っても彼らは孤立した小さな集落だったみたいね。”暁を呼ぶ”セラフィタがごーレムの軍隊率いて攻め込んだようよ。後は所々しか読める部分がないわ。」
なるほどねぇ・・・とりあえず、そこまで言われりゃ馬鹿な俺でも察しが付いてきたぞ。
つまり、ゲフィッリンは・・・。

「そう。巨人をベースに合成された物・・・考えるべきでしょうね。」
だよなぁ・・・まあ、でも一部とは言え、謎が解けて良かった。良かった。
良いじゃん。良いじゃん。それぐらいでねえとここまで来た甲斐がねえや。さ!上に行くべ!

でも・・・侵略された奴が侵略した奴の所にいつまでも居やがるんだ?
 
それは、小さな…
A.カレン [ 2003/11/01 4:49:20 ]
 単純に考えると、あれじゃないのか? 古代王国人の玩具。戦う奴隷。そんなとこじゃないの?

「つーことは…好きで居座ってるわけじゃないってことか?」

繋がれてんのかもね。

「なるほどなぁ」

……想像だよ。本気にするな。
さ、次の部屋だ。
一気に行こうか。勢いがあるうちにやっちまったほうがいいだろう?

「勢いだけでは勝てないわ。正直なところ、私…」
「そんじゃ、もうしばらく休むとするか。気味の悪いもんが転がっちゃいるが、ここにいる限りは邪魔は入らんだろう」

2度ほどライカに殴られたとはいえ、やはりリドリーの発言力は強いらしい。

クレフェの気力は見た目以上に消耗しているようだ。
最初に相対した蛇人間は、さほど強くはなかったが、弱いと言える連中でもなかった。そして、次の蜘蛛女には、それ以上にてこずった。この2戦で、クレフェは何度、精霊に呼びかけたんだったか……。
振る舞いが気丈なもんだから、気付かなかったな…。



じゅうぶんな休息の後、更に上の階へ進む。
そこには、また同じような部屋があった。
違うのは、中で待ちうける奇妙な生物だけ。今度のもまた、一風変わったヤツだ。
まず、サイズが小さい。人間で言えば、まだ子供だ。体つきも顔も。腕の代わりに鳥の羽根が生えている。しかも…1人じゃない。4人いる。

「おいおい…こりゃ、やりずれぇって…」
「趣味が悪いわね…」
「ライカ、眠らせ…って、おい! 問答無用かよっ!」

今までのような挨拶もなく、侵入者を見止めた子供4人は、いきなり襲いかかってきた。

次の敵は、また強くなっていると予想していたんだが。
しかし、これでは、強い弱いの問題ではない……ような気がする。
……どうしようか……。
 
手段
クレフェ [ 2003/11/01 23:39:37 ]
 「どうしようか……?」
 困惑したカレンと一瞬視線が絡んだとき、きっと同様の視線で応じていたと思う。
 こいつらは敵なのだ、手加減をするいわれは本来ない。でも、意思があり、心があり……まして忠告してみたり忠誠心などを見せたりしている。そんなのを見せ付けられた後で子供の姿をした相手にぶつかったら剣が鈍るのは必然で。ああもう趣味悪すぎだわっ、セラフィタ。

 カレンの顔は先ほどより表情が伺いにくくなっている。ラスは眉をひそめている。リドリーは熟練らしく隙こそみせてはいないが、背中が「厭らしいことをしやがる」と語っている。孫が生まれたばかりの彼には余計腹立たしいのかもしれない。シタールとライカは、呆れるやら頭にくるやらと言った風情だ。
 私たちの逡巡にお構いなしに、子供たちは高く低く、素早く各々こちらに襲い掛かってきた。伝え聞くハーピィとは異なり、爪先のみ変化していて鷹のような鋭い鍵爪がある。しかし体は人間の子供そのもので、簡単に剣が切り裂いてしまいそうで……あ! そうか。
 「羽根よっ! 羽根や付け根を狙えば飛べなくなるわ。話すつもりならそれからよ」
 ライカが私より先に指示を飛ばした。迅速で適切な行動と判断にさすがだと安堵する。
 念のため、まずその可能性はないと思うが”忘却”の魔法の可能性を示唆しておく。

 幸い互いに深手を負うことなく4体を地に落とすことが出来たので、手早く彼らを拘束する。
 甘すぎる。でも無用の殺戮を望まぬ以上、こういう選択があってもいいと……思いたかった。その想いは大なり小なり、皆の表情に伺えた。自らの甘さに呆れるのと同等の比重で。
 カレンとラスが手分けして次の扉を探す間、他の四人が彼らの尋問にあたった。
 
 ややあって壁面に扉の鍵らしき四つのくぼみが見いだしたが、室内にも彼らの体にも鍵となるらしい物が見えなかったため、直接鍵のありかを問いただすことになった。
 しかし、尋問は困難を極めた。
 「ヤだ。あたちオジサンのゆーこときかないもん」
 「お姉さんたちは君たちを殺したいわけじゃないのよ。ゲフィッリンについて何か教えてくれたら後で助けてあげる。ううん、大人しくしていてくれるだけでもいい」
 「……このオバサン嫌い。きっと嘘つきだよ。自分で”お姉さん”っていうくらいだもん」
 「火弾はやめろクレフェ! 落ち着け、なっ!?」

 その後リドリーが持参した干し杏で機嫌を取ることに成功したが、鍵の件については彼らは困ったように首を振るばかりだった。ゲフィッリンについても「大きいのー」「変なコトバ使ったり、難しいお話するの〜」などというばかりで具体性に欠けた。しかしどうやら巨人族の合成というのは間違いないようだ。

 「あ……見つけた」
 扉近くの壁面を調べていたカレンが古代語の文章を見つけた。
 「おおっ(安堵のため息)なんて書いてあるんだ?」 
 それに曰く。彼らの心臓部にある宝玉を取り出してくぼみに入れよ。と。

 
 「やっぱり……オバサン嘘つきだったね」
 「……………………」

 ”精神的打撃”という凶悪な罠を仕掛けたセラフィタに、悪態をつく気すら起きなかった。
 音を立てて開いた扉は、高みに続くはずなのに果てない闇に踏み出すような心地がした。

 「早いとこ行こうや、ゲフィッリンの塒へ。」
 シタールが呟いた。
 
約束
ラス [ 2003/11/04 1:07:10 ]
 辿り着いた部屋は今までよりは小さい。
そして、奥に扉。それは今までと同じだ。
部屋のあちこちには、絡みつく蔦。自然物を阻害することのない魔法なのか、建物自体は崩壊していないのに、この遺跡にはあちこちに緑が見られる。

「あの子たちを、倒してきたか」

扉を守るように、その前に胡座をかいている男が言った。何の感情もなく。
それは問いかけではない。彼らを倒してこなければ、この部屋には辿り着けないのだから。
男は、この500年、ずっと座り続けていたのかもしれない。男を取り囲むようにして蔦が伸びている。

「あの子らは何を言った? 我等、ゲフィッリン様に仕える者としては、あの子らはまだ幼い。詮無きことも口にしたであろう」

男が笑う。下卑た笑みでもなく。諦観の笑みでもなく。ただ、柔らかく。それは、あの子たちと同じだと思った。


「……謝らないわよ。そうね、おねえさん、嘘つきだった」
あの時、クレフェはそう言った。子供たちは柔らかく笑んで答えた。

「まだ、『おねえさん』って言ってる。……いいの。殺して」
「ボクたち、随分長いこと待ってたの。ゲフィッリン様の傍だから、怖くはないけど。でも」
「いちばん怖かったのは、ここに来る前だよ。変な魔術師が来た時」

口々に呟く子供たちに、ライカが首を傾げた。
「待って。魔術師はもういないでしょ? いちばん怖い時はもう過ぎたんでしょう? だったらどうして貴方達はまだここにいるの?」

「ゲフィッリン様がいるから。アノヒトがいるから、あたし達はここにいるの。だって、ゲフィッリン様はあたし達を……」
「違うよ、ちょっと違う。ボク達を、じゃないだろ?」
「でも同じコトだよ。あたし達がここに来る代わりに、お父さんもお母さんも弟も助かったんだもん」

「……そうさせたのはゲフィッリン……いや、違うな。セラフィタか」
カレンが呟く。その隣でシタールも頷いていた。
「ゲフィッリンがおそらく巨人族なのは、ガキどもが言ってたとおりだな。なぁ、ライカ。さっきの本にあったろ」
そうだ、木乃伊のいる部屋でライカが見つけた本。
セラフィタに攻め込まれたのは、巨人族を長とする村。そして、その長がゲフィッリン。
長である彼がここに、闘技奴隷として繋がれているのだとすると、その村がどうなったのか。
「交換条件、か。イヤな野郎だぜ、セラフィタってぇのはな」
リドリーが吐き捨てるように言った。

そうだな、おそらくは、村人を見逃す代わりにゲフィッリンは捕まった。
そして、交換条件はそれだけじゃなかった。数人の村人を差し出せ、と。
差し出された人質は、セラフィタが合成材料として魔獣とした。

セラフィタはもういないのに。ゲフィッリンを仰いでいた者たちはまだここにいる。
ゲフィッリンの塒を守るために。ただ、それだけのために。
彼らの父も母も弟も既に亡いのに。500年前の約束のためだけに。
……待ってた、と子供は言った。

何を。

自然の状態では、『魔獣』には訪れないものを。


「……おまえたちは、あの子らに『死』を渡してやった。礼を言う。我等は、扉の『鍵』を持つが故に、我等同士で行き来は出来ぬ。扉が、我等を拒むのだ。我等はもとより、ゲフィッリン様の僕だ。だから、ゲフィッリン様がここにいる以上は、あの方の塒を守る。子供達とて、それがわからなかったわけではない。だが、解き放ってやりたいと……そう思っていたのも事実」

男が笑う。笑って、立ち上がる。……いや、そう見えたが、違った。
男の上半身だけがその場に浮き上がった。下半身は……蔦だ。そうか、こいつは……植物との合成か。
男が、右手を上げる。その手には斧が握られていた。銀色に輝く刃。
500年の時を経て尚、錆び1つ浮いていないとなれば、ライカに魔力感知を頼むまでもない。魔法の武器だろう。
最後の扉ともなれば、ある程度は強いということか。セラフィタが、付与魔術を施した武器を与えるほどには。
盾は見えないが……おそらくは不要なんだろう。この蔦が、奴を守る盾となる。

「来い。我が、最後の扉だ」
 
振り下ろされた斧
リドリー [ 2003/11/04 23:46:42 ]
 蔦が伸びる。
<>捕らえられる前にその蔦を切り払う。
<>寒気。
<>飛び退いたその空間を斧が疾った。
<>シタールを見ると、同じように距離をとっていた。
<>2人とも致命傷はない。斧は喰らっちゃいない。
<>だが、流石にきついな、こりゃ……
<>
<>「おっさん、息が上がってるぜ、休んでたらどうだ」
<>「何言ってやがんだこの餓鬼。俺が下がっちゃ締まんねぇだろうが」
<>
<>互いにへっと笑い合う。
<>そして真剣な目つきで、改めて斧を構えた蔦人間を見る。
<>捕らえて、ぶった斬る。シンプルに一撃必殺できやがる。
<>冗談じゃねぇ。
<>相手の傷の具合は…
<>焦げ臭いにおいが漂ってくるのは、後ろから飛んできた魔法のおかげだ。
<>だが、全然動きは鈍っちゃいねぇ。
<>下半身の蔦はいくら切り払ってもすぐに再生してきやがってきりがねぇ。
<>んで、上半身は人間として鍛えた頃のままなんだろう。いい筋肉してやがる。
<>左腕が萎んで垂れているのは、合成の失敗か?
<>
<>“炎よ刃に宿れ。敵を撃つ鋼となれ”
<>
<>見定めているところで、“火炎賦与”がシタールに飛んだ。
<>「それで早く決めちゃいなさい!!」
<>後ろから飛んだライカの叱咤に、シタールが何とも言えない顔をした。
<>俺も何とも言えない顔になる。
<>
<>「さて、いくぜ」
<>
<>正面をカレンに任せて、シタールと俺、2人で左右に散開する。
<>蔦は律儀にも両方に襲いかかってきた。
<>上半身はまだ正面。
<>それぞれ切り払う。炎を撒くように蔦を斬ったシタールへと上半身が向いた。
<>それを見て、俺は蔦が巻き付くのを気にせず、そのまま深く踏み込んで斬りつけた。人の身体を斬った確かな手応え。
<>だが、相手の動きは鈍らない。
<>
<>“戦いの精霊、戦乙女よ!象徴たるその槍を投げつけろ!!”
<>“土の精霊よ!”
<>
<>ラスの“戦乙女の槍”を、クレフェの“石礫”を受けても、動きは鈍らない。耐久度は魔獣…
<>呪文を耐えきった蔦人間の攻撃が、来る。
<>蔦人間が、今まで垂らしていた萎えた左腕をシタールに伸ばした。
<>シタールがその腕へ仕掛けた途端、その腕が幾本もの蔦へと分離した。
<>
<>「蔦!?」
<>
<>腕から伸びたそれにシタールの盾を持つ手が捕らえられる。
<>下半身から伸びた蔦がシタールの足を止める。
<>
<>斧が、振り下ろされた。
<>
<>嫌な音がした。
<>
 
嫌な音
ライカ [ 2003/11/05 1:34:12 ]
  それは甲高い音。
<> 咄嗟に振るったシタールの斧が、相手の魔斧にぶつかった音。そして、シタールの斧が砕けた音だ。
<> 魔斧の一撃は、普通の斧では完全には防げなかった。でも、相手の斧に自分の斧をぶつけたことで、勢いがかなり減速する。
<> 脳天から真っ二つになるはずだったシタールは、胸板を斬りつけられるだけに留まった。
<> ―――とはいえ、けして浅い怪我ではないようだったが。
<>
<> 血しぶきが飛んだ。足を絡め取られているために膝すらつけないシタールの上体がよろめく。クレフェの癒しが飛んだ。
<> そしてほぼ同時に、わたしとラスがそれぞれ魔法の詠唱を終える。
<>
<>“戦乙女、死に立ち向かう勇気を司る者。お前の投げ槍で奴を貫け!!”
<>“…光の輝きをもて、闇を打ち砕かん。マナよ放て、大いなる霹靂を!!”

<>
<> 電光と光の槍が、今度こそ蔦男を怯ませる。カレンの短剣が、目を貫く。
<>
<> …そして、リドリーの蛮剣が、胸板を貫いた。
<>
<>
<>
<>「………あー、今回はさすがに死ぬかと思ったな」
<> ざっくりと裂けた革鎧を指して、シタールがからからと笑った。思わず、杖で頭を殴りつける。
<>「痛ぇ! 何しやがる!」
<>「ああもう! へれへれ笑ってんじゃないわよ馬鹿! どんだけ人が心配したと思ってんの! 戦斧はばらばらだし、鎧はもうはっきり言って鎧じゃなくなってるし!」
<>「しゃーねえべ! 咄嗟のことだったんだからよ!」
<> 魔斧の一撃で、シタールの戦斧は修復不可能なほどにねじくれていた。情けない顔をするシタールに、リドリーが笑う。
<>「まぁ、命があっただけでも儲けモンだろ。壊れたモンは仕方ねぇ。しばらくはこれでも使ってるんだな」
<> ………あ、蔦男の魔斧。
<> リドリーが蹴ってよこした斧を拾って、シタールは握りを確かめて、二、三度素振りする。扱えないほど重い代物ではないらしい。
<>「………ま、しゃあねえべ。この際贅沢はいわn」
<>
<> がんどかばこっ☆(←効果音)
<>
<>「魔法の武器使えるってだけで十分贅沢じゃない! 偉そうなこと言ってんじゃないわよ!」
<>「全くだ。贅沢言うな、この野郎」
<>「まったく、呆れてモノが言えないわ」
<>
<>
<>「………あった。これだ」
<> 蔦男の死体をまさぐっていたカレンが、胸の中から小さな針のような何かを取りだした。
<> それを、あらかじめ見つけておいた隠し穴に丁寧に差し込む。
<>「……よし、一休みしたら、いよいよゲフィッリンだ。覚悟は良いな?」
<>
<> ラスの言葉。
<> もちろん、全員が頷いた。
 
ひと休み
ラス [ 2003/11/05 23:52:31 ]
 「……その前に」
鍵穴(?)に差し込んだ針を抜いて、カレンが立ち上がった。

──何?

「……おまえだよ、おまえ。いや、おまえだけじゃない。シタールも。ライカも。クレフェも」

俺、何かしたっけ。

「魔法。使いすぎ。ひと休みするぞ。……リドリー、異存はないよな?」
「ああ。もちろんだ。こっちも体力無尽蔵ってぇわけじゃねぇからな。いや、こっち来る前に走り込みはしてきたけどよ」
「オッさんのは、年だよ、年!」
「てめ、シタール! この餓鬼!」
(がん★ごつ★)
「はい。そこまで。カレンの言う通りね。休みましょう」

ライカのひと言(一撃?)で休憩開始。

「遺跡の作りとしては、おそらく中央が闘技場でしょうね。コロッセオの代表のような作りだわ」
クレフェが、壁面を撫でる。
そこは中央部側に繋がってると思われる内壁。緩いカーブを描いている。
おそらく、中央の部屋は巨大な円形なのだろうと想像するに難くない曲線を。
「そして、わたし達はここまで階段を上り続けてきたわね。小部屋を挟みながら」
答えたのはライカだ。荷物から出した羊皮紙を広げている。
「ということは……」
「ええ。おそらく、そこの扉を開ければ、闘技場へと降りる階段になるんでしょうね」
「そして、小部屋以外のスペース……そう、遺跡の規模にしては小さい部屋と狭い階段ばかりだと思ってはいたけれど。残りのスペースは全て観客席だというのなら、辻褄は合うわ」
「階段を一気に地上まで下りて、観客席に囲まれた闘技場……嫌になる舞台設定だわね」

「おいおい、ライカもクレフェも。ったく! 休めよ。魔法使いたちは!」
シタールの怒鳴り声。ってか、おまえもな。怪我人。

………………。
…………。

……ところでリドリー。さっきの話の続き。甘くねぇってどういうことよ。
「ああ、ウェシリンな。いや、それがあいつよ。翌日の晩に、酒場でいろいろ言いふらしてくれんのよ」
え? それってもしや……早かっただの、下手くそだの、そういうことを?
「そうそう。いや、そのことだけに限らねぇ。寝物語に話したことまで暴露されるんだ」
うっそ。マジ?(がーん)
「俺なんかよう……昔の話を洗いざらい話されたぜ……」
……いいじゃん、それっくらいなら。
「馬鹿言うな。娘の前でだぞ!?」
うっわ……気の毒…………。
「だからな、ラス、おめぇよ。ウェシリンを落とす気なr」
(ばしっ!!)←床が殴られた音。

「…………休め、と言わなかったか。俺は」

………………あ。カレン(汗)。
 
創成魔術師
リドリー [ 2003/11/07 1:34:33 ]
 相棒に睨まれたラスはすごすごと寝に行った。
しばらくはカレンと俺で見張り。他は休ませるとする。

気力の回復ってのには時間がかかる。普段はこんなところで立ち往生なんてのはしたくないんだが……
幸いここは今まで閉じられてた場所だ。しかも幾重もの守護者つき。
構造と目的、そして経験から言っちまえば、こういう遺跡で他の襲撃、罠、彷徨ってる怪物に出会うこたまずねぇ。
今まで竜がいたこと考えてもこの場での待機、野営なんかに問題はない。
見張りはつけるが、二人ずつで交代まわしていきゃいいわな。

で、魔法使う連中を優先的に休ませる。
普段なら鍵も優先なんだが、なかなかそうもいかねぇ。怪我人が血を回復させるまでは気張ってもらうとして、と。

じゃあ、一休みだ。

で、交代の時間。次は……
ドシン
って、何だ?上から聞こえてきた音は……?
顔をしかめた俺に、警告するようにカレンが言葉を発した。

「建物が軋んでいる」

天井を見る。一度凹む。元に戻って、ぱらぱらと屑が落ちてくる。

「起こして先へ進むぞ。下へは降りられねぇ」

これも仕掛けか?だとしたら、最後の最後でまずったかも知れねぇ。
漠然と不安を抱くが、いまさら後ろに退いちまうと逆に崩壊で潰されちまう。

苦々しげに顔をゆがめつつ、素早く全員を叩き起こす。その間にカレンは扉を開けていた。

「行くぞ」

扉の先から、部屋へと光が差し込んでくる。
普通に遺跡でよく見る魔法の光ではないその灯は天井からのものだった。
広い闘技場内部。観客席の上部に出た俺らの入り口からは、一直線に中央部のリングへと道、階段が延びていた。

ドシン
「これは……」

クレフェが顔をしかめる。観客席にいたのは、大きな不定形のモンスターたち。
大小さまざまな、まともに動けそうもない形をしたモンスターたち。見たこともない、出来そこないのようなやつらがそこで跳ねていた。
……歓迎してんのか?

「ブロブ……?」
「でも、原型をとどめているものもいるわね……」

ライカとクレフェの呟きに、ここにいるモノ達は答えなかった。
だが、俺らを待っていたものの声が闘技場に響いた。

「“創成魔術師"ゲフィッリンの塒へようこそ」

その声を掻き消すかのように観客席から叫びが上がり、さっきまで俺たちがいた部屋が上に乗っていた極大のブロブによって潰された。
周りを見るが、こちらの道へ入ってこようとはしない。ただ単に叫びながら飛び跳ねている。だがしかし、それを斬り捨てながら外に行くのは、難しいな…

「進むしかない、ってか」

斧を構え、前を見据えてシタールが言った。
確かにそのとおりだ。まぁ、もともとブランプのお零れってやつを頂きにきたんだしな。
考えるこた後回し。とりあえず先進むしかねぇ。

全員が前を見た。
階段の下、リング中央に見えるのは巨大な、影。
 
闘技場の冒険者
ラス [ 2003/11/08 23:39:45 ]
 階段を、降りる。
中央に見えるのは、遠目に見ても巨大だと思うほどの……なるほど、あれが巨人か。
巨人の流れを汲むというモンスターと戦ったことはある。
だが、古代王国期に生きていた、本物の巨人は。

太く、そしてよく通る声。
近づくにつれ、巨人は大きくなる。当たり前と言えば当たり前のこと。けれど、実際にその大きさを感じるのは、また別だ。
真正面から見ていたシルエットが、近づくにつれ細部がはっきりとする。
あれは……ケンタウロス? まさか。……だが、巨人の下半身は紛れもなく四つ足の馬だ。
純白に輝く白い馬。神々しいほどの毛並み。
そして、その上にあるのは、黄金にきらめく体毛を持った、鍛え上げられた肉体。

……あの巨人は、自らを創生魔術師と名乗った。
それなら。
階段を降りきる手前で、俺は立ち止まった。
訝しげに、他の奴らが振り返る。
それには構わず、計算する。

ここから、奴までの距離。
そして、俺自身の残りの気力。懐にある魔晶石の数。
……かすかに手が震える。背中を冷や汗が伝う。観客席のざわめきと拍子を合わせるかのような耳鳴り。
さっきの蔦男と、その前のガキどもに使った魔法の数を思い出す。
──あと……使えても、ウィスプやサラマンダーで3〜4発、というところだろう。
魔晶石を使えば、もう少しは保つはずだ。

腰に下げたオカリナに手を触れる。
クレフェが俺の意図に気が付いた。

「待って。気力ならわたしのほうが……」
「こいつを連れてきてるのは俺だ。だから、これは俺の役目」

正々堂々?
闘技場の中央に立って、礼を交わしてから?
は。ふざけんな。俺たちは冒険者だ。

懐の魔晶石を握りしめて、そっとオカリナからシルフを呼び出す。
見上げてきたライカに、魔晶石をひとつ放る。それを受け取って、ライカが頷いた。

俺の詠唱と同時に、ライカが杖を振る。
「そうね。わたしたちは冒険者。……剣闘士じゃないわ」
そして、呪文が完成する。

“万物の根源たるマナよ。抗魔の力となりて、我等の身を守れ!”
“美しき風の乙女シルフ、彼の者が発する全ての音を奪え!”
 
猛攻
クレフェ [ 2003/11/09 1:33:03 ]
  風が、動いた。
<> 風霊の力が輝く巨人を包み、抗魔の光が私達を包む。
<> 巨人の開きかけた口が歪んで、悔しげな目が私達を睨み付けた。そして声なき叫びをあげた。
<> 下位古代語会話のできない私でも、わかる。恐らく彼が届かぬ声で叫んだのは、罵声。
<> それが我々に向けられたものなのか、自身の甘さに向けられたものなのかは判らないが。
<>
<> 次の瞬間、彼は凄まじい速度で私達に迫ってきた。体躯に見合った重そうなハルバードが不敵な挑戦者を薙ぎ払うべく振り上げられ、4本の足が砂煙を巻き上げる。突撃をかけてきたのだ。
<> 「速いっ!」
<> だがこちらとて逡巡などしてはいなかった。散開する暇がなかった私達は、自然に組んでいた隊列を整えて応戦する。
<> 剣と斧の二人が最後の段差から剣を振るう。彼我に身長のハンデがある分、足元を狙う斧と振り風を切って薙ぐハルバードに対応する剣、そんな組み合わせになった。
<> 「だあっ、4本も足があるのは反則だぜ!」
<> 振り下ろされる蹄に応戦しながらシタールが叫ぶ。
<> 彼らの背後から魔法使いが各自の力を振るう。
<> 段差はある意味好都合だ。前方で戦う彼らの頭上を越えて魔法が使えるのだから。
<> 光の矢が飛び、光霊が跳ねる。もう少し混戦していなければライカはクロスボウを使うことも辞さないだろう。
<> それにしても、強い。膂力も剣技もかなりのものだ。
<> 「さすがに闘技場に引き出されていたペットってわけか」
<> ラスが舌打ちしながら援護する。
<>
<> 数合を重ねてこの位置では不利と悟ったのか、ゲフィッリンは一旦後退した。
<> 背後を見せることより、狭い通路から集中する攻撃――それは「闘技場」では想定されない戦い方だったはずで――から逃れて自分の得意とする戦法へと体勢を立て直すつもりなのだろう。
<>
<> 私は腰の皮袋を引きちぎるように取り外し、中の石を地に叩きつけるようにして放り投げた。
<>ノームよ、お前の腕で彼の者の足を絡め取れっ!
<> 石の腕が闘技場の地面から立ち上がり、4本の足に迫った。
 
A.カレン [ 2003/11/09 4:57:15 ]
 巨人の前足が、石の腕を踏み潰す。しかし、後ろ足の一本にそれは絡みついた。
全ての動きを止められたわけじゃないが、少なくともあの脅威的なスピードは奪った。
……いつまでもつか、わからないが……。

考えどころだ。
あの敵に対して、いちばん効果的な戦法はなんだ?
今のままでは、俺の剣はロクなダメージを与えられない。魔法などもっての外。
戦士二人の剣と斧に次いで、いやそれ以上のダメージを与えられるものは…俺の知る限りでは、そう……ラスの戦乙女の槍かライカの雷光。
けど、長期戦になれば、クレフェの魔法が打ち止めになることのほうがマズイ。

今のうちなんだ。
ヤツが自由に動けない今が。

巨人の頭のあたりで、また光霊が弾けた。

………………。
リドリー、シタール……前は任せた。


魔法使い達のもとへ戻ると、クレフェは一瞬、怪訝そうな表情を見せた。
……構うまい。説明してる暇もない。

「ラス、オマエの剣を貸してくれ」
「ちゃんと返せよ」
「ああ。…それと…”我が力を与え給え”」
「…俺でいいのかよ」
「いい。ガツンとお見舞いしてやれ。ライカ、魔法を」
無茶なこと考えてるわね、とライカは一言呟いた。
大丈夫さ。ヤツの武器に当たらなけりゃいいんだ。

ラスに魔法を使ったことで多少、気力が萎えた。
いざという時の”癒し”は、使えないかもしれない。
まぁ、いい。その点はクレフェに任せよう。
俺には俺のやり方がある。

ライカの魔法で、平時以上のスピードを得て、前線にとってかえす。
戦士たちは、激しい攻防を続けていた。
負担を減らさなければ。
敵の目を引き付けるように、側面、そして背後に回りこむ。
今のうちに、互角まで力を削がなければならない。

「倒れろっ!」

巨人の捕らわれた後ろ足に切りつける。
いくら、魔力があるとはいえ、所詮は盗賊が使えるような短剣。一撃では沈まない。
そんなことは承知の上だ。
暴れまわる三本の足と、振るわれるハルバードをかいくぐる。
が、足元からは離れない。
邪魔だろう? ゲフィッリン。
追うなら、俺を追え。
 
思わぬ能力
ライカ [ 2003/11/10 0:01:51 ]
  カレンが囮に入ったことで、巨人の動きは目に見えて鈍った。シタールとリドリーの攻撃も、徐々にではあるが確実に巨人の体力を奪っていく。

 魔法で攻撃するなら、今。

 わたしが放った電光と、ラスの放った光の槍が、正確に巨人を射抜いた。音にならぬ声で巨人は叫び、その馬の足を地につける。
「よし! いける!」
 シタールの叫びに、わたしも半ば確信を抱いていた。………が。

「危ねぇカレン、下がれ!」
 ラスの声が響いた。巨人に一番近い位置にいたカレンが声と同時に身をそらすと同時に、一瞬前までその喉があった場所を太い腕が掻く。
「しぶてぇな!」
「待って! 様子が変よ!」
 リドリーの声をうち消すように、クレフェが半分白い顔で叫んだ。巨人はゆっくりと立ち上がり、ハルバードを再び構える。

その体に、わたし達が与えたはずの傷が、ない。

「再生ですって!? そんな、沈黙の魔法は効いているはずなのに!」
 クレフェの信じられない、と言うような叫び。わたしとラスははっとして巨人を凝視した。その下半身、馬の体。神々しいまでに白い毛並みの―。

「まさか………幻獣との合成だなんて趣味の悪いこと言うんじゃないでしょうね!」
 わたしの言葉に、ラスも頷く。
「………てことは……なるほど、一角獣か」
「生命の精霊の力を直接引き出して、自己再生しているのね。やっかいだわ」
 クレフェの言葉が正しければ、再生し続ける彼と闘うのは時間が長引けば長引くほど不利になる。しかも、こちらは万全のコンディションではないし。

「ああ、確かにやっかいだ」
 にやり、とリドリーが笑う。こんな時に、不適な笑み。
「でもなぁ……再生するとわかったんなら、再生する前にぶっつぶせば良いだけだ!」
 単純明快な答えに、シタールも頷いている。笑いながら。

「だったら………短期決戦だ! 全力でつぶしてやる!」
 シタールの声に、わたしとラスは魔晶石を握りしめた。
 
決着、そして。
リドリー [ 2003/11/10 13:42:40 ]
 見る。
<>短期決戦を狙うなら、一撃で行動不能に出来る場所を探さないといけない。
<>例えそれがどんなに守られていたとしても、一流の鍵だ、ってんなら開けられるもんだ。
<>そしてこじ開けられた錠前をパダ流に開けるのは俺とシタールの役目。
<>
<>見る。
<>一見傷は全て治ってるようだが、違う。
<>内部には血が溜まってやがるし、身体の中央部はまだ流血もしてやがる。
<>こいつ、やせ我慢してやがんな。
<>完全に治るわけじゃねぇなら、ごり押しで何とでもならぁ。
<>
<>大上段に構える。狙うは腕。
<>完全に治せねぇのが分かれば狙いはこれでいい。
<>落としちまえば、斧槍は使えねぇ。
<>
<>見る。
<>カレンは牽制している。シタールは機を伺っている。
<>敵さんはこちらを見て斧槍を振り上げる。狙いは俺。
<>振り上げた剣はそのままに、斧槍を見る。あ、こりゃ避けきれねぇ。
<>鎖帷子を弾き飛ばす一撃。歯を食いしばる。口の端から血が垂れた。肋がイカレてないなら大丈夫。
<>カレンがその相手の一撃に合わせて踏み込む。手を狙ったその一撃は斧槍に弾かれた。カレンの短剣が宙を舞う。
<>だが、それで扉は開いた。目の前には切り落としやすそうな腕がある。
<>シタールが銀色に輝く斧を、馬巨人の腕へと振り下ろした。刺さる。
<>深々と刺さったその斧の上から、俺がだめ押しとばかりに剣を振り下ろした。
<>
<>馬巨人の腕が落ちた。斧槍を握ったまま、腕は血で滑り落ちていく。
<>
<>“沈黙”が切れて、雄叫びが聞こえてくる。
<>その雄叫びで、途切れそうになる意識をつなぎ止める。まだ終わっちゃいねぇ。
<>クレフェの“快癒”がとぶ。
<>無くなった血は戻りゃしねぇが、傷口が完全に塞がりゃまだまだ戦える。
<>
<>「これで、最後よ」
<>
<>砕けた魔晶石を手に、そうクレフェは宣言した。
<>よくここまで保ってくれたモンだよ。
<>こっから先はいつも通りだ。これだけ癒し手が踏ん張るなんざ普段はねぇ。
<>そもそも癒し手がいるなんざ恵まれてる。癒し手がいなきゃこんな遺跡潜れねぇけどな。
<>
<>もう一度馬巨人を見る。
<>再生はしている。だが、腕が生えてきたりするわけじゃねぇ。
<>斧槍に固執して、片腕で振り回そうとしているが、そんな攻撃当たりゃしねぇ。
<>一歩引いてダガーを投げるカレン。
<>遠慮なしに斧をたたき込むシタール。
<>そして目一杯魔力をつぎ込んだ“光の槍”を投げつけるラス。
<>
<>「美味しいところは頂くぜ」
<>
<>俺は人の胴体の付け根部分へと剣を突き刺した。
<>血が飛ぶ。4本の足の動きが止まる。そして頽れた。
<>
<>「貰ったっ!!」
<>跪くような態勢になった馬巨人の頭を横薙ぎにして、シタールが決着をつけた。
<>
<>
<>倒れた馬巨人を見ずに、ライカの詠唱が続いた。
<>
<>“風の咆吼、光の疾走、始源の巨人の大いなる息吹……万物の根源たるマナよ。放て、闇を砕く霹靂を!”
<>
<>室内に閃いた“電光”は、通路へと消えていった。
<>腐った肉の焦げる匂い。て、そういうことかよ。
<>
<>「前へ走って!」
<>
<>そう叫んで、ライカが膝をついた。気力を根こそぎ持ってかれてやがる。
<>クレフェがライカを横から抱えて走る。
<>カレンが斧槍を抱えて扉へと向かった。
<>ラスが後ろを向き、呪文を唱えた。
<>
<>“シルフ、風の乙女よ、ここに集いて壁となれ。いかなるものも通さぬ嵐となれ”
<>
<>「これですっからかん……だが、時間は十分に稼げるだろ」
<>“風霊壁”が通路を塞いだ。通り抜けられなかった粘液が押し合っているが、この壁は潰れない。
<>
<>倒した後はタイムアタックかよ。
<>ひとまずの時間制限はこの壁が潰れるまで、と。
<>粘液に追いつかれて飲み込まれる前に脱出しねぇといけねぇ、ってか。
<>風の壁越しに見えるぶよぶよとした黒いモノを見ながら、俺は、へっと笑った。
 
終幕
シタール [ 2003/11/11 0:59:47 ]
 風の壁の間の通路に向かって走る。走る。ひたすら走る。
はっきり言って、ゲフィッリンとの戦いで全員その場にぶっ倒れてぇぐらいに疲れてる。
でも、足を止めちまったら・・・この世に生きた痕跡すらもこの気色悪い物体に跡形もなく消されちまう。

通路の先には開いた扉。ラス、クレフェ、ライカ、そしてオッさんにカレン、最後に俺が飛び込み、素早く扉を閉じる。

「ライカ!!」
「分かってるわよ!でも、後は任せたわよ!!」

”マナよ。偉大なるマナよ。この扉に何者をも通さざる力を。それを解く言葉はアブゥトス。”

詠唱を終えると同時に極限の披露に達したライカふらりと崩れるのを何とか支える。
よく見るとみんなに多様な状態だ・・・そりゃあれだけ派手にドンパチやったんだ・・・口聞く元気もねえやな。でも、みんな生き残った。

謎は山ほど残った。ゲフィッリンがため込んだ宝物も持って帰らずじまい。
手に入ったのは、魔法のかかった斧と斧槍が一本ずつ。ま、悪くはない収穫だな。

「お前、斧壊したんだろ?この斧を使う気は無いのか?」
うーん。確かに古代王国の遺産だ。
前使って多奴よりも扱いやすいわ、凄い切れ味だわ。なんだが・・・まあ、鑑定でやばい事が分かったらつかわねえかもな。

さてと・・・みんな、一休みしたら帰るべ。
 
(無題)
管理代行 [ 2004/11/27 5:02:01 ]
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