| 雄叫び。 <>鋭い金属音。 <>ロビンさんの繰り出した一撃を、届く寸でのところでメッティムの剣が受け止める。 <>憤怒にも似た表情で剣を握る手に力を込めるロビンさん。 <>対するメッティムは――どこか楽しげにも見える表情を浮かべている。 <> <>剣の応酬は終わる様子を見せない。 <>オイラはフォルティナートさんに言われたように、いつでもロビンさんに”治癒”を施せるように、 <>目の前の二人に意識を集中させる。 <> <>思考の端で、さっきのミーナさんの言葉を反芻する。 <>(――だから逆に、もしあたし達が言うことを聞かせることが出来たら……) <> <>言うことを聞かせる…… <> <>どうやって? <> <>言葉が通じるようには見えない。 <>魔法で言うことを聞かせていたのかもしれないけれども…… <> <>あのとき。 <>森の中で”魚”達が襲いかかってくる間際、小さく笛の音が聞こえた。 <> <>短く何度か繰り返された笛の音が鳴って止んで、それから”魚”達が襲ってきた。 <> <>それじゃあ2度目。 <>ホッパーさんが穴に落ちた直後、襲ってきた”魚”達は…… <> <>もしかしたら、落下する音、穴を覆い隠した小枝や枯れ草を踏み抜く音を聞きつけたのかも知れない。 <> <>もう一度、ミーナさんの言葉が頭を過ぎる <>(――ううん、”あの子”は自分から何かしようなんて意思は持ってないんだ) <> <>『魚』達は音を頼りにオイラ達を襲っていたのかもしれない。 <> <>ならばその音を上手くコントロール出来ればミーナさんが言う通りに、あの『魚』達に言うことを聞かせられるかも知れない。 <> <>けれども、何の音を鳴らせば『魚』達に言うことを聞かせられるのか、今のオイラには知る術はないし、 <>ましてその音を鳴らす方法も判らない。 <> <>フォルティナートさんかミーナさんの魔法ならば何とかなるのかも知れない。 <>あのとき森の中で鳴った笛は、目の前の男、メッティムが持っているのかも知れないけれど。 <> <>全て、憶測でしかない。 <> <>一際激しく金属音が響く。 <>目の前で、ロビンさんはほんの少しずつではあるけれども、メッティムに押されているように見えた。 <>戦いの前、援護は要らないとロビンさんは言った。 <>今、オイラがやろうとしている事は、剣士としてのロビンさんへの冒涜にもなりかねない。 <>けれども、ここで負ける訳には行かない。 <> <>視界の端で、フォルティナートさんが目配せするのが見えた。 <>オイラは一つ頷いて、神聖語の言葉を紡ぎ始める。 <>”大地の母、慈悲深き癒しのマーファよ。彼の者の傷を取り去り給え――” <> |