| テオ爺の昔語り |
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| テオ [ 2005/04/11 22:33:07 ] |
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| | おぉおぉ。今日もよう来なすった。 分かっておる、いつものようにわしの昔語り──冒険者時代の話を聞きに来たんじゃろ。 そう慌てるでない、ほれ、そっちに椅子があるでな。みんな、座って、座って。
さて、今日はどんな話にしようかの。 あれはどうじゃ、わしが初めて冒険に出たときの話で……あぁ、そうじゃったかの。 年をとると物忘れが多くていけんのぉ。ホッホッホッ。
では、別の話にするとしようかの。はてさて……そうじゃ、あの話がよかろうな。 これは数あるわしの冒険話の中でも特に面白い話での…… |
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| 首のない者たち |
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| テオ [ 2005/04/11 22:35:14 ] |
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| | 冒険者というのは存外に狭い業界での。実力以上に周囲の評判が大事なんじゃよ。 じゃから、わしらは他の冒険者よりも安い報酬で仕事を請け負っとった。手っ取り早く顔と名前を売るためにのぉ。 じゃからって報酬の値段に比例して危険は下がってくれはせん。小さい仕事から大きな仕事までの、いっつも体をボロボロのクタクタにさせて働いとったもんじゃよ。 すると、そのうちに「あいつらに頼めば少々の厄介事でも何とかしてくれる」みたいな噂が広まるようになったんじゃ。
あの仕事を受けたのは丁度その頃、冒険者として実力、声望共に脂が乗り始めた頃じゃった。
当時、【鷹の】ドノヴァンといったら街で知らない者はおらんかった。 【鷹の】っつーのはの、商売一筋に一代で成り上がった亡父の財産を食い潰しかけて借金だらけの放蕩息子ドノヴァンのことを、鳶が鷹を生むって諺を皮肉ってつけられた渾名なんじゃ。 そんなドノヴァンだけに周囲からの評判も悪くての、何やら災難が降り掛かったらしいが誰も手を貸してくれんかったそうな。 じゃが、流石に見るに偲びかねた冒険者の店の親父が伝手を頼ってわしらのとこにその話を持ち掛けてきおったのよ。
わしらも最初は断ろうと思った。ドノヴァンに会ったことはなかったが悪い噂はどえりゃー聞いとったでの。 じゃが、発想を逆転させてみたんじゃ。世間の評判が悪い【鷹の】を助ければ評判になる。つまり、もっと名前を売る好機なんじゃと。 それにこの件を機に【鷹の】も改心してくれるかも知れん。そしたら、みんなにとっても良いことじゃからの。 じゃから、わしらは一先ずドノヴァンに会うことにしたんじゃよ。
いざ、ドノヴァンから依頼内容を聞いてみて、わしゃ、たまげた。 それまでに潜り抜けてきた幾つもの冒険以上に厄介な内容だったからじゃ。命を落とす危険も高かった。 正直、わしらでは役者不足と思っんじゃが【鷹の】は今回の一件を乗り越えたら改心して真面目に働くと誓ってくれたでの。 ならば、と、わしらも肚を括ったんじゃよ。
【首なし騎士】め、返り討ちにしてくれる、とな。
当日、わしらは武装してドノヴァン宅に待機しとった。勿論、依頼主の【鷹の】も一緒じゃ。 【首なし騎士】は決められた期日に必ず目的対象の元にやって来る。そこを待ち伏せして撃退するのがわしらの策じゃった。
息を潜めてその時を待っておると表からゴロゴロゴロと車輪の音が聞こえてきた。 カッカッカッと蹄の音も聞こえてくる。間違いなく馬車の音じゃった。 そして何者かの気配が扉の前で止まった。今、思いだしても肌が粟立つぐらいの凄まじい氣圧じゃったのぉ。
やがて、扉が鈍い音を軋ませて開かれると気配の主は悠然とその姿を現わしおった。
それを見たわしらは余りの衝撃に呼気を呑み込んでしまって機先を制されてしまった。 そして何より、ドノヴァンがその恐怖に耐え切れなくなって悲鳴のような声を叫びだしおったんじゃ。
「か、堪忍や! お願いやから堪忍してーな、デュラはん。わてかて、他の利息を返すだけでいっぱいいっぱいなんや。もう一年、もう一年だけ待ってぇな〜」
そこには【首なし騎士】よりも恐しい形相をした借金取りのデュラ待祭が立っとった。 【鷹の】は商人仲間からだけでなくチャ・ザ神殿からもお金を借りとって、「首が」回ら「ない」状態だったんじゃのぉ。
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さて、今日の話はこれで御終いじゃ。楽しかったかの? ホッホッホッ。
おぉおぉ、忘れとらんよ。ちゃーんと焼き菓子を用意しとる。 ほれ、みんなに一つずつあるじゃろ、仲良く分けるんじゃぞ。
またおいで、菓子と面白い話を用意して待っとるからの。 |
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