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みちしるべ、つづらおり
コーデリア [ 2005/06/13 23:24:07 ]
 物語を読んでいると、ウンメイにホンロウされる、なんて言葉があります。
ちょっと昔は、あたしもホンロウされてるなと思ってました。

でも、実は違うんだなとこの頃は考え直しました。

あたしは選んでいます。
どんな時でも、なすすべもなくということはありません。
イチバンいい方法ではないかもしれないけれど、あたしがナットクして選び取った道を歩いています。

今まで誰も文句を言ってこないし、口を挟んでもきません。
あたしがあたしの道を歩いているショウコだと思います。

不自由なんかありません。
これからも、このまま突き進みます。

あたしは、自分のなりたいあたしになりたいからです。
 
光るお誘い
コーデリア [ 2005/06/13 23:25:51 ]
 少し暑くなってきた頃のことでした。
はえぎわの危うくなったおじさんが言いました。

「うちの店でウェイトレスやらねぇか?」

あたしは財布の中身を数えてました。
残りは少なかったです。
コンキュウというジョウキョウです。
正直言って泣きそうでした。
下水道のネズミ退治でも、よろこんでやろうと思うほどでした。
こんなことになる前に、ラスと組んだ仕事で収入はあったけれど、それは使えないお金です。
借金返済のために残しておく決心をしたのです。
だから困ってました。
そこに、はえぎわの危うくなったおじさんのお誘いです。

「まかない、ある?」

お腹が減っていたのです。
腹が減ってはナントヤラです。
はえぎわの危うくなったおじさんは不思議そうな顔をしました。
アタリマエだと思います。
お給金のことを先に聞かなかったからです。

「日給50で、まかないもある。どうだ?」

いろいろなことを考えました。
冒険者の店は、情報交換の場所でもあります。
仲間を集めていることもあります。
そういうところに通わないと、冒険のお話に乗りそびれます。
毎日冒険者の店に行って何かを注文していると、お金が少なくなります。
お金を稼ぎたいのに、少なくなるのは哀しいです。
お金を稼ぎながら冒険者の店に長い時間いられるなら、おいしい話だと思いました。
まかない付きだから飢えません。
ステキです。

「やるっ!」

はえぎわの危うくなったおじさんは、フランツと名乗りました。
よろしくおねがいします。
 
冒険者の店のキミョウな面々
コーデリア [ 2005/06/16 23:42:18 ]
 ジョッキを載せた盆を持って歩くレンシュウをしています。
もちろん、ジョッキの中は空っぽです。
こぼしたらもったいないし、後始末をしなければならないからです。
その上、怒られます。
怒るのはシタールです。

盆を持ってくるっと一回転したら、余計なことをするなと怒りました。
両手に盆を持ったら、できもしないことをするなと怒りました。
ジョッキを一度に何個も持とうとしたら、10年早いと怒りました。
歌いながらスキップしたら、真面目にやれと怒りました。

「いつかぁ怒った顔が地顔になる? っていうかぁもうなってる?」

口答えのハンゲキはゲンコツです。
そのうち頭の大きさが二倍になりそうで心配です。

「お前が怒らせてんだろ、ボケェ!」

ハリートさんは見ています。
いつも微笑んでいます。
お手本も見せてくれます。
でも、怒ったシタールを止めてはくれません。

「大丈夫ですよ。次は頑張りましょうね(笑む)」

キタイしている目です。
そのたびに、頑張ろうと思います。
厨房とカウンターの間仕切の奥からバザードが覗いています。
怯えているみたいです。
シタールが怒った時は口答えをするのに、ハリートさんが笑って許してくれた時には顔が青くなります。
涙目になることもあります。
変です。

「怒られたほうがマシ……」

やっぱりオカシイです。
怒られたいなんて、マゾかもしれません。

はえぎわの危ういフランツは、ウケを狙って店員を集めたのかもしれないです。
誰にウケるのかはわかりません。
もしかしたら、本人かもしれません。
だとしたら、店長はもっと変な人だと思います。

あたしはそれでも頑張ります。
今日もまかないがおいしいです。
 
小孔雀街で買い物
コーデリア [ 2005/07/13 0:24:08 ]
 ムディールの衣裳を着て小孔雀街に行きました。
にぎやかなところです。
オランの夏は意外と暑いけれど、露店や屋台が並ぶこのあたりはとくに暑く感じます。
この服も、首から袖口にかけてきっちりしていて暑いです。
それに、袖の長さがハンパなカンジです。
でも、オランではあまり見かけない可愛い服だから、もうお気に入りです。

小孔雀街に来た理由は、屋台です。
シタールと歩いた時に目をつけたものがあるのです。

「細かくきざんだ肉と野菜を包んだまんじゅうだ。ムディールでは一般的だな。素朴だけど結構いけるんだ」

説明だけして買ってくれませんでした。
ので、今日は自分で買います。

注文しようと思ったら、店員さんは取り込んでました。
お客さんに値切られているのです。
黙って見ていたら、かなりネバって、ものすごい勢いで値切り倒して買っていきました。
びっくりしました。

あたしはおまんじゅうを3個買いました。

「9ガメルね」

言われたとおりにお金を払うと、それまでぶっきらぼーだった店員さんが少しだけ笑って、1個オマケしてくれました。
おまんじゅうは4個になりました。
一人で食べるには、ちょっと多いです。
お店に帰ってバザードに分けてあげることにします。
あたしは知っているのです。
バザードはまかないを残して、厩でこっそり犬に分けてやっているのです。
正直言って、バカだなと思いました。
でも、楽しそうな顔をしているので、言うのはやめました。
きっとバザードの前には、もったいないオバケは出てきません。
理由を説明して安心させるのもシャクなので、このことも言いません。


しばらく小孔雀街を歩きました。
よく見ると、店先のどこででも値切り合戦をやってました。
ここではそれがレイギみたいです。
おもしろいところでした。
 
夢は長い道の向こうにあるもの
コーデリア [ 2007/01/04 21:33:24 ]
 あたしの夢は、おじいちゃんと一緒にお山で暮らすことです。
暖かい季節には狩をして燻製を作ったり、毛皮を加工したり、木の実を採って干したり、薬草を煎じたりします。
毛皮は麓の村に持っていって、山羊や牛の乳と交換して、それでチーズを作ります。
畑の手入れもします。取れたお芋や野菜は、土に埋めたり塩漬けにします。
森に入って気を切り倒して、小屋いっぱいにまきを詰めます。
そうやって冬に備えます。
冬はとっても寒くて、暖炉の傍がとっても幸せな場所になります。
そこで、糸を紡いで布を織ったり、編み物をしたり・・・。

小さい頃、あたしは、そういう生活をしていました。
おじいちゃんはいろんなことを教えてくれて、あたしはそれが楽しくて満足してました。

それを全部ダイナシにしたのはお父さんです。
おじいちゃんはギルドに連れて行かれて、今では会えません。
お父さんがギルドに与えたソンガイを、ガメルにして返さないと、おじいちゃんは出て来れません。
あたしは、お父さんをすごくキライになりました。

本当は、あたしはお金なんて欲しくありません。
おじいちゃんとお山に帰って、静かに暮らせればいいんです。


ラスとファリス神殿のお姉さんが、暮れに起こったゴウトウの話をしたとき、もしかしたらお父さんがいるかもしれないと思いました。
理由はありません。なんとなくです。
いればいいな、と思っただけです。
そうしたら・・・。

あたしの描いた似顔絵を持って、ラスは衛視のところに行ってくれました。
あたしも、ラスの後ろに隠れてついていきました。
でも、捕まったゴウトウのなかに、お父さんはいませんでした。

「残念だったな、って言えばいいのかな。まぁ、もともと確証はなかったわけだし・・・」

いいんです。
きっと疲れていただけです。
借金だらけの生活にちょっと疲れて、お父さんが捕まってギルドに引き渡されれば、あたしは自由になれるかもしれないと考えちゃったんです。

ラスは、結果がヨソクできたけど、付き合ってくれたんだと思います。
でも、なんだか、「ありがとう」と言うのは恥ずかしかったので、帰り道はずっと黙ってました。
ただ、昨日残した玉ねぎの文句だけを言っておきました。
 
木の葉のチシキ
コーデリア [ 2007/11/01 22:21:20 ]
 秋はいい季節です。
森や山には木の実がいっぱいで、木の葉も色づいて、とってもキレイです。
山から渡ってきた鳥もいます。あたしのお気に入りの狩り場の森は、鳥たちの休憩場所なので、仕掛けてある罠には、いつも何羽かかかってます。
今日はフランツにお休みをもらって、この森に来ました。
いつもは、早朝に鳥を罠からはずして、そのまま店に行くけれど、今日はティールという人に頼まれたルッカの葉っぱも集めなくちゃいけないのです。
でも、若い葉っぱばっかりで、あまり集まりませんでした。
ルッカの木は、大人の腰ほどの高さにしかなりません。それから、日陰には生えません。お日様の光がダイスキな木なのです。成長しきるには、5、6年かかります。
若い葉っぱは薄くて黄緑色だけど、大きくなると濃い緑になってちょっと厚みが出ます。この大きな葉っぱだけが、咳止めの薬になります。風邪をひいた時にも飲むし、息ができなくなるような発作のときにも使います。よくお日様にあてて乾かして煎じれば、一冬くらいの保存もできます。
寒さには強いけれど、雪が降る頃には葉っぱは落ちてしまいます。だから薬屋さんは、冬が来る前にこの葉っぱを集めるはずなんだけど……。その薬屋さんが、品薄だって困っているみたいです。
おかしいなぁ。
薬屋さんのほかに、誰が採っていくんでしょう。
ティールが言っていた、お酒に混ぜるとトぶっていうこととカンケーあるのかな?

とりあえず、できるだけ採集してまわって、皮袋に半分くらい集めたところで、変なものを見つけました。
ルッカの木の生えている場所のはじっこ。
落ち葉や枯れ枝で隠されていたけど、あたしの目はゴマカセません。隠そうとすればするほど、メイハクなんです。
そこには、大きな穴が開いてました。
調べてみると、細い根っこがちぎれて残ってます。あきらかに一本、文字どーり根こそぎなくなってます。
いったい、誰がこんなことを!
まったくレイギを知らないヤツです。ムチです。
根っこを土から出しちゃったら、ルッカは枯れてしまうのに。

こんなことをするヤツは、ルッカの赤い実でも間違って食べればいいと思いました。
甘くておいしいけど、ひどいゲリをするから。
 
部下と日雇いバイト
コーデリア [ 2007/11/20 16:32:36 ]
 仕事をするのは好きです。
ぼんやりして過ごすのは苦手です。
毎日忙しくても、テキパキ仕事をこなしていると、なんだか自分がユウノウに感じるのです。活き活きしてるって思えるのです。
お金ももらえるしネ★(ここがジュウヨウよ)
本当は働き者のラスは、今腕が1本しかなくて不自由です。書類ひとつとってもなかなか進みません。ちょっとした用事で出かけても、腕をネタに捕まるのでこなせないと言ってました。
でも、それは違います。
本当は、とっとと済まそうと思えばできるんです。
ラスはスウェンを仕込むために、ワザとサボってるんです。腕が足りないことは、きっとイイワケ半分なんです。
でも、あんまり忙しいのもカワイソウだから、ちょっとだけあたしが手伝うことにしました。

はい。ウソです。
言うことを聞けば報酬がもらえるからです。金貨で。


仕事のチェックをしにきたラスにゴジダツジを突っ込まれて、スウェンは書類の書き直しを言い渡されました。
あたしはお使いを頼まれたので、指定された家や店にお届け物とか報告書の受け取りです。
ラスの使いだというと、みんな腕のことを聞きたがりました。でも、いちいち答えるのもウザいし時間もないので、ちょっと頭が悪いフリをして「わかんなぁい」と言っておきました。
全部をこなしてギルドに帰って新しい書類をラスに渡すと、ちらっと目を通しただけで、「これもやっておけ」と、すぐにスウェンに放り投げられました。ラスは、あたしに金貨とオマケの晩御飯代をくれると、そのまま帰ってしまいました。
書類と一緒に残されたスウェンは、恨みがこもった目をして「仕事の説明くらいしていけー!」と怒鳴ってました。どーでもいいけど、そういうのはラスが出て行く前に言うべきだと思います。
その後は、ずっと文句をたれてました。
かなりストレスがたまってるみたいです。
なんであたしには1から10まで教えて、自分には何もないのかって当たられちゃったけど、それは仕方ないと思います。あたしはただのお手伝いです。
っていうかぁ、バイトを雇っただけぇ、ラスは優しいってカンジ?
なんてことを言い返したら、すがすがしくロウドウの汗を流しながら、仕事に戻っていきました。

働き者で優しい人がジョウシだとシアワセね。
 
同僚の心境
コーデリア [ 2008/03/11 1:37:13 ]
 キケンです。
なんだかどんどんキケンになっていきます。
ラス情報だと、今カークはスラムの奥にいるみたいなのです。
ラスのことだから、見間違えとかカンチガイなんてないと思うのです。ウソを言ってるってこともあり得ません。信用できます。
でも、今度ばかりは、うっかりさんだったほうがよかったような気がします。
そしたら、

「ナニてきとーなこと言ってんのよぉ。カークはここで可愛がられてたぁヌルい飼い犬なんだからぁ、そんなトコで生きてられるわけな〜いじゃ〜ん。ばっかねぇ」

とか笑っちゃえるのに。
しかも、店員にちょくで喋っちゃったから、すぐにでもバザードに伝わります。
どうして暗号文にしてくれなかったのかしら。いろいろシテキしちゃったから? かゆうまとか。
それにしても、イヤな流れです。
この情報をバザードが知ったら、スラムに乗り込んでいくかもしれません。素で乗り込んでいくのは危ないです。きっとあの場所のレイギもルールも知りません。
でも、だからといってあんなに可愛がってたカークのことを諦めろとはいえません。カークを可愛がってたのは、バザードだけじゃないし、みんなあの愛嬌のある顔をしたカークにご飯をあげたり遊んだりしてたんだから。なんとか戻ってくれないかなって思ってるのは、みんな一緒です。
そして、バザードの身を心配してるのも、みんな一緒です。

足引っ掛けたり用事を頼んだりして、また足止めしようかな。怒られるかもしれないけど。
あたしって、冷たい?
だって、15やそこらでひどい目に遭ってショック受けたり、命のキケンに晒されたりってかわいそうじゃない?
これも経験だって、人によっては言うかもだけど、中堅の冒険者の中にだってスラムに入ったことない人だっているのよ?
バザードなんて、シロウトです。
だから止めようと思うの。

いけない?