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【イベント】黒き墓所
イベンター [ 2005/11/04 20:22:47 ]
 <今回のシステム>

もともとイベントというものは、暗黙のうちに予定調和があったりするものですが、今回は更にそれを明確に押し出してみます。
まずイベンターが、現地の説明を掲載し、さらにそこには「ということで、みなさんそこから出てきました」まで掲載します。
なので、みなさんは、「その後の話」を宿帳として上げてください。
「その後の話」とはいえ、帰途に何かが起こるというわけではありません。

端的に言うと、
「いやー、あん時は大変だった!」
「まさか、アレがアレだったとは!」
「あそこでアレが出てきた時にはヤバかったよ!」
みたいなものですね。

よくキャラチャで、誰かと一緒に仕事をするアドリブをやりとりしたことがあるかと思います。大概の場合は、わざわざイベントにしたりせず、後にアドリブで「こういう仕事だった」と宿帳を書いたり、「あの時、彼がこうして…」とチャットでアドリブにしてみたりするはず。
基本はそれです。それをただ宿帳形式にしようというだけのものです。

なので、みなさん「事後」のアドリブを投稿してください。
各々、投稿出来るチャンスは思い切りよく1度きりです。

11/5(オラン発)− 11/7(現地到着及び探索)− 11/8(現地発)− 11/10(オラン着)

上記の日程で決行しますので、宿帳投稿期間は 11/7 20:00 〜 11/10 22:00 とします。
もちろん最終日より早く全員の分が揃えばそこで解決マークはつけますが、あくまで11/10夜までが拘束期間です。

順番などは特に決めません。出来るだけ早く上げて勝手に設定を決めちゃうもよし。
誰かが上がるのを待って、それに反応する形を目論むもよし。
こういう形態ですので、いろいろと策略等もあるでしょう。投稿期間の間に別キャラでキャラチャをしたり憩いでだべったりすることなどは特に咎めません。

また今回、参加キャラクターの中にNPCを1人取り混ぜることにします。
設定等は最低限に留めておきますので、その他の部分は各自自由に想像してみてください。

<参加キャラ>
ラス(PL:松川/イベンター)
カレン(PL:振一朗)
バザード(PL:枝鳩)
スカイアー(PL:Ken-K)
ベカス(NPC/人間・男):壮年の神官戦士。マイリー修練場でのスカイアーの知己。
 
<黒き墓所>(概要掲載)
イベンター [ 2005/11/04 20:27:34 ]
  オランから北。プリシスへと続く蛇の街道を1日。そこからエストンを視界に収めながら道を逸れ、更に1日と半。そこに、「それ」はあった。エストンにはまだ遠いが、幾つかの小高い山々がある。そのうちの1つ、切り立った崖が冒険者たちの目の前に立ちはだかった。その崖に填め込まれるように、そうでなければ崖に楔を打ち込んだように。季節柄、葉を紅く染めた木々の向こうに見えるのは、色鮮やかな風景にはそぐわない、漆黒の墓所だ。

 崖を背にして、真正面に入り口。入り口の両脇には小さな尖塔。半球の屋根をいただいた中央部の奥には、半ば崖と同化するように、より一層高い尖塔が1つ。とはいえ、奥の塔でも高さはせいぜい2階建てか3階建ての家と同程度のようだ。全てが艶のない漆黒の化粧に覆われ、両脇を崖に挟まれたその墓所は全ての影が集結する場所のようにも見えた。蔦や宿り木さえも、それには近づきたくないのか、墓所の正面、前庭にあたる部分から先は雑草ひとつ生えていなかった。

 墓所に葬られている人物の名はへクター・ド・ラウヒェン。遠くサーダインの時代にこのあたりを治めていた地方領主の1人である。ラウヒェンの名は恐怖と共に語り継がれた。オランが建国されてからは、その残虐な噂は絶えて久しいが、近隣の村では今でも時折「悪魔のような領主」の話が聞けるという。
 カストゥールの魔術に憧れを抱いたラウヒェンは、自身もそれを身につけようと、その知識を継ぐ者たちを次々と城へ呼び寄せた。そして知識を吸収し終えると彼らを拷問にかけた。何かを聞き出すための拷問ではなく、苦しみの果てに殺すための拷問に。
 肉塊となりはてたその遺骸をラウヒェンは崖から投げ落とした。そうして晩年、幾重にも積み重なった血と肉と内臓との塊の上に自らの墓所を建設した。死して尚踏みにじるために。

 近隣の村では「悪魔のような領主」の噂と共に幾つかの口伝が残されている。その中には、後世への挑戦ととれる文言もあった。「黒き塔、黒き棺。来たれ、英雄よ。その者のみが我が生涯の宝たる黒き宝石を手に出来るであろう」と。

 オランからはるばる「黒き墓所」へとやってきた冒険者たちは互いの瞳を見つめ、その意志を確認しあうと、墓所へと足を踏み入れた。
 彼らがそこから出てきたのは半日後のことである。入る時には東から木々を照らしていた陽が、今は紅葉をより紅く燃え上がらせる夕陽へと変わっている。
 怖気をふるう不死者の臭気に満たされていた肺から息をすっかり吐き出し、かわりに新鮮な空気を吸い込む。領主の妄念が宿った不吉な闇に慣らされていた目に、鮮やかに世界を照らし出す陽光を受ける。

 一行は、完全に陽が落ちる前に、少しでもこの不吉な場所から離れようと山道を歩き出した。墓所に足を踏み入れた時と人数は変わっていない。そのことを素直に喜びながら。
 
冒険者のたしなみ。
ラス [ 2005/11/08 19:50:07 ]
 あーもー。冗談じゃねぇっつの。
かなり調べ尽くしたはずだったのに、実際に中に入ってみりゃ、中の様子は文献と違う。
まぁよくあることではあるな。
文献にあったものよりも内部の空間……特に、中央に据えられた黒い棺から梯子を下りた先の空間が広かった。
まぁ狭いよりはいい。かもしれない。
ただ、その広い場所のあちこちに骸骨やら腐った死体やら……。

おいバザード近づくな。くせぇ。おまえ、返り汁浴びたろ。

「え! そ、そんなぁ! ぼ、僕だけじゃないですよ! ほら、スカイアーさんだって、ベカスさんだって、カレンさんだって! っていうか、ラスさんだって浴びて……って、どうしてみなさんさっさと着替えてるんですかっ!?」

どうしてって……そりゃまぁおまえ。ああまでクサイと、山道下る気力も萎えるし。
着替えは重要。冒険者のたしなみだよ(←本当か?)。
しかしアレだな。ベカスのおっさんの“聖なる光”。雑魚どもには効果覿面だったな。

「あ、そうだラスさん、借りてた細剣お返ししますね。助かりました、僕、銀の剣なんて持ってなかったから」

いや、だからおまえは……くせぇから着替えてから返しに来いっつの。

「まぁそう言ってやるな、ラス。バザードとてよくやった。入り口での怯えようを見ては少々危ぶんだが、ベカスが“聖光”を放つ前に『眼を閉じろ!』と叫んだ折には、一番早く指示に従っていたのはバザードではないか」
「……スカイアー。それは違う。バザードは最初から眼を開けてなかっただけだ」
「うわ、カレンさん! 言わないでくださいよぉ!」

ああ、でもアレはよかったんじゃねぇ? ベカスの盾が跳ね飛ばされた時に真っ先にそれを拾ってベカスに渡……あれ?

「ラ、ラスさん? 何を思いだしてるんですか? あの、えっと、多分思い出さないほうが幸せなことも世の中にはあると、僕は常々、店でフランツさんに言ってるわけなんですが……」
「……あの戦闘が始まる前に、オマエがバザードに言ったのは、『入り口まで下がってろ』だったな」
「そしてベカスの盾が転がっていった先は左奥の壁、か。怪我の功名とでもいうか……。冒険者に必要な資質の1つはあるようだな」

スカイアーが小さく笑っている。
まぁそうかもな、とりあえず“運”はある。かもしれない。

……まぁ、そんなこんなで。とりあえず、全員無事でよかった。
これで懐もほっくほくってんなら、万事めでたしだが……。

「……まぁ、そううまくはいかないな」
「でもカレンさん、あの出来損ないの……何でしたっけ、ミイラっぽいような、乾いたゾンビのような? とりあえずお化け?」
「…………疑問形で話すな、バザード」
「ともかく、最奥の棺に横たわっていたモノの眼窩から、宝石は刳りぬいてきたな。いや、宝石に似たもの、か?」
「そうだな、スカイアー。宝石というよりも、貴石の類だ。まぁこれほどの大きさだから、そこそこの値にはなるだろうが……」

なぁ?という目でカレンが俺を見る。
そうだなぁ。まぁ丸損ではない、っつーくらいか。
ああ、でもそれ以外の副葬品のほうが金になるんじゃねえの? なんかイロイロ入ってたろ。
まぁ品定めやら計算やらは、街に帰ってからだな。
とりあえず、おつかれさん。
 
冒険者の休息
カレン [ 2005/11/09 0:38:58 ]
 ラウヒェンの墓所。
オランの北、2日半。
地図がこれで……ここ、と(×印)
外観と、内部見取り図……。
あらかた漁ったと思うけど、あそこのヤバさ加減にちょっとやられ気味だったからなぁ…。見逃したとこあるかもしれない。
この辺、怪しいし。ここも通路の死人の山に阻まれたし。
まったく。
魔法はそう何度も使えないっつの。
だがまぁ、また改めて入っていこうって気にはならなかったな。

「カレンさん、何やってるんですか?」

今回の資料を見てるんだ。

「もう終わったんだから、必要ないんじゃないですか?」

オマエは、「代金受け取ったからもういいや」って領収書捨てるのか?
こういうのはね、後々何に変わるかわからないんだよ。
他の冒険者に売って、金になるかもしれないし、もう一回潜るときには目安にも生命線にもなるんだ。無駄にはできないよ。

「あんなこわい所にもう一回、ですか…?」

行けなかった場所あるだろ。ここ。

「……だめですよ、ここは。あいつら、腐ってるし骨出てるし虫が沸いてるし動きが鈍いくせにしぶとく追いかけて来るし汁だって飛びますから。もう行かないほうがいいですって」

ビビリの割には、よく見てるじゃない。

「そりゃアレだろ? いちばん追いかけられてたから。な、バザード」
「だって、僕の行くところに先回りしてるんですよー。頭いいのかもしれないですよ」
「ちがう。お前がちょろちょろしすぎなんだ。せっかく戦士が引き付けてくれているものをわざわざ出て行くから追いかけられるんだ。だいたい、お前は自分の役割ってものを覚えてたのか?」
「え〜っと、それは……ちょっと気が動転してて……えと……」
「そう責めるな、ラス。こちらとしても、頭数を減らしてくれた分、片付けやすかったのだ。気力の温存にもなったのだからな」

スカイアーの言葉にベカスが頷いた。
バザードのやったことは、俺とたいしてかわんねーよ。ちょっと度が過ぎたってだけで。加減さえつかめば、上手く立ち回れるさ。
さて、続き…。
棺の間から左右の階段を上ると、テラス状のフロア。中央奥に螺旋階段。これを上ると塔の天辺、と。

「ラウヒェンの幻がいたところですね。なんか、根の暗そうなおっさんで、意外と貧相じゃなかったですか?」
「あの幻なぁ…。声がちゃんと聞こえれば、何か新しい手がかりにでもなったかもしれないのに」
「魔法が不完全だったのかもしれん。知識を蓄えても、実力の伴わない者はいるものだ」
「まったく、使えねぇ…」

描き出す見取り図を見ながら、仲間達が口々に今回の探索のことを話す。責めてみたり褒めてみたり、愚痴を言ったり手に入れた品に期待を膨らませてみたり。
生きて出てこれたからできることだ。
次へ、次へと、冒険を求める気持ちを揺さぶる。
こんなひと時があるから、俺は冒険者をやめなかったんだと思う。
冒険者志望のバザードは、こんな気持ちを持ち続けてくれるだろうか。

「ラスさん、やめてください! 僕、こわい話は……」

…まだ、無理かなぁ(苦笑)
 
冒険者との帰り道
バザード [ 2005/11/10 19:38:07 ]
 ・・・・・・・・・・・・。
乾いた手、腐った手、肉の無い手。
削げた顔、欠けた顔、骨となった顔。
闇の中からこっちに来る。沢山、いっぱい、数え切れない。

手元には古びた短剣。村から持ってきた馴染んだ短剣。素早くも鋭くも重くもない短剣。
それだけじゃ何も出来ない・・・来るな、来るな、来るなー!


(ぼかっ!)
・・・・・・・・・・・・くうー。い、いきなり殴るなんてヒドイです! 何するんですかラスさん!
「・・・何度起こしても起きねぇから仕方ないだろ。ったく、いい夢でも見てたのか?」
・・・違いますよ! もっとこう・・・えーと、あれ? なんだっけ・・・あはは、忘れちゃいました。

ラスさんがやれやれという感じで立ち上がる。
その向こうでカレンさんとスカイアーさん、それにべカスさんが簡単な野営を簡単に片付けていた。

「昨日の事で疲れたのであろう。無理も無いが、安眠はせめて安全な宿まで取っておくのだな」
「眠れないよりいいさ。さっさと発つぞ、ラスも手伝ってくれ。バザードは・・・」
なんでそこで口ごもるんですか。僕だって片付け掃除だけはそつなくこなせるんですから!
「・・・だけ?」


出発してもしばらくは山道が続く・・・街道までずっと山道みたいなものだけど。
暑い暑いと思っていたけど、いつの間にか秋も深まって今は寒いくらいだ。もう少ししたら霜が降りるんだろうな。

「しっかし本当に性格悪い奴だったな、あのラウヒェンってのは」
「そうだな。侵入者を防ぐとか追い出すだけの目的だったらわざわざあんな風には配置しないよな」
扉を調べた瞬間にその扉から溢れ出てくるんですからねー、ホントに悪趣味ですよー。
「一番に扉を叩くのを調べると言うのならばその通りであろうがな。まさか訓練所でそう教わった訳ではあるまいが」
・・・・・・で、ですからあれは・・・そのー。前も言いましたけど、心の準備も出来てないのにいきなり任されたからでー・・・ちょ、ちょっと手順を間違えて。
「誤解の無いように言っておくが、鍵を調べるのに叩くって手順は俺の知る限りねぇからな」
あれ?

何回も失敗したし、実際足手まといってやつだったんだよねー・・・皆さんはスゴイ実力者だから問題にもならなかったみたいだけど。
僕はまだ何も出来ない、確かにそれはよくわかった。
じゃあどうすればいいのか・・・うーん?
墓の中でも、出てきた後でも色々と言われた。でも、それをどうやってすればいいのかよくわからない。
まー、そのうち出来るようになればいいんだろう。

「あの奥の魔法陣、あれがやっぱり気になるな」
「死人どもを片付けた後には黄色い光を失っていたあれのことか」
「確かにあの辺りでは直接戦ったりはしてねぇし・・・スイッチみたいなもんも無かった。んー」
・・・な、なんで皆さんこっちを見てるんですか? 僕なんにもしてませんから、逃げるのに必死で!

「やっぱり不完全だったんだろうか。あの墓自体が・・・」
「『来たれ、英雄よ』か。自らに力が足りぬことを知っての虚勢だったのかも知れぬな」

怖かった。故郷の村に居たとき見たどんな悪夢よりも酷い場所だった。
僕から見れば沢山だけど、予想していたほどの財宝は無かったみたいだ。
それでも。

上手く言えない・・・一緒に居て、本当に居ただけだったけど、どきどきした。
これはきっと、怖かったからだけじゃない。村を出たときとか、訓練が珍しく上手くいったときとか、そんな時の感じに似てる気がする。

店では当然よく見かける冒険者だけど、外で、しかも遺跡に潜るのを見るのは初めて。
冒険の前の、途中の、そして無事に出てきた後のみんなの顔や声が。一つ一つの仕草が。
全て覚えておきたい、って思った。

僕も頑張るぞー。

「そういやバザード、あのレリーフ凄かったよな。中に手を入れたら虫が湧き出たやつ(にひ)」
・・・・・・あ、あんまり思い出させないでくださいよー、死ぬほど怖かったんですから! あんなのは二度とごめんです!
 
旅籠にて
スカイアー [ 2005/11/10 21:59:29 ]
  旅籠の風呂で汗を流し、マグを片手に揃って暖炉を囲んだところで、バザードが口を開いた。
「ああ……明日はオランなんですね。」
 ようやく人心地がついたという風情である。
 バザードほど感慨深いものを覚えているわけではないが、我々も似た気持ちでいる。

 亡者が群れをなす修羅の巷、それがラウヒェンの積悪による成果だった。墓守たるべくして葬られた無数の遺体に対して魔術は機能しなかった。墓所に満ち溢れたヘクターへの怨念がよこしまな力を呼び寄せ、これに憑依された遺体は、不死属の魍魎へと悉く変化したのである。

「しばらくは肉を見るのも嫌ですよ……」
「だが、きままに亭に戻ったら、そういうわけにもいかないだろう」
「よーし、お前がいる頃合を見計らって店に顔を出すか」
「な、何をする気なんですか!?」
「いわれなくても、分かってるんじゃないか?」
「お前が気にすることじゃない。接客業に精出すんだな」

 墓所の探索は、その大部分が、これら魍魎の群れとの戦いであった。探索の範囲は、推定領域の大部分に及び、その過程で発生した戦闘はすべて殲滅戦となった。死者への冒涜を看過する道理はないからである。

「お前、ちゃんと洗っただろうな?」
「あ、洗いましたよ!」
「変な匂い残したまま帰ったら、フランツにどやされるぞ」
「体にも悪いしな。爛れ病の原因になる」
「ええっ、なんですか、それ!」
「いや、そんな病気ないから」

 魍魎の殆どは意思なき死体だったが、例外もあった。窮めて強い負の力を取り込んだ結果、生者と変わらぬ明確な意思と行動力を備えた化生である。いずれも生前は屈強な武人であったろうと思われる者たちであった。そういった者たちにより強く、より邪な力が引きつけられてしまったのは遺憾である。

「よく躱したよな。掠り傷一つなかっただろ」
「ああ、実に見事な避けっぷりだった」
「あ、ありがとうございます。えへへ」
「あんな大道芸みたいな動きはちょっと真似できないな」
「むしろ真似したくねぇな」
「うぅっ、あんまりです」

 このような惨状を生み出した当人の遺骸は、見事な状態で保存されていた。だが、彼の魂は罪深き者が送られる無明の荒野をさ迷っていることだろう。もし神々の慈悲が与えられたならば、煉獄の炎に焼き尽くされ、跡形もなく消えうせていることだろうが。

「その石、貴重なものなんですか?」
「透輝石だな。そこらの山で拾ってこれるものじゃない」
「見た目通りのものなら、金貨十枚ってところか」
「えっ、こんなに小さいのに金貨で十枚も!?」
「俺の見立てでは、もう一桁増えるんだけどな」
「詳しいことは腕のいい魔術師に頼むことになる」

 唯一、手付かずのままで置かれたのは、月星紋の刻まれた扉で隔てられた空間である。カストゥール時代の建造物と違い、物理的な機関が存在するはずなのだが、遂に発見することは叶わなかった。恐らくは、魔術的な仕掛けを試みた唯一のものなのだろう。だが、ラウヒェンの望みは叶わなかったのである。

「破城槌でもあればなー」
「そんなの使ったら中身ごと壊すんじゃないか」
「そもそも、中まで運べませんよね……」
「ま、あの中にはロクなものはない。ないったら、ないんだ。そうに決まってる」
「そう考えるのが幸せだな」
「うーん。でも、ちょっと見てみたかったですよね」

 ラウヒェンは己の野心のために、数多くの命と莫大な財産を費やした。そして、後世に残したものは、あまりに矮小だった。我々が墓所を暴いたことにより、暴虐の君主としてそれなりの畏怖を以って語り伝えられてきたヘクター・ド・ラウヒェンの名は地に落ちることだろう。不相応に、後世の英雄と渡り合おうとした男として。

「身の程を知ることが大事なんだよな」
「なるほど……」
「ま、俺たちにとってもいい教訓ってわけだ」
「色々と勉強になったろ」
「あ、それはもう、色々と」
「出かける前よりは、いいツラしてると思うぜ」

 ブランデーが尽きたところで、我々は立ち上がり、寝室へ入った。
 毛布に包まりながら、私は思った。
 我々の誰かが、後世に名を残すことがあるだろうかと。
 
−終了−
イベンター [ 2005/11/10 23:26:38 ]
 これにて今回のイベントは終了いたします。
参加してくれた方々、どうもありがとうございました。
「1度きり」という微妙な制限が、皆さんの中にもやもや感となって残ることを祈ります。
そしてそのもやもや感は、キャラチャのほうで思う存分発散してください。
イベントは終わりますが、キャラクターの経験は終わりません。
なので、あえて感想スレなどは立てないことにします。

おつかれさまでした!