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演劇のキャクホンカの日々
ナップタック [ 2006/08/10 23:30:33 ]
  あっし、ナップタックと申しやす。
 演劇のキャクホンカを目指す草原妖精でやす。
 まぁ、冒険者稼業の傍らでやすが・・・。

 日々の出来事はキャクホンの大事な材料。
 いつか大作となるキャクホンの為に日々をそっと記すでやす。

 新王国暦518年、某月某日、オランの安宿にて。
 
チャ・ザ大祭の演劇の為にキャクホン練る日々
ナップタック [ 2006/08/11 0:03:11 ]
  いやはや、困ったものでやす。
 草原妖精の感覚と人間の感覚のチガイは難しいものでやす。

 神様を信仰するってやつでやす。

 あっしら草原妖精は神様なんてよく分からないものでやす。
 ときたま興味を示してもあくまで好奇心でやす。

 そんなあっしの弱点をまさかキャクホンに書けとは・・・

 でっかいお祭りがあり、演劇のキャクホンを募集する。
 そんな募集の羊皮紙片手に面接会場でのことでやす。

 大勢のライバルがいる中、あっしが合格になったのでやす!
 嬉しいことでやす。

 草原妖精のキャクホンカが珍しいのもありやす。
 しかし、あっしが練りに練ったキャクホンが優れていたのでやす。
 キャクホンの内容に依頼主は大いに満足しましたでやす。

 しかししかし、でやす!

「ちょっと、いいですか、団長?」
「ん、なんだね」
「チャ・ザ大祭ですし、信仰を感じさせるシーンが無いのは・・・」
「そうだね。ここ、神様を信仰するシーン、加えてくれないかね?」

 ピンチでやす。
 ここでこの注文を果たせないと次点のライバルが採用の可能性が。

 ・・・

 しかーし。
 世は上手く巡るものでやす!

 最近よく飲み食いする、きままに亭で救世主がいたのでやす!
 其の方の名はユーニスさんでやす。

『友達と喧嘩して家を飛び出して、森の古井戸に落ちてしまう。そして夜になってしまう。
 差し込んだ月明かりの下、娘は些細なことで喧嘩した自分を恥じて、交流の神様に祈った。』

 この部分を見事に解決してくれたのでやす。

「これなら『助けて欲しいから祈る』んじゃなくて、『己の過ちを恥じて、雪ぐ機会を欲しいと祈る』ってニュアンスにすればそれらしく聞こえるように思うんですが。どうでしょう。」

 ふむふむ・・・で、あっしは図々しく台詞まで考えてもらったのでやす。

「『チャ・ザ様、たった一人で閉じ込められたことで私は自分の行いを考え、その愚かさに気付くことが出来ました。できれば、どうかこの過ちをそそぐために、何より傷つけてしまった彼女に謝るために、今一度私を家に帰してください』……とか?」

 罪を認め、謝る・・・ふぅむ、信仰の心情とは、また自身の行為を振り返り・・・深いでやすなぁ。
 おぉ・・・感動したでやすよ!いや、感激ってやつでやす!
 信仰はイマイチ理解できずとも、その台詞に込められた心情が何とも胸をうつでやす!
 実はユーニスさん、キャクホンカの才能、あるんではないでやすか?

「そ、そんな大それたことを! 私の信仰なんて中途半端ですから、どうか参考程度にしてくださいっ。
 ちょっと模範的過ぎる言葉の選び方かもですけど、もし信仰を前面に押し出すなら私はこうするかなー、程度です。
 む、ムリムリ!! 私言葉をつづるのとか苦手だから、子供っぽい文を書くって笑われるんです。
(ごほん)とにかく、少しでもお役に立てたなら何よりです。頑張って脚本を仕上げてください」

 んー、謙虚でやす。
 あっしは煽てられると絶対舞い上がって調子に乗るのやす。
 見習わねばいけないでやす。

 帰るユーニスさんに感謝の言葉を述べたのでやす。

 ・・・

 チャ・ザ大祭では劇のひとつとして、あっしのキャクホンが公演されたのでやす。
 あくまで僅かな時間で行われる小さな劇でやす。
 しかし、ようやく、あっしのキャクホンが都会で劇になったでやす。

 思えば五年、苦労の連続でやす。
 幼い頃に両親が気紛れに連れてくれた演劇に感動して。
 成人して気の向くまま生きろと言われてキャクホンカを目指して。
 ある先生に弟子入り希望で草原妖精にはムリだと笑われて、それでも頑張って。
 最初のキャクホンは酷過ぎて先生に目の前で破られて。
 一時は諦めてふらふら旅をして。
 だけどやっぱり諦めきれず旅の劇団で手伝いしながら修行して。
 気紛れに書いたキャクホンが褒められて。
 小さな村でそのキャクホンで劇にしたら皆喜んで笑ってくれて。

 長かったでやす。

 キャクホンカとして大きな前進でやす。
 無論あっしだけの力ではないことを忘れぬよう記すでやす。

 次のキャクホンの為に頑張るでやす!
 まだまだ先は長いでやすから。