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【イベント】 メノナス島
イベンター [ 2006/09/28 1:49:28 ]
 【依頼主】フルバフ・ナーカンター
【依頼内容】鉱山調査団の護衛
【場所】オランの南、海を船で三日程の位置にあるメノナス島
【期間】
 10月1日朝にオランの港からの出発とします。
(ワーレンの投稿をもって開始です)
 海往復に約一週間程前後、調査期間一週間と二日程の予定。
 帰還予定日は10月20日の夕方です。
(ただしイベントとしては最長1ヵ月予定、キャラ拘束期間も同じく)
【報酬】650ガメル(前金130ガメル)、食事は支給。
【投稿について】
 一人二日間を持ち時間とします。
 前の人の投稿があった次の日の午前0時からカウント開始とします。
【イベントの概要】
 30年前、レアメタルの鉱脈が発見されたメノナス島。
 国家事業となり、一攫千金を夢見た多くの人々が労働力、商売に訪れます。
 港町は瞬く間に繁栄しましたが、わずか数年で人々は去ることになります。
 誰もが思いもよらぬ事態、わずか数年で鉱脈の枯渇があったからです。
 結局、国家事業は凍結され、島は殆どの人から忘れられた存在となります。

 当時、鉱山経営の責任者であった、フルバフは心残りがありました。
 何故数年で鉱脈が枯渇したのか、原因を調査し、解明したいと国に上申しました。
 レアメタルの鉱脈が残っている可能性高し、島の鉱山の調査許可を頂きたいと。
 国は申し出に当初、事業は凍結されたもの、なんら益もなしと判断しました。
 しかし、もしやという気持ちもあり、形ばかりの調査団の派遣を認めます。
 海軍の小型老朽船と漕ぎ手、国家事業の公の護衛に衛視をつけると。
 衛視は老人が何か発見した際、隠匿しないよう見張る役割もありました。

 しかし、護衛は一人、船はボロボロ、もしものことを考えると不安があります。
 そこでフルバフはせめて護衛に冒険者を雇うことを提案します。
 その予算は財務局に認められ、報酬の確保に成功します。
 そして、衛視局からの依頼という形で冒険者へ募集がかかりました。

 そして其の依頼を受けたのは三名。
 ユーニス、キア、ファントー。
 加えて護衛の衛視にはワーレン。

 さて、どのようなことになるのでしょうか…?
 
海、船、島
ワーレン [ 2006/10/01 1:17:22 ]
 『新王国暦518年10月1日早朝。
 メノナス島へ向けてオランの港湾地区より海へ出発。
 天候、曇りのち晴れ、海比較的に穏やか。船出は順調なり。』

 秋も本格的に深まりつつある。
 風は冷えるというより寒さに感じる。
 昼の時間も徐々に短くなる。

 そんな中、海へと繰り出す一隻の小型船。
 古く、ぼろいという言葉が当てはまる。
 昔オラン海軍の小型船だったそうな。
 海賊などの戦に数度参戦し生き抜いてきた船。

 残念ながら今やその過去の栄光の欠片も感じられない。
 まぁ、今回は戦に出るわけでもない。
 あくまで調査団の護衛。
 それ以下でも以上でもない。
 下手に栄光とやらが不要な争いを呼び寄せぬよう祈る。

 俺はワーレン。
 衛視であり、盗賊でもある。
 今回、護衛任務という形で今、調査団の船にいる。

 ゆらりゆらり。
 ハーザード河を下りきり、大いなる海へと出る。

「うわぁー・・・」

 感動の声の主。
 青年というよりまだ少年という言葉が合う。
 海を前に目を輝かせている。
 名はファントーだったか。
 狩人であり精霊使いでもあるとか。
 少し寒さを感じる風の中で笑顔で海を見渡す。

「うや、そういえばファントー海初めてなんよねぃ」
「うん!なんか、オレ・・・感動しちゃった」
「それはよかったよねぃ。んで・・・」

 其の隣・・・正確には、ファントーよりも腰近くから声がする。
 ひょこっと船べりに掴まって、同じように海を見渡す。
 小柄でやや尖った耳、草原妖精の女性、キアだ。
 野伏であり盗賊である。
 巣穴関係という点で良く知っている。

「キアちゃん、ファントー、ここにいたの」
「あ、ユーニス、なーに?どしたのん?」
「うん、今日の為に、昨日の晩にね・・・」

 二人に近付いてきたのはユーニスと呼ばれた女性。
 一見すると、普通の女性に見える。
 しかし、剣の腕前はなかなかのものと聞いている。
 生半可な戦士ではまず相手にならんだろうと。
 戦士であり、野伏であり、精霊使いであるという。

 何にせよ護衛としては申し分ないだろう。

 今回の護衛の仕事を受けたのが彼ら三人である。

「護衛というと、もっと屈強な冒険者が来るものと思ってましたがの」
「おや、フルバフ団長」
「あぁ、爺さんで構わんよ。引退した身だ、団長なぞつけんでよい」

 今回の調査団派遣のはじまりとなった老人。
 護衛募集の依頼人でもあり、調査団の責任者でもある。
 名はフルバフ・ナーカンター。
 護衛対象であり、そして・・・俺のもう一つの任務の対象でもある。
 この老人の行動を見張るという。

「あー、屈強だらけのほうがよか・・・よろしかったので?」
「それはそれで嫌じゃの。見た目の屈強はお前さん一人で充分じゃ」
「あー・・・恐れ入ります」
「あぁ、そうそう。ワーレンさんだっけかの?」
「はっ」
「畏まらんでよい。無理に丁寧な言葉なぞ体に毒じゃて」
「あ、いや、それは」
「無理せずともよいぞ。お前さんの普段どおりで」
「あー・・・では、こほん。その言葉に甘えさせてもらう、ぜ?」
「そうそう、自然なのが一番一番。うんうん」

 そう言うとフルバフは老いたなりの笑いで船室に戻っていく。
 あの爺さんを護衛しつつ見張る、か。
 穏やかな性格に見えて、些か掴み難い爺さん。
 ま、そうでなきゃ凍結した国家事業に調査上申なんてできない、か。

「おっちゃんおっちゃん」

 そばにキアがやってきた。

「ん、なんだ?何か怪物でも出たか?」
「そんなん、さっさと大声出してるのよぅ。うに、そうじゃなくて」

 キアが南の空を指差す。

「もしかしたら、お天気悪くなるかもしれんの」
「本当か?このまま晴れそうだが」
「ユーニスとファントーも言ってるの」
「船出早々から荒れたな困るな・・・」
「うに、おっちゃん船酔いするんの?」
「まー・・・普段は大丈夫だが・・・多少荒れたりしたら、な」

 半日後、俺は船酔いになった。
 こんなんで大丈夫だろうか。
 朦朧とする意識の中、俺はダウンする羽目になった。



 三日後。

 天候は快晴。
 幸い、海が荒れたのは初日の夜だけですんだ。
 怪物や海賊との遭遇にもあわず、無事に島を目の前にしている。

「あれが、メノナス島・・・」
「うや、南っていうからちこっと思ってた島じゃないねぃ」
「まるで・・・でっかい岩そのものだね」

 近くでユーニス、キア、ファントーが呟く。
 まばらな低木と植物の緑だけが鮮やかな唯一の色。
 殆どが薄暗い灰色をしたむき出しの岩ばかり目立つ。
 後は僅かな荒野の茶色がみえるだけ。

 人で賑わい栄え、そして衰え、そして三十年放棄されていた島。

「メノナス・・・帰ってきたのぅ・・・」

 いつの間にか爺さんが俺の横に来ていた。
 三十年という時間を経て、再び訪れたこの老人。
 その目にこの島はどう映っているのだろうか?

 懐かしさ?
 悔しさ?
 嬉しさ?

 分からない。

 目の視線の先には、島の中央の山に向けられていた。
 一つの大岩と見間違うかのような灰色の山へと。

「港に接岸するぞ!準備しろーっ!」
「おぅ!」

 船員たちが慌しく行動を始める。
 廃墟の港町が見えてきた。
 接岸までの間、俺はこれから何事もないよう静かに祈る。
 至高神ファリスに。

『518年10月3日昼過ぎ。
 予定通りメノナス島に無事上陸。然したる襲撃も無し。
 天候は快晴、島、何も語らず静かにただ我らを迎える。』
 
廃墟の島
ユーニス [ 2006/10/02 0:37:10 ]
 【10の月 3の日】
メノナス島到着。港の設備が波に侵食されて使いにくかった。船員さんには港そばの廃屋――フルバフさんによれば鉱石を搬出するまでの倉庫だった――を少し整えて使ってもらうことにして、調査のための準備にかかる。

目指すは島の真ん中で岩肌を晒す山。中腹にあるというその鉱山の入口が、今回の調査拠点になるはずだ。
予め調査する箇所はいくつか絞り込んであって、ひとつは坑道の奥まった場所。次に地質が異なるためあまり重視されていなかった西側斜面。他にも山頂近くの掘りかけの坑道など、幾つか候補はあるけれど、一番有力と考えているのはその辺りだそうだ。坑内には落盤のために訪れることの出来ない場所もあると悔しそうにフルバフさんは語っていた。

「しっかし、こりゃあ凄い。こんな島に、よくまあこんだけの人間を詰め込んだもんだ、ぜ」
鉱山の入口まで手分けして荷を運ぶ間、私たちはひどく重苦しい心地にさせられた。両側からぎゅうぎゅうと押し潰さんばかりに連なる長屋の列。多くの人がこの狭い島に密集して働き、生きていた証が、圧迫感と薄ら寒い空虚さを醸し出していた。商店や酒場らしき佇まいもあったが、そういう間口が広めの建物は風雨にさらされやすかったのか、軒並み荒れ果てていた。つい、皆気を紛らわそうと口数が多くなってはまた、静かになる。

「すごいねー、こういうの、みたことないや」
「んみ、人の気配がちーともないけど、イセキとも違うんねぃ」

正直な感想にフルバフさんは苦い笑みを浮かべ、往時を懐かしむように呟いた。
「この島では、いくらかの石灰岩だけでなく、金属が採れた。とりわけ、金属の採掘は、オランにとって国力を、左右する事業であり、この豊かな国を、より豊かにすると、期待されたものじゃ……」
「大丈夫? もうすこしなら荷物もてるよ」
「大丈夫、じゃ。これは、非常に繊細なものでの、指標となる、当時の鉱石標本なんぞも、入っとる。悪いがお前さんらに、扱いを任せるのは、気がすすまんのじゃ」

足場の悪い急な坂道を息を切らしながら登るフルバフさんを、ファントーが不安そうに気遣うが、己の仕事に関わる決して小さくはない荷物のいくつかを、彼は決して手放そうとはしなかった。
思い出のよすがというよりも、今回の訪問が新たな発見に繋がることを頑なに信じていて、そのよすがとなりそうな品々を手から離すのを恐れているかのように。

ようやくたどり着いた鉱山入口は、大きな扉で封じられていた。
「また……この扉を開く日がきたんじゃな」
フルバフさんは震える手で入口の錠に国から借り受けた古びた鍵を差し込む。
危険がないか確かめるために一旦下がってもらい、私たちは扉を慎重に開け、ランタンを掲げ、奥に踏み入った。
扉の向こうには黒々と闇がわだかまり、湧き水なのか流れ込んだ雨水のせいなのか、僅かに足元が濡れている。
カビとも何とも言えない、立ち込める臭い。光が奥まで届くようにランタンを掲げても、きらきらと光っているのは鉱石ではなく、扉を開けたことによって舞い込んだ埃と見えた。

「空気をいれておいた方がよかろう。ところどころ縦に空気穴はあいとるがの、坑内の空気は時に体を痛めるもんじゃ」

この場合団長の意見は絶対である。そんなわけでまずは風雨を避けうる建物を探して大雑把に片付け、足がかりを作ることに専念した。入口近くの事務所だった建物を選んで片付け、水場を探して多めに汲み、念のため浄化して樽に貯めておく。

ついで、疲れを見せたご老体には休憩してもらい、西側斜面への道を大まかな地図を借りて辿る。鉈で茂った草を払い、予め道を開くのと、下見のためだった。
秋口と言うこともあってか思ったよりも草は茂っていなかったが、夕刻までにいける範囲は限られており、やむなく途中で引き返すことになる。
そんなことをしているうちに、日は落ちた。

早めの夕食を終えて、空を読む。
今夜から明日にかけては、いい天気になりそうだ。最も明日坑道に入るならば、あんまり天気なんて関係ないかもしれないけれど。
隣で同じく雲の流れを追っていたキアちゃんが鉱山を振り返って笑う。
「岩妖精のおっちゃんとかは、こーいうの好きなんしょ? 居心地いいんかなぁ」
「そうみたいだね。でもオレ、こういう場所、あんまり慣れてないや」
山に慣れているファントーにとっても、鉱山の佇まいはいささか異質に感ぜられたようだ。
「緑の山とはちょっと違うから……山っていえばさ、西側斜面までいけなかったけど、あっち側の影になってたところ、なんだったんだろう」
「ちょっと岩が張り出して見えたところだよね? あれ、地図になかった」
「でもあの地図おーざっぱだし、見たときはちっと暗かったし、明るいときにきちっと見直したほうがいいと思うんよ」

明日以降、日の高いときに再度確かめてみよう。一応フルバフさんにも報告しておくか。そんな風に言い合って、私たちは早めに休むことにした。

海風が、一晩中歌い続けていた。
 
手始め
キア [ 2006/10/02 16:41:01 ]
 【10の月 4の日】

 朝起きたら、風が強かった。

 「昨日の夜からずっと聞こえてきてたからね」

 そんなユーニスの言葉においらは頷く、昨日の夜から強くなってきとった風のイキオイは朝までには収まらんかった。
 3人で天気を読む、昼過ぎまでは天気が崩れる事はなさそだけど、風が弱くなる様子もなさそ。 

 もう一日空気を入れてコウドウ内の空気をカンワさせたほがいいかもしれんという話が昨日の夜ちらっとあがった。天気も良いだろって事で、本当は西側のシャメンへの道を作っちって、そのままシャメンのほーの調査になる予定だったんけど、それをぷち変更して道を作って昼を済ませた後、コウドウ内をかんたんにチェックする事になったん。

 りゆーとしては風の向きは坑道のイリグチに向かって吹く流れになっとって、これならばずいぶんといいんじゃないかーって言うのと、この島、ところどころ急になってる場所が多くて、ちと足場も悪い。カンイなものでも道があったほうが行き来が楽だろってのと、ホンカク調査の場合フルバフのじーちゃんはこーせき標本とか重いものもっとるから、風にあおられてバランスとれんですってんころりんで大怪我になっても、って事でー、あんま風の強さの関係がないコウドウが先になったん。
 ま、じーちゃんも、はよコウドウ内を調べたかったよだから。今日の天候はいいりゆー付けになったんだろねー。

 チェック項目としては、この長い間にコウドウ内の地図にキロクされている道が無事なのか…んーと、つまりわかってるハンイ意外でも誰ーもおらんかった間にラクバンがあったかもしれんから、それの確認。あと奥まった場所も地図を見るカギリ2,3個あって、どこにじゅーてんに置くかを決めるための調査。本格的なのはそのアト。

 「出来る事なら全部細かく調査したいってのが本音なんだろうけどな、与えられている時間はそこまで悠長な事をするほどねぇ。だから、有力候補の中でも一番有益な結果が出る可能性のある場所を選別して、そこに重点を置くんだそうだ。そこが終わった時点で日取りに余裕がありゃぁ次を調べる訳だな」

 なんで全部調べんの?と、ワーレンのおっちゃんに聞いたらこんな返事が返ってきた。クニは、一度見切りをつけた場所だから、かけるオカネも時間もしぶっとるんだとも。へー。



 簡単な朝食を済ませると、まずはと道を作ってしまう。昨日とちゅーまで作ったんでそないに時間は掛からんかった。ついでに、下見もすませる。昨日シャメンのカクニンは出来んかったしね〜。
 大きな岩のカタマリのよーなこの島は、全体的に灰色に見えるんけど、西側のシャメンは黄土土の色が目立つ。かたいこの地面は雨が降っても雨をきゅーしゅーしない土、ネンド土だ。
 シャメンといっても近くに来ればでこぼこしとるのがわかる。足を置くのにはとりあえず困らんだろけど……。

 「これ、雨になったら足場が滑りやすくなるかも、斜面だからなおさら。いやだな」
 「この時期は天気が変わりやすいから……天候の確認はこまめにしたほうがいいかもね」

 そう言って二人は空を見る、おいらもつられるように顔を上げた。雲は今のところ見えんけど、今日は風が強い。風が強いって事は、雲の流れも速い。油断は出来んよねぃ。

 んで、昨日はもう日も暮れかけとったからろくに見れんせいで、気になっとった影の部分。
 ジッサイ岩がはりだしているよーになっとって、ガツンと大きなでっぱりになっとる。しかもそーゆー場所はあそこだけでなく、他にいくつも見られた。道っぽいものもあったんけど、あまりにオオザッパでろくにセイビもされとらん、道とゆーにはお粗末なもん、風なんかでグウゼン出来たあぜ道っぽい。
 その上、斜面が少し急になっとって、とちゅーからシャメンの傾き具合?えーと、けーど(傾度)だっけ、アレが緩やかになっとる。

 地図にはこの辺の細かい所はもちろんかかれとらんかった。ってかこの地図、コウザンとその周辺のカンイ町と、港意外はろくに書き留められとらんもんっ。

 「地質が違ったからあまり重視されてなかったってフルバフさんも言ってたし、だからかな?」

 かも?

 かんたんな確認と下見でも、それなりに時間は流れるよーで。日も高くなってきたんしおいら達はいったん戻ることにした。



 おっちゃんが用意してくれた昼食を食いつつ、おいら達が西側にいっとった間に今回留守番で残っとったおっちゃんとフルバフのじーちゃんとである程度決めてたらしい段取りのほーこくを聞く。っても、最初に予定しとった内容とほぼかわらんかったけど。
 ついでにこっちのほーこくもする。じーちゃんは低くちーさく唸るだけで、それに関してはなんも言わんかった。まだちゃんとした調査もしてないから、ハヤガテンで物事を決めうちできんからだろと、ワーレンのおっちゃんはこそっと言った。

 昼食を済ませ、今度は5人でコウドウへー。昨日ランタンの光できらきらしとった埃は、今日は少なくなっとった。

 「うむ、これなら大丈夫じゃろうて、先へ進むかのう」

 そう言ってじーちゃんは足を踏み入れる。もちろん、先頭じゃないんけど。順番としてはおいら、ユーニス、ファントー、じーちゃん、んでワーレンのおっちゃん。
 ちなみに、何が大丈夫なのかをきいたら、バクハツの危険だと言われたん。

 「鉱山では時に爆発事故が起こる。とはいえ長らくは使っていない鉱山じゃ、空気を入れて淀みも少し和らいでおるしのう」

 笑うじーちゃんの前で、おいらたち3人がそーとーいやな顔をしとったよーだ。ワーレンのおっちゃんは苦笑いしとった。

 先を進みながら地図をカクニンするファントーとユーニスを後ろに、おいらはコウドウ内をぺたぺた触る。
 この中はイセキと違ってボウフの魔法なんてきいとらん。組み木は時間の分だけ古くもろくなっとるんだろう。それでも、一番奥へと進む道の組み木はコウザンが閉鎖する少し前に組み立てられたものだとじーちゃんはいっとった。
 しめされた道の組み木は、言われるとおりまだ新しいほう。んでも、この中で比べれば、の話しなんよね。

 運がいーのか悪いのかー、ラクバンでふさがっとる場所は増えとらんかったんで、後はどこにじゅーてんをおくか調査する。
 それだけ聞くと一番最後にほっとった場所を調査するんが一番いーよーな気がするんけど、ほりつくした後であることは変わらんので、ドウレツにカクニンするのがサイゼンらしー。
 
 
 センモン的な調査はおいら達には出来ない。じーちゃんが確認をしておる間は、危険がないかなどの確認をする。魔物らしい影はない。
 幾らなんじゅー年もほーちされとった場所とはいえ、ちゃんとイリグチ閉鎖されとったし、島であり、一時的に人がやまほどおった場所。そういうんは当時きっちり退治されとるだろとの事だった。
 昔はロックウォームとかおったらしけど、これもやっぱり同じく昔に退治されたときーた。

 3つ回って1つを選ぶ、調査するのに選んだんは2つ目に奥にある場所だった。
 どうしてそこを選んだとかの説明がなされとったけど、おいらには正直むずかしくってようわからんかった。
 ファントーもようわかってなかったみたいなんし、ユーニスも自身がなさげー。あとでワーレンのおっちゃんにでもかいつまんで説明してもらおー。



 とりあえず、今日の調査はここまでとしておいら達はコウドウを出ることにした。
 外に出たら、既に日が暮れ始めとるところ。風は、オダヤカなものにかわっとった。
 
風と雨、疑問と連帯
ファントー [ 2006/10/04 14:40:54 ]
 <10の月 5の日 夕方>
 オレは根拠地にしている建物を出て、山の頂上で風の流れと空の様子を調べていた。頂には古びた旗竿が一本立っている他には何もなく、そこから眺めれば、オレたちの乗ってきた船が停泊している港町から、この鉱山までが一望の内にある。
 日の入りまで、まだ一、二時間は掛かるはずだけど、辺りはすっかり薄暗い。黒雲が空を隙間なく覆っているからだ。秋空の変化は目まぐるしい。昨日の夜には落ち着いていた風が、今朝から再び勢いを取り戻していた。ごうごうと吹く風は半日をかけ、遠くの空から雨雲を引っ張ってきている。
 エストンの集落では、秋をものぐるいの季節という。夏の終わり頃から、精霊たちがワァッと暴れ出して、万物を揺るがすからだ。特にシルフは利かん坊になり、どうかすると、シルフたちの主であるジンの顕現を見る年だってある。風の狂騒は嵐を呼び、海と大地をかき回す。土も、水も、火も、この時ばかりは風のいいなりだ。だから、呪い師も野伏も、秋風の動きにはとても敏感になる。
 幸いなことに、この風は嵐にはならないようだ。少なくとも、このメノナス島の近くでは、ただの強い風のまま吹きすぎていくだろう。これで雨さえ降らないでいてくれたら万々歳なんだけど、そこまで巧い具合には進まないだろう。夜半から明日の朝にかけて、けっこうな量の雨が降るに違いない。
 湿気が増すと病人の身体に障る。フルバフが心配だな、と思っていると、足下に小さく見える根拠地から影が飛び出して、こちらまで駆け上り始めた。
「ご飯だよーう」
 一気に駆け上がってきたキアは、息も切らしていない。
 並んで下りながら、フルバフの容態を尋ねる。
「とくに変わりはないん。ぐっすり寝とるよ」
 それを聞いて、オレはちょっと安心した。
 フルバフが体調を悪くしたのは今朝になってからだ。高い熱を発し、意識は朦朧として声を出すのも辛い様子だった。五十歳を越えての船旅が、身体に障ったのかもしれない。団長が身動きできない以上、団員は勝手に動くわけにもいかない。今日の調査は中止になり、オレたちは付き切りでフルバフの看病をした。夕方になってフルバフの熱が引いたので、オレは外に出ていたのだ。
 建物の中に入ると、いい香りがした。これはワーレンが作った野菜スープだなと思って調理場だった部屋を覗いてみると、
「おう、今夜のシェフは俺だ。野菜ごろごろスープだぜ」
 古びた竈で鍋を温めていたワーレンが、中身をかき回しながら、そういった。

<同 早晩>
 食器を洗っていると、奥の部屋で休んでいたフルバフが起きてきた。
「来て早々、迷惑をかけたのう」
 ユーニスに支えられて腰を下ろしたフルバフの顔はやつれて、声もしゃがれていたけれど、表情と口調はしっかりとしていた。
「お前さんたちのお陰で快復したよ。明日からは調査を始めよう」
 オレたちを見渡してそう宣言するフルバフに、ワーレンが憂わしげにいった。
「無理はよくないぜ。ちゃんと治してからでないといけないや」
「大丈夫じゃ」
「そうはいうけどね。顔色が、まだ」
「時間がない」
 フルバフは静かに、でもハッキリとワーレンの言葉を遮った。ワーレンは言葉を続けようとしたけど、フルバフの目が強く光っているのを見て、口を閉ざしてしまった。
「あと十日もすれば戻らねばなるまい。今は、僅かな時間も無駄にはしたくないんじゃよ。これ以上お前さんたちの手を煩わせはせん。約束するよ」
 フルバフの表情をじっと(そして、どことなく探るように)見ていたワーレンは肩を竦めて、やれやれといった。
「あんたに何かあったら俺の首が飛ぶだけじゃ済まないんだから、それを自覚してくれよな。また体を悪くするようなことがあったら、眠り薬を飲ませてでも休ませる。そのつもりでいてくれよ」
 ワーレンは立ち上がると、夜気に当たってくるといって、外へ出て行った。
「宮仕えは辛いところじゃて。さて、一人だけ遅れてしまったが、わしも食事をいただいてよいかな」
 他人事のようにいって、フルバフはまだスープの残っている鍋を見遣った。

<同 夜>
 一旦戻ってきたワーレンは、今度は船に連絡を取りにいくとかで、直ぐに出て行ってしまった。フルバフも食事を済ませると直ぐに休んだので、元々は事務室、今は集会室兼食堂として使われている部屋には、オレたち三人だけになった。寝るには早いし、見張りを立てる必要はないから、目下することがない。テーブルを囲んで、とりとめのない話をするうちに、メノナスの話題になった。島の歴史については、航海中にフルバフに教えてもらい、すっかり覚えている。

 元は名もない小島だったメノナスが急に注目を浴びるようになったのは、数人の山師によって鉱脈が発見されたからだ。その時、山師を率いていた神官の名前をとってメノナスと名づけられた。(「名前はなんてゆったっけ、えーと」「メノーさんじゃなかったかな」)
 メノナスは王室の直轄領に定められ、移民が始まった。船の嫌いなドワーフも大勢、海を渡ったという。港町が作られ、山と町を結ぶ大きな道路が拓かれ、山は至る所が掘り返された。メノナスで採れる鉱物の種類は豊富で珍しいものが多かったから、オランの景気はすごくよくなった。人々は、メノナスのことを「オランの金庫」だとか「ハドハヨシュの腹」だとか、そんな風に呼んで褒め称えた(ハドハヨシュはベヒモスのことなんだけど、町の賢者にはそんな風に呼ぶ人がいる)メノナスには続々と人が集まって町は大きくなり、最も賑わった時の島人口はパダを超えていたという。メノナスが全体、灰色の島になっているのは、家を建てるため、少しばかりあった森をすべて切り開いてしまったからだ。
 メノナスの繁栄は十年くらいして唐突に終わりを告げた。ある日を境に採鉱量が大きく減り始めて、幾つかの坑道は完全に行き詰まってしまったんだ。鉱山局の技師たちは新たな鉱脈の探査に手を尽くしたし、名高い呪い師を呼んでベヒモスと交信させたりもしたけど、事態の打開はならず、遂に閉山が決まった。それから一年もしないうちにメノナスは無人島に戻り、見捨てられた山と町だけが残された。

 フルバフは、メノナスの鉱山局長を務めた人物だ。学院に所属する熱心な研究者で、その知識と熱意を見込まれて鉱山技師として招かれた。一年後には主任技師になり、その年の末には局長となった。鉱山局長は代官に継ぐ実力者だ。出世の早さもさることながら、当時のフルバフは二十代の若さだったというから、どれだけ凄いことかわかるだろう(と、ワーレンがいっていた。フルバフのことは、全部ワーレンから聞いた話だ。フルバフは自分のことを殆ど話さない)
 フルバフは鉱山の開発をがんばって、鉱石の産出量を大幅に増やした。つまり、この頃のオランの好景気を支えたのはフルバフであり、平時の英雄という者があるなら、それは彼を措いて他にない(これもワーレンがいってた)
 閉山が決まった時、フルバフには他の鉱山を運営してもらう準備が幾つもあったけど、フルバフはそれらを断って学院に戻った。それから二十数年して、学院を辞したフルバフは、メノナス調査団の派遣を上申したのだった。

「この話は急なことだと聞いてるけど、フルバフさんは、鉱山が閉じることになってからずっと気にしていたんじゃないかな」
「おいらもそー思うん。今ごろになって思い立ったというのは、ちょっと考えられんし」
「そうだよね。わたしたちがいうのもなんだけど、こんな顔触れで調査団というのも……」
 ユーニスの苦笑いに、キアとオレもうーんと首を傾げるしかない。フルバフの他に専門家はいないし、オレたちじゃ助手にもなれない。調査団というにはお粗末だと思う。
「……こんな顔触れ、小さな船でしょ。お上はそんな対応しかしてくれないのに、それでもここに来たいだなんて。よっぽどの想いがないとできないよね」
「おっちゃんの話だと、フルバフじーちゃんはオランにものすごーく貢献した人なんよね? それならオランも、もうちっと後押ししてくれたらいいのにねー。ケチンボなんよ」
 なんとなく、国の悪口に話が流れていきそうなところでワーレンが帰ってきたので、話は終わりになった。
「小雨がぱらついてきた。今夜はかなり降るな」
 ワーレンの言葉に、オレたちはやっぱりと呟いた。
 夜半、雨脚は勢いを増し、朝方には強い雨になっていた。明日は坑道に入るから天気は関係ないけど、何処からか水が漏るかも知れない。オレはそんなことを心配した。

<10の月 6の日 昼過ぎ>
 この日、調査が再開された。雨が降っていたので、根拠地から坑内まで雨具を羽織って進む。こんな時でもフルバフは、自分の荷物を誰かに預けようとはしなかった。
 フルバフが定めた三つの調査箇所のうち、一つが終わった。オレたちはフルバフの前後を守るように動き、たまにフルバフの指示に従って坑壁を探ったり、狭隘な部分に入って様子を確かめたりするだけだったけど、フルバフの表情から、結果が芳しくないことは分かった。
 根拠地に戻り、遅めの昼食。フルバフが病み上がりだということもあるので、今日はこれで終わりだ。
「手がかりが得られなかったのは残念じゃが、思いの他に早く終わったのう。次はちょっと時間が掛かるじゃろうが、今のような調子でいけば、調査の範囲を広げられようて。ワーレンくん、明日からは気遣いはいらんぞ」
 昨日までの不調がウソのように元気になったフルバフは、キアが作った弁当を美味しそうに食べながら力強くいった。
 そんなフルバフの様子を見ながら……、オレは何処となく落ち着かないものを感じていた。何というのだろう、そう、違和感だ。何かが噛み合わない。でも、それが何なのか見えてこない。
 干しリンゴをかじりながら顔を動かすと、ユーニスと視線が合った。オレの表情を見て、ユーニスは小さく頷いた。
 フルバフが自分の部屋へ引っ込み、ワーレンも、爺さんに倣って自室を拵えるぜといって、手荷物を抱えて空き部屋に入っていった。三人だけになったところでテーブルの隅に集まり、顔を突き合せる。
「ファントーが何をいいたいか、わたしもわかるよ。フルバフさんのことだよね」
 オレは頷いた。
「おいらもー」
「やっぱりみんな、そうなんだ」
 そこでオレたちは一度口をつぐんだ。誰が最初に何をいったものか、迷う。でも、そのままじゃ話が進まないので順番に思うところをいうことにした。その結果、オレたちの考えてることは殆ど一緒だということがわかった。
「フルバフさんは、鉱脈の枯れた原因を探りに来たわけじゃない、ということだね」
「そーだよねぃ。じーちゃんさ、なんか等閑なんやもん。真剣さが足らんってゆーか」
「何か他のことに気を取られてるよね。というより、他のことをしているけど、それを誤魔化している」
「あれは演技なんよ。でも、おいらたちの目は欺けんのよね」
「俺の目も欺けない、ぜ」
「わあっ!」
「にゃっ!?」
 いきなり、ぬっと顔を突き出してきたワーレンにオレたちは腰を抜かした。
「い、いや、そんな驚くなよ。悪かった。一度やってみたかったんだよ」
 ワーレンはばつが悪そうに頭を掻いた。
「実をいうと。俺は爺さんの監視役なんだ。もちろん護衛も兼ねてるんだが、爺さんの目的を探ることが第一でな」
「ぶー。そんなこと最初からしっとるもん。おっちゃんの動きもバレバレなん。とゆーか、じーちゃんを見る目つきで直ぐ分かったしい」
「わたしたちもキアちゃんから聞かされて知っています」
 うんうんとオレも頷く。
「自信なくすなあ」
 がっくりと頭を垂れたワーレンは、直ぐに顔をあげ、さっきよりは真面目な表情でいった。
「いいさ。お前たちとは気脈を通じておいた方が楽だしな。協力してくれとまではいわんが、爺さんに対して俺がすることを見逃してほしい。もちろん、爺さんを害するようなことはしない。法と秩序の番人としてファリスに誓う。この誓約はチャ・ザの名にかけて行う。違背すれば二重の神罰。どうだ」
「そこまでゆーと、却って胡散臭いねー」
「そうですよ。何事も程ほどでないと」
 ワーレンはまた頭を垂れた。
 
嵐のち晴れ
ワーレン [ 2006/10/06 2:04:37 ]
 【10月7日】

 集会室兼食堂。

 早朝は少し雨も止み、空も垣間見えたものの太陽が見えた昼に大雨と強風の悪天候に逆戻り・・・天候は味方してくれそうも無い。

「うーん・・・今日はすごいことになりそうだね」

 少しは良くなってくれるだろうかという期待も、キア、ユーニス、ファントーの口からは望みも薄いとのこと。雨の叩きつける音と風の音、薄暗さが皆の口数を減らす。

 島に来て四日が経過した、が・・・調査のほうは正直芳しくない。

 天候のたびたびの悪化もそうだが、また元々調査団と言えるほど、人手や機材も満足に無いこと、また唯一の技能を持つ人物の爺さん、もといフルバフ団長の体調不良が完全に回復し切れていないこと・・・先を思うと不安が増す。
 尤も、有力候補として絞りに絞った三つの坑道、それを一つ調査し終わったところではある。

「なぁに、調査にかける時間配分としてはまだ時間の遅れも僅かなものじゃよ。昨日言ったとおり、わしの心配は不要、お主はお主の任務に邁進するのじゃな」

 爺さんは笑って言う。しかし、肝心の爺さんが無理して、今度こそ倒れれば調査は暗礁に乗り上げ、爺さんの願いに反して無理やりにでも引き返すことも考えなければならない。そうなれば、護衛の仕事も早く終わり、また俺のもう一つの任務、原因の調査と言う名目で一体何を目的としているのか、胡散臭げな爺さんから知ることからも開放されるというものだ。

(胡散臭い、か)

 苦笑する。俺は胡散臭い爺さんからも相当胡散臭いと思われているのだろうかと。やれ、溜息が。

「調査どころか、外に出るの危ないね、これじゃ・・・」

 外の様子を見てユーニスは呟く。
 皆も同じ意見だ。

「そうだの・・・思わぬ骨休めとなってしまったな」

 爺さんも諦める。

 相変わらず天候は一日が終わるまで荒れた。結局、調査は中止だった。何も出来ない時間、重苦しい空気も外の風のように吹き飛ばされればいいと思った。

【10月8日】

 綺麗さっぱり雲が去り快晴、昨日の嵐に近い風雨は嘘のようだ。・・・で、爺さんは夜も明けきらぬ前から調査の為の準備を急いでいる。朝飯も取るのが惜しい様子だったが。

「じーちゃん、ちゃーんと朝ゴハン食べないといけないの」

 キアに怒られてしっかりと食べてもらった。まるで孫と爺さんのようだった。

 今日、調査するのは候補の二番目の坑道。爺さんが言うには、「ここらは特に希少な鉱石採掘の中心部だった場所じゃて。期待できるかもしれんぞ」とのことだが。一昨日のように、暗闇の中、ランタンの照明と、フルバフの爺さんが古代語魔法で紡ぎだした魔法の灯火の光を頼りに調査の手順を繰り返す。昨日の骨休めのせいか、体調不良の様子は無い。

「キアちゃん、大丈夫?」

 ユーニスが人では小さく低すぎる横穴に声をかける。少しして、そこへ潜っていたキアの上半身が横穴から出てくる。

「うんにー・・・しょっと!ふー、言われてよーな跡はなっかたん・・・って、じーちゃん?じーちゃん、終わったけど?」
「ん?あ、あぁ・・・そうか、そうだの、では、次に右の壁に・・・」
「あの、フルバフさん、そっちはさっき調べ終わったところですけど」
「む?すまんすまん、いや、うっかりしておった。次はその狭いほうの・・・そう、そこの壁の様子を教えてくれんかの?それで赤か黒い色をした線状の層はあるかの?」

 指示を出す爺さんの様子は、やはり何かおかしい。今日は特に集中力がない。たまに手元の鉱石標本の鉱石と、皆で集めた小石や欠片とひとつひとつ熱心に比べ、考えて指示する様子はある。だが、その作業も時々手が止まり、坑道を見渡し、かと思えば作業に戻り・・・何というか、忘れられない何かを思い出す、そんな感じ、で。

(過去の栄光・・・を思い出しているって訳ではないだろうが、な)

 一体、何を思い出しているのか・・・夕方まで調査は続いた。

「ふはー、おソトのくーきはおいしーの、すーすーはー」
「わぁ・・・夕日が綺麗。明日もきっと晴れかな」
「うん。風が穏やかだし、当分晴れてくれるかもね」
「うー・・・体がでっかいのも考えもんだ、な。腰が痛い」
「ふむ、じゃがわしのような爺さんにならんようにの」
「ん?なんでだ」
「おコシ曲がったら、おっちゃんじゃなくて、おじーちゃんになっちゃうん」
「んなわけ・・・って、おぃ、皆で笑うなよ!?」

 調査の結果は前の坑道よりは少しだけ良かったのか、とりあえず次の坑道を調査して、そこが何も得ることが無ければ、ここを改めて調査すると。にこやかな笑みの爺さんの顔から、調査中の集中力の無さを伺えるものは無かった。

 其の日の夜は、静かで、妙に月が明るかった。まるで、何かの前触れかのように・・・
 
揺らぐ島
ユーニス [ 2006/10/08 19:04:30 ]
 【10の月 9の日】

 名高い呪い師を呼んでベヒモスと交信させたと、船の上でフルバフさんは口にしていた。鉱石を求めて必死だっただけかと思っていたけれど、この島にたどり着いた時にいつものように精霊力を感知したら、確かにそこには初めて触れる存在があった。これがベヒモスの気配なのだ、と後から理解が追いつく。
 間近で相対したら膝が笑いそうな、その凄まじさをファントーも私も感じていた。彼は私より多くの精霊と手を取り合える分、感知するのがさらに苦痛かもしれない。薄く遠く感じられる程度なのに、圧迫感を覚えて正直血の気が引いた。

 あの時から、何となく精霊力の感知を恐れて無意識に感覚をそらしていた気がする。だから今朝、夜明け前に木製の扉をびりびりと揺らし続ける音で飛び起きて、何気なく精霊力の感知をしたとき、驚愕で一気に目が覚めた。

 「ベヒモスの力が急に強くなったよね。何があったんだろ。オレ、こんなの初めてだ」
 「そうなのか? そっちは全然ワカラネェが、俺が気になってるのはこの音だ。ここの風は随分強いが、こんな震えるようなんじゃなかったはずだ、ぜ」
 「そやねぃ、羊皮紙の前で大声出したときみたいにビリビリゆーとるの。ベヒモスが歌うてるんかなぁ」
 結局全員、音で起き出していた。遅れて姿を現したフルバフさんは、驚くことにすでに出かける用意を済ませ、足回りも整えていた。
 「山頂じゃ。とにかく高いところへ行くぞ」

 フルバフさんに請われて薄暗い岩肌を登る。魔法の明かりを杖に点して、彼は無言で山頂へと向かう。よろけながらも足を止めはせずひたすら歩き、山頂にたどり着く前に、遠く輝くものを見て、ようやく口を開く。
 「間違いない、これは空振(※)じゃ。火山が爆発したときにその音が風乙女を震え上がらせたものとも言われとる。とうとう……その日が来たのか」
 薄明の空の下、遠い海上に小さな赤い光が点っていた。

 「じいさん、海の中に火の山なんてあるのか?」
 ワーレンさんの疑問に、流石に賢者はすらすらと答える。小さな火の島が波に削られ、地中深く閉じ込められたまま、やがて海底となった場所があるのだと。そしてこのあたりはそういった島が点在する地域であるのだとも。
 その島々だった場所は海の下にありながらも、身を震わせるベヒモスと猛々しいイフリートが互いに争っている。水の精霊に押し込められ、海底深くにもぐって争ううちに、ふとしたことで海の底がはじけ飛んで再び火山となる。そんな学説を彼は採用しているようだった。遠いことから定かではないが、小さな火の島が噴火した可能性も否めない、とも。

 「ここも、フンカするのん!?」
 フルバフさんはその問いを否定した。以前調査した際、メノナス自体はそうして出来た島でないと判明している。しかし噴火は鉱物を撒き散らす。海流にそれらが運ばれて堆積し、島を育てることもある。その意味ではメノナスの鉱物は噴火が一役買っている可能性が強いそうだ。ひと所に数種の鉱物が層状に存在することからも、その噴火年代を推定できるとかなんとか説明してくれたが、よく判らない。 

 「要は、今は安全ってことだな。避難するほどじゃないってことか。やれやれだ、ぜ」
 結論を急いだワーレンさんに、重々しく――そう、後々考えればわざと表情を作っていた――フルバフさんが首を振る。
 「そうとも言えんよ。幸いイフリートの力は届かないらしいが、この島に何故ベヒモスの力が働いているかと言えば、遠いながらもあの火山と海底で関係しているからじゃ。急にベヒモスが活性化したのが何よりの証拠。通常ベヒモスの力はそうあちこちに働いているものではない。そうじゃろ?」
 「それって、噴火はしなくても、地震は起きるかもしれないってこと?」
 ご名答、だなんて言われても、ファントーも私も喜べなかった。坑道で調査中に地震にあったら生き埋めになりかねない。
 「とうとうその日が、って仰ってましたけど、予想してたんですか?」
 「そりゃあ、のう。この島で起きた落盤のうち数回は、火山の噴火と地震に誘発されとったしな」
 「ひっどーい! なんも言わんなんて!」
 「まあ大丈夫じゃろ。だが流石に坑道の調査は中止しようかの。しかしものはついでじゃ、山頂付近の調査地点をざっと見てから帰るとするか」
 気付けば東の空は白み、朝の到来を告げていた。


 朝昼兼用食を摂った後、再度装備を整える間に、フルバフさんは少し休憩をとるといって部屋に引きこもった。
 野伏三人は、さりげなく彼の部屋を監視するワーレンさんに断って、外に出る。こっそり意見交換して、フルバフさんに問いただすことをまとめて拠点に戻ったとき、二人の言い争う声が耳に飛び込んできた。


 「何でよりによって今の時期に調査に来た? 想像できたんじゃないのか、噴火の時期も、地震が起きることも。わざわざ俺たちを危険に晒すために今を選んだと考えても筋が通りそうじゃねぇか、よ。俺はじいさんの身を護る義務がある。だが当の本人が危険を承知で来たって言うなら話は別だ。やってられねぇ、ぞ」
 無愛想にあさっての方向を向いているフルバフさんに、努めて感情を抑制しながらワーレンさんが問いただす。
 「わしにも都合と言うものがある。命令があれば動くお前さんや、冒険者のあの連中のように、勝手にひょこひょこ出歩けない程度には立場があったのじゃ。学院での研究がひと段落するまでは、腰が重くなると言うもの。そんなことも判らんのか」
 
 「んでも、もうちぃとジキを選んだりケーコクしたりはできるんとちがう? フンカが起こるとジシンでぺっちゃんこーになるかも、っていわれたらやっぱ断るおひともいると思うんよ」
 まさに私たちが追求したかった点を話していたので、キアちゃんが口を挟む。
 「私たちが気になっているのは、お持ちの鉱石標本の中に、先日西側斜面の近くで見つけた石の一つと酷似したものがあったことです。実は、あの辺りに新しい鉱脈があるとお考えではないですか?」
 「……もしかしてさ、危険な目にあわせるのじゃなくて、地震や噴火を見せて脅すのが目的だったりする?」
 私たちの言葉に、老賢者は心底嫌そうな顔をして、溜息をついた。

 国が調査を渋った理由の一つに、地震や噴火の被害があったのだろうと、今日になって私たちは初めて想像できた。衛視であるワーレンさんにも、そこまでは知らされていなかった理由はわからないけれど、国家としては僅かな期待に見合った最低限の予算で……という打算が働いたのだろうか。もしくは、過去の経緯を忘れ、事故の可能性を軽視していたのかもしれない。決して嬉しくはないが、できれば後者であってほしい、と思う。

 フルバフさんは私たちの視線に耐えかねたかのように、椅子から立ち上がり私たちを坑道へと案内した。落盤は怖いが仕方なく彼に続く。少し歩いてから彼はおもむろに立ち止まり、杖の先で壁面の上方一箇所を示した。
 「あれ、貝が埋まってる。でもなんで地面の中に」
 私の問いに頷いて、彼は語りだした。


 ――ベヒモスの力の働きやすく、鉱物が蓄えられやすい場所のひとつが、こうした島だ。だが反面その災いを受けやすい。島がベヒモスの身震い、つまり地震などで隆起と沈降をしやすくなるのだ。この貝は島が沈んだ際に地層に閉じ込められ、その後隆起したためにこうして地上にある。
 島がベヒモスの身震いに力を得て沈めば良い。だがもし隆起し、海面下の新たな資源の採掘が可能になったら、ここはまた掘りつくされ無残に荒れ果てるだろう。それは非常に不本意な結果なのじゃ。
 この島を掘りつくせばベヒモスをも刺激しかねず、場合によっては距離的にオラン本国にも影響を及ぼす可能性もある。

 漁師達は遠目に島の存在を知っていたが、暗礁が多く、沖で火の柱が立つことも知られており、漁場にするにも航路にするにもリスクが大きかった。さらに外洋への航路からも沿岸航路からも外れていたのが、長らく正式な発見・上陸に至らなかった理由だ。
 そのまま見つからねば、こんなことにはならなかった、などと思っても仕方ないことが何度も脳裏をよぎったよ。

 わしは、ここに来て自分の学説が証明されるのが心地よくてならなかった。己の知識を存分に生かし鉱脈を読み、国に富をもたらせたことが至上の喜びだった。
 だが、その学説も方法も、鉱脈を枯らすばかりだった。効率の良さは人を集め、大量採掘につながった。後は悪循環じゃ。尽きることなき富はない。わしのやり方は、あまりにも地から吸い上げすぎたのだ。
 
 たしかに、わしはオランに富をもたらした。自身も名誉と地位と金を得てしまった。だがそれは、土地を枯らして得た金だ。
 この島での雇用がなくなり、人の姿は途絶えた。子供達の笑い声も、かまどの煙も、なにひとつここに定着しなかった。
 わしは多重に島を殺し、人の流れをこそぎとったのだ。

 海底火山を調査に来てこの島を見つけたメノーは若かったわしに言い残した。鍛冶神は鉄を鍛え上げるが、大地を鉄くずにはしない。どうか、この島をそんな哀れな姿にはしてくれるな、と。その頃のわしが職務に夢中のあまりその意味が判らないほど愚かだったと気付いたのはずっとあとのことだ。
 ベヒモスと交流した呪い師は、海の中でありながらここはベヒモスと絆を結びやすいと言った。いずれ時が満ち、ベヒモスに力ある精霊使いが求めたなら、自分に不可能だったこともできるかもしれないが、それには感心しないとも。メノーの友人であり、この鉱山を掘るときに意見を出した責任が、彼の心にも重くのしかかっておったんじゃろう。

 わしは、決めた。殺してしまった島が再びよみがえるなら、今度は人の手から護ろうと。
 そんな折も折、学院で希少鉱物への関心が再び高まってきた。これは危険だ、とわしは思った。そこで今回のことを思いついたと言うわけじゃ。 つまるところ……途絶えた原因であるわしが復活を見届け、再び同じ愚を誰にも犯させないように、今度はこの島の利用価値を未来永劫喪わせ、目をそらさせる。それには第一人者が調査して、その無価値と危険を報告するのが一番じゃろう。
 さらにいえば、わしの過去作り上げた方法論は既に葬り去った。全財産をつぎ込んで代替の方法を30年かけて浸透させた。今は過去の形より安全なものとして流布しておるよ。わし自身が第一人者だったことが幸いした数少ない例じゃ。

 これが……わしの目的じゃ。勝手極まりないがな。それがかなわないならば……ここで一緒に死んでもらうのもよいかもしれんな――


 そういって、彼は決して手放さなかった荷物から、小さな球体を3つ取り出し、震える手で掲げた。
 きらきらと輝くばら色と黄色と白の玉がひとつずつ。それらは炎晶石と雷晶石、そして氷晶石と呼ばれ、投げると危険な魔法が発動する代物なのだと、虚ろな表情で老人は明かした。


※ くうしん。空震とも書く。
 
目的と、決意と
キア [ 2006/10/10 0:16:49 ]
 【10の月 9の日 昼過ぎ】


 じーちゃんの手にある、色が違う3つの晶石は、灯りの魔法できらきら光っとった。


 ――ここで一緒に死んでもらうのも、よいかもしれんな――


 今、じーちゃんはそう言ったん。だけど、一緒に死ぬ為だけに、そないなモノを持っとるはずがない。きっと、もっと、別の目的で用意しとったモノだろ。
 ずーっとじーちゃんはあちこち調査しとった。地層とか、地脈とか……それのホントの目的って、モシカシタラ?
 
「……今までの調査の本当の目的は、もしかして……どこに強い衝撃を与えておけば、ベヒモスの身震いによって、島が沈み易くなるのか。もしくは、西側の斜面の新しい鉱脈をうまく覆い隠すように、崩れてくれるのか……それを調べる為の、調査だったんじゃないんですか?」

 おいらがちこっと思った言葉を、ユーニスが口にした。おいらだけじゃない、ファントーも、おっちゃんも、どーやら同じ事を思っとったようで、オドロクでもなくじーちゃんをじっと見た。
 おいらたち4人の視線を浴びながら、じーちゃんが苦笑する。どーやら、ユーニスの言葉は、マトをばっちり射ってたよーだ。

「そうじゃ、この炎、氷、雷の晶石は、その為に用意しておいたものじゃ。島自体が沈みきらずとも、鉱脈が隠れてしまえば、掘り出す事も難しくなる。しかも、山が大きく崩れたとなれば、今後は、それも問題点の一つとして考慮されるじゃろう。利益よりも、大きな損害が起きる危険を考え、それ以上手を出さなくなるかもしれん」

 そう言うと、3つの晶石をダイジそうにしまう。

「これ以上は、こんな場所でなくとも話を続けられる。まずは出るとするかの? 地震が起きて落盤にあえば、本当に心中になってしまうからの」
「爺さん、笑えん冗談はやめてくれ」

 ワーレンのおっちゃんの言葉に、おいらも頷いた。


【10の月 9の日 夜】

 コウドウ内から戻った後、おいら達はまず夕食にした。コウドウ内での話の続きは、食事の片づけが終わってから、やっと再開された。

 じーちゃんの話によると、おいら達はこの島にジシンが起きる前に、全てを終わらせて、この島を出ないといかんらしい。ジシンが起きると、ツナミの心配もあるからだそーだ。
 ツナミが起きたら、あんな小さなお船じゃ、ひとたまりもないかもしれん。しかも、おおまかな予測が出来ても、ジシンがこの日に起きます!なんて言えんらしい。
 せめてファントーとユーニスに、ベヒモスの気配をカンチしてもらって、予想するしかないそーだ。

「なぁ、爺さんよ。なんでわざわざ沈み易く…ないし、崩れるようにする事にした? そんな事しなきゃ、危険な状況を切り抜けざるをえなくなるような真似、わざわざしなくてすむだろう。形ばかりの調査をして、報告書に『やはりこの島には、もう鉱石が採れる見込みがありませんでした。』とでも書いて出せば、すむ話なんじゃねぇのかよ」

 ずっと気になっとったんだろう、おっちゃんは、じーちゃんの話が一段落するなり、この質問をした。

「それでは駄目なのじゃよ。先ほど言ったとおり、沈んだのであればまだよい。しかし隆起したとなると、新しい調査隊が再度派遣され、再調査される恐れもある」

 じーちゃんの言葉に、おっちゃんは押し黙る。んでも、何も言えんくなったってーよりは、悩んどるよーな、そんなお顔。
 
「ワーレンさん、悩んでるんだろうね。フルバフさんの気持ちと、自分の立場の、板ばさみだもの」

 ユーニスが、こそっと小さな声でささやいてきた。それでようやっと、おいらも意味がわかる。

 ワーレンのおっちゃんは、ゴエイである以前に、じーちゃんのカンシ役だ。じーちゃんのホンライの目的を探る、それがお仕事。んでも、探って、わかって、はいおしまい。じゃ、おさまらんだろ。わかって、それがとんでもないことだったら、クニに報告せなならん。 

「全ては儂の我侭。お前さんたちには、儂に付き合う道理はないかもしれん。しかし、儂の気持ちを汲んでくれるのであればじゃ、この老いぼれに、もう少しだけ付き合ってくれぬか」

 頭を下げるじーちゃんに、おいら達はいやだとは言えんかった。

 いやだと言えんかったのはきっと、その態度と気持ちに、負けちったからだと、おいらは思った。


【10の月 10の日 昼前】

 今日は、西のシャメンの再調査となった。コウドウ内は、昨日言ってたとーり、危険って事でちゅーし。
 今回の調査は、どの辺にぱきょっとしょーげきを与えれば、この辺のこーみゃくがうまく隠れて、くずれてくれるかの調査。

「ねーユーニス、ベヒモスの気配って、まだすごいん?」
「昨日よりはちょっとだけ弱いかな。でも、今までに比べるとやっぱり強いよ」

 ユーニスの言葉においらは手を止め、その場に座り込んで空を見上げた。

 しょーげきを与える場所を特定しても、実行に移すんは安全を考えて、この島を出る前日か当日にするらしー。
 てーことは、つまり、調査が終わって、めどがついたら、この仕事は一段落をむかえるん。

「キア、サボってないで手伝ってよ」

 調査のお手伝いをサボって、座りこんどるおいらの頭に、ファントーの声がおりてくる。かっくん、と、頭を後ろに倒して、ファントーの顔を見上げた。

「なぁ、ファントー。じーちゃん、おいら達も一緒にさ、お亡くなりにさせる気はなかったとしてもねぃ……じーちゃんホンニンは、この島と一緒にうまる気……なんてこと、ないよねぃ?」
「あ……キアも、やっぱりそこが引っかかってたんだ。オレも、もしかしたらって思ってた。フルバフ、この島を枯らしたことを、本当に悔やんでいるから」

 ファントーが、おいらの隣に座る。

「まだ、ホントにそーだとは言えんけどねぃ、おいら達のジャスイ(邪推)かもしれんし……んでも、そーだとしたら、どする?」
「オレは、そんな事させない。フルバフがどう思おうと、島と一緒に埋まる事が、罪滅ぼしだとは思えない。…ユーニスは?」

 ソバで黙って話をきいとったユーニスに、ファントーが話を振る。

「私も、ファントーと同じ意見。死んじゃったら意味はないもの。本当に償いたいなら、生きて、最後までこの島の行く末を見届けなくちゃ」
「うみ、それにー、おいら達は、じーちゃんのゴエイだもんねぃ。じーちゃんの命は最ゆーせんで守らな、ね」

 ユーニスとファントーが頷くのを見て、おいらはにんまりと笑った。
 
崩壊のきざし
ファントー [ 2006/10/11 14:16:09 ]
 <10の月 10の日 正午>
 フルバフの体調が再び怪しくなったのは、そろそろお昼ご飯にしようかという頃合だった。勾配地に幾つも突き出た大きな岩の、その一つの陰でフルバフは膝をつき、肩で大きく息をしていた。フルバフの顔は疲労に滲んで血の気が失せて、肌は殆ど土気色になっていた。
「無理してくれるなよ、爺さん。なんだって、そんなに急くんだ。まだ時間はあるだろうに」
 オレに支えられ、ユーニスから水薬を飲まされているフルバフに対して、ワーレンは苛立ちを隠そうとしない。
「こないだもいったが、あんたは立場の軽い人間じゃねえんだ。今日はもう戻って休んでもらうぜ」
 そう決め付けたワーレンは、薬を飲んで落ち着いた様子のフルバフを背負い、根拠地へ歩き出していった。フルバフの荷物を抱えたユーニスが慌ててその後を追う。オレとキアは顔を見合わせ、肩を竦めた。
 根拠地のベッドに寝かしつけられたフルバフは、直ぐに休もうとはせず、オレたちに頼みごとをしてきた。いわく、勾配地の調査はあらかた済んだので最終的な確認作業だけは今日中に完了させておきたい。専門家でなくてもできることだから、野伏の心得のあるオレたち(つまりキア、ユーニス、オレの三人)に、その作業を頼みたいということ。特に呪い師であるオレとユーニスにはベヒモスの力を量るという点で、しっかりやってもらいたいということ。そして、フルバフの持つ魔水晶を発動させることで島を取り巻く潮の流れに影響が出るだろうから、港で待つ船は待機地点を変更する必要がある、その旨をワーレンに伝令してもらいたいということ。
 ワーレンは直ぐには納得しなかった。
「何故、明日の朝なんだい。もう少し待てないのかよ」
「ベヒモスが大地に及ぼす力は一定の周期で変動するのでな。もっとも近いところでは、明朝にそのピークを迎える。それを見計らって魔水晶を発動させれば、てきめんの効果が得られるじゃろう。残された時間を思えば、明日の機会を逃すわけにはいかん」
 月の形が変わるように、潮に干潮があるように、精霊力もまた一定ではない。そのことは呪い師なら誰でも知っている。多くの場合、魔法を使うのに差し支えはないけれど、このメノナスのように特定の精霊の力が強く作用する場所では、小さな魔法でも強く精霊を刺激することがある。メノナスはベヒモスの力が強い。つまりベヒモスに従うノームも活きがいい。だから、ここでノームの力を借りて魔法を使うなら、いつもよりもずっと強い効果を発揮できるだろう。その一方で危険なこともある。滅多にないことだと聞いているけれど(少なくともオレには経験がない)、交信に失敗した精霊が暴れだし、牙を剥くことがあるんだ。このメノナスは、そういう恐れもまた強いところだろう。

<同 昼過ぎ>
 フルバフに説明を受け、道具を借りたオレたちが根拠地を出て歩き出して直ぐに、先に港へ向かっていたはずのワーレンが姿を見せた。オレたちが来るのを待っていたようだ。
「キア、お前はここに残って爺さんを見張っててくれ。少しの時間とはいえ、爺さんを一人にしておくのはまずい」
 その言葉がフルバフの病身を慮ってのことでないのは明らかだった。魔水晶を掲げて迫ったときのフルバフの表情は、みんな忘れていない。
 根拠地からの視線が届かなくなるところでキアは踝を返して、物陰に身を潜めながら根拠地へと戻っていく。それを見送りながら、オレは耳を澄ませてみた。根拠地の入り口に呼び寄せたシルフが、音を集めて俺の耳に運んでくる。念のために、魔法を施しておいたんだ。今のところ、向こうでおかしな物音が立った様子はない。オレたちが根拠地を離れるのは長くても二、三時間ほど。シルフの力がもつか、もたないかギリギリのところだ。なるべく急いで戻ってこないといけない。
 預かってきた地図には、フルバフの手でたくさんの修正が加えられていた。ぽっかりと空白だった勾配地の一帯は細かく描きこまれ、道筋が正確に分かるようになっている。それを頼りに、フルバフの指示した地点へ移動する。一見して目立った特徴はないようだけれど、膝をついて地面に掌を押し当ててみると、土の下をモグラが掘り進んでいるような気配を感じる。ノームの力が強まっている証拠。普通なら呪い師にしか分からない感覚だけど、このメノナスなら、敏感な人は察することができるかもしれない。
「フルバフさんの見立ては的確だね。もしかしたら、あの人にも精霊と交信する素質があるのかも。いくら専門家だといっても、地形を見ただけで、こんなにピッタリと当てられるものじゃないと思うし」
 ユーニスのいう通りだと思う。フルバフが、魔術師ではなくて呪い師の道を選んでいたら立派な術者になっていただろうし、それほどの才能があるからこそ、メノナスの大地が枯れていくことに耐えられなかったのだろうとも思う。フルバフのそうした感性がいつ頃から目覚めていたのかは分からないけれど、おそらくは呪い師がベヒモスと交信するのに立ち会ってからじゃないだろうか。
 メノナスの上辺を崩してしまえば、人がここから恵みを受けることはできなくなる。そうして人の手が及ばなくなれば、メノナスは遠い何時か、豊かな島に戻るだろう。
 ……でも、本当にできるんだろうか。オレは疑問に突き当たった。
 今、オレとユーニスが立っているところは確かにノームの力が強い。ここで足払いや石弾の術を使えば、いつもに倍する力を表すに違いない。だからといって、この勾配地をすっかり壊すだけの刺激を与えられるだろうか。フルバフの魔水晶がどれだけの威力を持つかは分からないけれど、そこまですごいものだとは思えない。
「魔水晶は合言葉を受けて働くそうだから、使う際はある程度離れていても大丈夫なんだって。だから、土の中に深く埋めるんじゃないかな」
 ユーニスはそう答えた。でも、そうだとしてもよほど深く掘る必要があるんじゃないだろうか。一体どれくらい深ければいいんだろう。
 その時だ。
 オレの耳に、キアの声が飛び込んできたのは。
「じーちゃん、もう起きてもいいん?」
「……居ったのか」
「じーちゃんが心配になったから、おいらだけ様子見に戻ってきたんよ」
「……」
「その袋の中、あのスイショウが入ってるんよね? そんなの持ってどこにいくん?」
「……」
「そっち坑道なんよ。ねー」
「……」
「じーちゃん、ダメなん! 一人で行っちゃ!」
 キアが走っていく気配。フルバフを呼ぶキアの声が遠ざかっていく。

 オレの疑問は、確信に変わっていた。そうだ。鉱脈をすっかり壊すために魔水晶の威力を最大限に活かすなら、地中深くで使えばいい。そして、このメノナスで一番奥深いところは鉱山の中しかないじゃないか。フルバフがオレたちを引き離したのは、一人きりでそこへ行くためだったんだ。
 足元の石を跳ね飛ばしながら、オレたちは走る。根拠地までの時間を考えると、到底間に合わない。そして、いくらフルバフが弱っていても、キア一人じゃフルバフをおしとどめることはできない。
 根拠地はやはり、もぬけの空だった。大急ぎで建物の中を検める中、フルバフの部屋から書置きが見つかった。

 ――即刻、島ヲ離レラレタシ。日ノ入リニ大地震アラン。諸君ノ協力ニ心底ヨリノ謝意ヲ表ス。フルバフ・ナーカンター。

 外へ出て直ぐ、オレたちはキアが残した目印を見つけた。目印は坑道へ向かって続いている。
 オレとユーニスは全力で駆け出していた。
 
大地は唸る、そして震える
ワーレン [ 2006/10/13 23:13:34 ]
 10月10日 午後】

”ずうぅ・・・・ぅうん”

 重く、底から震えるような揺れが足元から襲う。
 爺さんからの指示、そして何かあれば合図を送ると、港の船員達に指示を伝える。
 爺さんが何かしでかさないよう、早めに根拠地へ引き返す途中、それがあった。
 嫌な予感がよぎる。

「おぃ、爺さん、本当に」

 根拠地は無人で、慌てて放り出された書置きだけが待っていた。
 俺の問いかけの、無言の答えがあった。



 鉱山の扉の前に来たとき、それほど強くは無いが数度揺れが起きていた。
 だからといって構っていられない。そして坑道に入る。暗くなるが、記憶に頼って、坑道を進む。
 壁から水が染み出していた。ぬれた足元が微かな光を反射する。そして足元を不安なものにする。
 慌てて足を滑らせ転び、立ち上がり、一番深い位置になるであろう、あの坑道を目指す。

 やがて奥から声が聞こえてくる。同時に、魔法の光と光霊の灯らしき光がぼんやりと。その向こうに四人がいた。

 キア、ファントー、ユーニス、そして奥に魔水晶を握り締めたフルバフ。
 三人はフルバフに近付こうと、フルバフは水晶を見せて牽制する。

 俺まで揃ったのを見て、やれやれ、と肩を竦める爺さん。
 顔は昨日よりも更にやつれ、顔色はますます土気色、いや通り越して、白くなりかけている。
 汗なのか、それとも滴る水なのか、顔、腕の肌が見える部分はぐっちょりとぬれている。
 もはや、立っているのさえ、相当辛いはずなのに、しっかりと自分の足で立っている。

「・・・書置きは見なかったのかね、君は?」

 俺は答えない。

「わしが決めたことに付き合う必要は無い。さっさと島を脱出せい。わしの命はここで終わりじゃよ」
「おいらたち、じーちゃんのゴエイなんよ」
「フルバフの命を守るのがオレたちの役目だよ」
「駄目じゃ。これを使うにはわしがここで力を発動させる必要がある。考えに考えて決めたここでの」
「なんでですか?貴方自身が犠牲になる必要はありません!」
「島を数年で荒らした、そして人の営みを結局は消した。そして、本当の意味での”枯渇”の原因はわしだ・・・だから島を護る。そして、本当にこの島が危険で価値を持たぬこと、それを身をもって示さねばなるまい」
「そんなの・・・」
「いや、わしだ・・・なんと言おうとな」
「爺さん、やめるんだ。でなきゃ、俺はあんたを殴ってでも止める。老人に手をあげるのは正直嫌だが、な」
「其の前にわしはこれを使うがね。どちらにせよ、魔水晶はここで使うには、ここで使う必要があるのだ」
「だって、合言葉をいえば遠くから」
「すまんの、これは合言葉はないんじゃ。ただ、前に言ったとおり使うには投げる、それだけじゃ」
「じゃぁ、土掘って埋めて・・・って」
「・・・すまなかったの。さ、時間じゃ、船が安全に出るにはまだ余裕はある。お前さんがた」
「爺さん、怒るぞ」
「わしはどうせ残り少ない命、自由にさせてくれんか。酷い我侭であるが」

 爺さんは咳き込んだ。同時に、また揺れが起きる。

「げほっ・・・やれ、予想よりも早いかもしれんな。さ、もう帰るんじゃ。若者まで巻き込んだら、あやつに怒られる」

 ぱらぱら、小石や砂が揺れにあわせて少しずつ降ってくる。

「だめ、じーちゃん、一緒に帰って」
「すまんのう、ほんと、悪い爺で」

 奥のほうへ後ずさるフルバフ。
 同時にユーニスとファントーが何かを感じ取った。

「「そっちは駄目!!フルバフ」さん!!」

 言葉が重なった。
 同時に、俺は走り出して、腕を大きく真横に振りかぶって爺さんを・・・殴りはしなかったが、掴んで後ろへ突き飛ばした。
 爺さんは何が起きたかを悟り、叫んだ。真上の天井が割れ、いくつかの拳大の岩石が、降り注いだ。

 俺に。
 
説得失敗
ユーニス [ 2006/10/16 11:22:52 ]
 【10の月 10の日 午後】

落石に当たって昏倒したワーレンさんを崩落現場から引きずり出して背負い、少し歩いて木組をしっかり張った退避所まで戻り、止血を施す。ここは近くに垂直に掘られた空気孔があるため、多少明るくなっているし、当然空気もいい。
外界との接点があるのはやはり安心するものだ。特に今の状況下では。

野伏が三人寄れば応急手当はお手の物で、彼の手当ても手早く終えることが出来た。
幸いワーレンさんの意識はすぐに戻り、ふらつきながらも立ち上がれるようになったが、やはり一人で歩くのは覚束ない様子だった。私が横に回って肩を貸すと、彼はぼんやりと座り込んでいるフルバフさんを見下ろす。

突き飛ばされてから呆然としていたフルバフさんは、ファントーが抱きかかえるようにしてここまで連れて来たものの、また座り込んでしまっていた。よほど庇われたこととワーレンさんの怪我が身にこたえたのだろう。彼が立ち上がったことでやっと我に返った様子で、掠れた小さな声で、すまん、と呟いた。ついで、己の掌を無意識に握り締め、瞠目する。
隙をついてキアちゃんが三つの玉を掠め取ったことにさえも、気付いていなかったのだ。
肩を落とし、なかば放心したままの彼に、ワーレンさんはいつものように頭を掻き――直後に自分で引っかいた傷の痛みに呻きつつ――あえてのんびりとした口調で告げる。

「じいさん、ホントのところはだな、あんたが自分の罪の意識に苛まれて自殺するのは勝手だ。だがなぁ……そうするってぇと俺たちも一生あんたを見殺しにしたことを悔いていかなきゃならなくなるんだわ。俺はそんな面倒はごめんだ、ぜ。
大体職務上も、それは許し難い。国有財産損壊の咎で、この場でとっ捕まえて引きずり出すことだって許されるだろうし。
あんたが罪の意識でやろうとしてることは、誰の幸せにもなりゃしないんだ……多分、あんたの昔の仲間だってそういうさ」

「そだねぃ。おいら、きっと一生ずーっと忘れられんよ。ごはんのたんびに、おいしーものをメノマエにたーくさん並べられても食べとーないってムネいっぱいになると思うんよ。おいらにとって、今じーちゃんは仲間だもん」

「フルバフが悔やんで悔やんで、苦しんだように、オレたちもこれからずっとそれを抱えて行かなきゃならなくなる。フルバフにとっては島を壊すことで気持ちに始末をつけられるかもしれないけど、見殺しにしたオレたちには償ったり心をしずめる方法なんてないんだ。死んじゃったら、おしまいじゃないか。そんなのずるいよ」

なるほど、ずるければ機先を制することができるかもしれない。天井から時折落ちる礫に目をやりながら、思考をめぐらせる。今ならさっきの揺れのときより少しベヒモスが落ち着いているし、説得するチャンスかも知れない。
ずるい立ち回りには慣れていないし、賢者に対抗できるとも思えないのだけれど。

「えーと、フルバフさん。私たちの人柄を信じてくださったみたいですけど、『荒くれ者ばかりの冒険者たち』を信じちゃいけません」

一斉に振り向く4人に肩をすくめてみせる。私が支えているワーレンさんは、僅かに目を細めた。

「だってね。これって冷静に考えれば鉱脈の在り処まできっちり教えていただいたわけですよ。もしフルバフさんが命と引き換えに鉱脈を破壊しても、場所はわかっている訳で。
『事故でフルバフさんが死んじゃったけど私たち生きて結果を持って帰りましたー』って
オランに帰りついた私たちが言わない保障がどこにあるんですか?」

あっけにとられたあと、睨みつけてくるフルバフさんの顔に、僅かに生気が戻っている。怒りは、時に人の命を賦活するものだ。

「情報って、お金になるよね? キアちゃん」

キアちゃんも私の意図に流石に気付いたようだ。こくこくと首を振って応える。

「そらもう、いいオカネになるん。おいら情報のトリヒキならツテがあるし、こーいうオカネになる情報なら、お金持ちのキゾクとかがもっとお金持ちになるためにほしーなーって言うかもしれんから、お宝みたいなもんやね」

「それにさ、もし特定の人に売るんじゃなくても、酒場で情報として流せば、また沢山人が来るかもしれないよね。国が手をつける前に噂が流れちゃったら、だれかがこっそり掘りに来たりして」

ありがとう、ファントー。割と煽るの上手だね。
などとおかしなことを考えながら、フルバフさんの様子を観察していると、見事なまでに顔色が蒼白から赤みを帯びたものに染めかわっていた。

フルバフさんの顔に程よく血色が戻ったところで、私はにっこり笑いかける。

「さて、このままだと全員岩の下敷きになるので、まずは出ましょう。
それから、私たち全員が死ぬと、船員さんたちが島の崩落を目撃してからオランに帰りますよね。多分私たちのお友達が探しにきたり、場合によると衛視隊がきちゃったりする気がするので……ちゃんと一緒に帰りましょう」

ワーレンさんが私の言いたかったことを、補ってくれる。
「そうだな。一緒に帰って、自分の口で証言してくれや。
『ここには何も無かった。それどころか危険極まりない島だった。無事帰れたのが嘘のようだ』と。
一介の衛視の俺や、冒険者が束になって言葉を尽くすより、あんたが一言言う方がよっぽど効果的だと、俺は思う。
それがあんたにできる、最大級の償いだ、ぜ」


坑道から船の繋留場所まで、急ぎ坂道を降りていく。
私がワーレンさんを、ファントーがフルバフさんをそれぞれ抱え、キアちゃんがハンカチに包まれた3つの玉と薬の入った荷物を持って。
地震で荒れた路面を避けながら早足で歩む。繋留場所が見えてきたとき、突然キアちゃんが後ろに走り出した。

「キア? どうしたの」

ファントーの問いには答えずに、距離をとったままキアちゃんはフルバフさんに呼びかける。
「じーちゃん。お山の途中に空気穴があったよね。さっきの場所の近くまでまっすぐ通ってるって、フンカを見に行ったとき、じーちゃんがいってたとこ」

ファントーに支えられながら、必死に歩み続けるフルバフさんも思わず足を止めた。
「よう覚えとるの……まさかっ」
「そのマサカなん。投げるってゆーか、まっすぐ落とせればバクハツするっしょ?」
「ちょっ……キア!?」

全員がキアちゃんを止めたけれど、止め切れなかった。草原を馳せる妖精の足は、鈍重な人間たちでは止められないのだと、こんなときに痛感したくなかった。
ファントーがフルバフさんを支える手を片方外し、土の精霊の助力を願おうとしたのを察知して、彼女はさっと距離を開けて叫ぶ。

「仲間だから、じーちゃんの願い、かなえたいんよ。ファントー、荷物よろしくなん。じーちゃんの薬が入ってるから、落としちゃだめだかんねー」
「キアちゃん!!」
あっという間に遠くなる影に、私にはなすすべもなかった。



船員さんたちの手を借りて怪我人二人を船に乗り込ませ、不規則に揺れる大地と波とを感じながら、ひたすら彼女の帰りを待つ。
彼女が帰ればすぐにも出航せねばならないほど、大地は再び唸り声を上げ始めていた。

「こんな、こんなことをあの子にさせるために、わしはここに来たわけではないんじゃ」
フルバフさんは萎びた手を組んで、小さくラーダへの祈りを呟き続けている。

「ちっくしょ……怪我してなきゃ、襟首掴んででも止めたのによ」
ワーレンさんも船端に手をかけて、遠くそびえる山を睨みつけていた。

ファントーと私は、はしごのそばでいつでも彼女を引き上げられるように待機しつつ、届くはずのない声をベヒモスに投げかけていた。自分の無力さを嘆く前に、少しでもできることをするしかない。それが私たちの共通の思いだった。


――どうか、どうか。私たちの大切な友人が無事に帰るまで、どうか、もう少しだけ持ちこたえてください。
お願い、この島に手を伸ばす偉大な存在よ。私たちのしていることは、あなたを怒らせるだけかもしれないけれど、どうか――


そんな風に強く祈ったときだった。ひときわ大きな揺れが島を襲った。
思わず体を屈めて身を護った私に、ファントーが大声で注意を促す。
「ユーニス! あれ!」

ファントーは土煙に霞む山腹ではなく、近くの坂道を指差していた。

待ち焦がれた小さな影が、灰白色の煙をかいくぐるように走ってくるのが見えた。
 
おやすみ、メノナス島
キア [ 2006/10/17 22:50:51 ]
 【10の月 10の日 夕方】

 じーちゃんの願いをかなえるために、ユーニス達と別れて、お山の途中にある空気穴に向かったん。
 ちと遠いけど、誰が行くよりも、おいらが行くのが一番早い。なによりもおいらじゃ、おっちゃんも、じーちゃんも、支えられんもんね。

 空気穴に着くと、ハンカチに包まれた3つ晶石を、その中に投げ入れた。3つの晶石を放り込んでまもなく、バクハツの音と一緒に軽く地面がゆれる。おいらはその拍子にバランスを崩して、その場に思わずしりもちをついた。でも、そのゆれと音は、ちゃんと晶石が発動したしょーこだろ。
 やりぃっ! と、心の中で思った後、ばっと立ち上がり、おいらは走り出した。


 ユーニスも、ファントーも、おっちゃんも、じーちゃんも、きっとおいらが戻るのを待っとるだろうから、急いでもどらんと。


 しばらく走ると、さっき引き返したケイリュウ場所の近くにやって来た。停泊してあるお船が見える。
 ゆれはじめとる地面に、一刻のユウヨもないことを感じながら、おいらは足を止めることなく、お船に向かった。

「キア、早くー!」
「キアちゃーん! 急いでー!」

 お船からも、おいらの姿が見えたのだろ、近づくにつれ、ファントーとユーニスの声が聞こえてきた。
 大きなゆれに転びそうになりながら、全力ダッシュで船へと駆けつけると、下がっている縄はしごに捕まる。それを合図にするかのよーに、ファントーとユーニスの二人が、はしごを引き上げてくれた。
 草妖精は、おヒトから見れば子供ぐらいの大きさしかない。なので、二人がかりで引き上げられるはしごは、おいら付きでも、カンタンに回収された。

 「すいません、お待たせしました!」

 全員そろった事を、ユーニスが船員さんに伝える。それがさらに伝言されたのだろ、それからまもなく船が動き始め、島から離れていった。


「キアちゃん! キアちゃん……よかったぁ」
「ユーニス、ユーニス! くるしー!」

 動き出した船の上、引き上げられて甲板の上にブジ着地すると、ユーニスがおいらを抱きしめて、何度も”良かった”とくりかえした。力いっぱい抱きしめられて、さすがのおいらもちと苦しい。

「あぁ、ごめんね、キアちゃん」

 おいらが苦しんどる様子に、ユーニスがおいらを放す。

「もう! なんで、あんな無茶するんだよ!」

 と、ほぼ同時に、今度はファントーに怒られた。でも、ファントーもユーニスも、いっぱい心配してくれてたのは、その顔を見ればよくわかったん。
 それがとっても嬉しくって、でもとっても、ごめんな気持ちになった。

「ごめんねぃ、んでも、ちゃーんとバクハツさせてきたんよ」

 にぱっと笑って、指でVの字を作る。おいらの今の言葉をきいて、じーちゃんがおもむろに近づいてきた。

「……本当か……?」
「んみ、ちゃんと発動はしたみたいなん。じーちゃんの言うとーりなら、これで島はゆっくり眠るんしょ?」
「あぁ、そうじゃ、その通りじゃ……ありがとう、ありがとう…」

 おいらの手をとり、じーちゃんは涙を流して、なんどもお礼を言った。


 メノナス島は、これからたくさんの年月をかけて、ゆっくりと生き返る。それが、どれぐらい先の話しか、おいらにはわからん。今いるみんな……おいらも含めて……みんな、生き返ったメノナス島を、見ることは出来ないかもしれん。
 でも、メノナス島が生き返るんは、じーちゃんがいっぱい、いっぱい願った事。見ることが出来んでも、手伝いできた事は、良かったとおもっとる。

 だからね……ちゃんと生き返ってね。それまでお休みなんよ、メノナス島。
 

 どんどん離れて小さくなっていく、メノナス島の姿を見ていたら、おっちゃんがおいらに近づいてきた。なんだろうと見上げようとしたとたん、ゲンコツがおいらの頭にふってきた。

「い〜ったぁ〜〜〜っ!! なにするんよ、おっちゃん!」
「みんなに心配かけた罰だ。ったく………これに懲りたら、無茶な真似はするんじゃねぇぞ」
「おっちゃんだって、無茶したくせに〜、頭にケガまでしたくせに〜!!」
「あ? これか? これは俺が勝手に転んで、怪我したんだ」

 にやりと笑うおっちゃんの言葉に、おいらはきょとん、とする。

 意味が理解できんで、たずねようと口を開いたそのとき、ぐらり、と、船が大きくゆれた。
 
夜明け前
ファントー [ 2006/10/18 22:25:58 ]
 <10の月 10の日 夕方>
<>
<> ビルジキールが壊れるんじゃないかというくらいの大きなうねりが船を叩いた。甲板上にいた全員が伏せ、あるいは倒れて転がる。甲板にしがみついて目をとじるオレの体に、波が勢いよく降りかかってきた。
<> メノナス山の奥底に投げ込まれた魔水晶が秘められた力を解き放ち、メノナスの大地を内側から叩いているんだ。その衝撃に反応したベヒモスが大きく身じろぎをし、しもべであるノームたちが這い回りだしている。メノナスを支える土の精がこぞって動き始めたことで海の底も震え、海中がかき回される。海鳥たちが飛んでいたならば、メノナスの周囲で海が泡立つ様子を見たことだろう。
<> あまりに揺れるものだから、船が転覆するんじゃないかと心配したけれど、船が何とか持ち堪えるうちに島から伝わる震えは収まり、海上は次第に穏やかになっていった。
<>
<>「おい、生きてるか」
<>「はい、なんとか」
<>「んみぃー、もー気分わるいんよ」
<> ワーレンの呼びかけにオレたちは言葉を返す。起き上がるとみんな、顔色が真っ青だ。
<>「爺さん、どっか打ったりしてねえか」
<>「うむ、大丈夫じゃ。すまんが、手を貸してくれんかの」
<> ワーレンに助け起こされたフルバフは、そのままワーレンに支えられながら舷側に向かう。
<>「うおっ……!」
<> フルバフと一緒に船の端に立ったワーレンが、そう呻いてその場に立ち尽くしたのにつられて、オレたちは一斉にメノナスの見える方へ顔を向けた。
<>「あっ、山が……」
<>「ぺたんこになっとるん!」
<> ユーニスとキアもそういったきり言葉を失う。オレも唖然として、すっかり形を変えてしまったメノナス山に見入っていた。
<> 島の真ん中に大きく突き出していた山の西側、粘土質の勾配地が広がっていたあたりが大きく落ち窪んでいて、根元を深く刳られた山頂が自身の重みに耐えかねるように、その窪みに向かって大きく傾いていた。もともと山の中はあちこち掘り返されて穴だらけだ。もう一度大きな地震でも起きたら、鉱山はすっかり潰れてなくなってしまうだろう。それで鉱床が消えてなくなるわけではないけど、かつてのように利用することはとても難しいはず。それはつまり、メノナスに人が手を加える値打ちはもう何もないということだ。
<>
<> オレたちはみんな神妙な顔で、少しずつ遠ざかるメノナスを眺めている。しばらくの間は誰も何もいわなかった。
<>「しかし、なんだ。あの山、虫食いの歯みたいだぜ。見てると自分の歯が痛くなってくるな」
<> ワーレンが、根元の欠けたメノナス山を指しておどけた感じでいった。キアがそれに合わせて続ける。
<>「そやねぃ。ぐらぐら揺れてる感じで、ちーっと不恰好なん」
<>「いっそのこと、あの尖がりも取れたほうがすっきりするよな」
<>「でも、もースイショウは全部使っちゃったから無理なんよ」
<>「地震でも起きねえかな。どうせなら俺たちの目に見えるうちにきれいサッパリになってもらいたいぜ」
<>「それはもーベヒモスでも出てきてくれんとねー」
<>「まったくだ。はっはっはー」
<>「あははははー」
<>「はっはっは」
<>「あはははは」
<>「はっはっはうおおおおぉっ!?
<>「にゃっ!? おっちゃん、どーしたん?」
<>「……あ、あれ見ろ、あれ!」
<>「あれって……あああああぁーっ!
<> 顎が落ちそうなくらいに大きく口を開け、目を丸くして、島を指差した姿勢のまま動かなくなってしまったワーレン。
<> バンザイをするように両手を高くあげ、やっぱり目を丸くして、口をぱくぱくさせているキア。
<> オレとユーニスは、二人ほどは驚いていなかった。
<> なぜなら、オレたちは精霊使いだから。
<> 何が起ころうとしていたのか、そしてワーレンとキアが驚いて見遣る方で何が起きたのか、オレたちははっきり悟っていたんだ。
<>
<> 夕日に赤く染まるメノナス山に、一匹の動物がしがみついていた。
<> 全身は黄土色で、でっぷりとした体にたくましい四肢が伸び、足の先には頑丈そうな蹄が生えている。
<> 目と鼻をみるとカバのように見える。
<> 耳と、頭から突き出た角は、水牛のようにも見える。
<> それにしても、それはあまりに大きい。
<> しがみついている山よりも一回りも、二回りも大きい。
<> そして、まるでこの世の生き物ではないかのように、全体がうっすらと透けていた。
<> ベヒモス。
<> フォーセリアの根幹をなす四大精霊王の一。大地を統べるもの。
<> それは、メノナスの峰に前足を巻きつけ、まるで締め付けるようにした。
<> それの、太くて長い、槍のような尾っぽが震え、地面を叩く。
<> もうかなり島から離れていたから、船が揺れることはなかったけれど、ものすごい衝撃だったことは分かる。
<> メノナス山の名残が、瞬きする間に粉々に砕けてしまったのだから。
<> 濛々と巻き上がる土煙が収まったときには、あの動物の姿は見当たらず、跡にはすっかり平らかになってしまったメノナスの大地が残されていた。
<>「かたじけない……」
<> フルバフが両手と膝をつき、島に向かって深く頭をさげた。
<>
<><10の月 13の日 夜明け前>
<>
<> いつものように、日の出より早く目が覚める。オレはユーニスとキアを起こさないように、静かに船室を出た。
<> 海も空も全体、墨を撒いたように真っ暗だけど、東のほうに目をやると、ほんのり紺色になっている。夜明けまで、あと何十分もないだろう。
<> 船首側の手すりを掴んで、身を乗り出すと、視界のはるか彼方、海面に何か突き出ているのが見える。それはアレクラスト大陸の端っこだ。見えているのはオランの何処かだろう。王都の港に着くのは昼頃になるらしい。到着したら、オレたちはその場で解散だ。後のことはワーレンとフルバフで済ませることになる。
<> 帰ったらラスとカレンにちゃんと報告しないといけないな、と考えていたら、いつのまにかユーニスが右に立っていた。
<>「おいらもおるよぅ」
<> 左からオレの服の裾を摘んで、キアがにこっと笑った。
 
終わること、または始まること
ワーレン [ 2006/10/19 23:50:45 ]
 【10月14日 第参衛視隊詰所 受付】

「報酬は約束どおり。ただ危険手当は出なかった。悪いな」

 報酬を受け取りに来た三人に後金の金貨十枚をそれぞれに渡す。
 前金とあわせれば全部で金貨十三枚になる。
 おれが今回の護衛に対する報酬である。

「ううん、大丈夫だよ。それに・・・怪我したの、ワーレンだけだし」
「ジブンで転んでケガなんて、おっちゃんは、おじーちゃんなんよ」
「キア、誰がおじーちゃんだって?うらっ!」
「へっへーん、ゲンコそーそーアタらんよ〜」
「こら。あ、おじーちゃんて言えばフルバフさんだけど・・・」
「ん、爺さんか。俺も船降りて、ここで別れた後、会ってないんだ」
「どこに行けば会えるかは?」
「たぶん・・・俺らじゃ行けないと思われる場所、だ」
「そっか・・・」
「うみ、ザンネンなん」
「あー、もし会ったら、だが・・・何か伝えておくか?」
「あ、じゃ、まずはですねー「じーちゃんはムリし「また何かあっ」」
「い、一斉に言う、なー!!」

「ワーレン、世間話なら外でやれ」

 受付の同僚に注意された。

【10月17日 昼】

 オランの衛視隊本部のある一室。
 机に壮年の男性と老人の二名が席に座り、大男が一名立っている。

「・・・と、いうことで、今回の任務の報告は以上、で」

 報告書を提出して、口頭での報告をした。

 島の資源はやはり枯渇、調査の結果レアメタルの存在は皆無。
 また地震で山そのものが崩壊し、島はもはや無価値と認められる。
 鉱山技術の第一人者フルバフ老さえ諦めざるを得ない結果となった。
 詳しい理由云々はフルバフ団長が上層部に直に報告するだろうと。

 二人の人物が少し考えて、溜息を漏らす。

「ふむ、そうですか。君は怪我しただけとは、とんだ骨折り損だ」
「いえ、自分で転んだだけで大したことはないの、で」
「・・・まぁ、頑丈でよかったな。取り柄だからね、君の」
「どうも、で」
「しかし、未だに信じられんな。島がそこまで危険だったとは」
「残念ながらそれが今回に任務で得られた結果ですの、で」
「結局、無駄な調査費が税金から消費された訳か」
「全くもって、で」
「ふん・・・つまらんな、このような結果では」
「では再調査、で?」
「いや、今回だけでも条件が厳しかったのだ。二度とするものか」
「同感、で」
「やれ、これからの処理を考えると面倒じゃて、どうしたものか」
「全くですな。で、実際のところ、どうなのだね?」
「と、申します、と?」
「悪ふざけは大概にしたまえ。君の本当の任務についてだ」
「フルバフ老は純粋な技術者、終始調査一筋でありました、が?」
「何かしら隠匿したこと、秘密にしたこと、一切ないと」
「全く其の通り、で」
「本当だろうね」
「至高神ファリスに誓って」
「そうか。神の名を出してまで宣誓されては事実として受け止めよう」
「で、他に何かありますの、で?」
「いい、もう帰りたまえ」
「では失礼しますの、で」
「君、一つ言っておこう」
「何、か?」
「報告書は綺麗に書くことだ・・・御苦労、下がってよい」
「では」

 大男が部屋を退出した。
 残った二名は、報告書をもう一度見て静かな溜息を漏らした。

【同日 夕刻】

 ある酒場。
 その隅の個室席に一人の老人と大男がいた。

「メノナス島は今度こそ完全に放棄されることが決まった」
「そう、か」
「船員達の証言もある、島の再調査も必要なしと判断された」
「ま、行った所で、まっさらな島しかねぇし、な」
「全くじゃ。わしも、ようやく安心できる」
「これからどうするんだい?隠者でもするのか?」
「ふむ、それもいいかもしれん」
「冗談だよ。実際はどうする?」
「一度、家に帰るとしよう。それから考えようと思う」
「ま、無理なさんな」
「余計なお世話じゃて・・・ところで、怪我の具合はどうじゃ?」
「頑丈が取り柄だから、な。大したことは無い」
「はは、羨ましい限りじゃて」
「それよりも、爺さん、病気のほうは大丈夫、か?」
「ふむ。ラーダ神殿の神官に一応奇跡はかけてもらったからの」
「良かったじゃね・・・って、一応って」
「病気は発作じゃて。こればかりは神の奇跡でも治せん」
「辛いところだ、な」
「無理しなければおこらぬそうじゃ。二度と無理はせん」
「じゃ、安心か」
「なにせ、仲間に余計な心配をかけたくないからのう」
「仲間、ね。そういや、船を降りてから、あいつらに会ったか?」
「結局、事後処理やらで時間がかかっての。お前さんは?」
「報酬の件で一昨日に一度会って、それっきり。心配してたぜ?」
「そうか。もし、次会ったなら、これを渡しておいてくれぬか?」
「・・・?何、だ?」
「わしからの特別報酬といったところじゃ」
「自分で渡せばいいだろう?」
「わしはまた明日から上層部に出向かねばならん」
「じゃ、今からでも」
「今夜は学院の同期に呼ばれておっての。断れんかった」
「あー、しゃーねー、な」
「悪いの。じゃが、落ち着いたら、必ず会いに行こう」
「其の時は必ず連絡してくれ。案内する、ぜ」
「分かった。ユーニスにファントー、そしてキアによろしくの」
「悪い爺さんだ。用事を押し付けやがって」
「はは、全くじゃ。む、そろそろ鐘の鳴る時間じゃ。ではな」

 手元に残った袋、見覚えがある。
 魔水晶を入れておいた袋だ。
 中から、羊皮紙のかさかさする音、小さいが硬いものの音がした。

「無理すんじゃねーぞ!!」

 爺さんの背に大声で。
 爺さんは振り返らず左手を振っていた。



「しっかし、言っては見たものの・・・」

 さて、どうやってあの三人に早いうちに渡しにいけるか。
 それを考えねばならない。

「ま、とりあえず”きままに亭”に行ってみる、か」

 いつものように頭を掻き、気楽に考えて。
 フルバフからの特別報酬の入った袋を片手にいつもの店へ。
 まずは、伝言板に書いて・・・三人の誰かがいりゃいいんだが。



”メノナス島、一時の安息なれ。
 いつかの、生ある豊かなりし島なれ。
 もはや二度と荒らされる事なきこと。”

”ベヒモス、一時の安息なり。
 久方の、身動き気だるさ感じあり。
 いつまた動くは分からず休まねばと。”

”冒険者、一時の安息なり。
 かつての、ある人の願い叶えたり。
 その先見届けること適わぬけれども。”

【イベント メノナス島 終わり】
 
イベント終了
イベンター [ 2006/10/20 1:03:10 ]
  イベントを終わらせていただきます。
 御参加頂いた皆様、お疲れ様でした。そしてありがとう御座いました。