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演奏日
ティア [ 2001/09/27 7:13:59 ]
 今日は、ルギーが「森の子羊」亭で初演奏する日。
一昨日あんな別れ方したから顔を合わせにくいのだけど、聴きに行くのは前々からの約束だったし、――謝りたいし。

「森の子羊」亭は港の付近にあることもあって、店の中は海の男達の姿が多い。それと同様に、女性の姿も多いのはどうしてかしら?
適当にエールを空けながらそう考えていた時、ぽんっと誰かに肩を叩かれる。
振り返って――思わず叫んでしまった。
「ルギー!?」
驚いたわ。
長かった銀髪は短めのボブになっていた。綺麗な顔がより引き立っているみたい。
間の抜けた顔をしている私を見て、ルギーが苦笑する。
「そんなに変か? ルーエンにもそうやって驚かれたよ」
「う、ううん。変じゃないわ……」
……やっぱり、まともに目が見れない。赤くなった顔を誤魔化すように俯く。
「昨日は……ごめんなさいね」
「……気にすんな。俺も気にしてないから」
じゃあな、と手を振ってルギーはライアーを手に奥の演奏席へ向かった。

曲が始まった。
ライアーの旋律に乗せてルギーが歌っているのは、遠い昔、ある国の騎士が姫に焦がれ、その姫に捧げた恋歌らしい。
ふと周りを見ると、朗々と響く声に女性客の大半がウットリとした表情でをしている。
……分からなくもないわ。
視線を戻すのと、曲が終わるのはほぼ同時だった。
賞賛の拍手が店内を彩る。
ルギーは立ち上がって軽くお辞儀をして、カウンター席の方へと行こうとする。それを数人の女性が引き留めた。
彼女らは盛んにルギーを誉め、気を惹こうとして腕を絡ませたり、しなをつくったりしている。
――何か、もやもやとした嫌な気持ち。
不可解な感情に、何故か私は店を飛び出してしまった。途中で誰かにぶつかった気がするのだけど、あまり憶えていない。
どうしてか分からないけど、凄い、嫌な気持ちだった。
 
演奏初日
ルギー [ 2001/09/27 13:35:28 ]
 9の月、26日

今日から二日置きに「森の子羊」亭で、演奏する事になっている。
とはいえ他に仕事も、そこのマスターから貰ってるから、荷物運びもウェイターもやってるけど(笑)

河岸で少しぼんやりとしたあと、子羊亭に行ったら、そこのカウンターにティアの姿を見かけた。
…約束通り、聞きに来てくれたって訳か。
傍によって肩を軽く叩いた、振り向かれた瞬間、
「ルギー!?」
と、叫ばれてしまった(苦笑)
多分、原因は髪だろう、そういや切ってからティアにあったのは始めてだもんな。
「そんなに変か?ルーエンにもそうやって驚かれたよ」
苦笑いしながら言うと、ティアが首を横に振った。
「う、ううん。変じゃないわ……」
それだけ言うと、俯く。
それから蚊の泣くような小さな声で
「一昨日は……ごめんなさいね」
と、謝られた。
「……気にすんな。俺も気にしてないから」
それだけ言うと、軽く手を振り、俺は演奏席の方へ足を運んだ。

傍に据わっていた女の客から、『甘い恋歌』というリクエストを頂き、遠い昔ある国の騎士がその国の姫に焦がれ、その姫に捧げたという恋歌を歌った。
男共は少し退屈そうにしていたが、思ったより反感をかわれないですんだ。
いや、意外にロマンチックなのか?海の男って……。

歌い終わると同時に、客から拍手を頂いた。
俺は軽く会釈すると、カウンターの方に……って、おい、誰だ?俺の服を引っ張るのは。
・・…なんつうか、美人なんだけどちょっと化粧が濃い目の女性が数人ほど・・・
見るからに、俺のほうが年下。
前だったらこのうちから一人今晩の相手を選んでいたかもしんねぇが、最近はそんな気になれねぇから、なんとかあしらおうとしてるんだが・・
腕を絡めるな、寄りかかるなって、おい!
あ〜、客だから強くも言えねぇし・・・・・・。

ふと気が付くと、ティアの姿が何処にもなかった。